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2016年02月15日

デカルトの正葉線

 今回取り扱うのは デカルトの正葉線。英語で書くと Folium of Descartes .
 別に英語で書く必要もないですけどね。何となく格好良いから書いてみました。
 以前に扱った正葉曲線と名前が似ていますが、完全に別物なので混同しないでくださいね。

デカルトの正葉線


 直交座標における関数形は x と y の3次式。とてもシンプルな表式です:

x 3 −3axy + y 3 = 0 (a > 0)  [1]

 しかし、この方程式をただ睨んでいてもグラフは描けません。

 デカルトの正葉線は媒介変数 t を用いて次のように書けることが知られています:

デカルトの正葉線方程式

 「本当かなー?」と疑う人は、[2] を [1] に代入して、ちゃんと方程式が成り立っていることを確認してみてください。途方もなく面倒な計算なので、あまりおすすめはしませんが。さて「この式をエクセルに放り込めばグラフの出来上がり」となりそうなのですが、そうもいかないのが正葉線の厄介なところ。 t ≒ −1 で分母があまりに小さくなるため、エクセルで正しく割り算が計算できない領域がでてきてしまいます。そこで再度次のような変数変換をして式を書き直します(a = 1 としてあります):

t = (1 + s) / (1 - s)

デカルトの正葉線方程式変数変換

 この変換を私が思いついたのなら「すごいだろ」と自慢しますが、残念ながら私ではありません。誰が考えたのか知りませんが(きっとすごく頭の良い人でしょう)、この変換は実に巧みにできていて全ての s に対して分母を 1 以上の値にしてくれます。こうなると、Excel に怖いものなしです。さあこれで今度こそグラフを描くことができます:

 はい。これがデカルトの正葉線(a = 1)です!

 01デカルトの正葉線.gif

 「……そんなに苦労したのに、こんな簡単なグラフなの?」と思ったりしませんでした?

 シンプルなグラフこそ奥深いものがあるのです。ちなみにデカルトの正葉線の漸近線は

y + x + a = 0

となることが知られています。

 さすがにこれで終わるのはあんまりなので、少し変形していきましょう。
 [2] において余計な係数を取り払い、なおかつ最初の (  ) の中に - s 2 という項を加えます。「なぜそんなふうにするの?」と尋ねられても「勘」としか答えようがありません。長年エクセルでグラフを描いていると、こういう妙な勘がはたらくのです。さてグラフのほうは……

 02デカルトの正葉線変形@.gif

 漸近線に沿って伸びていた直線が葉に巻きつきます。
 これもまたシンプルで美しいグラフですね。
 けっこう気に入っているグラフなので何か名前をつけようと思案中です。
 皆さんも何か良い名前を思いついたらコメントしてください。

 さらに - s 4 という項を加えます:

 03デカルトの正葉線変形A.gif

 葉が2重になりましたね。さすがにこのあたりになると完全にコンピューター数学の領域です。式が複雑すぎて手計算ではとても扱えません。せっかくですから葉っぱのような形のグラフを他にもいくつか紹介しておきます:

 04変則2葉線.gif

 05変則4葉線.gif

 06二重葉線.gif

 デカルトさんのように賢くなくても、コンピューターを使ってあれこれい適当に数式をいじっていると、偶然思わぬ発見があったりします。難しい計算は全てソフトが代わりに実行してくれますからね。「ひたすらに頭を捻って定理の証明法を発見する」という数学の王道とは全く別物ですが、趣味として数学で遊ぶことができるというのも現代人ならではの贅沢かもしれませんね。
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