2019年05月30日
急性大動脈解離、初の「診療の質指標」を開発
(急性動脈解離ー阿藤海さんの亡くなった病気!
タイプA(上行大動脈解離有)対タイプB(同無)
院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%)
急性大動脈解離、初の「診療の質指標」を開発
2019年04月09日 05:05
院内死亡率が25〜30%と非常に高いことで知られる
急性大動脈解離(acute aortic dissection; AAD)の日本における治療状況を明らかにするため、
武蔵野赤十字病院(東京都)循環器内科の山口徹雄氏らが大規模データベースを解析し、
そのデータを基に診療の質指標(Quality Indicator; QI)を作成、
詳細を第83回日本循環器学会(3月29〜31日)で報告した。
同氏は「本邦においてAADのガイドラインに沿った治療が
十分に行われているかどうかの基礎データが乏しかった。
今回作成したQIの達成率はアウトカムと有意な関連が確認され、
今後の診療の質均てん化や診療ギャップの改善に有用と考えられる」と述べた。
JROAD-DPCデータベースからAADの診療実態を検証
山口氏らは循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)データベースを活用し、
2012年4月から2015年3月までにAADで入院した患者3万1,905例を同定。
そのうち、検査入院の患者やAADのタイプが不明な患者などを除外した
1万8,348例(タイプA = 1万131例、タイプB = 8,217例)のアウトカムを検討した。
タイプAは上行大動脈から裂けるタイプで、通常、緊急手術が必要。
手術不能で内科的治療のみを行った場合の院内死亡率は50%にもなる。
タイプBでは上行大動脈の解離はなく、下行大動脈から裂けるタイプ。
一般的には内科的治療を行うが、重症例では手術が必要で、その場合の院内死亡率は20〜30%になる。
AADのガイドラインには、
診断(CTでの診断を推奨)、
降圧の仕方(β遮断薬を推奨)、
タイプAや複雑なタイプBに対する手術施行方法など、
エビデンスに基づく記載はあるが、
実際の診療でエビデンス通りの治療が確実に行われているかどうかは確認されていない。
自治体指定の救急救命センターへの搬送は50%強
タイプA群、タイプB群の平均年齢に差はなかった。
タイプA群は男性が46.9%、タイプB群は女性が69.6%、
病院搬送時点でタイプA群の13.4%、タイプB群の0.9%が昏睡状態であった。
自治体が指定する救急救命センターへの搬送割合は
タイプA群57.4%、タイプB群54.3%で、
約半数近くが救急救命センターでない病院へ運ばれている。
運ばれた施設の心臓血管外科医および循環器内科専門医の数は、
タイプA群でそれぞれ5人、11人、タイプB群でそれぞれ4人と10人であった。
造影CTによる診断がなされたのはタイプA群で82.6%、タイプB群で91.8%、
血行動態把握に重要な動脈圧ラインによる血圧測定が実施されていたのは
タイプA群で76.9%、タイプB群で52.8%。
β遮断薬の処方は79.1%と82.8%だった。
タイプA群とB群の治療内容と転帰は、
外科手術が66.0%と2.9%、
TEVAR(ステントグラフト)が0.6%と4.4%、
術中経食道心エコーが76.6%と26.3%、院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%であった。
また、総医療費はタイプA群が626万円、タイプB群は118万円であった。
QIが治療転帰と相関―AAD診療の評価や改善に向けた活用に期待
次に山口氏らは、デルファイ変法※によるQI(診療の質指標、Quality Indicator)の作成を試みた。
PubMedやMEDLINEの文献検索により最終的に36の文献を選び出し、QIの候補を選定、
専門家会議・デルファイ変法で
構造に関わる指標を5項目
(@救命センター指定の有無
A心臓血管外科医の数
B循環器専門医の数
C年間の大動脈手術件数
D年間の血管内治療件数)、
過程に関わる指標4項目
(E診断のためのCT施行
F術中経食道心エコー検査の施行
G動脈圧ラインによる血圧管理
Hβ遮断薬処方)を設定した。
9つのQI指標が満たされた数が
7〜9個、4〜6個、0〜3個の3群に分け、
7〜9個の死亡オッズ比(OR)を1として解析したところ、
タイプA群、タイプB群のいずれにおいても、
4〜6個、0〜3個とQI達成数が少なくなるほど、死亡ORが高くなっていることが確認された。
さらに、
構造のQI(3〜5個 vs. 1〜2個 vs. 0個)、
過程のQI(3〜4個 vs. 1〜2個 vs. 0個)で分けて調べても、
それぞれのQI達成数が少ないほど死亡のORが高く、
今回作成したQIがアウトカムと関連することが示された。
山口氏は、全国規模のAADデータであり、
症例数が約1万8,000例と多いこと、
臨床試験ではないリアルワールドのデータであることなどを今回の研究の強みとして挙げる一方、
限界は、退院後の長期追跡データがないこと、
観察研究であることから測定できない因子がある、治療選択決定の理由が不明である、
ことなどだと述べた。
最後に同氏は「AADのQIを報告した論文は世界的にもなく、
今後、この指標を用いたAAD診療の評価や改善が期待される」と講演を結んだ。
※ 米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)およびランド研究所(RAND Corporation)で開発されたQI 作成の国際的な標準方法。RAND/UCLA 適切性評価法とも呼ばれる。
(JCS2019取材班)
