2018年11月05日
起こりがちな患者との思いの“ズレ
起こりがちな患者との思いの“ズレ
【患者コミュニケーション塾】
公開日:2017/01/20 企画・制作 ケアネット
「録音していいですか?」と聞く患者の真意とは!
今回から連載コラム「患者コミュニケーション塾」を執筆することになりました
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子と申します。
これまでに経験してきた全国の患者さんからの相談内容を踏まえて、
患者さんと医療者がよりよい関係を構築していくためのヒントとなるような
さまざまな事例を紹介してまいります。
どのような場合でも、立場が違えば同じ事柄でも捉え方が異なりがちです。
とくに医療現場では患者と医師の思いのズレが起こりやすいと感じています。
最近、病院の院内研修会での講演に招かれた際、
医師からよく受ける質問として
「患者さんに説明しようとしたら、
『録音していいですか?』と言う人が増えてきました。
これは認めないといけないと思いますか?」という内容があります。
「説明内容を録音されると証拠を取られているようで、
話に制約がかかる」、
「揚げ足を取られないように非常に気を遣う」
と医師の方々は言います。
私もこれまで患者さんから電話相談を受けるなかで、
相談終了時になって「今の相談のやりとりを録音していたのですが、家族に聞かせていいですか?」
と言われたことが何度かあります。
最初に「録音していいですか?」と言い出しにくいために、
終了間際に言ったのだろうと頭では理解できるものの、
正直なところ「後から言われてもなぁ…」という気持ちは生じますので、
医師の方々が抵抗を覚える気持ちもわかります。
でも、まだ「言ってくださるだけありがたい」と考え、
今ではどの相談でも録音されていることを気持ちの上では前提にして対応するようにしています。
患者が録音したい理由は「証拠を取るため」ではない
ところが、患者側にしてみると、
録音したい理由は必ずしも「証拠を取るため」ではないのです。
電話相談で「医師の説明を録音してもいいでしょうか?」と聞かれることがあります。
その際、理由を問うと、ほとんどの場合「1回聞いただけでは理解できないので、
何度も聞き直したい」
「説明の場に同席できない家族に同じ内容の説明を聞かせたい」
ということなのです。
おそらく、証拠を取りたくて録音する人は、
胸のポケットなどにICレコーダーやスマートフォンをしのばせてこっそり録音するでしょう。
最近の機器は性能が良いので、机上に置かなくても小さな音声まで拾ってくれます。
そう考えると、あらかじめ録音の是非を問う人は、何らかの理由があるはずなのです。
そのため、患者が録音を希望した際には、「何のためですか?」と確認していただくと、
このようなズレが生じることもなくなるのではないかと思います。
かつて大きな誤解があった「セカンドオピニオン」も今や当たり前に
最近では患者、医師共に随分抵抗がなくなってきたセカンドオピニオンに関しても、
思いのズレがありました。
患者が「セカンドオピニオンを求めたい」と望むと、
かつては「この患者は私に不信感を抱いているのか」と受け止める医師が少なからずいました。
でも、患者としては治療を受ける大きな決断をするときに、
もう1人専門家の意見を聞いて「確認したい」というのが本音です。
今では、セカンドオピニオンは患者の当然の権利と考える医師や、
「セカンドオピニオンを受けてもらったほうが私への信頼を厚くして戻って来る」
と言う医師まで登場しました。
もちろん、時代の変化が後押ししている部分は大きいでしょう。
でも、患者の要求や行動の理由を理解することができれば、物事は前向きに捉えられるのだと思います。
どのようなときに思いのズレが生じるのか、
患者と医師がもう一歩踏み込んだコミュニケーションを取ることによって、
お互いの本音が出し合え、お互いの理解につながると思います。
山口 育子 ( やまぐち いくこ ) 氏
認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML理事長
[略歴]
大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的医療への必要性を痛感していた1991年11月COMLと出会う。
活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとなり、
相談、編集、渉外などを担当。
2002年4月に法人化したNPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの専務理事兼事務局長を経て、
2011年8月理事長に就任。
著書に『賢い患者』(岩波新書)。
【患者コミュニケーション塾】
公開日:2017/01/20 企画・制作 ケアネット
「録音していいですか?」と聞く患者の真意とは!
