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2018年11月05日

起こりがちな患者との思いの“ズレ

起こりがちな患者との思いの“ズレ
【患者コミュニケーション塾】
公開日:2017/01/20 企画・制作 ケアネット

voice_ic_recorder.jpg

「録音していいですか?」と聞く患者の真意とは!

今回から連載コラム「患者コミュニケーション塾」を執筆することになりました
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子と申します。

これまでに経験してきた全国の患者さんからの相談内容を踏まえて、
患者さんと医療者がよりよい関係を構築していくためのヒントとなるような
さまざまな事例を紹介してまいります。

どのような場合でも、立場が違えば同じ事柄でも捉え方が異なりがちです。

とくに医療現場では患者と医師の思いのズレが起こりやすいと感じています。

最近、病院の院内研修会での講演に招かれた際、
医師からよく受ける質問として
「患者さんに説明しようとしたら、
『録音していいですか?』と言う人が増えてきました。

これは認めないといけないと思いますか?」という内容があります。

「説明内容を録音されると証拠を取られているようで、
話に制約がかかる」、

「揚げ足を取られないように非常に気を遣う」
と医師の方々は言います。

私もこれまで患者さんから電話相談を受けるなかで、
相談終了時になって「今の相談のやりとりを録音していたのですが、家族に聞かせていいですか?」
と言われたことが何度かあります。

最初に「録音していいですか?」と言い出しにくいために、
終了間際に言ったのだろうと頭では理解できるものの、
正直なところ「後から言われてもなぁ…」という気持ちは生じますので、
医師の方々が抵抗を覚える気持ちもわかります。

でも、まだ「言ってくださるだけありがたい」と考え、
今ではどの相談でも録音されていることを気持ちの上では前提にして対応するようにしています。

患者が録音したい理由は「証拠を取るため」ではない

ところが、患者側にしてみると、
録音したい理由は必ずしも「証拠を取るため」ではないのです。

電話相談で「医師の説明を録音してもいいでしょうか?」と聞かれることがあります。

その際、理由を問うと、ほとんどの場合「1回聞いただけでは理解できないので、
何度も聞き直したい」
「説明の場に同席できない家族に同じ内容の説明を聞かせたい」
ということなのです。

おそらく、証拠を取りたくて録音する人は、
胸のポケットなどにICレコーダーやスマートフォンをしのばせてこっそり録音するでしょう。

最近の機器は性能が良いので、机上に置かなくても小さな音声まで拾ってくれます。

そう考えると、あらかじめ録音の是非を問う人は、何らかの理由があるはずなのです。

そのため、患者が録音を希望した際には、「何のためですか?」と確認していただくと、
このようなズレが生じることもなくなるのではないかと思います。

かつて大きな誤解があった「セカンドオピニオン」も今や当たり前に

最近では患者、医師共に随分抵抗がなくなってきたセカンドオピニオンに関しても、
思いのズレがありました。

患者が「セカンドオピニオンを求めたい」と望むと、
かつては「この患者は私に不信感を抱いているのか」と受け止める医師が少なからずいました。

でも、患者としては治療を受ける大きな決断をするときに、
もう1人専門家の意見を聞いて「確認したい」というのが本音です。

今では、セカンドオピニオンは患者の当然の権利と考える医師や、
「セカンドオピニオンを受けてもらったほうが私への信頼を厚くして戻って来る」
と言う医師まで登場しました。

もちろん、時代の変化が後押ししている部分は大きいでしょう。

でも、患者の要求や行動の理由を理解することができれば、物事は前向きに捉えられるのだと思います。
どのようなときに思いのズレが生じるのか、
患者と医師がもう一歩踏み込んだコミュニケーションを取ることによって、
お互いの本音が出し合え、お互いの理解につながると思います。

山口 育子 ( やまぐち いくこ ) 氏
認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML理事長
[略歴]
大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的医療への必要性を痛感していた1991年11月COMLと出会う。
活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとなり、
相談、編集、渉外などを担当。
2002年4月に法人化したNPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの専務理事兼事務局長を経て、
2011年8月理事長に就任。
著書に『賢い患者』(岩波新書)。

