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2013年01月22日

オイラーの公式に迫ります(オイラーの贈物 人類の至宝)

オイラーの贈物 〜人類の至宝 e = −1 を学ぶ〜

 

オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ

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 高校生〜大学1・2年あたりを対象に書かれた書籍です。高校数学の参考書として書かれているわけでないのですが、高校数学は未習ということを前提に記述されているので高校生でも読みこなすことができます。内容の半分くらいは高校数学とかぶりますが、残りの内容は大学レベルまで踏み込むので、「学校の授業じゃ全然物足りない」という数学好きの高校生の方や、「高校数学から大学初年度まで体系的に数学の全体構成を見直してみたい」という理工学部の学生さんにお勧めです。

 本書の特徴は「自己完結している」ということです。つまり他の本を参照しなくても、この1冊を丁寧に読み解いていけば、大学1年生までの数学知識を確実に習得することができます。基礎の基礎から丁寧に記述されていますが、その順序は高校数学とは全く異なります。

 「数の種類」の説明から始まって「数列」、「複素数の計算」、「関数」などを解説したあとに、いきなり「微分・積分」について書かれています。それから各種関数(指数関数・対数関数・三角関数)について学んでもらうというユニークな構成になっています。しかし改めて読み直してみると、この構成はとても合理的に思えます。なぜなら最初に微積分の概念を会得してもらうことで、たとえば三角関数のような新しい関数を導入するときに、その導関数や級数展開などをまとめて説明できるからです(高校の数学教科書ではこのあたりがバラバラになってしまっています)。

 第8章で本書が最重要テーマとして扱っている オイラーの公式 が登場します:

eix = cosx + i sinx

 副題に掲げる「人類の至宝」という表現は決して大げさなものではありません。数学者は純粋数学におけるその美しさそのものこそが価値であると断言するかもしれません。しかし、自然科学一般における実用上の利点もまた計り知れないものがあります。特に関数論を多用する物理学の理論構成にはこのオイラーの公式が極めて有効にはたらきます。そしてその物理学を基礎として成り立つ各種工学にも恩恵が及びます。オイラーの公式はまさに現代文明の礎となっているのです。

 本書全体を一貫する様式美はまさに圧巻。初学者むけの数学書としては他に比類ないほどの良書です。参考書とは一味違った「本物の数学」を体感できますので、興味のある人はぜひ一度手に取って開いてみてください。ちなみに巻末の付録にはテンソルやラプラス変換まで載っていますから、実質的には学部2年ぐらいまでの内容を含むかもしれません。文庫版もありますので一応載せておきます。

 

オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ (ちくま学芸文庫)

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posted by Blog Cat at 16:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学書籍
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