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2018年12月14日
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律E
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月27日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第17回】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律E
「加療12日でそこまでの治療が必要だったか。治療が必要だったかの争いになる。金額は高すぎる」
医療過誤訴訟でも問題になるが、医療の素人である弁護士に、治療の必要性を議論する能力も資格もない。治療の当否は主治医の専権による。原告を治療した医師の判断によって、その治療内容は決定され、その結果の治療費である。佐藤は、原告の治療は過剰治療、不必要治療であったと主張するが、その根拠は、別の医師による、加害発生時の診断時における傷害程度の一目安にすぎない「予想加療日数」12日である。仮に佐藤が、原告の受けた治療が不要治療、濃密治療であると主張すれば、それは原告に請求された医療費の診療明細について指摘すべきことになる。ただし、日本の医療において、保険診療については、厳格な診療報酬審査があり、これは医師による審査であるから、素人の弁護士による判断より、はるかに専門的である。そのフィルターを通過したうえでの医療機関の請求であるから、不要医療の非難は失当である。弁護士の議論がいかに根拠のない素人発想の議論かを国民は知るべきである
なお、清原・佐藤の議論のなかで、法律理論のなかで最も難しいとされている(従って筆者はその分、本質的デタラメ理論と思っている)因果関係論が議論されている。過失責任における予見可能性議論である。素人には極めてわかりにくい議論であるが、何でそんな議論が実用の世界に必要かという視点を忘れずに「超難問」の因果関係論の「さわり」を説明する
「落ち度がある」といって非難するのが、過失責任である。従って、落ち度があるといえるためには行為者にとって、発生した事実が「予見可能」であることが必要である。この予見可能という術語が1人歩きして、因果関係論にまで侵入してきたことによる混乱が本件での清原・佐藤議論における「通常損害」と「特別損害」の議論である
被告の責任は過失責任ではなく故意責任である。発生した損害について過失理論の中核である予見可能性の出る幕はない。原告の被害が被告の過失行為によるものである場合なら、通常、予見される損害以上の損害(特別損害)の主張についての立証責任があるが、いずれにせよ、すべての種類の損害について原告には主張・立証責任があるとするのが、民事訴訟の原則であるから、ほぼ、意味のない議論である。特別損害であっても立証されれば、認められるのであるから、通常損害と特別損害の区別の意味はない。ただし、過失行為による損害においては、過失責任の本質的性質「落ち度」への非難、という意味においてのみ、特別損害、通常損害、つまり、予見可能性、それも当事者の現実の予見可能性(つまり具体的な個人的能力)ではなく、裁判官が考えるところの日本人の平均的知力による予見可能性が裁判規範として議論される
以上の議論をわかり易く事例で説明すれば、自動車の運転で損害を与えた場合と、故意に傷害を加えた損害とでは、刑事責任では罪質が異なるが、民事責任では損害賠償であるから立証されれば区別する意味がないということである
そうすると、佐藤の主張「そこまで休場するほどのけがを予見できたかどうか」という日本語の意味がまったく意味不明であることが理解できる。加害者がけがによる休場まで予見して初めて休場による損害の賠償責任があるとの論理であるが、ここまで来れば、佐藤自身にも自分の言っている意味を理解しないで、ただ、法律論らしい議論(つまり詭弁)をしているだけであり、それは、正に、支離滅裂の漫才である
《プロフィール》
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月27日NETIB-NEWS青沼隆郎】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律D
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月26日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第17回】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律D