2018年11月04日

レム睡眠とノンレム睡眠 夢の話ー友人が教えてました

レム睡眠とノンレム睡眠 夢の話ー友人が教えてました

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■「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」とは

睡眠は2種類の眠りに分けられます。
「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」です。

レム睡眠は、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字から名付けられました。
レム睡眠中には目玉が素早く動いているからです。
レム睡眠中に身体は休んでいますが、脳は忙しく働いています。
ネコが横になって、ゴロンと眠っているのがレム睡眠です。

一方、ノンレム睡眠では脳は眠っていますが、
身体は姿勢を保つくらいに筋肉の緊張が保たれています。
ネコでは伏せの状態で、行儀よく眠っているのがノンレム睡眠です。

■ノンレム睡眠中の夢

夢を見るのは眠りが浅いからではありません。
私たちはみな、毎晩ねむると夢を見ています。
レム睡眠中に強制的に目覚めさせると、約8割の確率で「夢を見ていた」と答えます。

レム睡眠の時の夢は、感情の変化を伴いストーリー性が高く色彩が豊かで、時に奇妙な内容です。

一方、夢はノンレム睡眠のときにも見ることがありますが、あまり多くはありません。
ノンレム睡眠中の夢は、単純な内容で色彩もあまり鮮やかでないことがほとんどです。

レム睡眠中には、記憶の整理や固定、記憶を引き出すための索引づくりが行われています。
目覚めているときに外界から受け取ったり、自分で考えたりした膨大な量の情報の中から、
必要なものだけを残して不要なものを捨て、大事な情報をいつでもすぐに取り出せるように整理して保存しています。
この作業中に情報と関連した映像が浮かぶと、それを夢として認識しているようです。

■「夢判断」を著わしたフロイト

なぜ、眠ると夢を見るのでしょうか?

「夢判断」を著わしたフロイトは、
夢を「押さえつけられていた願望が形を変えて表れたもの」と考えました。

また、心理学者のユングは、
「夢は偏った意識を補い修正する」と言っています。

どちらも魅力的な解釈ですが、今では否定的な意見が多くなっています。

実は、夢を見る理由はまだはっきり分かっていません。有力な仮説は、次の5つでしょう。

いらない情報の消去
新しい体験と過去の記憶の統合
起きている時の行動のシミュレーション
現実世界での問題の解決法を探すこと
特に意味はない

夢を見るなら、自分が見たい夢を見たいものです。
そのためには、
「見たい夢のイメージを強く持つ」
「良い睡眠をとる」
「見た夢を忘れない」
ことが大切です。

眠る直前に見たり聞いたり考えたりしたことは、夢に出てくる可能性が高くなります。

夢で見たい人や場所などが写っている写真などを眠る前によく見て、
それを枕元に置いておくと良いでしょう。

睡眠の質が悪かったり睡眠時間が短すぎたりすると、良い夢を見られません。
生活の習慣や寝室の環境を見直して、グッスリ眠りましょう。
目が覚めたらすぐに、夢の内容を思い出して記録に残しましょう。
はじめは断片的にしか思い出せなくても、記録を続けると細かいところまで思い出せるようになるかもしれません。


雨晴クリニック 坪田 聡
睡眠専門医。医師、医学博士。
医師として快眠習慣の普及に努めるほか、行動計画と医学・生理学の両面から、睡眠の質の向上に役立つ情報を発信。睡眠に関する著書多数あり。
日本睡眠学会、スポーツ精神医学会、日本医師会所属。

2018年11月03日

急性虫垂炎には手術か抗菌薬治療か?

