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2016年02月04日

民事訴訟法 平成15年度第2問

設問1(1)
1 甲の主張の趣旨は、乙の訴えは142条で禁止されている二重起訴に当たるというものだと考えられる。そこで、まず乙の訴えが二重起訴に当たるかを検討する。
(1)142条の趣旨
 142条が二重起訴を禁止した趣旨は、@既判力抵触のおそれ、A被告の応訴の煩雑さ、B訴訟不経済であると言われている。しかし、@既判力の抵触は前訴判決を看過して判決を下した場合にしか起こりえず、その場合でも後訴判決が再審の訴えで取消される(338条1項10号)のだから、あえて起訴自体を禁止する必要はない。Aは原告被告が入れ替わっているだけの場合には妥当しない(原告は煩雑になるのを承知で起訴している)。結局のところ理由となり得るのはBのみであると考える。
(2)142条の要件
 ではいかなる訴えが二重起訴と評価されるのか。これは142条の趣旨である訴訟不経済の予防の観点から当事者及び訴訟物ないし訴訟物の内容をなす権利関係が同一である場合を指すと解すべきである。
 本件では、当事者は同じである、また、前訴の訴訟物は「甲の乙に対する売買契約に基づく絵画の引渡請求権」であり、後訴の訴訟物は「乙の甲に対する売買契約に基づく代金支払請求権」であり、訴訟物の内容をなす権利関係が同一である。
 したがって、乙の提起する後訴は二重起訴に当たり、142条によって禁止されている。
2 次に、甲の主張である「反訴として提起できるのだから」という部分について検討する。二重起訴に当たる訴えであっても、反訴であれば許されるのかが問題となる。
 反訴(146条)とは本訴の攻撃防御方法と関連する請求を目的とする場合に被告側が原告に対して本訴の同一手続内で提起する訴えである。要件は@本訴係属中であること、A本訴の攻撃防御方法と関連性があること、B事実審の口頭弁論終結前であること、C訴えの客観的併合要件(136条)を満たすこと(請求の基礎の同一性)、D本訴と別の裁判所の専属管轄に属さないこと、E法律上禁止されていないことである。控訴審で反訴を提起する場合は相手方の進級の利益に配慮するためF相手方の同意が要件に加わる(300条1項)。
 本件で乙の甲に対する訴えはこれらの要件を満たす。
3 では、反訴として提起するなら142条の制限を逃れるのだろうか。判例には債務不存在確認訴訟に対して給付訴訟の反訴が提起された場合に確認訴訟は訴えの利益がなくなるとしたものがある。たしかに反訴としての訴え提起は同一裁判所で弁論が併合されたうえで審理されるのだから、訴訟不経済という142条の禁止理由を回避できそうである。
 しかし、反訴の場合であっても裁判所の訴訟指揮として弁論の分離(152条)ができなくなるわけではない。そして弁論が分離されれば訴訟不経済は免れない。そのため、反訴として提起するのみでは142条の制限は回避できないと解する。142条の制限を回避するためには、裁判所に弁論の分離を禁止するという条件を付けるべきである。
 そして、反訴として提起しても弁論の分離という条件が付くのであれば、反訴として提起せず別訴として提起しても、弁論の併合を強制することによって142条の制限は回避できる。
 したがって、142条の禁止を回避するために反訴を提起することは必要でも適切でもない。
 設問の乙の主張は、甲の別訴提起が142条に抵触する点の指摘としては正当であるが、反訴という形式であれば無条件に提起できると考えている点は正当でない。
設問1(2)
1 裁判所は当事者が申し立てていない事柄について判決をすることはできない(処分権主義、246条)。処分権主義は実体法上の私的自治の原則が訴訟法上に反映したものである。当事者が申し立てていない事項について判決をすることは、当事者の実体法上の権利を当事者の意思に基づかずに処分することになるだけでなく、訴訟法的には当事者に不意打ちを加えることになるので許されない。
 処分権主義の趣旨が以上のようなものであるならば、当事者に不意打ちを与えない範囲であれば必ずしも当事者の請求の趣旨通りの判決をする必要はないことになる。では、本件の判決は甲及び乙に不意打ちを与えないか。
2 甲の請求について
 甲は絵画の給付を求めているが、自らの請求の中でその際に反対給付として500万円を覚悟している。また、乙から反訴で1000万円を請求されているため、最悪の場合1000万円の給付と引き換えに絵画の給付を受けるということを覚悟している。したがって、700万円の給付と引き換えに絵画の給付を受けることは不意打ちではない。
3 乙の請求について
 乙は1000万円の給付を求めているが、自らの請求の中で絵画の給付自体は覚悟している。また、甲からの反訴で、最悪の場合絵画の給付と引き換えに500万円の給付しか受けられないことを覚悟している。したがって、絵画の給付と引き換えに700万円の給付を受けることは不意打ちではない。
4 したがって、いずれの判決もできる。
設問2
1 乙の提起する後訴は前訴の既判力に抵触し、できないのではないか。
2 既判力の意義
 既判力とは確定判決の後袖の通用力ないし拘束力をいい、訴訟法上の効力である(訴訟法説)。既判力は紛争の蒸し返し防止のために必要であり、既判力を受ける当事者は訴訟で実際に攻撃防御を尽くしたことによって正当化される。
3 既判力の作用
 既判力には裁判所は既判力を生じた前訴の判断を前提に後訴の判断をしなければならないという積極的作用と、当事者が前訴の判断と矛盾する主張ができず、裁判所はそのような主張を排斥しなければならないという消極的作用がある。本件では乙の提起する後訴のなかで、乙がする絵画の売買代金は1000万円であるという主張が既判力の消極的作用に抵触しないかが問題となる(訴えを提起すること自体は許される。既判力はそれに反する後訴を却下する効力ではない)。これを解決するためには既判力の客観的範囲を確定する必要がある。
4 既判力の客観的範囲
 乙は主文に含まれる反対給付の額は既判力の客観的範囲外であることを前提に訴えを提起しているが、それは正しいだろうか。
 既判力の客観的範囲は「主文に包含するもの」(114条1項)である。これは訴訟物を意味すると解されている。訴訟物とは原告の請求する権利のことであるから、本件では「甲の乙に対する売買契約に基づく絵画の引渡請求権」に既判力が生じる。したがって、厳密には「500万円の支払いを受けるのと引換えに」の部分には既判力が生じないということになりそうである。そうすると、後訴は前訴の既判力に抵触せず、提起できるということになりそうである。
 しかし、厳密には訴訟物に含まれていなくてもその部分に既判力を認めないと紛争の蒸し返しとなる場合はある。判例も「限定承認した範囲で」という主文の文言に既判力に準ずる効果を認めている。また、通常は当事者は訴訟物でなくても反対給付の額等については争っているはずであり、手続保障は尽くされている。
 したがって、特段の事情のない限り、反対給付の額についても既判力に準じる効果が生じると解する。特段の事情とは、相手方が過失なく反対給付の額を争っていない場合等が考えられる。
5 結論
 本件でも、乙は原則として1000万円の支払いを求めるという主張をすることを前訴の既判力に準じる効力により許されず、裁判所はそのような乙の主張を排斥しなければならない。しかし、乙が前訴でもっぱらそのような契約をした覚えはないというように、過失なく契約自体を否定する争い方をしていた場合には、特段の事情があると言え、例外的にそのような主張が許される。  以上

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