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2016年02月04日

民事訴訟法 平成18年度第2問

設問1
1 主張(1)の意味
(1)主張(1)のうち「Xとの間で本件売買契約を締結したことは認める」という部分は裁判上の自白(179条)に当たるか検討する。
 裁判上の自白とは、訴訟における弁論としての事実の主張であって相手方の主張と一致しているものをいう。この裁判上の自白に当たると、T179条に基づく証明不要効のほか、U私的自治に基礎を置く弁論主義を根拠として裁判所の審判排除効、Vその審判排除効の必然的帰結として判決における判断拘束効、W当事者の主張の撤回制限効が生じると解されている。撤回制限効の根拠は争いがある。禁反言という説が一般的だが、他の訴訟行為の撤回は原則として自由であるのになぜ裁判上の自白だけ禁反言が要求されるのかが説明できず妥当でない。裁判上の自白は相手方の信頼を含めて訴訟における争点縮小機能を有し、この争点縮小機能を保護することが撤回制限効の根拠と解する。そのため、撤回制限効は当事者双方を拘束する。
 裁判上の自白はこのように強力な効果を及ぼすものであるから、要件は厳格に解さなければならない。要件は、@弁論としての主張であること、A事実の主張であること、B相手方の主張と一致していることと解する。この他に不利益性を要求する見解があるが、撤回制限効の根拠を争点縮小機能と解し、撤回制限効は両当事者を拘束するという自説からは、どちらかの当事者に不利益か否かは無関係だから要件とならないと解する。
 「Xとの間で本件売買契約を締結したことは認める」という陳述は@Bを満たす。Aについて、売買契約の締結は事実ではなく債権債務の発生原因の陳述であるからAを満たさないとも思える。しかし、このような自白であっても私的自治という根拠は当てはまり、請求の認諾(266条)さえも認められているのだから、事実の自白と同様に扱われるべきと解する。
 したがって、問題の部分は裁判上の自白に当たる。
(2)主張(1)のうち、契約締結後に……本件売買契約は錯誤により無効である」という部分は、相手方の主張と両立し、相手方の主張から生じる法的効果を妨げる意義を有するから抗弁である。
(3)したがって、主張(1)は、前半が裁判上の自白、後半が抗弁という訴訟上の意味を有する。
2 主張(2)について
 仮に主張(2)が真実であるとすると、本件売買契約上の実体法上の代金支払い義務を負っているのはYではなくZということになる。当事者適格(当事者として訴訟を追行し、判決の名宛人となる資格)は訴訟の結果について直接的に重要な法的利害関係を有する者に認められると考えられ、通常は売買契約においては契約に基づく実体法上の債権債務を負う者がこれに当たるから、主張(2)が真実であるならば、Yには当事者適格がない。その結果、Xの提起した訴訟は被告が存在しなくなり、明文なき訴訟係属の要件と解される二当事者対立構造を欠くため却下されることになる。
 そうすると、第1回口頭弁論期日に行われた主張(1)に基づく裁判上の自白は無意味になるから、撤回されたのと同様の効果を生じる。なお、主張(1)後半の抗弁の撤回は単なる主張の変更である。
3 (2)の主張の訴訟法上の問題点
 裁判上の自白には原則として前述のように争点縮小機能を根拠とした撤回制限効がある。例外的に撤回できるのは、1⃣自白が錯誤に基づき行われたこと、2⃣自白が刑事上罰すべき他人の行為によって行われたこと、3⃣相手方の同意があることに限られると解される。1⃣について、古い判例は自白内容が反真実であることが立証されれば錯誤であったことが推定されるとしているが、裁判上の自白の法的性質は意思表示と解されるから、実体法上の錯誤(民法95条)のみが要件となると解する。
 本件でも1⃣2⃣3⃣のいずれかの事情がなければ主張(2)は裁判上の自白の撤回制限効により排斥されるべきである。
設問2
 Zの主張はZの代表者であるYにより行われたものであるが、Yは以前にZの主張と事実上両立しない主張を行っているから、Yという同一人物による矛盾挙動と評価できる。このような主張の変更が許されるか問題となる。
 訴訟において主張の変更は自由である。その理由は、実体法上の私的自治の原則からすると、訴訟上で当事者が自己の権利を主張するか放棄するかは自由であり、相手方の出方によって態度を変えることもあり得るからである。設問1で検討した裁判上の自白は、このような主張変更の自由の例外である。
 本件は単なる主張の変更であり裁判上の自白に当たらない。したがって、裁判所はZの主張をそのまま採用すべきである。具体的には、Xに認否を尋ね、Xが争うのであれば主張の真偽を証拠を通じて明らかにすべきである(これは当事者適格という訴訟要件の判断であるが、本案審理と並行して行われる。)。審理の結果、Zの主張が真実であることが判明すれば、Xの訴えを却下すべきである。
 この点、裁判上の自白の撤回制限効の根拠を通説のように禁反言と解するならば、本件のような矛盾挙動もまさに禁反言に触れるから、許されないとしなければ一貫しない。しかし、自説は撤回制限効の根拠を争点縮小機能の維持に置くので、そのような問題は生じない。
 このような結論はXに酷とも思えるが、Xはこのような結果を避けるため、Yに対する訴えとZに対する訴えを両方提起し、弁論の併合(152条)の申立てをすることができるから、問題ない。裁判所は、本件においてかかる申立てがなされた場合には、Xの訴訟提起の煩を避けるため弁論併合の義務が生じると考えられる。   以上

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