【哀れな弁護士のテレビ漫才】
真実は1つしかなく、その真実に関する正しい論理も1つしかない。テレビで演じられた弁護士によるやらせ議論・似非議論は、法律の問題が一見困難・難解で和解もやむなしとの印象操作である。かくて、日馬富士裁判の和解による解決は国民の大多数の賛同を得る
テレビでの議論・争点はバイキングの清原博弁護士(以下、清原)と佐藤大和弁護士(以下、佐藤)が、あたかも原告と被告の主張かのごとき演出で、大激論の印象を演出することに成功した。事実、そのようにスポーツ紙は報道した。以下、その報道記事を前提にテレビ漫才を紐解く
損害賠償額について、出演した元裁判官の清原博弁護士は「妥当」と認定「この件のポイントは加害者も被害者も現役力士ということ。つまりこの場合、我々の普通の物差しでは損害額を計算しては完全に補償できない」と述べた
清原氏は過去、ピアニストが負った小指のけがについての事案を一例に挙げ「日常生活では不自由ないが、鍵盤がたたけない。通常では(賠償額が)50万円。でも、裁判所では数千万。それくらいのことがある」こうした事例から「(貴ノ岩は)現役力士で将来がある。この方がけがをしたのは、金額的には妥当」とした
一方、佐藤大和弁護士は否定的。内訳の入院治療436万円に着目し「加療12日で、そこまでの治療が必要だったかどうか。裁判になった場合、治療が必要だったか争いになる。この金額は高すぎるのではないかと思います」とした
これに対し、清原弁護士は法律上「通常損害」ではなく、特殊事情がある人に対しての「特別損害」が適用されると主張。日馬富士側の責任を追及し「(貴ノ岩は)出世する力士だったのに、けがさせたらすごく損害賠償になるとわかっていたのにけがをさせた。治療費が高いと言いますが力士なんだから。完全に治って土俵で戦う、そこまでいって治ったんです。400万かかって当たり前なんです」と強調した
佐藤弁護士は「そこまで休場するほどのけがを予見できたかどうか。確かに予見できたなら特別損害が与えられると思う。ただ治療の必要性があったか。12日間、休場の必要性があったかどうか」と、争点に言及した
日馬富士裁判では当然のことながら、まだ判決は出ておらず、清原・佐藤の議論は判例評釈ではない。では実際の裁判はどのように進行するか。当然、提出された訴状に記載された内容に従って審理される。結論からいえば、清原・佐藤のような議論が戦わされる可能性はゼロである。清原・佐藤はこの事実を百も承知で、上記の議論をした
1 訴状に記載された事実(これを請求原因事実という)
(以下の記述は不法行為損害賠償請求訴訟の一般的な記述形態で、現実の訴状を入手したものではない。雛型的記載であることを事前にお断わりしておく。また、請求金額の項目は医療費関連のものに限定した)
原告(以下貴の岩をこのように記す)は被告(以下日馬富士のこと。ただし「被告ら」と訴状に記載されている可能性も否定できない)により某月某日の深更、某所において暴行傷害を受け、その治療のため、某月某日より某月某日まで、医療機関某所にて入院加療を受けた。その損害額は、治療費××円、交通費××円など合計436万円である
添付証拠(証拠[書証]の提出は必ずしも訴状提出と同時とは限らない)
甲第1号証 医療費領収書
甲第2号証 タクシー領収書・・・
以上の訴状記載の請求原因事実と甲号証によって主張・立証された事実について審理される
以上の記載でもうお判りいただけたと思うが、清原は原告の逸失利益の算定において、原告がプロスポーツ選手という特別の地位にあることによる損害額の特殊性を説明しているのに対して、佐藤は入院治療費の高額性を批判している。相互に違う論点について議論している。清原の説示はまったく合理的であるから正当である。そこで、佐藤の説示が正当か否かである。一言でいえば、滅茶苦茶な暴論である。佐藤はあえて「ボケ役」を演じた
《プロフィール》
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月26日NETIB-NEWS青沼隆郎】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律C
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月25日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第17回】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律C
【亡国の「和解待望論」】
裁判を起こすことはそんなに害悪なのだろうか。日馬富士裁判について、ほとんどの人が和解で早期に解決すべきだという。世論調査で、いつも「景気対策」が無条件に優先順位の上位にくるのと似ており、何か背筋の寒い思いがする
