2017年11月28日
Q 大腸CT検査に食事制限は必要? A 必要ありません
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「関西大腸CTセミナー 2018」を開催します!
昨年、大変ご好評をいただきました
日時: 2017年1月20日(土)
場所: 大阪
昨年、ご参加いただいた方にも楽しめるよう、
鋭意、中身の濃い企画をご用意しております。
是非、お越しくださいね。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
PubMedから、今日のつぶやき − 121 −
Bellini D, et al. Bowel preparation in CT colonography: Is diet restriction necessary? A randomised trial (DIETSAN). Eur Radiol. 2017 Aug 10. doi: 10.1007/s00330-017-4997-3. [Epub ahead of print]
「大腸CT検査に食事制限は必要か?」の論文の続きです。
いよいよ、今回で最後です。
昨日の宿題「この論文のリミテーションは何か?」
にお二人の方にお返事いただきました。
ありがとう〜〜
「たかはし のり」さんの解答
*****以下引用(承諾済み)*****
あえて論文自体は全く見ずに、
先生の解説情報だけでリミテーションを考えてみました。
「方法」にサンプルサイズの算出根拠が書かれているとのことですが、
結果として両群合わせて95名は、ちょっと少ないような。
それぞれのスコアの信頼区間を見ると、
相当差が無いと有意差が出なさそう……。
それってどうなんでしょうか。
(それこそMethodちゃんと読もう!って話ですけど)
あと、患者背景に憩室(前に話題になりましたね!)が
ないのも気になりました。
「病変の有無」の所に入ってるのかな……?
*****引用ここまで*****
素晴らしいですね〜〜〜
このあと解説しますね。
続いて、「T橋」さんの解答
*****以下引用(承諾済み)*****
宿題を提出します
この研究のLimitation は
@対象が
有症状の人と無症状の人が
いること
A単施設研究なこと
(5月24日のPickhardt 先生の
研究のLimitation の解説を
参考にしました。)
素朴な疑問
すごい便秘な人もNDRできますか?
20点くらいかなぁ??
*****引用ここまで*****
こちらも素晴らしいですね〜〜〜
二人合わせて100点満点ですよ!!
それでは、論文を見てみましょう。
1つ目のリミテーション。
サンプルサイズが比較的小さいこと。
まさに「たかはし のり」さんの指摘ですね。
『正解』です!!
著者自身も第1に挙げています。
ただですね、リミテーションに挙げてはいますが、
リミテーションにならないんです。
なんか矛盾してるように聞こえますよね。
種明かしは、サンプルサイズのパワーアナリシスを
行っているので全く問題ないのです。
今回の解析対象数は両群合わせて86例です。
それによれば、今回の検討では、72例以上の
サンプルサイズがあれば統計学的に問題ないと
研究デザインを立てる段階で明らかにしているからです。
これはとても大切なことですよね。
無駄にサンプルサイズを大きくしないことは
研究の労力の無駄を省く以外に、
患者さんへの劣る可能性のある介入を
最小限にできるからです。
ということで、サンプルサイズが比較的小さい
ということはありますがリミテーションではないよ
という結論になっています。
2つ目のリミテーション。
便秘の有無や排便習慣が患者背景に考慮されていないこと。
まさに「T橋」さんの解答の3つ目ですね。
この研究では、外来患者さんを含んでいるため、
そうした排便習慣や活動性(運動が少ない人は便秘しやすい)
について調査できなかったとしています。
これは、リミテーションになりえますよね。
便秘という要因は、結果に影響する可能性が否定できないからです。
ただ、腸管洗浄剤や下剤を使用しない大腸CT検査ではなく、
ポリエチレングリコール溶液とタギング目的の
水溶性造影剤を使用していますので、便秘の人であっても
結果は十分に担保できると思います。
そのため、致命的なリミテーションとはいえませんね。
致命的であれば、European Radiologyレベルのジャーナルでは
