2019年05月31日
第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】
(心電図に性差があることを述べるために、不要と思ったところは割愛していますー悪しからず)
第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】
公開日:2019/03/18 企画・制作 ケアネット
杉山 裕章氏(京都府立医科大学)が、
症例に関する問題と解説を通して攻略法をお届けします。
皆さんは心電図に「性差」があるのをご存知ですか?
男性と女性では、波形にいくつかの違いがあるのです。
今回は、それを見極めるために、ST部分の“男女差”についてDr.ヒロが解説します。
はじめに言っておくと、今回の話もあくまでも“雑談”です。
細部まで逐一暗記しようとせず、『ふーん、そうなのかぁ』程度に思ってもらえば大丈夫。
注目するのはV1〜V4(前胸部)誘導のJ点とST角度(ST angle)の2点。
「J点」はQRS波の“おわり”で、
いわゆる“変曲点”です(第14回)。
もう一つの「ST角度」という名前は聞き慣れないかもしれないので、図で説明しましょう。
男女別のST部分の差を3つに分類したSurawicz先生によると、
J点を認識し、そこを通り基線に平行な線Aを引きます。
次に、J点と点B(J点から60ms[1.5mm]先のST部分で“ST60”と称される)を結ぶ線がなす角度(図中のC)を表します。
ST部分の“傾き”と理解すれば良いでしょう。
では、この2つを用いてST部分を
1)女性型(F型)、
2)男性型(M型)、
3)不定型(I型)の3つに分類する方法*2を紹介します。
J点・ST角度によるST型分類
まずは、V1〜V4誘導でJ点レベルが最高となる誘導に注目します。
V1〜V4誘導のいずれでもJ点が「0.1mV」、
つまり、基線からの上昇が1mm未満なのが「F型」
(ST角度は不問)です。
角度が一番キツい(最大となる)誘導で、
その角度が20°以上だったら「M型」、
それ未満なら「I型」とします。
具体的な数値は忘れてかまいませんが、
若年男性ほど角度が急峻、つまり「M型」となる傾向なんです。
ボクの経験上、ST角度はおおむねT波高が一番のところで最大となるため、
ざっと見てJ点が1mm以上であれば、
T波が最も高くツンと立った誘導を使ってST角度を調べるスタンスでOKです。
まず、女性のほうはシンプル。
全年代にわたって8割方がF型です。
残り2割、成人の場合ではM型とI型が半分ずつ占めています。
一方の男性はどうでしょう?
思春期以降、40歳くらいまではM型ないしI型で9割近くを占め、
“若さ”の象徴的な「ST上昇」が目立ちます。
ただ、よーく見ると、成人以降、M型は徐々に減り、
代わりにF型がぐんぐん増えてきます(I型は1〜2割のままほぼ一定)。
50歳前後でF型はM型を凌駕し、
最終的に今回の症例のような高齢男性では、7割がF型となる様子が読み取れます。
心電図が年をとった結果、生物学的には男性でも、心電図は“女性”…そんなことが珍しくないというワケ。
この“理由”はと言えば、皆さんお察しの通り「性ホルモン」の影響が強いようです。
“力こぶ”を連想させるST-T部分はテストステロンの影響を受けるため、
加齢によって“更年期”を迎え、最終的には枯渇してゆく…。
今回は、あまり真面目に語られることのない、性別による心電図波形の違いについて扱いました。
やや雑学的はハナシですが、ボクが医学生の頃、友達と面白いなぁと話した日々を懐かしく思いました。
Take-home Message
J点(STレベル)とST角度には性差が現れやすい(3つの区分あり)
男性に特徴的な加齢に伴うST型の変化を知っておこう
参考文献
1)Bidoggia H, et al. Am Heart J. 2000;140:430–436.
2)Surawicz B, et al. J Am Coll Cardiol. 2002;40:1870–1876.
第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】
公開日:2019/03/18 企画・制作 ケアネット
杉山 裕章氏(京都府立医科大学)が、
症例に関する問題と解説を通して攻略法をお届けします。
皆さんは心電図に「性差」があるのをご存知ですか?
男性と女性では、波形にいくつかの違いがあるのです。
今回は、それを見極めるために、ST部分の“男女差”についてDr.ヒロが解説します。
はじめに言っておくと、今回の話もあくまでも“雑談”です。
細部まで逐一暗記しようとせず、『ふーん、そうなのかぁ』程度に思ってもらえば大丈夫。
注目するのはV1〜V4(前胸部)誘導のJ点とST角度(ST angle)の2点。
「J点」はQRS波の“おわり”で、
いわゆる“変曲点”です(第14回)。
もう一つの「ST角度」という名前は聞き慣れないかもしれないので、図で説明しましょう。
男女別のST部分の差を3つに分類したSurawicz先生によると、
J点を認識し、そこを通り基線に平行な線Aを引きます。
次に、J点と点B(J点から60ms[1.5mm]先のST部分で“ST60”と称される)を結ぶ線がなす角度(図中のC)を表します。
ST部分の“傾き”と理解すれば良いでしょう。
では、この2つを用いてST部分を
1)女性型(F型)、
2)男性型(M型)、
3)不定型(I型)の3つに分類する方法*2を紹介します。
J点・ST角度によるST型分類
まずは、V1〜V4誘導でJ点レベルが最高となる誘導に注目します。
V1〜V4誘導のいずれでもJ点が「0.1mV」、
つまり、基線からの上昇が1mm未満なのが「F型」
(ST角度は不問)です。
角度が一番キツい(最大となる)誘導で、
その角度が20°以上だったら「M型」、
それ未満なら「I型」とします。
具体的な数値は忘れてかまいませんが、
若年男性ほど角度が急峻、つまり「M型」となる傾向なんです。
ボクの経験上、ST角度はおおむねT波高が一番のところで最大となるため、
ざっと見てJ点が1mm以上であれば、
T波が最も高くツンと立った誘導を使ってST角度を調べるスタンスでOKです。
まず、女性のほうはシンプル。
全年代にわたって8割方がF型です。
残り2割、成人の場合ではM型とI型が半分ずつ占めています。
一方の男性はどうでしょう?
思春期以降、40歳くらいまではM型ないしI型で9割近くを占め、
“若さ”の象徴的な「ST上昇」が目立ちます。
ただ、よーく見ると、成人以降、M型は徐々に減り、
代わりにF型がぐんぐん増えてきます(I型は1〜2割のままほぼ一定)。
50歳前後でF型はM型を凌駕し、
最終的に今回の症例のような高齢男性では、7割がF型となる様子が読み取れます。
心電図が年をとった結果、生物学的には男性でも、心電図は“女性”…そんなことが珍しくないというワケ。
この“理由”はと言えば、皆さんお察しの通り「性ホルモン」の影響が強いようです。
“力こぶ”を連想させるST-T部分はテストステロンの影響を受けるため、
加齢によって“更年期”を迎え、最終的には枯渇してゆく…。
今回は、あまり真面目に語られることのない、性別による心電図波形の違いについて扱いました。
やや雑学的はハナシですが、ボクが医学生の頃、友達と面白いなぁと話した日々を懐かしく思いました。
Take-home Message
J点(STレベル)とST角度には性差が現れやすい(3つの区分あり)
男性に特徴的な加齢に伴うST型の変化を知っておこう
参考文献
1)Bidoggia H, et al. Am Heart J. 2000;140:430–436.
2)Surawicz B, et al. J Am Coll Cardiol. 2002;40:1870–1876.
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