お笑いタレントを批判しても子どもじみているが、タレントの松本人志がスポーツ新聞で、貴ノ岩の元日馬富士への損害賠償請求について「やっと落ち着いたのに、わざわざやるのがわけ分からない」とコメントしたと報道されている。この報道の真相は、件のスポーツ新聞社が、貴乃花親方のネガティブキャンペーンの一環として、万が一発言が批判されても最後は「タレントの失言」と言い逃れができる松本人志を巧みに使っているものと理解するのが筋だろう
せっかくの司法制度の利用をマスコミ自体が貶めているという意味で、当該スポーツ新聞の記者の政治感覚・人権感覚を疑わざるを得ない
弁護士に依頼し、それなりの経済的負担を覚悟の上での提訴であるから、当事者が和解を望むはずがない。人の裁判だから一層無責任に、一番温和で平和主義に聞こえる和解待望論を気楽に主張するのだろう。その意味では、松本人志はピッタリの人材といえる
法律的には同じ当事者の合意である示談より、和解という言葉のほうが響きは美しい。これを弁護士談合と言い換えれば、より実態に近いのであるが、国民は、某スポーツ新聞の記者以上に裁判の実際を知らない。それでいて、裁判用語としての和解を盛んに喧伝する。これで一番楽をするのが、いうまでもなく、弁護士であり、裁判官である
日本の刑事裁判の有罪率が99.9%以上であることは、間違いなくある不条理の存在を意味する。負けず劣らず、民事裁判でも極めて高い和解率であるが、あまり報道されないため、国民は知らない
和解を主張する人には2種類いる。1つは、松本人志のように何も知らない単純平和主義者である。これらの人々は裁判を、金をめぐる醜い争いだと思っており、ぜひ「話し合い」で解決すべきとの「政治信条」を旨としている。もう1つは、若狭勝弁護士のように、背景事情を知悉した人々による和解の勧めである。単純に説明すれば、裁判のことをまったく知らない人と裁判を熟知した人の違い、別の見方をすれば、事件の事情に詳しい人と事件を表面的(それもマスコミ報道の範囲で)にしか知らない人の違いである。たちが悪いのはもちろん、事件の事情に詳しい人である
日馬富士の弁護人は、当然ながら、相撲協会を牛耳る「ヤメ検」弁護士群の流れを汲む弁護士の1人である。相撲協会を牛耳るヤメ検の強腕ぶりは貴乃花親方理事降格事件で世間の人々が知ることになった。今回の日馬富士裁判でも、ヤメ検の強腕が発揮されているが、もともと加害者側の弁護士なので強腕を発揮するにも限界がある。判決より和解で決着するなら、立派な勝利である。とくに、判決による決着となると、判決理由で、高野危機管理委員長が認定した暴行事件の認定事実がまったく否定される可能性がある。その意味で事実認定をしない和解であれば、大勝利となる
世間の人は、裁判上の和解には真実隠蔽の効果があることを知らない。裁判上の和解が多いことの隠された別の理由である。同じ金銭の支払いであっても判決と和解とでは天と地ほどの差がある。後に貴乃花親方の理事降格処分の是非をめぐる裁判の可能性があり、前哨戦としての意味をもつ日馬富士裁判を和解で終わらせるか否かは相撲協会とヤメ検群の命運がかかっている
国民は事ほど左様に、裁判が嫌いである。ではなぜ、人々は弁護士を尊敬し、弁護士を志して苦学を続ける人が多いのか。それはひとえに、司法試験に対する神格化の賜物である。国家資格試験で、試験問題を公表しないことが徹底されているのが、司法試験である。しかも、合格者数の操作は法務省が自由自在にできる。旧聞になるが、某私立大学の司法試験委員だった法学部教授が教え子に試験問題を漏洩したとして、法学界から追放された。多数の論文を出し、学界でも有名だっただけに、しばらくマスコミを賑わせた
この事件で合格が取消されたのは教え子の女性1人だった。この事件は、どのようにして発覚したのだろうか。マスコミが、この事件の真相にまったく鈍感なのには呆れてしまった。それと同時に、日本のジャーナリストには社会的事件の真相・深層にせまる論理力と知性がないこと、ニュースソースは記者クラブ方式のあてがいぶちの大本営発表式と何ら変わらないことが明らかである
日馬富士裁判においても、報道関係者は自らの手と足で、そして目と耳と脳で、事件の真相にせまるよう努力をすべきである
《プロフィール》
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月25日NETIB-NEWS青沼隆郎】
2018年12月13日
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律B
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月24日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第17回】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律B