容赦なくリジェクトとなります。
3つ目のリミテーション。
病変の検出精度の観点での解析を行っていないこと。
大腸CT検査の目的は、病変を検出することですので、
そのアウトカムへの影響の評価がないことは
リミテーションになりえますね。
ただ、両群共に良好な腸管前処置状態であったことから
両群間における病変検出精度への影響はないといえるでしょう。
もし、前処置の状態が異なるという結論になった場合には
問題となります。
前処置の状態の違いが、診断制度に影響するのかが
問題になるからです。
著者らが挙げた、リミテーションは以上になります。
>患者背景における憩室の評価
すみません、私が解説していなかったのですが、
患者背景(Table 2)には両群における「憩室」の
有無を明記されており、両群間で差がありませんでした。
>@有症状の人と無症状の人がいること
病変の検出精度、診断精度について言及する場合には、
問題となりえます。
有症状の人と無症状の人とでは、有病率がことなるため、
基本病変の頻度の高い有症状者が母集団の場合の方が
成績がよくなるからです。
著者らが挙げた3つ目のリミテーションに通じるところが
ありますね。
よい指摘です。
>A単施設研究なこと
もちろん多施設研究の方がバリエーションが出て
より一般化される可能性があります。
食習慣も異なりますよね。
イタリア料理に比べて、和食の方が線維質が多い可能性
もあるでしょう。
つまり、日本の場合、今回の検討結果と異なる
可能性も否定できないわけです。
この意味では正解ですね。
食事の内容が気になりましたので、査読者として、
自分は下記の指摘を著者らにしました。
(私)
Reviewer #2-C2. Materials and Methods
There is no information for low-fiber diet menu.
Were patients instructed to avoid intake of all fiber rich food,
including fruit, vegetables, whole-grain bread,
and whole-grain cereals or given same unified same diet menu?
Please add the basic important information.
(著者)
RESPONSE:
Thank you for your important comment.
A detailed explanation of dietary restriction
regimen has been added in the online appendix.
食事内容を詳細にオープンにしてもらうことで、
各国で一般化できるかどうかの判断にするためです。
また本研究では、送気方法の記載がなかったので、
こちらも私から明記するよう指示させていただきました。
実は手動注入でしたが、アウトカムには影響しないので、
評価には影響しません。
お二人の宿題の解答は素晴らしかったですね。
リミテーションをなぜ解説したかというと
1.研究をはじめる際に、気をつけるポイントになり得る。
2.リミテーションは新規研究のヒントになる。
リミテーションを改善する研究デザインであれば
新規研究にできる可能性があるということですね。
日本でも検査食の必要性についての研究を行いたいと思っています。
マジです!!笑
それでは、また。
ご注意)必ずしも論文の内容をすべて網羅している情報ではございません。詳細にご興味の方は原文をご確認ください。つぶやきは正確な情報発信を心がけますが、その内容を保証するものではないことをどうぞご了承ください。
原文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28812132
★★重大ニュース!!━━━━━━━━━━━━━━━
日本消化器がん検診学会とGAIAの共催で実施した
「大腸CT検査の実態全国調査【臨床研究 GAIA-03】」
が放射線領域の代表的なジャーナル
「European Radiology(2016 Impact Factor: 3.967)」
に掲載されました!!
https://link.springer.com/article/10.1007/s00330-017-4920-y
委員の先生方に大変」ご尽力いただきました。
ご協力いただいた施設の医師や技師の皆様にも感謝です!
