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2014年03月06日

水雲問答-(大臣の大功者)




大臣の大功を成就仕候人、概率ね忠厚にして大事を断じ申候人やに存候、
漢のカ霍光、宋の韓gの類に候。
何れ忠厚の二字、人臣の忘るべからざるものと存候。
浮薄の輩は大事成りがたく存候。
只怨みと申す一字全く脱却仕らず候ては、人臣、害を免れ中傷を脱し申候こと
覚束なく存候。
怨の一字より大臣、忠あるも終を保ち申さず候やに存候。



忠厚は、特に人臣のみならず、君と雖も此の二字なきときは事業なりがたし。
人倫欠くべからざるのことなり。
浮薄は大事を成しがたし確論なり。
怨は唐土に多くあり。此方少なし。
又軽き者には多くあり。重き者には少なし。
大名の上にては此嫌いますます少し。

2014年03月03日

水雲問答-(執政は権なき)

(雲)ー問

執政は権なきは悪く候。
固(も)と天下のキン衡を掌(つかさど)り申候任ゆえ、威権なくては
かなわざることに候。
権と申して私をなし申し候ことにては之れ無く候。

(水)ー答

宰輔(さいほ)は権無かるべからず。
権なければ国家を鎮圧するに足りず。
若(も)し私心を,以って権を立つれば、即ち人、其の権を恐れず。

2014年03月02日

水雲問答-(権の一字)

(雲)ー問

権の一字、大臣たるものとらでかなわぬ者に候えども、
とかく禍(わざわい)の出来勝手の処に候。
老子の、客となりて主とならずなどと処世の妙(みょう)を
吐露(とろ)仕(つかまつ)候なれども、時に寄り左様ばかり
申し難く、早く握りて早く脱し申候こと第一と存候。
公平に権を握る、禍何に由(よ)りて生ぜんやと存候。

(水)ー答

是は大(おおい)に発明の高論に候。
老子の説より教となり申すべく候。

2014年03月01日

水雲問答-(経と権)


(雲)−問

経国の術は、権略も時として無くばかなわざることにて存候。
あまり純粋に過ぎ候ては人心服さぬこともこれ有るに存ぜられ候。
去りとても権略ばかりにても正を失い申すべく候間、権略を以って
正に帰する工夫、今日の上にて肝要かと存候。

(水)−答

権は人事の欠くべからざることにして、経と対言(ついげん)仕候。
秤の分銅をあちらこちら、丁(ちょう)ど軽重に叶(かな)い候処(ところ)
にすえ候より字義をとり候ことにて、固(もと)より正しきことに候。
仰せ聞けられ候所は、謀士の権変(けんぺん)にして、道の権には
非(あら)ず候。
程子(ていし)の権を説き候こと、近思録に抄出これ有り、
とくと御玩味(がんみ)候様存候。

2014年02月27日

水雲問答-(祝融の災)

(雲)ー問

凡(およ)そ祝融(しゅくゆう)の災(わざわい)、大にして
火勢猛烈たるとき人敢(あえ)えて近づかず。
もし近づくときは、必ず焼爛(しょうらん)す。
一時の火すら斯(かく)の如し。
況(いわん)や季運(きうん)に赴くとき、人是を清めんとする。
愚の甚だしきなり。
花の春過ぎて枯れ行くとき、郭橐駝(かくたくだ)あるとも是を
養うこと候わず。
枯れ行くときは抑えずして、種を来春に残すを識者の業とす。
治国の策また然り。

(水)ー答

太田道灌(どうかん)の詠に、「いそがずばぬれざらましを旅人の
あとより晴るる野路(のじ)の夕立」
如何(いか)にも時を知らで勇往直前する者を戒め候には能(よ)く
申(もうし)とりたる歌に候。

2014年02月26日

水雲問答-(鼻まがりても)

(雲)

後世に至りて節義の風(ふう)おとろえ、俗に申す。
鼻まがりても息さえ出ればと申す風にて、慨歎(がいたん)
仕(つかまつり)候。
此の幣風いかがして矯正仕るべく候や伺いたく候。

(水)

節義の風が衰えて、而しててんでんの俗興(おこ)る。
上(かみ)の人以って、誘(いざな)う所有るに由(よ)るなり。

2014年02月25日

水雲問答-(太平の悪風)


(雲)ー問

泰平の節、天下滔々(とうとう)浮薄軽佻(けいちょう)の風俗をなし申候。

(水)

問(とい)最も力有り。

(雲)

いかがして矯正仕(つかまつ)るべきや。
此の手段を伺いたく候。

(水)

是事(このこと)太(はなは)だ難し。

紀綱を正し、風俗を革(あらた)むるは、此れはく頭となす。

2014年02月24日

水雲問答-(棄物なし)


(雲)

此間(このあいだ)仰(おおせ)下され候無用之用の儀、
成程(なるほど)荘周の名言に候。
事に物に心掛け工夫を仕(つかまつり)候。
近来考えます申候に、天下の事、有用無用もと相持(あいもち)
にて、尽(ことごと)く棄つべからず。
所謂(いわゆる)棄物棄才無き道理に候。
風月詩酒の類も工夫に付けて多益を得申候こと夥(おびただ)
しきやに存候。
を刺すに利刀(りとう)は彼の動くに従ってにぬけ、
鉛刀(えんとう)は動くに従って深く入ると承(うけたまわ)り
及び申候て、始めて感悟仕候。
大事をなす者は有らと有らぬ者を引込、宜(よろしき)に従って
取出し使い申候ことと存候。
如何(いかん)如何。

(水)

此の大手段なきときは大経綸(だいけいりん)は成りがたかる
べくと存候。
牛溲(ぎゅうしゅう)、馬勃(ばぼつ)、敗鼓(はいこ)の皮までも貯え
たるが良医に候。
鶏鳴狗吠(けいめいこうはい)の客、門下にあれば、其の用を成し
候時必ず之有り候。
然れどもあるとあらぬ者を引込候にも少しく弁別なきときは
人に誤らるるの患いその所より発し申候と存候。

2014年02月22日

水雲問答-(才は徳に及ばず)

(雲)

世の中を達観仕(つかまつり)候に、一種の公平温厚底(てい)の人
才も術もなく、しかも高位に居して人心服し天下が安寧(あんねい)
に化すること有るやに存候。
公平の徳大なるが故にいたす所に之れ有るや。
公平の二字は、宰相の人、なくて叶(かな)わざることにて候。
公平温厚の二条はずれて、高位に居て終(おわり)を全くするもの
なきやに存じ候。
是(ここ)を以って見れば、才は徳に及ばぬことと存候。

(水)

上(かみ)に在りて寛ならざるは賢にも見え、上位の人の心得尤もに候。
既(すで)に実の寛厚と申す徳には之れ無く、才智不足にして寛厚に
類する人さえ全く候。
まして才智全備に候て寛厚の徳あらば、
其全き、論を待たずして明(あきらか)に候。
今の人才は寛厚の量なく、苛刻(かこく)に落ち、寛厚に
見え候は皆愚昧(ぐまい)に候。
此所(このところ)を備え候人出で候わば当るもの之れ有るまじく存候。
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こういう関係の本は、論語を読んだのが初めて。 それ以降、日本では佐藤一斎の「言志録」や 西郷隆盛の「南洲遺訓」など興味のあるものを 勉強。
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