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2014年07月09日

水雲問答(英豪と聖賢)-02

(57)英豪と聖賢

(雲)ー問

英豪の所為は、一時は、行われて、万世に垂(た)るべからず。
聖賢百世を待って疑わず。聖賢はもと英豪なり。
英豪、聖賢ならざるありと朱子の論感服すべし。
聖賢はとても及ばぬことに候。英豪の所為こそ願わまほしきことに候。
跡を践(ふ)まず室に入らずと申す所、また為すべからずと存候。

(水)ー答

両々相比して語的当(てきとう)に候。
英豪をこいねがうは非なるべし。
其資質なくして英豪たらんと欲せば、百事皆敗(やぶ)るべし。
故に聖賢の教、平々地より説き起す。
この意後世の教とすべし。
英豪を以って教とせば、彼の人の子を賊(そこな)うこと多なるべし。

2014年05月07日

水雲問答(英豪と聖賢)-01

(雲)

時を知り、命(めい)を知るは君子帰宿(きしゅく)の処。
万事ここに止(とどま)り申候。
一部の易(えき)此(この)二ヶ条に止り魯論にも、これを知るを
以(もっ)て君子と之れ有り。
時を知るは、外のことにも之れ無く、為すべき時は、図をはずさず、
為すまじき時にせぬのみに候。
命を知るは、その味広遠(こうえん)のことにて、説破(せっぱ)に
及びかね申候。
兎角(とかく)古今身を危うくし、国を滅ぼし申候も、君子の禍に
及び申すも、この二字に通ぜざる故と存候。
実は真の君子にあらぬ故に候。
英豪却(かえ)って此の二条に通じ候故、一時に事を起し
申候ことと存候。

(水)

公論と存候。
英豪は道理を知らず、己の才気より存候。
君子は、義理には心得候えども、多く才気足らざるより見損じ申候。
因(よ)って彼(か)の豪傑の資、聖賢の学と申す二つを兼ねざれば、
大事業を成就仕(つかまつ)らぬ事と存候。

2014年05月06日

水雲問答(大丈夫の志)

(雲)

古今を考え候に、凡(およ)そ功をなし得る迄は苦るしみ、
功すでに成って楽(らく)に赴かんとするとき、諸事背違(はいい)して
心に任せぬことのみ多きやに存候。
謝安(しゃあん)の桓温(かんおん)が在あるとき全からざるを憂い、
符秦(ふしん)の大兵を退(しりぞ)く迄は其の心中深察すべし。
大難既にやみ、功成り名遂げて琅邪(ろうや)の讒(ざん)始めて行わる。
裴度(はいど)が淮西(わいせい)を平げて後、憲宗(けんそう)の
眷衰えたるも同じ事に候。
故に大丈夫直に進む大好事を鋭くなし得べし。
とても前後始終を量(はか)って何事もでき申す間じく候。
一時の愉快を一世に残さんこと、これ予が志なり。
如何如何。

(水)

男子と生まるる者誰か此(この)願(ねがい)なかるべき。
然(しか)れども其(その)位(くらい)と時を得ざれば、
袖手(しゅうしゅ)して空しく一生を過ごすのみに候。
閣下閥閲(ばいえつ)、時世至れば謝裴が業を成し得べし。
凡(およ)そ青年は志鋭(えい)にして、中年に至りて挫催(ざさい)
し易く候。
今より後此の条(じょう)を念々(ねんねん)忘れ給うべからず。

2014年04月23日

水雲問答(勤むるに成りて、怠るに敗るる)

(雲)

人生は勤むるに成りて、怠(おこた)るに敗るるは申す
までも之(こ)れ無く候えども。
勤むるは善きと知りながら、怠り易(やす)き者に之有り候。
且(か)つ識ればいつにてもできると怠り申す類毎(つね)に之有り。
天下一日(いちじつ)万機に候まま、日新(にっしん)の徳ならで
かなわざることに候。
小人の志を得申候も、多くは此処(ここ)より出(いで)申候。
力(つと)むれば能(よ)く貧に勝つと申す古語、おもしろき
やに存じ申候。 聊(いささ)かの事ながら大事に存候。

(水)

いつも出来るとて為(な)さば、学人の通幣(つうへい)多きものに候。
小人栖々(せいせい)として勤め、それが為に苦しめられ候こと、
昔も今も同様に候。
鶏鳴にして起き、じじとして善をなすは切近(せっきん)のことに
候得ども、余り手近過ぎて知れたることよとて、空(むな)しく光陰を
送リ候こと、我人共に警むべきの第一たるは勿論(もちろん)に候。
貴人尚更勤めぬ者に候。
此(か)くの如き御工夫面白く存候。