【判例にない高額の慰謝料請求の意味】
テレビ解説者で国際弁護士の八代氏は的確に本件訴訟の本質を説明した。本件訴訟が、単なる損害賠償金の獲得目的か、事件当初から横たわる真実隠蔽の策謀への挑戦かによって、この高額な慰謝料をめぐる当事者の態度が決定される。真実究明が目的であれば、単に日馬富士個人の利害を超え、協会理事会の利害に関わるため、事件は長期化・泥沼化すると予想する
この指摘はまったく正しい。ただ、裁判官出身の八代氏が一番言いにくかった事実がある。それは「ガチンコ判決」は裁判官が最も苦手として、一番避けたい裁判終結方法であることだ。黒白判決は必ず敗訴当事者が上訴する。世間の注目を浴びた本件事件では、一層の精密な事実認定と法律構成が求められる。これは、必然的に裁判の長期化を意味する。しかし裁判の長期化は貴ノ岩側にとって有利な事情となる。事件の闇に司法の光が当てられる可能性が高くなるからである。国民はこのような視点で、本件事件の推移を見ることになる
慰謝料算定の法的意味は、その他の損害認定と本質的に異なる。精神的苦痛の原因事実を認定しても、その金銭評価は裁判官の専権である。日本の裁判で、精神的苦痛がいかに現実的に意味のない極めて低い金額のレベルにあるかを考えたとき、精神的苦痛の主張が、事実上、裁判官によって無視、無意味化されている真の意味を理解する必要がある。すぐに理解できることは、精神的苦痛の評価がゼロに等しい水準であることは、司法サービスをしない、という意味であるから、国民の提訴意識をそぐ。これは現実的には裁判官の仕事量を増やさない効果をもつ。こんな裁判官本位主義の司法制度など存在理由はない。判例にない高額請求はその意味でも、国民は支持できる訴訟だと理解すべきことになる
以下は、裁判の現実的進行に従って「裁判の公開」原則が、弁護士裁判官によって、いかに有名無実化・形骸化されているかを知ることになるが、それはマスコミがどれだけ本件訴訟についてコメントするかにかかっている
本件の特殊事情によれば、原告代理人は通常裁判より、積極的に裁判の進行状況を公開する可能性がある。それはちょうど、オウム裁判がある程度公開され続けたことを思い出せば本来は当然のことである。本稿も、それに従って、コメントする予定である
《プロフィール》
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月24日NETIB-NEWS青沼隆郎】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律A
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月23日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第17回】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律A
【被害者の立証責任と加害者の反証】
損害の主張と立証は原告たる被害者側にある。それは損害事実と証拠を法廷に提出することである。被告たる加害者は、その損害事実と証拠について反論弾劾が求められる
たとえば当事者間で主張に差がある入院費用について具体的に示せば、原告は加害行為の結果、その治療、治癒までにかかった一切の治療費を請求する。それが医療機関に支払った医療費であり、通院経費などである。原告はそれらの合計が300万円余とする
一方、加害者は、示談交渉、調停段階では、刑事処分で認定された加療12日間とする診断書を根拠として、その期間の平均的な治療費30万円を主張した。しかし、裁判では、原告が加療12日間とする診断書を算定根拠とはしていないのであるから、そもそも争点とはならない。しかも、被告の論理には致命的な欠陥が2つある
第一は、診断書の加療12日間というのは、負傷時点での将来見込としての判断であり、現実の治療が12日間で終わるという意味はまったくない。まして、完治までの期間を指したものではなく、治療の必要な見込期間の意味であるから、経過次第ではいかようにも変わる。その、いかようにも変わった結果、原告が証拠を示して主張した損害であるから、どちらの主張が正当であるかは一目瞭然である
第二は、刑事処分の事実認定は、医療費を認定したものではなく、診断書の存在を認定したもので、負傷の事実を認定したものである。従って、診断書は医療費の証拠とはなりえないのであるから、そもそも原告の医療費の弾劾証拠とはなり得ない。つまり、被告の主張する30万円は単なる希望的金額に過ぎない。証拠のない主張となる