タイプA(上行大動脈解離有)対タイプB(同無)
院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%)
急性大動脈解離、初の「診療の質指標」を開発
2019年04月09日 05:05
院内死亡率が25〜30%と非常に高いことで知られる
急性大動脈解離(acute aortic dissection; AAD)の日本における治療状況を明らかにするため、
武蔵野赤十字病院(東京都)循環器内科の山口徹雄氏らが大規模データベースを解析し、
そのデータを基に診療の質指標(Quality Indicator; QI)を作成、
詳細を第83回日本循環器学会(3月29〜31日)で報告した。
同氏は「本邦においてAADのガイドラインに沿った治療が
十分に行われているかどうかの基礎データが乏しかった。
今回作成したQIの達成率はアウトカムと有意な関連が確認され、
今後の診療の質均てん化や診療ギャップの改善に有用と考えられる」と述べた。
JROAD-DPCデータベースからAADの診療実態を検証
山口氏らは循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)データベースを活用し、
2012年4月から2015年3月までにAADで入院した患者3万1,905例を同定。
そのうち、検査入院の患者やAADのタイプが不明な患者などを除外した
1万8,348例(タイプA = 1万131例、タイプB = 8,217例)のアウトカムを検討した。
タイプAは上行大動脈から裂けるタイプで、通常、緊急手術が必要。
手術不能で内科的治療のみを行った場合の院内死亡率は50%にもなる。
タイプBでは上行大動脈の解離はなく、下行大動脈から裂けるタイプ。
一般的には内科的治療を行うが、重症例では手術が必要で、その場合の院内死亡率は20〜30%になる。
AADのガイドラインには、
診断(CTでの診断を推奨)、
降圧の仕方(β遮断薬を推奨)、
タイプAや複雑なタイプBに対する手術施行方法など、
エビデンスに基づく記載はあるが、
実際の診療でエビデンス通りの治療が確実に行われているかどうかは確認されていない。
自治体指定の救急救命センターへの搬送は50%強
タイプA群、タイプB群の平均年齢に差はなかった。
タイプA群は男性が46.9%、タイプB群は女性が69.6%、
病院搬送時点でタイプA群の13.4%、タイプB群の0.9%が昏睡状態であった。
自治体が指定する救急救命センターへの搬送割合は
タイプA群57.4%、タイプB群54.3%で、
約半数近くが救急救命センターでない病院へ運ばれている。
運ばれた施設の心臓血管外科医および循環器内科専門医の数は、
タイプA群でそれぞれ5人、11人、タイプB群でそれぞれ4人と10人であった。
造影CTによる診断がなされたのはタイプA群で82.6%、タイプB群で91.8%、
血行動態把握に重要な動脈圧ラインによる血圧測定が実施されていたのは
タイプA群で76.9%、タイプB群で52.8%。
β遮断薬の処方は79.1%と82.8%だった。
タイプA群とB群の治療内容と転帰は、
外科手術が66.0%と2.9%、
TEVAR(ステントグラフト)が0.6%と4.4%、
術中経食道心エコーが76.6%と26.3%、院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%であった。
また、総医療費はタイプA群が626万円、タイプB群は118万円であった。
QIが治療転帰と相関―AAD診療の評価や改善に向けた活用に期待
次に山口氏らは、デルファイ変法※によるQI(診療の質指標、Quality Indicator)の作成を試みた。
PubMedやMEDLINEの文献検索により最終的に36の文献を選び出し、QIの候補を選定、
専門家会議・デルファイ変法で
構造に関わる指標を5項目
(@救命センター指定の有無
A心臓血管外科医の数
B循環器専門医の数
C年間の大動脈手術件数
D年間の血管内治療件数)、
過程に関わる指標4項目
(E診断のためのCT施行
F術中経食道心エコー検査の施行
G動脈圧ラインによる血圧管理
Hβ遮断薬処方)を設定した。
9つのQI指標が満たされた数が
7〜9個、4〜6個、0〜3個の3群に分け、
7〜9個の死亡オッズ比(OR)を1として解析したところ、
タイプA群、タイプB群のいずれにおいても、
4〜6個、0〜3個とQI達成数が少なくなるほど、死亡ORが高くなっていることが確認された。
さらに、
構造のQI(3〜5個 vs. 1〜2個 vs. 0個)、
過程のQI(3〜4個 vs. 1〜2個 vs. 0個)で分けて調べても、
それぞれのQI達成数が少ないほど死亡のORが高く、
今回作成したQIがアウトカムと関連することが示された。
山口氏は、全国規模のAADデータであり、
症例数が約1万8,000例と多いこと、
臨床試験ではないリアルワールドのデータであることなどを今回の研究の強みとして挙げる一方、
限界は、退院後の長期追跡データがないこと、
観察研究であることから測定できない因子がある、治療選択決定の理由が不明である、
ことなどだと述べた。
最後に同氏は「AADのQIを報告した論文は世界的にもなく、
今後、この指標を用いたAAD診療の評価や改善が期待される」と講演を結んだ。
※ 米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)およびランド研究所(RAND Corporation)で開発されたQI 作成の国際的な標準方法。RAND/UCLA 適切性評価法とも呼ばれる。
(JCS2019取材班)
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