ずっと書き漏らしてきたことをまとめておく. 2016 年 5 月 29 日の記事: 入院中のメモ: 数学 ── Hurewicz 変換とは何だったか の続き.
$\mathbf{pcTop}$ を弧状連結な位相空間の圏, $\mathbf{Grp}$ を群の圏とする.
$\pi_1 : \mathbf{pcTop} \rightarrow \mathbf{Grp}$ を基本群関手, $H_1 : \mathbf{pcTop} \rightarrow \mathbf{Grp}$ を 1 次の特異ホモロジー群関手とする.
任意の弧状連結な位相空間 $X \in \mathrm{Ob}(\mathbf{pcTop})$ 上のループ $\alpha \in \Omega(X)$ をそのまま $X$ 上の特異 1-サイクル $\alpha \in Z_1(X)$ として考える.
この対応はホモトピー同値性を保存する.
すなわち, 2 つのループ $\alpha, \beta \in \Omega(X)$ がホモトピックならば, 特異 1-サイクルとしての $\alpha, \beta \in Z_1(X)$ に対して $\alpha - \beta$ は特異 1-境界サイクル, つまり $\alpha - \beta \in B_1(X) = \mathrm{ker}(\partial_2)$ となる.
これにより自然な群準同型 $h(X) : \pi_1(X) \rightarrow H_1(X) = Z_1(X)\,/\,B_1(X)$ が導かれるが, これを Hurewicz 準同型写像と呼ぶ.
参考にしたのはこの資料 → The Hurewicz Theorem
● Hurewicz 変換が自然変換であることの説明
各々の弧状連結な位相空間 $X \in \mathrm{Ob}(\mathbf{pcTop})$ に対して, Hurewicz 準同型 $hX : \pi_1(X) \rightarrow H_1(X)$ を対応させることにより, Hurewicz 準同型の族 $\left\{\, hX \,\mid\, X \in \mathrm{Ob}(\mathbf{pcTop}) \,\right\}$ が得られる. この族による基本群関手 $\pi_1$ から 1 次の特異ホモロジー群関手への対応を $h$ により表わし, Hurewicz 変換と呼ぶ.
この概念は, 位相空間の基本群から 1 次の特異ホモロジー群への群準同型として定義された Hurewicz 準同型を圏論的に解釈したものである.
このように定義した Hurewicz 変換は, 直接計算することによって次の性質を持つことがわかる.
基本群関手 $\pi_1 : \mathbf{pcTop} \rightarrow \mathbf{Grp}$ と 1 次の特異ホモロジー群関手 $H_1 : \mathbf{pcTop} \rightarrow \mathbf{Grp}$ (簡単のために弧状連結な位相空間の圏で考えている) に対する Hurewicz 変換 $h : \pi_1 \rightarrow H_1$ は弧状連結な位相空間の圏 $\mathbf{pcTop}$ における任意の射 (つまり連続写像) $g : X \rightarrow Y$ に対して, 図式
\[
\begin{xy}
\xymatrix {
\pi_1(X) \ar[d]_{\pi_1(g)} \ar[r]^{hX} & H_1(X) \ar[d]^{H_1(g)} \\
\pi_1(Y) \ar[r]_{hY} & H_1(Y)
}
\end{xy}
\] は可換図式である.
このことは Hurewicz 変換 $h : \pi_1 \rightarrow H_1$ の定義, それが基本群の関手 $\pi_1 : \mathbf{pcTop} \rightarrow \mathbf{Grp}$ から特異 1 次ホモロジー群の関手 $H_1 : \mathbf{pcTop} \rightarrow \mathbf{Grp}$ への自然変換になっていることを意味する.
ずっと Hurewicz 変換をもうちょっときれいに定義できないかと考えていたのだが, 進展が無い.
時間がかかりそうなのでこれは今後の課題にした.
ひとまず現在までにできたところを文章として残しておく. 進展があったらまた書く.
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