今回から連載コラム「患者コミュニケーション塾」を執筆することになりました
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子と申します。
これまでに経験してきた全国の患者さんからの相談内容を踏まえて、
患者さんと医療者がよりよい関係を構築していくためのヒントとなるような
さまざまな事例を紹介してまいります。
どのような場合でも、立場が違えば同じ事柄でも捉え方が異なりがちです。
とくに医療現場では患者と医師の思いのズレが起こりやすいと感じています。
最近、病院の院内研修会での講演に招かれた際、
医師からよく受ける質問として
「患者さんに説明しようとしたら、
『録音していいですか?』と言う人が増えてきました。
これは認めないといけないと思いますか?」という内容があります。
「説明内容を録音されると証拠を取られているようで、
話に制約がかかる」、
「揚げ足を取られないように非常に気を遣う」
と医師の方々は言います。
私もこれまで患者さんから電話相談を受けるなかで、
相談終了時になって「今の相談のやりとりを録音していたのですが、家族に聞かせていいですか?」
と言われたことが何度かあります。
最初に「録音していいですか?」と言い出しにくいために、
終了間際に言ったのだろうと頭では理解できるものの、
正直なところ「後から言われてもなぁ…」という気持ちは生じますので、
医師の方々が抵抗を覚える気持ちもわかります。
でも、まだ「言ってくださるだけありがたい」と考え、
今ではどの相談でも録音されていることを気持ちの上では前提にして対応するようにしています。
患者が録音したい理由は「証拠を取るため」ではない
ところが、患者側にしてみると、
録音したい理由は必ずしも「証拠を取るため」ではないのです。
電話相談で「医師の説明を録音してもいいでしょうか?」と聞かれることがあります。
その際、理由を問うと、ほとんどの場合「1回聞いただけでは理解できないので、
何度も聞き直したい」
「説明の場に同席できない家族に同じ内容の説明を聞かせたい」
ということなのです。
おそらく、証拠を取りたくて録音する人は、
胸のポケットなどにICレコーダーやスマートフォンをしのばせてこっそり録音するでしょう。
最近の機器は性能が良いので、机上に置かなくても小さな音声まで拾ってくれます。
そう考えると、あらかじめ録音の是非を問う人は、何らかの理由があるはずなのです。
そのため、患者が録音を希望した際には、「何のためですか?」と確認していただくと、
このようなズレが生じることもなくなるのではないかと思います。
かつて大きな誤解があった「セカンドオピニオン」も今や当たり前に
最近では患者、医師共に随分抵抗がなくなってきたセカンドオピニオンに関しても、
思いのズレがありました。
患者が「セカンドオピニオンを求めたい」と望むと、
かつては「この患者は私に不信感を抱いているのか」と受け止める医師が少なからずいました。
でも、患者としては治療を受ける大きな決断をするときに、
もう1人専門家の意見を聞いて「確認したい」というのが本音です。
今では、セカンドオピニオンは患者の当然の権利と考える医師や、
「セカンドオピニオンを受けてもらったほうが私への信頼を厚くして戻って来る」
と言う医師まで登場しました。
もちろん、時代の変化が後押ししている部分は大きいでしょう。
でも、患者の要求や行動の理由を理解することができれば、物事は前向きに捉えられるのだと思います。
どのようなときに思いのズレが生じるのか、
患者と医師がもう一歩踏み込んだコミュニケーションを取ることによって、
お互いの本音が出し合え、お互いの理解につながると思います。
山口 育子 ( やまぐち いくこ ) 氏
認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML理事長
[略歴]
大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的医療への必要性を痛感していた1991年11月COMLと出会う。
活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとなり、
相談、編集、渉外などを担当。
2002年4月に法人化したNPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの専務理事兼事務局長を経て、
2011年8月理事長に就任。
著書に『賢い患者』(岩波新書)。
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