原告の請求は具体的な項目として明示されており、被告は改めてその各項目について認否が求められる。当然、原告が提示した証拠を中心に議論されることになる
では、刑事処分で裁判官が認定した加療12日間の負傷というのはどういう意味をもつか。一言でいえば、まったく無意味、無関係である。これは、ある意味、国民の素朴な常識からみて理解できないだろう。そこで、極端な例で裁判・判決の個別性、相対性という基本的な法概念を説明する
冤罪事件の裁判で認定された事実には何らの絶対的拘束力はない。新証拠によって、簡単に否定される。この事実だけで裁判の個別性・相対性の説明は十分だろう。テレビに出演した弁護士は、刑事裁判官の認定事実が真実とはかぎらない、とわかりやすく説明していた
以上の説明で、本件の紛争の本質が、実は軽微な刑事処分が生まれた事情にあることは明白である。暴行事件は本当に日馬富士の単独暴行事件だったのか、日馬富士が主張するように、貴ノ岩に先輩に対する失礼行為があり、それが、暴行傷害を引き起こしたのか。このような事情一切が当初、事件関係者によって隠蔽されていたというのに、貴乃花親方にどのような報告義務があったというのか。その報告がないことで、協会にいかなる重大な損害・結果が生じたというのか。つまり、報告義務違反を理由とする貴ノ花親方の理事降格処分は正当といえるか。さらに、公益財団法人法の定める、理事に対する処分手続として評議員会の直接主義違反(※)は適正適法か、の問題がすべて、闇に葬られたままである
これらの明白な違法手続を指摘したものが貴乃花親方の告発状に他ならない
マスコミは本当の意味で、告発状を理解していない。取り下げたという事実を勝手に解釈し、放置してしまった。念の為、告発の取り下げが法的意味をもつのは、刑事告訴告発における親告罪の場合だけである。親告罪は、被害者の処罰の意思が訴訟要件として必要だからである
本件の場合は公益財団法人の理事会の業務執行についての不正行為の告発であるから、不正行為の事実がいったん監督官庁に到達すれば、それにより監督官庁の調査義務は発生する。その後、告発者が告発を取り下げても、不正事実が存在しなくなったという結果が生じたわけでもない。告発事実は取り下げ行為によって消滅する性質のものではない
遠からず、監督官庁の調査義務、監督義務が問題になる。とくにマスコミがこの事理を理解しないことは、マスコミの低い法的素養が、社会不正義を横行させていることになる
マスコミの貧弱な法的理解力を嘆いても仕方がないが、なぜ、協会が告発状の事実無根を貴乃花親方に迫ったかを今一度よく考えればすぐに正解に達するはずである
(※)評議員会は評議員が直接、処分事由となる要件事実を証拠収集しなければならないとする裁判法の基本原則。民事裁判でも、裁判官は直接、適法な証拠を取り調べる義務が規定されている。本件では、危機管理員会という得体の知れない「捜査機関」による、一方的な報告を基に何らの弁明の機会も与えず処分が下されている。少なくとも、貴乃花親方の弁解を聞き、それに理由がないことを示すこと(ここまでが処分の理由)が裁判法の基本原則である。これらの事実は、危機管理委員会という得体の知れない内部機関が、実質的には裁判機関として機能したことを示している。これはすべて、法的無知の力士に対して、法匪が問答無用として遂行した結果である
《プロフィール》
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月23日NETIB-NEWS青沼隆郎】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律@
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月22日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第17回】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律@
個別具体的事件で、示談交渉・調停・提訴という経過がこれほど詳細に報道されることは後にも先にも日馬富士暴行事件の民事裁判(以下、日馬富士裁判という)以外にはない
それは、原因事実そのものが、大きく報道され、国民がよく知っているという特殊な事情があるからだ。この事件だけで日本の法律を学ぶことができるといっても過言ではない
法律的に表現すれば、最初は公益財団法人における業務執行とその管理監督の問題、とくに会員力士の刑事犯罪に関する関係者の法的責任義務の問題、それに関する、内部処分の適法性の問題、つまり理事の解任問題(事件)がある
以上が、主に公益財団法が関係する法律事実である。公益財団法人法は株式会社法とはその法原理が根本的に異なる。しかし、現実の国民の団体法についての知識は、株式会社法を漠然と知っているという程度である
