2015年06月03日
本紹介 No. 018 石元泰博 写真『曼荼羅』
石元泰博 写真『曼荼羅』
石元泰博 写真 『曼荼羅』(西武美術館 1976)
はあ 表紙だけでもうため息しかでない。すばらしい
表紙に一切の文字を排したデザインは秀逸。
構成
縦 24.5 cm x 横 25.5、左開き横書き、ソフトカバー、120ページ、黒地白文字、カラー写真12ページ、白黒写真57ページ
構成は以下の通り。
序文 鷲尾隆輝
時空への投華を 瀧口修造
東寺の国宝両界曼荼羅 柳澤 孝
【胎蔵界曼荼羅写真】
胎蔵界曼荼羅解説
真言密教と曼荼羅 微細と極大のエロス 眞鍋俊照
【金剛界曼荼羅写真】
金剛界曼荼羅解説
もっとも古く、もっとも新しい曼荼羅 眞鍋俊照
曼荼羅と私 眞鍋俊照
背後のアニマに肉薄する眼 磯崎 新
撮影の日々 小久保和夫
ノンセンスな映像体験としてのマンダラ 谷川晃一
図像の中で地球がまわっている 松岡正剛
[座談会]曼荼羅三昧 秋山光和
石元泰博
小久保和夫
岩橋政寛
錚々たる執筆陣ですね。
内容
これは1976年に西武美術館で開催された「石元泰博 写真 曼荼羅展」の図録です。
写真展図録なので、写真がメインだと思っていたのですが、開いてみると凄い執筆陣でちょっと驚きです。
それにしてもこの表紙が・・・すごい。
細部に肉薄するという意味では実物よりすごいんじゃないかとおもいます。ふつうこういうふうには見えないでしょう。写真の底知れないちからを感じます。
瀧口修造氏の論はさすがに一時代を築いた文章力です。願わくば美術評論とはかくあるべしと思われる高潔、高明な文体。1979年に75歳で亡くなられたとのことでその人柄が偲ばれます。
次に柳澤孝氏が「西院本の系譜をめぐってかなり大胆な仮説を提示」(原文引用)してますが、何箇所か根拠や論を端折っているのでどこかに完全な論文ってあるんやろか?『柳澤孝仏教絵画史論集』に載っているのかな?
胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅の解説は・・・なにかの文章をぶつ切りにしているようだけど、いろいろ破綻していて何が何だかもうわからない。向上門と向下門の解説と図が逆だったり、同じことを何度も書いていたり、観法の解説もなんかあれだし、金剛牙菩薩が抜けていたり・・・古書で買ったから訂正紙があったかどうかわからないけど、こういうところで情報の信頼性に不安がでます。写真は最高なのに解説がこれではやりきれない。
眞鍋俊照氏の「もっとも古く、もっとも新しい曼荼羅」は白黒写真の番号に対応して、胎蔵界曼荼羅外金剛部院の非想天から順に絵解きをしています。むかしがたり冒険譚風の絵解きでそれぞれの尊像に豊かな感性が宿る。
建築家の磯崎新氏の石元泰博評はそれはもういちいち納得するばかりで、さすがは現代を代表する建築家のひとり、洞察力も表現力も並大抵ではない。
座談会では美術史家の秋山光和氏が石元氏が伝真言院両界曼荼羅を撮影できたのは「希有な現代の幸いだ」とおっしゃっておりますが、誠にその通りだと思います。これほどの奇跡があるだろうか、それに肖れることに大きな幸せを感じます。
最後に全体を見渡してみてはまさに玉石混淆の趣で、感心しきりのものもあれば、矛盾や論理の破綻に辟易するものもあり読むのに難儀しました。
しかし、写真は超一流で、どの一枚をとっても全くもって隙がない。ただし・・・誠に残念なことは、ほとんどの写真が白黒であったことで、これは残念至極にほかならない。
曼荼羅作画とのかかわり
石元泰博氏の写真がなければ西院本曼荼羅に興味を持たなかったかもしれない。あらためてその凄さに驚嘆するばかりです。
座談会での石元泰博氏の言葉のひとつひとつがなにか新しい発見へと導いてくれそうな気がします。
では、また〜ヾ(。・ω・。)ノ
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