急性虫垂炎には手術か抗菌薬治療か?
穿孔していないかCTで確認して,抗菌剤投与で約6割は切らずに治療できる!?
提供元:HealthDay News 公開日:2018/10/11

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 単純性急性虫垂炎は、
手術ではなく抗菌薬治療だけで治せる可能性があることが、
トゥルク大学病院(フィンランド)のPaulina Salminen氏らによる研究で示された。

抗菌薬治療による初期治療を行った急性虫垂炎患者を追跡した結果、
5年後でも約60%に再発はみられなかったことが明らかになった。
詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」9月25日号に掲載された。

 Salminen氏らは今回、単純性急性虫垂炎患者「530人」を対象に、
虫垂切除術を実施する群(273人)と
抗菌薬治療のみを実施する群(257人)に
「ランダムに割り付け」て
比較検討したAppendicitis Acuta(APPAC)の参加者を
「5年間追跡」する観察研究を実施した。

 その結果、抗菌薬治療群では最初の1年以内に
27.3%(70人)が虫垂切除術を施行され、
治療開始1年後から5年以内には
さらに30人が虫垂切除術を施行されていたことが分かった。

5年後の虫垂炎の「累積再発率」は「39.1%」であり、約60%の患者は治療開始から5年以内に再発には至らなかったことが明らかになった。

 これらの結果を踏まえて、Salminen氏は「急性虫垂炎患者の約20〜30%には虫垂に穿孔が認められるため手術が必要となるが、

70〜80%は穿孔がない単純性虫垂炎であるため、

抗菌薬のみで治療できると考えられる。

虫垂切除術が必要か否かはCT画像で簡単に判断できる」と説明している。

また、今回の結果では抗菌薬の使用に関連した重篤な合併症はみられなかったことから、
「急性虫垂炎に対する抗菌薬治療は安全な治療選択肢だ」と同氏は述べている。

 しかし、急性虫垂炎を抗菌薬のみで治療することについて否定的な考えを持つ専門家もいる。

米レノックス・ヒル病院の救急医であるRobert Glatter氏は

「40%近くの患者が5年以内に再発する可能性があるという事実を、
医師や患者が受け入れられるのかどうかは疑問だ」と話す。

また、「抗菌薬は60〜70%の確率で急性虫垂炎を効果的に治療できるが、

効果が得られずに手術が必要になる可能性もあることを患者は理解しておくべきだ」と付け加えている。

 急性虫垂炎に対する抗菌薬治療への一般の関心は高まりつつあるが、
Glatter氏は「今回の試験で対象から除外された虫垂結石を伴う患者など、
よりリスクが高い患者群についても抗菌薬治療の有効性を検証する必要がある」と述べている。

さらに、同氏は、抗菌薬治療では院内での3日間の静脈注射に加えて、
経口薬を7日間服用する必要があったのに対し、

腹腔鏡下虫垂切除術では術後の入院期間がたった1日だったことも指摘している。

その上で、「急性虫垂炎の治療を手術ではなく抗菌薬で始めるという決断を下す際には、
医師と患者、その家族が十分に話し合う必要がある」と同氏は話している。

 なお、米ノースダコタ大学による最近の調査では、
もし自分が急性虫垂炎になったら手術と抗菌薬治療のどちらを選ぶかという問いに対し、
米国人の圧倒的多数が手術を選び、抗菌薬治療を選択した回答者は10人中1人に過ぎなかったことが報告されている。
[2018年9月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay.

原著論文はこちら
Salminen P, et al. JAMA. 2018; 320: 1259-1265.

2018年11月02日

意外な結果!短期死亡率とは不適切な抗菌薬選択は関連しない 長期予後に関連する

意外な結果!短期死亡率とは不適切な抗菌薬選択は関連しない 長期予後に関連するとは
菌血症に対する不適切な経験的抗菌薬治療(EAT)とは関連しないことが報告されている転帰はどれか。
「SmartestDoc米国版」より出題
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正解は「短期死亡率」。

デンマーク・コペンハーゲン近郊で
2007〜2008年に菌血症により入院した患者6,483例を対象に、

経験的抗菌薬治療(EAT)と
1年以内の再発、
短期死亡率(2〜30日以内)、
長期死亡率(31〜365日)