さらに、事実関係・真実そのものが隠蔽されたまま暴行傷害事件の民事争訟が同時進行している、という極めて特異な事情のため、日本の法律、法制度の根幹に関わる現象が顕在化している。特異性が本質を示すという現象である
【加害者からの示談の申込】
示談の申込時期が極めて異常である。通常、示談は損害が確定し、被害者側が損害の請求を表示してから開始可能である。本件のような加害者からの異常なタイミングでの示談申込は戦略的な意味しかない。一言でいえば、世間に対して、加害者としての誠実さをアピールすることを重視しているのである。しかし、本件ではそれ以上に極めて特殊な事情がある。それが、刑事処分手続の先行決着である。加害者側にとって極めて有利と思われる軽い刑事処分の結果が出たため、それを基本に民事賠償問題も有利な早期決着を企図したものである
以上のように、刑事処分が極めて軽微な結果となった事情、これもまた、本件事件の特異性の1つである。この事情こそ、公益財団法人の業務執行における極めて悪質かつ不当違法な手続の成果であった。すべての不当違法事実が最初からあざなえる縄のごとく絡み合ったのが本件の事実の総体である
この刑事処分の成果を反映したものが、示談交渉における加害者側の30万円という極端に低い提示額である。しかし、この加害者の主張は訴訟段階ではまったく意味がなくなる
それが、不法行為裁判における立証責任の法理である。訴訟段階では、この加害者の主張そのものが争点とならないのである
裁判の主題は「原告の主張は正しいか」であって「被告の反証は正しいか」ではない
もっとも、この説明ではむしろ、混乱するだけであるから、さらに詳論する
《プロフィール》
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月22日NETIB-NEWS青沼隆郎】
2018年12月12日
貴乃花親方辞職事件の真実G
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月18日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第16回】
貴乃花親方辞職事件の真実G
【点から線へ3つの不可解事件】
(1)告発状事実無根強制事件
協会は外部の弁護士に鑑定を依頼し、告発状が事実無根である旨の鑑定結果を添え、貴乃花親方に告発状が事実無根の告発であることを認めるよう迫った。貴乃花親方はすでに告発状を取り下げ、協会と争う意思がないことを表明していたにもかかわらず、公費を出費し、外部の弁護士から意見書を入手してまでの要求行為は、その目的が不明なだけに、不可解極まりない事件だった
(2)一門所属義務規則の制定
無所属の親方(つまり貴乃花親方ら)に対していずれかの一門に所属する義務を規定した規則を議決したとされる。しかも、その義務を履行しない親方とは弟子育成委託契約を解除するとのことだった。ただし、これは公式発表がなく、契約解除は決定事項ではないと協会は全面否定している。いずれにせよ、重要な規則の制定でありながら、正式な発表もなく、その内容も不明である。それ自体が不可解という他ない
(3)日馬富士暴行事件の示談交渉における提示額
長く水面下での交渉状態にあった、日馬富士暴行事件に関する示談交渉の経緯が明らかにされた。驚くべき事実は、日馬富士側の示談金の提示額は当初30万円で、調停段階でも50万円だった。プロスポーツ選手である貴ノ岩の損害がそのような低額であるはずもなく、明白な加害責任のある日馬富士の提示額は極めて不可解という他ない
【謎を解く事実】
示談交渉が調停段階となり、9月26日が第2回期日であったところ、日馬富士側の代理人が突然無断欠席した。調停委員はこの事実に対し、調停不調を決定した
なぜ、日馬富士の代理人は突然無断欠席したのか。調停を不調にするためには、出席して、従来通り、50万円の支払いを主張すれば良く、無断欠席は極めて不可解という他ない
しかし、その鍵を解く事実が、前日9月25日に起きていた。貴乃花親方による突然の辞職表明記者会見である。その会見で、退職の理由が、告発状が事実無根であると認めるよう強制されていたこと。すなわち同時期に制定された一門所属義務規定により、貴乃花親方は無所属であるためいずれかの一門に所属すべきところ、なんと、一門に所属するための条件として、これまた告発状が事実無根であることを認めることであったという
貴乃花親方は、信念を曲げてまで協会に残ることを潔しとせず退職の道を選んだと会見であきらかにした
この事実は協会にとって極めて予想外の出来事だったと見られる。理不尽なことに、届出書面の表題が、退職届ではなく引退届とされていることを不備として受理しなかった。そして翌日の日馬富士代理人の無断欠席である
