大人のための学び直し数学ガイド
このページではその土台の再構成に必要な書籍を選び抜いて学習順に並べてあります。私自身も数学教育にはとても関心があるので、手を抜かずに最善のものを選んだつもりです。まず小学校の段階です。小学校で学ぶ算数の中で必須となるのは四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)と比の問題です。これに加えて図形に関する常識です。「常識」というのは、四角形・三角形・円の面積の求め方、「三角形の内角の和が 180°である」といった本当に基礎的なことだけで結構です。補助線を使うような手の込んだ問題は頭の体操になりますが、できなくても別に高等数学の習得にとってなんの障害にもなりません。数学は縦積みの学問だということを言いましたが、この「図形」の分野だけはちょっと脇道に置かれているような感じです。ともかく算数では「計算」です。しかしただ「計算できる」ことと、「素早く効率的に計算する技術」の間にはおそろしいぐらいの隔たりがあります。その事実は以下の三冊を読んで実感できると思います。
計算力を強くする―状況判断力と決断力を磨くために (ブルーバックス) 中古価格 |
計算力を強くするpart2―思考の瞬発力を磨くために (ブルーバックス) 中古価格 |
計算力を強くする 完全ドリル―先を読む力を磨くために (ブルーバックス) 中古価格 |
極めて合理的なアプローチで計算を解説しています。およそ考えられる最適(そして最速)の計算技術を習得できます。私自身もこの本を繰り返し読んで計算技術を徹底的に磨きました。たとえば、
112 × 108 = 12096
2427−1698 = 729
1882 = 35344
というような計算が 10 秒以内にできるようになります。あくまで技術ですから特別な才能なんてなくても練習次第で誰にでもできるようになります。比の問題もしっかり扱っています。時間がない人は part1 と part2 で十分です。3冊目の完全ドリルはオプションとして考えてください。これは個人的な見解ですが、著書全体を通して「数の感覚」を掴むことの大切さを強調していてとても好感がもてます。著者の数学に対する信念が内容に統一感を与え、それぞれの章をぎゅっと1つにまとめているという印象を与えます。
十分に計算技術を培った上で中学レベルに進みます。しかし実のところ中学の数学で必須内容は驚くほど少ないのです。正負の数の計算、無理数の概念、1次方程式、2次方程式、1次関数、2次関数。これだけです(もしこれらの内容について十分習熟していると思われるかたは、この段階を飛ばしてそのまま高校数学へ進んでください)。先程と同じ理由で図形の分野はばっさりと捨てて構いません。チェバの定理を必死に覚えたところで、この先の高校数学で使い道なんてほとんどありません。図形は中学数学で結構大きな割合を占めていますから、これを学ばなくていいと思うだけでかなり気が楽になります(念のため言っておきますが、"図形がいらない" というのはあくまで時間のない社会人の方に向けたメッセージです。学生さんは図形の問題に集中して取り組むことで頭を鍛え上げ、その過程で非常に多くのものを得られます。決しておろそかにしないでください)。
で、中学校の数学を学ぶならこの一冊。
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この段階で読むべき良書が少なくてほとんど選択の余地がありませんでした。少し変わっているのが対話形式なところ。しかもこの手の本にありがちなご都合主義的な展開にならず、生徒役が "本当にわからない" というところで立ち止まって、先生はひとつひとつ丁寧に答えてくれます。そしてコラムの内容がとても充実しています! 「負の数同士をかけると、どうして正の数になるのかな?」というようなことをきちんと説明してくれています。基礎的な内容の記述に重点を置いていますから、これを読み通しても数学の難題を解けるようになるわけではないのですが、社会人の皆さんは受験のために勉強するわけではないと思うので、「数学の概念」をしっかり身につけることを心がけてください。おそらく第1段階(計算技術の習得)より、この第2段階のほうが楽です。
さあ、ついに最終段階です!
脅かすわけではないのですが、高校数学の内容は思わず怯んでしまうほどの圧倒的なボリュームがあります。これをひと息に学んでしまおうというのはさすがに無理な話です。ここは焦らずじっくりと腰を据えて1つ1つの単元を丁寧に学んでいきましょう。ここでもやはりお勧めは第2段階で使った本と同じシリーズの「やさしい高校数学」です。
やさしい高校数学(数1・A)―はじめての人も学び直しの人もイチからわかる 中古価格 |
やさしい高校数学 数2・B―はじめての人も学び直しの人もイチからわかる 中古価格 |
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数T、数U、数Vの3冊が用意されています。文系の素養としては数T、数Uの2冊で十分です。数Vは理系の数学ですから、さすがに敷居は高くなります。しかし当ブログの本編を完全に理解するには数Vが必須になりますので余力があれば挑戦してください! 本の内容は中学編と同じスタイルをとっています。他の参考書に比べると本当に記述が丁寧です。
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