との関連を調べた観察研究によると、
対象患者のうち3,778例(58%)が適切なEATを受け、
1,290例(20%)が不適切なEATを受けており、
残る1,415例(22%)は不明であり、

解析の結果、
不適切なEATは再発(ハザード比=1.25、95%CI 1.03〜1.52)
および長期死亡率(同1.35、1.10〜1.60)と独立して関連したが、
短期死亡率とは関連しなかった(同0.85、0.70〜1.02)ことが報告されている。
Gradel KO, et al. BMC Infect Dis. 2017 Feb 6;17(1):122.
「SmartestDoc米国版」より出題

2018年11月01日

禁煙後の体重増加の影響 体重増加にかかわらず20年死亡率は低かった

禁煙後の体重増加の影響
体重増加にかかわらず20年死亡率は低かった

Effect of Post?Smoking Cessation Weight Gain
October 1, 2018

禁煙後の体重増加は糖尿病の過剰リスクに関連したが、
体重増加にかかわらず20年死亡率は低かった。
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禁煙後の体重増加は、禁煙による利益をいくらか減少させるか? 

この問いについて検討するため研究者らは、
数十年に及ぶ前向き健康調査に参加した米国の医療従事者約160,000人から得たデータを用いた。

平均で20年間の追跡中、
糖尿病と新たに診断された割合は、
禁煙した人のほうが、喫煙を継続した人よりも有意に高かった。

このような糖尿病の高い発症率は、
主に体重増加が5 kgを超える禁煙者でみられ、
禁煙後5〜7年が発症のピークであった。

しかし、禁煙した人では、
喫煙を継続した人よりも追跡期間中の心血管
(cardiovascular:CV)関連死亡率と全死因死亡率が低く、
この禁煙者での低い死亡率は、
体重が相当に増加した人でも認められた。

Hu Y et al. Smoking cessation, weight change, type 2 diabetes, and mortality. N Engl J Med 2018 Aug 16; 379:623. (https://doi.org/10.1056/NEJMoa1803626)

2018年10月31日

自分で貼るワクチンでインフル予防接種が可能に?

自分で貼るワクチンでインフル予防接種が可能に?
提供元:HealthDay News 公開日:2018/10/02
(日本以外、予防接種は筋肉注射です)
スクリーンショット 2018-10-27 6.53.52.jpg

 インフルエンザの予防接種で病院を受診すると
鼻水をすすり、くしゃみをする患者で溢れかえった待合室で
呼ばれるのを待たなければならない。

しかし、
代わりにパッチ型のインフルエンザワクチンを自宅に郵送してもらい、
自分でワクチンを接種できる日は近く実現するかもしれない−。

米感染症研究所のDarrick Carter氏らは、
そのようなコンセプトで微小な針を備えた絆創膏状のワクチンを開発し、
その予備的な臨床試験の結果を「Science Advances」9月12日号に報告した。

 Carter氏らは今回、病院を受診しなくても自分で接種できるように、
パッチ型の新たなインフルエンザワクチンを開発した。

このパッチはマイクロニードルと呼ばれるごく微小の針を備え、
これを通してワクチンが接種される仕組みになっている。

同氏によれば、
かすり傷や浅い傷を負うと皮膚表面の免疫システムが反応するメカニズムを応用することで、
筋肉注射が不要となった。

また、ワクチン抗原には、
別の企業から提供されたウイルス様の粒子を産生するように
リプログラミングされた植物細胞を用いたという。

 さらに、Carter氏らは、
今回のワクチンに使用した効果増強のために添加されるアジュバントの液状製剤を、
ワクチンとともにフェレットに投与する実験を行った。

その結果、
1回のワクチン投与で
フェレットを完全にインフルエンザ感染から守ることができたとしている。

 このパッチ型ワクチンの安全性を検証するために
100人の健康な成人を対象に実施した臨床試験では、
ワクチンの重大な副作用は認められず安全性が確認された。

また、この臨床試験はヒトにおける有効性の検証を目的としたものではなかったが、
ワクチン接種群では非接種群と比べてより強い免疫応答が示されたことが分かった。

 以上の結果を受けてCarter氏らは
「このワクチンであれば郵送することもできるため、
使用者は自分で皮膚に貼ってインフルエンザの感染から身を守ることができるだろう」
と説明している。

