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2019年06月09日

第8回 高齢者の運動療法の進め方、工夫のポイント【高齢者糖尿病診療のコツ】

(身体を動かす習慣は、
筋肉量や筋力低下の抑制、
フレイルや認知機能低下の予防、
抑うつ予防、
心肺機能の維持、
ストレス解消など多岐にわたる!)

第8回 高齢者の運動療法の進め方、工夫のポイント【高齢者糖尿病診療のコツ】
公開日:2019/04/16

患者さんごとに「個別の治療」、「個別の管理目標」が求められる高齢者の糖尿病診療。

判断に迷う場面も多いのではないでしょうか。
事前アンケートで寄せられた、高齢者特有の問題に対する診療上の迷いや疑問に、東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科の先生方が回答します。

Q1 運動量(負荷)と時間の設定について、基本的な考え方を教えてください
photoBさんによる写真ACからの写真 ウォーキング.jpg


高齢の糖尿病患者さんでは、運動療法の効果は血糖降下作用のみにとどまりません。
筋肉量や筋力低下の抑制、
フレイルや認知機能低下の予防、
抑うつ予防、
心肺機能の維持、
ストレス解消など多岐にわたります。

また一口に運動療法といっても、
有酸素運動やレジスタンス運動、
柔軟性運動(ストレッチ)、
バランス運動など様々です。

有酸素運動は歩行や水泳などの全身運動を指し、
骨格筋などで酸素を取り入れて糖質や遊離脂肪酸を燃焼させ、エネルギー(ATP)を生成する運動です。

運動開始から10分ほど経過すると糖質が利用されはじめ、
15分ほど経過すると遊離脂肪酸が利用されはじめるので、
糖質と遊離脂肪酸の双方が利用されるには20分以上の運動時間が必要となります。

また運動強度としては、
Borgの自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)の
「ややきつい」と感じる程度が適当であり、
心拍数で120拍/分程度、安静時脈拍の1.5〜2倍の拍動数を示すレベルが目安となります。

ジョギングであれば、「隣の人とおしゃべりしながら走れる程度」を目安とすれば良いと思います。

糖尿病患者の糖代謝の改善が持続するのは、
運動後12〜72時間のため、頻度としては週に3〜5回が必要となります。

標準的な考え方としては、
週に150分以上のウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動を行うと、
血糖コントロールの改善や糖尿病合併症の進行予防が期待できます。

ウォーキングであれば、1回につき20〜30分、1日2回ずつ行うのが理想です。

しかし、今まで運動習慣のなかった方がいきなり20分以上の運動量をこなすのは困難です。

そのため、『実践可能な量から開始』していくのが良いでしょう。

まずは『1日に5分程度でも良い』ので、
ペットを連れて散歩する、
ごみを捨てに行く、
買い物に行くなどから始めてもらいます。

できれば毎日行っていただくよう指導しています。

外出することを習慣づけてしまえば、運動量を増やしていくことも容易となるからです。
なお、運動は食後1時間程度から開始すると、食後高血糖の抑制効果が得られます。
高齢の糖尿病患者は食後高血糖を来しやすいため、食後に運動することを推奨しています。

レジスタンス運動とは、
ダンベルを利用した体操や、腹筋や腕立て伏せといった筋力トレーニングなどを指します。

高齢の糖尿病患者が、軽度の負荷であるレジスタンス運動を継続して行うと、
筋肉量が有意に増加したという報告があります。

最近のメタ解析では、2型糖尿病患者がレジスタンス運動を行うと、
筋力だけでなく、血糖コントロールが改善するとも報告されています。

レジスタンス運動は、少なくとも週2回以上行うことが推奨されています。

ただし、フレイルがあってレジスタンス運動が十分施行できない場合には、
柔軟性運動から始めて、軽度の負荷のレジスタンス運動を行い、
有酸素運動やバランス運動を加えて、
さらにレジスタンス運動の負荷を強めていくという流れが良いと思います。

こうした運動を多要素の運動といい、
タンパク質の十分な摂取と組み合わせると、
フレイルや身体機能を改善することが報告されています。

市町村の運動教室(筋力トレーニングを含むもの)やジムに参加したり、
ヨガや太極拳などに参加したりすることも有効です。
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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