2019年06月04日
ACS二次予防、押さえておきたいGL改訂のポイント ACS新指針ハイライト―Vol. 2
(急性冠症候群(ACS)2次予防GL)
ACS二次予防、押さえておきたいGL改訂のポイント
ACS新指針ハイライト―Vol. 2
m3.com編集部2019年4月12日 (金)配信 一般内科疾患循環器疾患内分泌・代謝疾患救急
第83回日本循環器学会学術集会(JCS 2019、3月29日-31日、横浜市)と同学会公式サイトで7件のガイドライン(GL)の改訂版が同時発表された。
引き続き、「急性冠症候群診療ガイドライン(2018年改訂版)」のハイライトを紹介する。
急性冠症候群(ACS)の患者年齢の高齢化に伴い、
心房細動(AF)や腎機能低下の合併例が増えている。
改訂GLではこうした背景やエビデンスの集積を踏まえた推奨や、
第2世代の薬物溶出ステント(DES)の普及に伴う、
二次予防の抗血栓薬投与の推奨のアップデートが行われた。
GL班長の木村一雄氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター部長)が解説した。
(m3.com編集部・坂口恵/2019年3月29日取材、全2回)
PCI後の抗血小板薬、日本のエビデンス採用
Primary PCI(経皮的冠動脈インターベンション)後の抗血小板薬については、
「禁忌が無い限り、無期限にアスピリン81-162mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」「primary PCI施行前にクロピドグレル300mgを投与し、
その後75mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA )」などが示された。
この他、primary PCI前の抗血小板薬プラスグレル投与については日本人でのエビデンスが採用され、
欧米の3分の1の用量に相当する20mgの開始用量と
75mg/日の維持用量が推奨クラスI、エビデンスレベルAで推奨された。
退院時の抗血栓療法については
「抗凝固薬の併用が必要なPCI患者に対してアスピリンを併用せず、
抗凝固薬とクロピドグレルの2剤併用療法を退院時に考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」
ことが示された。
出血高リスクのAF合併例に3剤併用療法は“harm”
木村氏が「改訂GLの一つのトピック」と紹介したのは、二次予防の抗血栓薬に関する推奨。
1年の2剤併用療法(DAPT)が推奨されていた前GLから、出血・血栓リスクで推奨が分かれた。
「ステント留置後はアスピリンとクロピドグレルまたはプラスグレルを6-12カ月間併用投与する
(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」の他、
「DES留置後、出血リスクが高い患者に対して、
3カ月以下へのDAPTの短期化を考慮する(推奨クラスI、エビデンスレベルB)」、
さらに「出血リスクが高い心房細動を合併するPCI施行患者に対して、
抗凝固薬とDAPTの3剤併用療法の『長期継続はすべきではない』
(推奨クラスIII-harm、エビデンスレベルB)」などが追加された。
β遮断薬については入院中、二次予防ともに
「心不全徴候を有する、
または左室駆出率(LVEF) 40%以下の患者」
への投与が推奨された(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
一方、入院中の禁忌のない患者へのβ遮断薬の経口投与については
「推奨クラスI、エビデンスレベルA」から、
「考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」と『ダウングレード』した。
脂質低下療法の初期治療は“fire and forget”
二次予防の脂質低下療法に関しては、
2013年のAHA/ACCガイドラインで示された目標値なく
ストロングスタチンを忍容可能な最大用量で投与する
“fire and forget”のコンセプトを採用(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
最大用量のスタチンを用いてもLDLコレステロール(LDL-C)値が
『70mg/dL』に達しない場合の二次選択薬として、
『家族性高コレステロール血症(FH)』には『PCSK9阻害薬(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)』、
それ以外の高リスク例には
『エゼチミブが推奨クラスIIa』、『PCSK9阻害薬が推奨クラスIIb』に位置づけられた。
入院中の糖負荷試験の実施も推奨
糖尿病合併例については、入院中早期に行う検査として
「入院時にHbA1cを用いた糖尿病スクリーニングを行う(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」ことが推奨。
二次予防としても
「糖尿病既往のない患者に対して糖負荷試験の施行を考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」
も盛り込まれた。
糖尿病における血糖、体重血圧管理、血清脂質などの多因子管理(推奨クラスI、エビデンスレベルA)や
新たに「糖尿病合併患者に対して、心血管イベント抑制が証明されているSGLT2阻害薬の投与を考慮する
(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」ことが推奨された。
SGLT2阻害薬の推奨について木村氏は、
今後のエビデンス次第で「将来的には推奨クラスがアップグレードする可能性がある」との考えを示した。
木村氏「fire and forgetもtreat to targetもゴールは同じ」
ディスカッションでは、脂質低下療法による二次予防に関して
「fire and forgetを採用した点が、
日本動脈硬化学会の脂質異常症診療GLにおけるコンセプト(treat to target)と異なる点をどう捉えるべきか、
質問が出された。
木村氏は「いずれのコンセプトも目指すところは同じだが、
treat to targetの場合、“発症後のLDL-C値が70mg/dL以下の場合はスタチンを使わなくてよいのでは”という誤解を生じる可能性がある」と説明。
「スタチンは急性期に必ず使う薬と認識している。
したがって、『LDL-C値にかかわらず、ACS後にはまずスタチンを使用』して、
検査値や目標値は後追いに見ていく形がよいと思う」と話した。