皆さま、本当にありがとうございました!!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★★
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大腸CT検査のポイント集
毎日のつぶやきを経て増えていきますね。
<適応>
・閉塞性大腸がんに対して大腸CT検査は有用だが、手技に工夫が必要。
・完全閉塞症例には「PET/CT colonography」。
・内視鏡の検査待ちの日数を減らす役割もあり。
<検診>
・検診目的の大腸CT検査が保険でカバーされることで
大腸CT検査による検診受診率は735%増加した。
・検診目的の大腸CT検査が保険でカバーされることで
大腸内視鏡検査による検診受診率は38%増加した。
・腸管外病変診断による利益・不利益バランスには注意が必要。
<検査食は不要>
・低容量腸管前処置においても、ガストログラフィンを使えば食事制限は不要。
・腸管残渣の状態は食事制限の有無に左右されない。
・水溶性造影剤によるタギングの質は食事制限の有無に左右されない。
・食事制限の撤廃は患者の受容性向上に寄与する。
<腸管前処置>
・内視鏡後にガストログラフィン30mLを服用したら約4時間後に大腸CT検査をしよう。
・自動送気装置の使用は穿孔頻度を下げる。
<腸管拡張>
・右側臥位は最適な腸管拡張を得るためのベストポジションである。
・炭酸ガス自動送気装置は良好な腸管拡張を得るのに有用である。
・ブスコパンは腸管拡張の改善に寄与しない。
・自動送気装置の使用は穿孔頻度を下げる。
<読影>
・読影の飛ばしすぎは読影精度を下げるので要注意。
・トレーニングを積めば、都市部の病院でなくとも高い精度の検査が可能。
・検診目的の大腸CT検査は有症状者に対する大腸CT検査よりも、病変をみつけづらく読影には注意が必要。
<診断>
・C-RADSにおけるC1の5-10年の検査間隔は妥当
・大腸CT検査の中間期癌の頻度は非常に低い(0.1%、2/1429)
・便潜血陽性後から内視鏡を受けるまでの期間が10ヶ月以上になると大腸がん全般・進行がんのリスクが高まる。
<受診者の受容性>
・患者さんの苦痛度は炭酸ガス自動送気装置の使用やブスコパンの使用は影響しない。
<偶発症>
・閉塞性大腸がんでは穿孔のリスクが高くなるので注意しましょう。
・術前検査目的の大腸CT検査の穿孔率は0.028%。
・検診目的の大腸CT検査の穿孔率は0.003%。
・精検目的の大腸CT検査の穿孔率は0.014%。
・穿孔率は術前検査目的に比べて検診目的で有意に低い。
・穿孔症例の81%では外科治療が不要。
・自動送気装置の使用は穿孔のリスクを低減する。
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メルマガタイトル:大腸CT検査アカデミー
http://www.mag2.com/m/0001679515.html
日本の大腸CT検査の知識のボトムアップを狙っています。
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皆でパワーアップしていきたいですね!!
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ライン参加者の皆様も過去の記事を読むのに便利ですよ〜
応援いただけると嬉しいです。
☆☆大腸CT検査ってなあに? 〜大腸がんをへらせるの?〜☆☆
Q&A方式で、一般の方の素朴な疑問に答えます!
ご質問もお待ちしています。
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ここ数年、ボランティアで読影トレーニングを行ってきましたが、自身の業務が膨大になってきたこともあり、残念ながら永続的に続けることは困難な印象です。
一方で、学会で認定制度の設立に向けた動きが活発化してきました。
そこで申しわけありませんが、読影トレーニングの個人的な実施は今年一杯までとさせていただきたいと思います。。
トレーニングのレポートの受付と解答送付は今年一杯までとさせていただきます。
何卒、ご理解のほどよろしくお願い致します。
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いること
A単施設研究なこと
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ただ、両群共に良好な腸管前処置状態であったことから
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もし、前処置の状態が異なるという結論になった場合には
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著者らが挙げた、リミテーションは以上になります。
>患者背景における憩室の評価
すみません、私が解説していなかったのですが、
患者背景(Table 2)には両群における「憩室」の
有無を明記されており、両群間で差がありませんでした。
>@有症状の人と無症状の人がいること
病変の検出精度、診断精度について言及する場合には、
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有症状の人と無症状の人とでは、有病率がことなるため、
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それでは、また。
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原文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28812132
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https://link.springer.com/article/10.1007/s00330-017-4920-y
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