2014年04月22日

水雲問答(跡あるべからず)

(雲)

大事をなし出すものは必ず跡あるべからず。
跡あるときは、禍必ず生ず。
跡なき工夫如何(いかん)。
功名を喜ぶの心なくしてなし得べし。

(水)

是(これ)も亦是(ぜ)なり。
功名を喜ぶの心なきは、学問の工夫を積まざれば出(いで)まじ。
周公の事業さえ男児分涯(ぶんがい)のこととする程の量にて
始めて跡なきようにやるべし。
然らざれば跡なきの工夫、黄老(こうろう)清浄(しょうじょう)の
道の如くなりて、真の道となるまじ。
細思(さいし)商量。

2014年04月16日

水雲問答(内冑を見せて懸れ)

(雲)

凡(およ)そ人は余り疑い申候ては、ことをなし得申さず。
疑うべきものを疑い、あとは豁然(かつぜん)たるべく候。
尤(もっと)も疑いというものは、量の狭きから起り申候。
それに我が心中を人の存知(ぞんち)候ことを厭い申候は
俗人の情に候。それ故隔意(かくい)ばかり出来、事を敗り申候。
それ事を了するものは、赤心(せきしん)を人の腹中に置き、
内冑を見せて懸かり申すべきことと存候。

(水)

人を疑いて容(い)るること能(あた)わざること、我が心事を人の
知らぬように掩(おおい)い隠して、深遠なることのように心得るは、
皆小人の小智より出(いず)ること云うに及ばず候。
大丈夫(だいじょうふ)の心事、常々晴天白日の如くして、事に
臨むに及んでは、赤心を人の腹中に置いて、人を使うことを
我が手足を使う如くすることこそ豪傑の所為(しょい)ならめ。
是を学ばん、是を学ばん。

2014年04月15日

水雲問答(分別、無分別)


(雲)

分別致候ほど好きことは無いけれども、又今日の上にては
分別者ほど、事を成すことなし。
故に無分別ほど好き者はなしと存候。
無分別にては、大抵のことは押付申候。
小子先年木曾道中を過ぎて、桟道(さんどう)の険を早天(そうてん)
に過候ときは危(あやうき)を知らず、自白に過ぎるときは
恐懼(きょうく)の心甚し。
分別無分別の儀これにて解り申候。
然(しか)しその無分別に仕方あり。
事に臨みて分別を尽くして後、無分別を出(いだ)すべしと存候。
聖人は芻蕘(すうじょう)の言を聞いて後、断ずるに大公至正(しせい)
の心を以てすと存候。

2014年04月14日

水雲問答(軽率の益、精細の害)


(雲)

古今の人軽率に敗るることを知って、その軽率の益多きことを知ず。
精細の益多きことを知って、しかも精細の害甚だしきことを知らず。
大事をなし出さんとする者は、謀(はかりごと)
に精細にして、行に軽率なるべし。
独り大事のみに非ず。
凡(すべ)ての事斯(かく)の如し。

(水)

軽率の字病あり。
濶略(かつりゃく)に易(か)うべし。
是(これは今人(こんじん)頂門のへん針語(しんご)に候。

2014年04月13日

水雲問答(仕損じの跡のしまり)


(雲)

英雄は事を仕損じ申候、直(ただち)に仕損じ中に人を服すること
往々之(こ)れ有り。
唐の太宗(たいそう)高麗(こうらい)征討の節。
不利にして帰路戦死の屍(しかばね)を臨み、
号哭(ごうこく)仕候などの類に候。

(水)

英雄、英雄を知るの論。
太宗の品評適。

2014年04月12日

水雲問答(英雄豪傑)

(雲)

英雄豪傑、一旦は事を済(な)し申候えども、終(つい)に敗れ申候。

(水)

その原(もと)は不学に出ず。

(雲)

治国の果は慰みにてはこれ無く。

(水)

その語病あり。

(雲)

一人の存念より万人の苦楽に相成申す間、右の処とくと相考え、
事を済し申すも、仕損じ候時の跡の取りしまりを付置申候ことと
存候。俗に申候、尻のつつまらぬと申様にては相成らざることに候。
漢武の事を済し申候ことなど、後来(こうらい)に至り取治め宜しく、
社稷(しゃしょく)の為を仕候ゆえ、愛するところの鉤弋をも殺し申候。
跡のしまりなく大事を企て申候ては、却って国の害を生じ申すべく存候。

(水)

天下の事は、始有りて終り無きもの多し。
結局を其の始に定むること最も要緊(ようきん)と為す。
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こういう関係の本は、論語を読んだのが初めて。 それ以降、日本では佐藤一斎の「言志録」や 西郷隆盛の「南洲遺訓」など興味のあるものを 勉強。
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