2015年03月29日
本紹介 No. 005 『密教とマンダラ』
『密教とマンダラ』
前々回の本紹介で頼富本宏氏監修の『京都東寺秘蔵 曼荼羅の美と仏』の紹介をしました。
頼富本宏氏の解説が読みやすかったので、密教と曼荼羅のことをもう少し具体的に理解できるのではないかと期待して次の本を読んでみました
頼富本宏 著 『密教とマンダラ』(NHK出版、2003)
構成
文庫本サイズ、253ページ、構成は6章からなり以下の通り。
第I章 秘められた万華鏡的世界
第U章 密教の流伝
第V章 広がる密教の宇宙
第W章 マンダラとは何か
第X章 華麗なるマンダラのほとけたち
第Y章 現代と密教的宇宙
巻末に
「密教史略年表」
「密教流伝の道すじ(地図)」
「参考文献」
を掲載。
内容
話の流れとしては、
第I章で密教と現代社会との接点をみつめ、また、密教を狭義・中義・広義の3レベルにわけてそれぞれを概説している。
第U章では、インド、中国、チベット、日本、シルクロード、朝鮮半島、東南アジアの密教の歴史を概観している。
第V章で密教の教えを教理と教判にわけ空海の著作を中心に解説する。また、密教の実践として、修法と護摩、加行と灌頂、阿字観と遍路の概略を示し、続いて、「日本文化の地下水」とのタイトルで、密教と関わりの深い文学、声明、梵字について述べている。最期に、密教のほとけたちについて概観し、曼荼羅を除く代表的な密教美術として絵画・彫刻・宝具を紹介している。
というわけで、前半が密教についてであり、第W章からいよいよ曼荼羅についてのおはなしです。
第W章では曼荼羅の意味、分類、形、色、構造について総論的に概観しています。
第X章では各論として、各種曼荼羅の意味、思想やほとけの種類について解説し、日本の曼荼羅を 1.両部・両界マンダラ、2.別尊マンダラ、3.神道マンダラ、4.浄土マンダラの4種類に分類、さらにそれぞれを細かく分類して解説を加えている。その他、インド、中国、敦煌、チベットなどアジアのマンダラについても紹介しています。
第Y章では密教の特徴(総合性、宇宙性、芸術性、体験性)から密教の現代社会への貢献手法を検討しています。ここでは特に総合性の解説中にみられる『十住心論』の概説が興味深い。
とまあ、こんな具合になってまして、
各章を読みながら、現在と歴史的な流れの中での仏教および密教を理解したいと思い、また、お寺がたくさん紹介されていて行ってみたくなったり、空海の著作を読んでみたいとか、密教の視点から日本の古典文学をもう一度読みたいとか、梵字に対する理解を深めたいとか、もっと密教美術を見てみたいとか、・・・等々思いました。
本書は全体として密教と曼荼羅の紹介本としての役割が強いと感じました。
ややもすれば古色蒼然たる特別な存在となりがちな「密教」というシステムを現代社会にどう役立てていくのか?という視点が大切なのだと伝えたいのだと思います。
気になった点としては、いろいろな立場からいくつもの発言をできるだけ簡単にしなくてはならない難しさもあるでしょうが、著者の立ち位置がちょっとわかりにくい。
ある時は先導者として、ある時は研究者として、ある時は広報者、ある時は密教僧・・・とそれぞれの立場から見える視点が異なりそれぞれを同一平面上で表現するものだから読んでいる方も視点があっち行ったりこっち行ったりで定まらない。
時に著者の考えを表現するのに熱心なあまりに冒頭に示された目的と直接には無関係な結論を迎えることがあったり。と辛口になってしまいましたが、著者の深淵なる配慮を理解しないダメ読者の思慮不足のせいだと思いますので聞き流してください。
あと、図は少ないです。カラー図版はありません。似たような図が二つあったり、文中に示されている内容に関する図が全くなかったり、図があったとしても文中で参照されていなかったり、図が何のためにあるのか明示されていなかったりと・・・図はおまけ程度に考えていた方が心穏やかに読み進められます。
曼荼羅作成とのかかわり
さて、本書を読んでみて曼荼羅作成においても、曼荼羅や密教・仏教の学習についてもいくつものヒントと疑問点を得ました。
これまで主に曼荼羅を中心に考えてきましたが、曼荼羅の思想的背景である密教について、また、さらに密教を含めた仏教全体の理解を深めなければという思いが募りました。
そしてぼんやりとながらも今やっていることの着地点が見えてきたような気がしました。
では、また〜ヾ(。・ω・。)ノ
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