この臨床試験は概念実証試験の段階であるため、
同氏らは今後、ヒトを対象に次の段階の臨床試験に進みたいとしている。

同氏によれば、全ての臨床試験がうまくいけば5年以内にもワクチンは承認される可能性があると展望している。

 この試験には関与していない米ボゲス医療センターのDavid Davenport氏は、今回の報告を受けて
「このワクチンは“ゲーム・チェンジャー”になるかもしれない」と期待を示す。

同氏によれば、
ニワトリの卵を用いた現行の手法はワクチンの大規模な製造には不向きだが、
植物ベースであれば3カ月以内に大量生産することも可能だという。

また、Carter氏らが開発したワクチンは郵送も可能で自分で接種できることから、
「接種率の向上にもつながる可能性がある」と話している。

 なお、米疾病対策センター(CDC)の推計によると、
米国で季節性インフルエンザの予防接種を毎年受けているのは国民の半数以下とみられている。
〔10月2日 記事の一部を修正いたしました〕

[2018年9月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.

原著論文はこちら
Carter D, et al. Sci Adv. 2018 Sep 12. [Epub ahead of print]

2018年10月30日

基礎科学が基盤 研究費を30年削った日本の将来に危惧!

基礎科学が基盤 研究費を30年削った日本の将来に危惧!

ノーベル賞受賞、がん治療を劇変させたPD-1とCTLA-4
提供元:ケアネット 公開日:2018/10/03

 2018年のノーベル医学・生理学賞を、
京都大学高等研究院特別教授のスクリーンショット 2018-10-27 6.45.06.png
氏と
MDアンダーソンがんセンター教授のJames P. Allison氏が共同受賞することが決まった。

両氏はともにがんに対する免疫応答の制御に関連するタンパク質を発見し、
がん免疫療法の近年の急速な進歩に寄与したことが受賞理由となっている。

本稿では、ノーベル財団のプレスリリースから、2人の研究の足跡を紹介する。

ほぼ同時期に、2つの発見

 1992年、本庶氏ら京都大学の研究者が、
T細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子として
PD-1(Programmed cell death 1)を発見。

その機能が明らかになるまでには時間を要したが、
1998年、マウスによる実験でPD-1がT細胞のブレーキとして機能し、
その働きを制御していることが明らかとなった。

その後に続く同氏らおよび他の研究グループによる動物実験の結果、
PD-1に結合してT細胞の活性化を抑制する PD-L1やPD-L2との結合をブロックする
抗PD-1抗体が、がんとの戦いにおいて有望な戦略であることが示された。

 2012年には、
非小細胞肺がん(NSCLC)、悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)といった複数のがん腫における
抗 PD-1抗体ニボルマブの臨床試験結果が発表され、
その結果は全生存期間および奏効率の双方で
臨床的に大きく改善するものであった。

 一方、カリフォルニア大学バークレー校の研究所では、
Allison氏が同じくT細胞のブレーキとして機能する
細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を研究していた。

彼は、CTLA-4の阻害がT細胞ブレーキを解除し、免疫細胞の抑制を解くことで、
がん細胞を攻撃できる可能性があるのではないかと考えていた。

 そして1994年の年末、
マウスを使った最初の実験を行い、
抗CTLA-4抗体による治療で、腫瘍を持つマウスが治癒することが確認された。

当初、製薬業界の関心が向けられることはほとんどなかったが、
間もなくして、いくつかの研究グループから有望な結果がもたらされるようになった。

2010年には重要な臨床試験結果が発表され、
悪性黒色腫の患者に対し、抗CTLA-4抗体イピリムマブが顕著な効果を示した。

 PD-1とCTLA-4は同様にT細胞のブレーキとして機能するが、
その作用機構は異なる。
 
がん治療を根本的に変えた

 現在、多くのがん腫において多数の臨床試験が進行中であり、
ニボルマブとイピリムマブ以外の
新たな免疫チェックポイント阻害薬による治療法の開発も進んでいる。

また、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用療法がさらに効果的である可能性も、
悪性黒色腫に対する臨床試験によって示されている。