ACS二次予防、押さえておきたいGL改訂のポイント
ACS新指針ハイライト―Vol. 2
m3.com編集部2019年4月12日 (金)配信 一般内科疾患循環器疾患内分泌・代謝疾患救急
第83回日本循環器学会学術集会(JCS 2019、3月29日-31日、横浜市)と同学会公式サイトで7件のガイドライン(GL)の改訂版が同時発表された。
引き続き、「急性冠症候群診療ガイドライン(2018年改訂版)」のハイライトを紹介する。
急性冠症候群(ACS)の患者年齢の高齢化に伴い、
心房細動(AF)や腎機能低下の合併例が増えている。
改訂GLではこうした背景やエビデンスの集積を踏まえた推奨や、
第2世代の薬物溶出ステント(DES)の普及に伴う、
二次予防の抗血栓薬投与の推奨のアップデートが行われた。
GL班長の木村一雄氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター部長)が解説した。
(m3.com編集部・坂口恵/2019年3月29日取材、全2回)
PCI後の抗血小板薬、日本のエビデンス採用
Primary PCI(経皮的冠動脈インターベンション)後の抗血小板薬については、
「禁忌が無い限り、無期限にアスピリン81-162mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」「primary PCI施行前にクロピドグレル300mgを投与し、
その後75mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA )」などが示された。
この他、primary PCI前の抗血小板薬プラスグレル投与については日本人でのエビデンスが採用され、
欧米の3分の1の用量に相当する20mgの開始用量と
75mg/日の維持用量が推奨クラスI、エビデンスレベルAで推奨された。
退院時の抗血栓療法については
「抗凝固薬の併用が必要なPCI患者に対してアスピリンを併用せず、
抗凝固薬とクロピドグレルの2剤併用療法を退院時に考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」
ことが示された。
出血高リスクのAF合併例に3剤併用療法は“harm”
木村氏が「改訂GLの一つのトピック」と紹介したのは、二次予防の抗血栓薬に関する推奨。
1年の2剤併用療法(DAPT)が推奨されていた前GLから、出血・血栓リスクで推奨が分かれた。
「ステント留置後はアスピリンとクロピドグレルまたはプラスグレルを6-12カ月間併用投与する
(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」の他、
「DES留置後、出血リスクが高い患者に対して、
3カ月以下へのDAPTの短期化を考慮する(推奨クラスI、エビデンスレベルB)」、
さらに「出血リスクが高い心房細動を合併するPCI施行患者に対して、
抗凝固薬とDAPTの3剤併用療法の『長期継続はすべきではない』
(推奨クラスIII-harm、エビデンスレベルB)」などが追加された。
β遮断薬については入院中、二次予防ともに
「心不全徴候を有する、
または左室駆出率(LVEF) 40%以下の患者」
への投与が推奨された(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
一方、入院中の禁忌のない患者へのβ遮断薬の経口投与については
「推奨クラスI、エビデンスレベルA」から、
「考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」と『ダウングレード』した。
脂質低下療法の初期治療は“fire and forget”
二次予防の脂質低下療法に関しては、
2013年のAHA/ACCガイドラインで示された目標値なく
ストロングスタチンを忍容可能な最大用量で投与する
“fire and forget”のコンセプトを採用(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
最大用量のスタチンを用いてもLDLコレステロール(LDL-C)値が
『70mg/dL』に達しない場合の二次選択薬として、
『家族性高コレステロール血症(FH)』には『PCSK9阻害薬(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)』、
それ以外の高リスク例には
『エゼチミブが推奨クラスIIa』、『PCSK9阻害薬が推奨クラスIIb』に位置づけられた。
入院中の糖負荷試験の実施も推奨
糖尿病合併例については、入院中早期に行う検査として
「入院時にHbA1cを用いた糖尿病スクリーニングを行う(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」ことが推奨。
二次予防としても
「糖尿病既往のない患者に対して糖負荷試験の施行を考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」
も盛り込まれた。
糖尿病における血糖、体重血圧管理、血清脂質などの多因子管理(推奨クラスI、エビデンスレベルA)や
新たに「糖尿病合併患者に対して、心血管イベント抑制が証明されているSGLT2阻害薬の投与を考慮する
(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」ことが推奨された。
SGLT2阻害薬の推奨について木村氏は、
今後のエビデンス次第で「将来的には推奨クラスがアップグレードする可能性がある」との考えを示した。
木村氏「fire and forgetもtreat to targetもゴールは同じ」
ディスカッションでは、脂質低下療法による二次予防に関して
「fire and forgetを採用した点が、
日本動脈硬化学会の脂質異常症診療GLにおけるコンセプト(treat to target)と異なる点をどう捉えるべきか、
質問が出された。
木村氏は「いずれのコンセプトも目指すところは同じだが、
treat to targetの場合、“発症後のLDL-C値が70mg/dL以下の場合はスタチンを使わなくてよいのでは”という誤解を生じる可能性がある」と説明。
「スタチンは急性期に必ず使う薬と認識している。
したがって、『LDL-C値にかかわらず、ACS後にはまずスタチンを使用』して、
検査値や目標値は後追いに見ていく形がよいと思う」と話した。
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