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2019年06月06日

ゲーム進行度で父を越してしまう緊張感。

僕が小学生の頃、
父は家にいる時はとにかくイライラしていた。

実際どうだったかはともかく、
印象としては物にあたる回数が多いと感じていた。



当時はファミコンやスーファミで
僕らが寝てからドラクエをプレイするのが日課だったが、

箱にしまってあるゲーム機を取り出す時に
コードが絡まって上手く出せないと、決まって

「ん!んんんー!うーん!」

という鼻息の荒いバージョンみたいな唸り声を上げて
コードをぐちゃぐちゃにしていた。



土日はたまに、昼間からゲームをすることもあったが、
コードの出し入れや、落ちている物につまづくと
やはり同じ唸り声でイライラを爆発させていた。

そんな父を見て、母は冷静に
「いつものことだから」と、気にしない様子だった。



僕もドラクエが大好きになった。

プレイできるのは2日に一度、
18時までの間かつ父のいない間に1時間
という謎のゲームルールが定められていたが、

ほぼ毎晩、2〜3時間プレイしている父より
先にクリアしてしまうことが多かった。

特別上手いわけでも、攻略本を見たわけでも、
最短や低レベルクリアを目指したわけでもない。

初めてこれをやってしまった時は混乱した。



小学校を卒業するまでは、21時までに布団に入らないと
押し入れに閉じ込められるペナルティを課されていた。

※「懲罰教育、ルールが支配する家。
https://fanblogs.jp/yaritaikotohanokosazuyaru/archive/155/0

21時に布団へ入っても、しばらくは眠れない。

父以外は寝室へ入り、音量を下げているとはいえ
ゲームの音は聴こえるので、寝ずに聞き耳を立てていた。

街へ入り、町人の話を丁寧にメモに取り、
情報を集めて慎重に進めている割には、

1週間くらい同じ街、同じダンジョンのBGMで
同じボスと戦っては敗退していた。

じっくり進めてるのか、勝っても再挑戦してるのかと
最初は深読みしていたが、毎ダンジョンこうなので
ただ負けているだけと判明した。



同じダンジョンをクリアできないまま5日目くらいになると、
例によってイライラしている時の唸り声が
寝室の戸を1枚隔ててしょっちゅう聞こえてきた。

これも怖くて、21時に布団に居ても寝ないまま、
どうか早くそのダンジョンをクリアして先へ進めてほしい、
そのイライラ声を聞きたくないと怯えていた。



ドラクエ3、4、5、6とこれが続く中で印象に残ったのは、
父は勉強以外のことは非常に不器用ということ。

実際のゲームの腕はもちろん、
ゲーム機の取り出し、コードの繋ぎ合わせに至るまで、
とにかく机に向かってすること以外はとても不器用に映った。

そんな父が家にゲーム機を導入したことは意外だったが、
高度な操作を要求するわけではないRPGでこの様子だと、
今までの人生、本当に勉強しかして来なかったのかと疑った。



当時のドラクエはゲームスタート時、
冒険の書(セーブデータ)が3〜5つ、
主人公のレベル、滞在中の街の名前と一緒に表示されていた。

僕のセーブデータの方がレベルが高くなったり、
父よりも先の街の名前が表示されるのが怖くなった。

ゲームの進行度で越されたことで
僕に八つ当たりをすることはなかったが、
毎晩の唸り声の頻度は増した。

ゲーム以外でも、家にいる時の沸点が下がり続け、
例えば何かに少しぶつかったりすると高確率で発せられた。

僕は幼いながら、父は上手くできない自分に対して
怒りを向けてイライラしてるんだろうなと思った。



今から考えればワーカホリックな高校教師は
徹夜で採点や授業の準備ばかりしていて
ストレスが相当溜まってたんだろう。

お酒もそれなりに飲んでいた。

10歳前後だった僕から見ても、机に向かっている時以外は
あらゆることに不器用で、そんな自分に苛立っていたのかも知れない。

だけど、誰かが常にイライラしている空間で
ずっと過ごしたいと思う人は少ない。僕は過ごしたくなかった。



確かに直接的な暴力はしなかった。

だけど、父のイライラがいつ爆発するかに怯えながら、
誰も明確な言葉を発するでもない緊迫した空気の中、
戸を1枚隔てて過ごした時間をどう表現すればいいんだろう。

自分や母へのはっきりわかる八つ当たりが無いことが、
逆に「何をされるんだろう」と不気味さを増していた。

少なくとも、家というのは安心できる空間ではなかった。



家にアルコール中毒の人間がいるというのは、比喩的にいうならば、
リビングルームに恐竜が居座っているようなものである。

(中略)

そういう家庭においては、「嘘」「言い訳」「秘密」が
空気のようにあたりまえのことになっており、
それが一緒に暮らしている子供に計り知れない情緒の混乱を引き起こす。


「毒になる親」第四章”アルコール中毒の親” より


アルコールに関しては、中毒と呼べるほど
過剰に摂取していたかどうかわからない。

これはまた別の記事でじっくり書きたいと思っているが、
いつイライラが爆発するかわからない緊張感はまさに
「リビングルームの恐竜」という表現がぴったりだ。



ドラクエ3から始まり、
この気まずいレースの最後となったシリーズはドラクエ7。
気がつけばプレイステーションになっていた。

ドラクエ7は早朝5時に起きてこっそりやり込んだ結果、
レベル99になってしまった。

→「父との関係。(3) -高校1〜2年-
https://fanblogs.jp/yaritaikotohanokosazuyaru/archive/16/0

この頃になると、小・中と結局
自分に直接の八つ当たりがなかったことで
父のセーブデータの強さを上回ることへの抵抗は少し減っていた。

だけど今思うと、心置きなくゲームを楽しめない、
父の進行度に一喜一憂したり怯えたりする家の空気は
やっぱり正常なものではなかった。


posted by 理琉(ワタル) at 15:10 | TrackBack(0) | 家族

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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