 100年以上もの間、
多くの研究者ががんとの闘いに免疫システムを結び付けようとしてきたものの、
その臨床的進歩はほとんどみられなかった。

しかし、2人の受賞者による発見の後、
治療法の開発とその成果は劇的なものだった。

免疫チェックポイント阻害薬による治療はがん治療に革命をもたらし、
がんの管理方法を根本的に変えるものであった。

2018年10月29日

忘れてませんか?間仕切りカーテン感染対策 耐性菌の温床となる可能性も

忘れてませんか?間仕切りカーテン感染対策
耐性菌の温床となる可能性も
 
10〜14日でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA陽性が増加
2018年10月04日 10:06
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 医療機関では、感染源となりうる設備や医療機器、医療従事者への院内感染対策が講じられている。
カナダ・University of ManitobaのKevin Shek氏らは、
患者のプライバシーを保護するための間仕切りカーテン(プライバシーカーテン)も
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の温床となりうることから、
防御策を実施しなければ安全性が脅かされる可能性があると
Am J Infect Control(2018; 46: 1019-1021)で注意を喚起した。

清掃予算の削減による影響か

 病棟患者のベッドを取り囲むプライバシーカーテンは、
次のような理由から交差汚染のリスクが高いとされている。

@頻繁に触れられる
Aクリーニングまたは交換する頻度が低い
Bプライバシーカーテンに触れた後に手指を消毒する頻度が低い―など。

 Shek氏らが行った横断研究によると、
プライバシーカーテンの細菌汚染は平均13.3/CFU cm2であり、
プライバシーカーテンの31%がMRSAを繁殖させていたという
(J Hosp Infect 2017; 96: 54-58)。

その背景として、清掃予算はカナダ全土で削減方向にある。
そのため同氏らは、
カーテンクリーニングまたは交換する適切なプロトコルを作成する上で、
MRSAを含む細菌による汚染の割合とその程度を把握することの重要性を指摘している。

対照群ではMRSAは検出されず

 Shek氏らは、
同国マニトバ州のHealth Sciences Center熱傷・形成ユニットにおいて、
クリーニングされた10枚のプライバシーカーテン(生地は綿・ポリエステル混紡)を追跡し、
細菌汚染率とその程度を調べた。

 対象となったプライバシーカーテンのうち、
8枚はベッドの周囲をプライバシーカーテンで仕切る部屋に配置され、
ベッドから約30cmの間隔を空けてつり下げられた。

また2枚は対照として、
患者または介護者が直接触れられない場所につり下げる部屋に配置された。

なお、プライバシーカーテンを使用したいずれの患者(10例)も
ベースライン時にMRSAは検出されなかった。

 細菌検査は、各カーテンの2カ所(患者に面する側で、肩の高さの上下)に
Neutralizing Agar Rodac Contact Platesを30秒間押し付けて、
初日、3日目、7日目、10日目、14日目、17日目、21日目に菌をサンプリングした。

カーテンに汚れが目立った場合はその都度取り替えた。

 初日に細菌が検出されたカーテンにおける平均細菌数は
試験群が0.20 CFU/cm2、
対照群が0.10 CFU/cm2
といずれも最小であったが、

21日目にはそれぞれ
5.11 CFU/cm2、
0.60 CFU/cm2
と増加していた。

試験群における平均細菌数の変曲点を見たところ、
17〜21日(平均1.86〜5.11 CFU/cm2)であった。

 さらにMRSAは試験群で3日目に1件が陽性と判定され、
14日目には5件(62.5%)に増加、
21日目には7件(85%)に増えた。

一方、対照群ではMRSAは検出されなかった。

10〜14日でMRSA陽性が増加

 以上の結果から、
Shek氏らは「病室のプライバシーカーテンは、つり下げてから10〜14日の間に
MRSA陽性に転じたことを踏まえると、
このタイミングでカーテンを清掃するまたは新しいものと交換する
ことが適切と考えられる」と結論した。

