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2015年08月10日
本紹介 No. 035『インド古代史』
『インド古代史』
以前、中村先生の『古代インド』を読みました。
他の視点からもインド古代史を見てみたいという気になりこの本を読んでみました。
コーサンビー 著 『インド古代史』(岩波書店 1966)
箱入り本なのでこれは箱の表紙です。
構成
B6版、箱入り、本文=337ページ、モノクロ図版26図
構成は以下の通り。
日本語版への序
序
第一章 歴史的省察
第二章 原始的生活と先史学
第三章 最初の都市
第四章 アーリヤ人
第五章 部族社会から階級社会へ
第六章 大マガダにおける国家と宗教
第七章 封建制へ
訳者あとがき
コーサンビー氏のインド史に関する著作
索引
内容
訳者あとがきによるとコーサンビー氏は世界的な数学者であり、また、統計学・サンスクリット文献学・歴史学・貨幣学・考古学・民俗学といった多方面でそれぞれ一流の研究をなしとげたインド人研究者ということです。
本書において広汎な知識・研究とともに論理的思考によるインド古代史の再構築が見られます。
それら再構築されたインド古代史が史実であるかどうかはその時点で論理的帰結として示された仮説に対してその後矛盾となる証拠が現れないことですが、訳者あとがきに「もしかれが長く生きていたならば、本書に見える説は多く書き改められるであろう。」とあり、、、どこまで内容を是としてよいか不安がありますが・・・
本書第一章 歴史的省察ではインド古代史を明らかにしようとする上での問題点と著者が用いた方法論を示し、また、本書での目的を「インドにおける文化の起源と発生の主要な特徴を追求することである。」と定めている。
第二章 原始的生活と先史学ではインドの先史時代における先住民の生活を考古学的知見(遺物・遺跡)とともに民族学的知見(現代における先史時代生活の痕跡)により読み解くことを試みている。
第三章 最初の都市でインダス文明の遺跡からその特徴や社会構造について再構築を試み、エジプト文明やメソポタミア文明と比較している。
第四章 アーリヤ人ではインドに侵入しインダス文明を終焉に導いたと考えられるアーリヤ人の移動の歴史と民族的特徴・生活様式および宗教的基盤等について言及している。
第五章 部族社会から階級社会へにおいては仏教を含む諸宗教の興りとともに、仏教の中心教義を概説し、一方で、インド部族社会の特徴とカーストに代表される階級社会の成り立ちを概観している。
第六章 大マガダにおける国家と宗教ではマガダ国の強大な軍事力を背景とした絶対君主制国家からマウリヤ王朝への拡大の歴史と『アルタシャーストラ(実利論)』およびアショーカ王の法政について述べている。
最後に第七章 封建制へでマウリヤ王朝崩壊後から封建制への移行と仏教の展開についてとサンスクリット文学についてまとめている。
以上、各章の内容のほんの一部を紹介しましたが、各章の内容を短くまとめることに意味があるかどうかが不明なほどの博覧強記、縦横無尽の知識と研究の集成であり、膨大な知識の波を感じました。
一方で、十分に確からしいと思われる思索の結果が見られますが、その根拠(物証や論拠)が明確ではない場合も少なくないので、類書との比較検討の必要がある。
中村先生の『古代インド』をさらに掘り下げて理解できることを期待して本書を読んだが、結果としてはさらに広範囲の事象を見ることになり、インドやインドの歴史、インドの宗教に対する知識や認識が不十分であることが十分に理解されることとなった。
曼荼羅作画とのかかわり
曼荼羅作画をする上で、仏教的尊格とともにヴェーダや土着の神々の存在についてもその意味合いを理解しておく必要があると考える。
梵天や帝釈天、那羅延天や自在天など多くの神々の存在をなくしては密教的、曼荼羅的広がりを理解できないと思っている。
『インド古代史』を読み解くことによって、仏教の尊格とともにバラモン教・ヒンドゥー教と土着の神々の起源と変遷を理解する一助となったと思う。
まだ全くの不十分・不完全だが進む方向と広がりを漠然とでも感じることができたと思っている。
では、また〜ヾ(。・ω・。)ノ