【補助線】
協会は、貴乃花親方が告発状の事実無根を認め、協会に残ると予想していた。生活の根拠となる収入の道をすべて放棄して退職の道など選ぶはずがないと考えたのだ。そうすると、告発状の事実はすべて虚偽となり危機管理委員会の認定した事実が真実となる。日馬富士の暴行加害責任も、貴ノ岩の重大過失による過失相殺により、極限まで減額されることになる
つまり、30万円や50万円でも十分すぎるという結論を導くことができる
また、告発状の事実無根を認めた貴乃花親方に圧力をかけ、弟子の請求そのものを中止させることも協会側は想定していただろう。いずれにせよ、日馬富士が貴ノ岩に支払う賠償額は極めて少額ですむ。それが、30万円や50万円という極めて不可解な提示金額の理由であった
以上のような補助線的考察をすれば、点だった不可解事件が一本の線となる
【今後の事件の展開】
日馬富士側は頼みとする貴乃花親方の告発状事実無根の自認を入手できなかったから、貴ノ岩の重大過失を主張して過失相殺を主張することに成功しない限り貴ノ岩弁護団が作成した合理的な請求に全面敗訴することになる
しかも、貴ノ岩の請求項目には慰謝料500万円という時限爆弾が仕掛けられており、この請求の当否の審理が告発状の告発事実の真偽の審理そのものとなるため、告発事実の真偽が損害賠償事件で審理される運命となった。裁判の結果次第では、貴乃花親方の理事降格処分自体が違法となり、協会理事会の責任が問われることになる
<プロフィール>青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月18日NETIB-NEWS青沼隆郎】
貴乃花親方辞職事件の真実F
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月17日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第16回】
貴乃花親方辞職事件の真実F
【提訴解説】
原告の請求内容の明細が記者会見により公表された。この裁判は決着までに相当の年月を要することが明らかである。それは慰謝料500万円という項目の存在である
通常、精神的苦痛に対する慰謝料の裁判上での評価は100万円以下(通常は30万円程度)が判例である。従って、裁判所としては異例の高額請求について、新判例となる意味も含め、詳細な請求理由を求めることになる。これは単に負傷による精神的苦痛を超え、事件そのものが原告に与えた精神的苦痛の請求になるから、事件の具体的特殊性が争点となる
たとえば、原告は被告が危機管理員会に「忠告をしたのに、睨みかえした」とか「白鵬の説教中にスマホをいじっており、先輩に対して礼を失した」などの虚偽の事実を申告し、それが事実認定として公表されたため、原告はプロの力士としての評価が低下する苦痛を味わった、と慰謝料請求の原因事実を述べた場合、被告は危機管理委員会に申告した当該事実について、その真偽が問われる。被告が虚偽申告との原告の主張を否定した場合、原告としては、さらに同席した白鵬やほかの関係者の証人尋問の可能性がある。つまり、原告は判例にもない高額の慰謝料の請求項目を設定することによって、本件事件の隠された真実に迫る戦略をもっていると理解することができる
これは、被告が金額そのものを争わず、500万円の支払いを単に認めた場合でも、その理由根拠について、裁判所は新判例となるため、理由事実を判決文に記載しなければならず、事実審理と事実認定は不可避となる。金額を認めるくらいだから理由事実も争わないかといえば逆である。これが事件の隠された真実に迫る訴訟テクニックとなる所以である
法律論的には、精神的慰謝料は裁判官の形成権の結果とされ、当事者の処分権の範疇にないからである(当事者がいいですよと言っても金額自体は裁判官が決定するということ)
いずれにせよ、裁判所は負傷以外の特殊な個別的事情の存否について事実審理をせざるを得ない
今回の提訴には提訴に至るまでの被告(代理人)の不誠実な対応に反論する意味が大きいことが判明した。当初「3,000万円の法外な請求」という情報が、被告側からリークされ、いかにも貴ノ岩が不当な請求をしているかのごとき世論誘導が行われた。被告弁護士の小細工であるが、結果として被告は世間の不評を買うこととなった。なぜなら、被告弁護士は示談金として、当初30万円、調停提起段階でも50万円の金額を提示していたからである
「法外な金額」を提示していたのは被告側であったという笑い話にもならないオチである
<プロフィール>青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月17日NETIB-NEWS青沼隆郎】