 また米国感染管理疫学専門家協会(APIC) 2018で会長を務めたJanet Hass氏は、
患者の治療環境を清潔に保つことは院内感染の予防に不可欠であると指摘。「

プライバシーカーテンは感染拡大経路の1つのになりうることから、
定期的な院内清掃を行うことが防御策となる」と述べている。
(田上玲子)

2018年10月27日

心臓の周りの脂肪が減ると死亡が減る

心臓の周りの脂肪が減ると死亡が減る!?:
“imaging biomarker(画像診断から得られる指標)”としての新しい冠動脈CT検査(CTCA)の使い方
提供元:臨床研究適正評価教育機構 公開日:2018/10/03企画協力 J-CLEAR
コメンテーター 中野 明彦( なかの あきひこ ) 氏
群馬県済生会前橋病院 循環器内科 代表部長

冠動脈炎を非侵襲的に検出する新バイオマーカー/Lancet(2018/09/10掲載)
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 CTCAは装置がどんどん多列化し解析プログラムも多様化し、
その診断精度は向上、臨床応用の範囲は広がり患者さんにも優しい検査へと日進月歩で進化しています。

しかし、評価対象の中心が冠動脈の内腔(狭窄度)あるいはプラークであることに変わりはありません。

また「中等度リスクを有する症候性症例、
あるいは急性冠症候群(ACS)を疑う胸痛については
ECG/enzyme(心電図上の変化,CK(CPK)AST(GOT)LDHなどの逸脱酵素)変動のない低〜中等度リスクの症例」を適応とする
現行のガイドラインがCTCAに期待しているのは、
高度狭窄性病変の有無を判定し“今”を切り取ることでしょう。

【CTCAでの予後予測は?】

 冠動脈病変を有する患者の予後を左右するのは、
言うまでもなく急性冠動脈症候群
(ACS:狭心症、急性心筋梗塞)の発症です。

そして「命運を決するのは狭窄度ではなく
プラークの性状」だということもわかってきています。

最近はCTCAから得られたプラークで“将来”を予測できるか、
という検証結果が集積されつつあります。

メタ解析では微小石灰化・低吸収プラーク・陽性リモデリング・ナプキンリングサインで
定義されるhigh risk plaque(=不安定プラーク)と
ACS発症との強い関連が示されました。

【CRISP CT studyの描く新機軸】

 一方20年も前から、
(冠)動脈硬化は炎症性疾患であり、
その炎症がACSの引き金となるプラーク破綻を惹起する、
と指摘されています。

つまりCTCAで検証されている不安定プラークは
現在進行中の炎症の「結果」を見ていることになります。

これまで炎症のbiomarkerとして
高感度CRPや一部のサイトカインが報告されていますが、
冠動脈硬化に特異的ではなく、
ましてや炎症の局在などわかるはずもありません。

 では、その炎症が可視化・定量化できるとしたらどうでしょう。

 本研究ではin vitro・ex vivo・in vivoで実証された

「血管の炎症が周囲のpreadipocyteの分化・成熟を抑制し、adipocyteの脂肪含有量を減少させる」

という事実から、
これまで見向きもされなかった冠動脈の『外側』に着目したのです。

通常のプロトコルで撮像されたCTCAを用いて
主要冠動脈近位部でのfat attenuation index(FAI)を算出し、
炎症のサロゲートマーカーとしました。

