ベクトル解析(森毅著/ちくま学芸文庫)
今回紹介するのは森毅の名著
ベクトル解析 です。
日本評論社から出版された旧版(ハードカバー)はこちらです。
本書の構成は以下のようになっています。
第0章 ベクトル解析とは
第1章 多変数の微分(正比例関数と微分)
第2章 多変数の積分(積分の概念)
第3章 なぜベクトル解析なのか(多次元世界の微積分)
数学としてのベクトル解析
ベクトル解析といえば、理工系の学生さんにはおなじみの必須科目ですね。ほとんどのベクトル解析の書籍では、電磁気学や流体力学を学ぶための道具として扱われ「 grad, div, rot はこうやって計算するのだぞよ」とか「ストークス定理はこう使うのだ!」という書き方がされていると思います。まあ、学生さんたちは急いでそうした計算法を身につけないと物理学のカリキュラムを消化できないので、それはそれで仕方ないのですが、ちょっと場当たり的で味気ないなあと思うこともしばしばです。でも本書はそうした巷に溢れる本とは全く異なるスタイルの、
数学としてのベクトル解析 なのです。
線形代数学と微積分の
この本では「1次元の線型代数学」から「多次元の線型代数学」、あるいは「1変数の微積分」から「多変数関数の微積分」への拡張という視点で「ベクトル解析」を記述しています。普段学んでいる数学の体系の中で勾配や面積分、線積分が登場します。ガウスの定理やストークスの定理など、電磁気学でおなじみの諸定理も、あくまで1変数関数の微積分の基本定理を拡張したものとして説明されるので、「ああ、なるほど、こういうことだったのか」とストンと胸に落ち、これまでなんとなくバラバラだった「ベクトル解析」と「微分積分学」が頭の中で統合されます。
多様体?
そして本書はその流れにのって「多様体」にも少し触れます。「多様体」なんて、数学科以外の人にはおよそなじみのない抽象概念ですし、まあ私もこのあたりはよくわからないので、きちんと説明することはできませんけど、読んでみると「なるほど。面白いなあ」と思えるので、ぜひ読んでみてください( ...... 適当な解説になってしまった)。