2018年12月14日
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律D
大相撲は記録で測るものではないと思います。平成の大横綱貴乃花の全身全霊の相撲道は美しく強かったです。静かに立ち上がる、自分から仕掛けない、一旦全部受け止める、恐れいりました、第65代横綱貴乃花は、永遠に色あせることなく、永遠にヒーローです
貴乃花親方の言動による『不注意』が、高野利雄危機管理委員長による『忠実義務違反』との見解で『情報操作』され、いつのまにか被害者の貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまった横綱日馬富士暴行事件から1年…
日本の宝『第65代横綱貴乃花』が公益財団法人日本相撲協会を去りました
相撲協会や記者クラブやマスメディアのような『ムラ社会』は盲目的に『病』に侵されてしまっています『ムラ社会という病』を治療しなければパワーハラスメントやイジメはなくなりませんが自由民主主義国家であるはずの日本には『ムラ社会という病』を根治する薬はないようです…
法治国家に暮らす国民として、優先されるローカルルールが腑に落ちない『横綱日馬富士暴行事件』でしたが、腹落ちする文献です
【2018年10月26日NETIB-NEWS青沼隆郎】
【青沼隆郎の法律講座 第17回】
日馬富士裁判で学ぶ日本の法律D
【哀れな弁護士のテレビ漫才】
真実は1つしかなく、その真実に関する正しい論理も1つしかない。テレビで演じられた弁護士によるやらせ議論・似非議論は、法律の問題が一見困難・難解で和解もやむなしとの印象操作である。かくて、日馬富士裁判の和解による解決は国民の大多数の賛同を得る
テレビでの議論・争点はバイキングの清原博弁護士(以下、清原)と佐藤大和弁護士(以下、佐藤)が、あたかも原告と被告の主張かのごとき演出で、大激論の印象を演出することに成功した。事実、そのようにスポーツ紙は報道した。以下、その報道記事を前提にテレビ漫才を紐解く
損害賠償額について、出演した元裁判官の清原博弁護士は「妥当」と認定「この件のポイントは加害者も被害者も現役力士ということ。つまりこの場合、我々の普通の物差しでは損害額を計算しては完全に補償できない」と述べた
清原氏は過去、ピアニストが負った小指のけがについての事案を一例に挙げ「日常生活では不自由ないが、鍵盤がたたけない。通常では(賠償額が)50万円。でも、裁判所では数千万。それくらいのことがある」こうした事例から「(貴ノ岩は)現役力士で将来がある。この方がけがをしたのは、金額的には妥当」とした
一方、佐藤大和弁護士は否定的。内訳の入院治療436万円に着目し「加療12日で、そこまでの治療が必要だったかどうか。裁判になった場合、治療が必要だったか争いになる。この金額は高すぎるのではないかと思います」とした
これに対し、清原弁護士は法律上「通常損害」ではなく、特殊事情がある人に対しての「特別損害」が適用されると主張。日馬富士側の責任を追及し「(貴ノ岩は)出世する力士だったのに、けがさせたらすごく損害賠償になるとわかっていたのにけがをさせた。治療費が高いと言いますが力士なんだから。完全に治って土俵で戦う、そこまでいって治ったんです。400万かかって当たり前なんです」と強調した
佐藤弁護士は「そこまで休場するほどのけがを予見できたかどうか。確かに予見できたなら特別損害が与えられると思う。ただ治療の必要性があったか。12日間、休場の必要性があったかどうか」と、争点に言及した
日馬富士裁判では当然のことながら、まだ判決は出ておらず、清原・佐藤の議論は判例評釈ではない。では実際の裁判はどのように進行するか。当然、提出された訴状に記載された内容に従って審理される。結論からいえば、清原・佐藤のような議論が戦わされる可能性はゼロである。清原・佐藤はこの事実を百も承知で、上記の議論をした
1 訴状に記載された事実(これを請求原因事実という)
(以下の記述は不法行為損害賠償請求訴訟の一般的な記述形態で、現実の訴状を入手したものではない。雛型的記載であることを事前にお断わりしておく。また、請求金額の項目は医療費関連のものに限定した)
原告(以下貴の岩をこのように記す)は被告(以下日馬富士のこと。ただし「被告ら」と訴状に記載されている可能性も否定できない)により某月某日の深更、某所において暴行傷害を受け、その治療のため、某月某日より某月某日まで、医療機関某所にて入院加療を受けた。その損害額は、治療費××円、交通費××円など合計436万円である
添付証拠(証拠[書証]の提出は必ずしも訴状提出と同時とは限らない)
甲第1号証 医療費領収書
甲第2号証 タクシー領収書・・・
以上の訴状記載の請求原因事実と甲号証によって主張・立証された事実について審理される
以上の記載でもうお判りいただけたと思うが、清原は原告の逸失利益の算定において、原告がプロスポーツ選手という特別の地位にあることによる損害額の特殊性を説明しているのに対して、佐藤は入院治療費の高額性を批判している。相互に違う論点について議論している。清原の説示はまったく合理的であるから正当である。そこで、佐藤の説示が正当か否かである。一言でいえば、滅茶苦茶な暴論である。佐藤はあえて「ボケ役」を演じた
《プロフィール》
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める
【2018年10月26日NETIB-NEWS青沼隆郎】
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