 3枝間のFAI相関が良好だったため右冠動脈のFAIを中心に解析、
4.5〜6年間の予後(総死亡・心臓死)との関連
が証明されただけでなく、

FAIはさらに、古典的冠危険因子・高感度CRP・冠動脈石灰化・high risk plaqueなどとは
独立した予後予測因子でした。

【CRISP CT studyの歯応え】

 ACSの半数は狭窄度50%以下の「病変」から発症すると言われており、

したがって冠動脈造影やCTCAでの狭窄度評価からその発症予測は困難です。

50%以上の狭窄性病変の有無にかかわらず
FAI陽性(cut off値≧−70.1HU)例で心臓死に高いハザード比を示した本試験は、
図らずしもそれを裏付けました。

たとえ有意な冠動脈病変がなくてもaggressive preventionが必要な症例があり、
imaging biomarkerとしてのFAIはその層別化に有用な可能性があります。

 本試験は炎症局所でのイベント発生を予測するものではありません。

むしろ、3枝のFAIが良好に相関していた事から考えれば、
冠疾患症例は冠動脈全体に炎症(pan-vasculitis;全身性血管炎)が生じうる
vulnerable patient(傷つきやすい患者)として捉えるべきなのかもしれません。

 もちろん、今後の検証が必要な課題もあります。

 たとえば、炎症の強い局所でイベントが起こりやすいのかどうか、
それを予測できるのかどうか。

 あるいは薬剤の介入がどう反映されるのか。

折しもPCSK-9阻害薬や抗IL-1βモノクローナル抗体など強力かつ高価な抗動脈硬化薬が登場し、
residual riskをどうコントロール(狭心症・心筋梗塞再発予防)するかに注目が集まっています。

imaging biomarkerがこうした薬剤の効果判定、on-offのタイミングの見極めに役立つかもしれません。

 さらに日常臨床をそのまま当てはめた本研究の解析対象は、

50%狭窄以上が14〜15%、
観察期間内の心臓死が1〜2%と結果的にはリスクの高くない症例群でした。

これがガイドラインに下支えされたCTCAの現状かもしれませんが、
もっとリスクの高い症例、あるいは無症候性の1次予防群だったらどうなのでしょうか?

今後の研究が待たれます。

 これまでimaging biomarkerの代表格はcoronary calcium score(CCS)でしたが、
残念ながらこれはirreversibleな指標です。

おそらくreversibleと考えられるFAIを使ったプロジェクトが順調に進んでいけば、
いつかガイドラインが変更される日が来るかもしれません。

2018年10月26日

禁煙は5年で効果あり!

禁煙は5年で効果あり!
「喫煙」が日本人労働者の「死亡率」に及ぼす影響
提供元:ケアネット 公開日:2018/09/28

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 わが国の職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study:J-ECOHスタディ)で、
労働人口における喫煙・禁煙の死亡率への影響を調べたところ、
喫煙が全死亡・心血管疾患(CVD)死亡・タバコ関連がん死亡のリスク増加と関連していた。

また、この死亡リスクは禁煙後5年で減少していた。
Circulation Journal誌オンライン版2018年9月12日号に掲載。

 本調査の対象は、J-ECOHスタディに参加した20〜85歳の日本人労働者7万9,114人で、
死亡診断書や病気休暇書類などから、
死亡および死亡原因を同定した。

ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰により推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・最大6年間の追跡期間中、252人が死亡した。

・現在喫煙者の非喫煙者に対する全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡の多変量補正HR(95%CI)は順に、

1.49(1.10〜2.01)、
1.79(0.99〜3.24)、
1.80(1.02〜3.19)であった。

・現在喫煙者では、全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡のリスクは、
タバコ消費量の増加に伴って増加した(傾向のp<0.05)。

・過去喫煙者の非喫煙者に対する全死亡のHR(95%CI)は、ベースラインまでの

禁煙期間が5年未満で1.80(1.00〜3.25)、
5年以上で1.02(0.57〜1.82)であった。

(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Akter S, et al. Circ J. 2018 Sep 12. [Epub ahead of print]
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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