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2017年09月25日

「大腸CT検査の日本の実態全国調査」研究におけるバイアスとは!?

おはようございます!
2018年3月11日(日)に金沢で
第12回消化管先進画像診断研究会 (GAIA)
を開催します!!



PubMedから、今日のつぶやき − 78 −

Nagata K, et al. Adverse events during CT colonography for screening, diagnosis and preoperative staging of colorectal cancer: a Japanese national survey. Eur Radiol. 2017 Jul 3. doi: 10.1007/s00330-017-4920-y. [Epub ahead of print]

「大腸CT検査の日本の実態全国調査」論文のご紹介は今回でおしまいになります。
本研究のリミテーションについてみていきましょう。

リミテーションその1
後ろ向き調査であること。
日本での調査に限らず、今までの大腸CT検査の偶発症調査はすべて後ろ向きなんですね。
ということはつまり、どういうことがおこるでしょうか?

1つ目。
施設の記録が必ずしも完全ではない可能性があります。
これはとくに迷走神経反射のような比較的軽微な偶発症で起こりえます。
軽微ゆえ記録が完全ではないことがあるため、
思い出しバイアス(情報バイアス)となり得るのです。

2つ目。
偶発症の発生が多い、あるいは穿孔を経験した施設は、
例え匿名であっても報告したくないという心理が起こりえます。
結果として調査に参加しない。

これらから偶発症の発生頻度が実際より低く算出される可能性は否定できません。

ただし、日本の実態全国調査では、回答率が66%(489/742施設)と十分に高いんです。
諸外国の報告で高い回答率だったのは、イギリスで64%でした。
つまり、後ろ向き調査ではあるけれども、参加施設数は十分に高く、
データの精度が高いといえます。

リミテーションその2
偶発症とその患者背景のと関係の解析ができていない。
全症例の患者背景(年齢、性別、既往歴など)については情報が集められなかったので、
どのような因子が偶発症につながりやすいといった解析はできません。

こうしたリミテーションを排除するためには、前向き調査を行う必要があります。
症例の登録を行っていくというものですが、コストや手間が膨大なため、
現実的にはなかなか難しいですよね。

「今日のつぶやき − 63 −」から続いた偶発症シリーズは、今日でおしまいです。
どの教科書やレビューにもまだかかれていない段階の最新情報をお送りできたと思います。
ラインコミュニティ参加者の特典です〜〜

皆さまのお役に立ちましたら幸いです。
それでは、また〜〜


原文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28674967


ご注意)必ずしも論文の内容をすべて網羅している情報ではございません。詳細にご興味の方は原文をご確認ください。つぶやきは正確な情報発信を心がけますが、その内容を保証するものではないことをどうぞご了承ください。



★★重大ニュース!!━━━━━━━━━━━━━━━
日本消化器がん検診学会とGAIAの共催で実施した
「大腸CT検査の実態全国調査【臨床研究 GAIA-03】」
が放射線領域の代表的なジャーナル
「European Radiology(2016 Impact Factor: 3.967)」
に掲載されました!!
https://link.springer.com/article/10.1007/s00330-017-4920-y

PubMedにも掲載済みですよ
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28674967

委員の先生方に大変」ご尽力いただきました。
ご協力いただいた施設の医師や技師の皆様にも感謝です!
皆さま、本当にありがとうございました!!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★★





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大腸CT検査のポイント集
毎日のつぶやきを経て増えていきますね。

<適応>
・閉塞性大腸がんに対して大腸CT検査は有用だが、手技に工夫が必要。
・完全閉塞症例には「PET/CT colonography」。
・内視鏡の検査待ちの日数を減らす役割もあり。

<腸管前処置>
・内視鏡後にガストログラフィン30mLを服用したら約4時間後に大腸CT検査をしよう。
・自動送気装置の使用は穿孔頻度を下げる。

<腸管拡張>
・右側臥位は最適な腸管拡張を得るためのベストポジションである。
・炭酸ガス自動送気装置は良好な腸管拡張を得るのに有用である。
・ブスコパンは腸管拡張の改善に寄与しない。
・自動送気装置の使用は穿孔頻度を下げる。

<読影>
・読影の飛ばしすぎは読影精度を下げるので要注意。
・トレーニングを積めば、都市部の病院でなくとも高い精度の検査が可能。
・検診目的の大腸CT検査は有症状者に対する大腸CT検査よりも、病変をみつけづらく読影には注意が必要。

<診断>
・C-RADSにおけるC1の5-10年の検査間隔は妥当
・大腸CT検査の中間期癌の頻度は非常に低い(0.1%、2/1429)
・便潜血陽性後から内視鏡を受けるまでの期間が10ヶ月以上になると大腸がん全般・進行がんのリスクが高まる。

<受診者の受容性>
・患者さんの苦痛度は炭酸ガス自動送気装置の使用やブスコパンの使用は影響しない。

<偶発症>
・閉塞性大腸がんでは穿孔のリスクが高くなるので注意しましょう。
・術前検査目的の大腸CT検査の穿孔率は0.028%。
・検診目的の大腸CT検査の穿孔率は0.003%。
・精検目的の大腸CT検査の穿孔率は0.014%。
・穿孔率は術前検査目的に比べて検診目的で有意に低い。
・穿孔症例の81%では外科治療が不要。
・自動送気装置の使用は穿孔のリスクを低減する。




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最新の世界の知識を身につけることで、患者さんに還元するのはもちろんですが、きっと新しい研究の芽も生まれると信じています。
皆でパワーアップしていきたいですね!!


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■読影トレーニングに関して重要なお知らせです。■
ここ数年、ボランティアで読影トレーニングを行ってきましたが、自身の業務が膨大になってきたこともあり、残念ながら永続的に続けることは困難な印象です。
一方で、学会で認定制度の設立に向けた動きが活発化してきました。
そこで申しわけありませんが、読影トレーニングの個人的な実施は今年一杯までとさせていただきたいと思います。。
トレーニングのレポートの受付と解答送付は今年一杯までとさせていただきます。
何卒、ご理解のほどよろしくお願い致します。



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プロフィール
大腸の専門家 ナガイチさんの画像
大腸の専門家 ナガイチ
大腸を専門に外科、内視鏡、画像診断のキャリアがあります。               経歴のご紹介:               1996年 国立医学部医学科卒業。       1996〜2007年 消化器外科、内視鏡医として従事。                    2007〜2011年 ハーバード大学 医学部 放射線科、マサチューセッツ総合病院に留学。 2009年〜国内のナショナルセンターに外来研究員として併任。               2011年 帰国し内視鏡医として従事。     2015年〜国内のナショナルセンターに常勤勤務。 2019年〜某国公立大学医学部医学科の特任教授として働いています。                  資格: 外科認定医・認定登録医、消化器内視鏡認定医・専門医・指導医、消化器病専門医、H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医、消化器がん検診認定医、胃腸科専門医・指導医、アメリカ消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) 国際会員、アメリカ消化器病学会(American College of Gastroenterology) 国際会員                    どうぞよろしくお願いいたします。              ご注意)個人的な病状に関するご相談、診療に準じるご相談にはお答えできませんので、何卒、ご容赦ください。
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