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2022年08月16日

【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』7

⇒ 『魔王の娘は解放された』6からの続き


ー目次ー
【PART9 残酷すぎた真実】
【PART10 ニンゲンからの解放 前編】

【PART9 残酷すぎた真実】

<王城・城門前>

魔族少女
「本当に正面から行くんですか?」

勇者
「うん。できれば王さまから直接、真実を聞きたい。」

魔族少女
「さすがにハンター組織のことまでは…。」

勇者
「いざとなったら『真実の口』を使う。」

魔族少女
「自白の魔法!? ニンゲンの世界では習得も使用も禁忌のはずでは?!」
「どうして勇者さんが使えるんですか?」

勇者
「昔、お城の図書館で偶然、魔導書を見つけたんだ。」
「誰にも知られないよう修練して覚えた。」

魔族少女
「理由はやはり、ご両親のこと…でしょうか。」

勇者
「うん。子ども心に知りたかったんだ。」
「お父さまとお母さまは、本当に私を愛していたのかを。」
「結局、使う勇気は出なかったけどね。」

魔族少女
「…本当にいいんですか?」
「万が一、自白魔法を使ったとバレたら反逆罪になるかもしれませんよ?」

勇者
「構わない。 もう私には帰る場所がないから。」
「それに、私によくしてくれた魔族のみんなの力になりたい。」

魔族少女
「勇者さん…。」

勇者
「王さまのところには私1人で行くよ。」
「きみを敵陣の真ん中へ連れて行きたくないから、ここで待っていてほしい。」

魔族少女
「私も行きます! 勇者さんのお仲間として!」

勇者
「…ありがとう。それじゃあ一緒に行こう。」


ーーーーー


警備兵
「ゆ、勇者さま!」

勇者
「お久しぶりです。」

警備兵
「魔王に敗れたとの噂も聞いていましたが、よくぞご無事で!」

勇者
「旅の報告をしたいんですが、王さまに謁見できますか?」

警備兵
「もちろんです! すぐに城内へ話を通しましょう!」

勇者
「ありがとうございます。」

警備兵
「隣の方はお仲間ですか?」

勇者
「え、えぇ。」

魔族少女
「よ、よろしくお願いします。」

警備兵
「よかった! お1人で旅立たれ、とても心配しておりました!」

勇者
「あはは…兵士さんたちに鍛えてもらったおかげで生き残れましたよ。」

警備兵
「懐かしいですね。あの頃から勇者さまはお強くて…。」
「私などすぐに追い抜かれてしまいましたね。」
「それでは城内へお通しします。お入りください。」

勇者
「ありがとうございます。それでは。」

<王城・謁見の間>

国王
「よくぞ無事に戻った! 勇者よ!」

勇者
「王さま、謁見を許可していただき感謝します。」

国王
「よいよい。魔王に敗れたとの噂もあったが、さすがは勇者よ。」
「それに頼もしい仲間を引き連れて戻るとは恐れ入る。」
「して、魔王討伐の道のりはどうだ?」

勇者
「はい。魔王領のある東の大陸へ渡り、魔王城へ到達しました。」

国王
「ほう! では魔王を倒したのか?」

勇者
「…私は…魔王に敗れました。」

国王
「なんと! ではどうやって生きて戻ったのだ?」
「それとも、お主は亡霊の類か?」

勇者
「魔王は私を生かしました。」
「そして、私にこう言いました。」
「『魔物ハンターの調査に協力してほしい』と。」

国王
「…魔物ハンターだと?! なぜ魔王がお主にそのようなことを?」

勇者
「それは…わかりません。」
「ですが、魔王は彼らが身につけていた魔封じの武具に疑問を持っていました。」

国王
「魔封じの武具…!」

勇者
「私は東の王国で魔物ハンターの取引現場を目撃し、戦いました。」
「彼らが身につけていた武具には…この国の紋章が入っていました。」

国王
「な…何だと…?!」
「(まずい…! もしやバレて…?!)」

勇者
「私はこの国の兵士さんに訓練してもらいました。」
「東の国で戦ったハンターの動きは、この国の兵士さんとそっくりでした。」
「それは魔物ハンターたちも、この国で訓練を受けているからじゃないでしょうか。」

国王
「…そ、それは偶然だな。そやつらと我が国の兵士の流派が似ているとは…。」

勇者
「魔封じの武具に触れたとき、魔力が吸い取られました。」
「あのときに感じた魔力の流れは、この国の魔導士さんとそっくりでした。」

国王
「…ま、まぁ魔力の修練にはいくつか基本型があるからな。」
「同じ型で修練したのだろう。」

勇者
「…そうですか…。」

魔族少女
「(勇者さん…。 使ってしまうんですね…。)」

勇者は『禁忌・真実の口』を唱えた!

国王
「ワ、我が国が魔物ハンターを組織しタ。」
「ハンターの訓練モ、魔封じの武具の作成モ、我が国で行っていル。」

勇者
「どうしてそんなことをするんですか?」

国王
「人間が優勢な今、我が国が世界をリードするためダ。」
「魔族に追い打ちヲかけ、人間の復讐心を満たせば、多くの支持を得られル。」
「魔族の売買というビジネスで、雇用も増え、他国の経済も潤う。」

勇者
「…私が勇者候補者として引き取られた孤児というのは本当でしょうか?」

国王
「本当ダ。お主の家は勇者の家系であり、勇者育成の担当官ダ。」

勇者
「勇者育成の担当官?!」

国王
「魔族との軋轢は根深イ。」
「誰かを勇者として立てなければ国民が納得しないノダ。」
「国王である私の責任問題になっては政権の維持もままならぬ。」

勇者
「(…ギリッ!)」

魔族少女
「勇者さん…落ち着いて…!」

国王
「勇者として魔王を打ち倒せれバ、それでよシ。」
「たとえそれが果たせずとも私の面目は保てル。」
「気の毒だガ、これも我が国の名誉のためダ、悪く思うな。」

勇者
「…う…!」

勇者は腰に挿した剣に手をかけた!

魔族少女
「待って勇者さん!」 ガシッ

勇者
「…!?」

魔族少女
「つらいお気持ちはわかります。」
「ですが抑えてください!」
「ここで手を出したら彼らと同じになってしまいます!」

勇者
「…フー! フー! …ありがとう…止めてくれて。」

勇者は『禁忌・真実の口』を解除した!

国王
「ハッ! ゆ、勇者よ。私はいま何を…? 思い出せぬ。」
「と、とにかく魔王討伐の旅は順調と聞いて安心したぞ。」

魔族少女
「…。」

勇者
「…はい。世界平和のために力を尽くしてまいります。」

国王
「うむ。道中、気をつけて行くのだぞ。」

勇者
「(…ポロ…。ポロポロ…。)」


ーーーーー


その後、私は勇者さんの肩を抱きかかえ、王城をあとにしました。
彼女はお城を出るまでは気丈を装っていました。
が、間もなく彼女の顔は真っ蒼になっていました。

あまりにも残酷すぎた真実。
私には、勇者さんの心が砕け散る音が聴こえた気がしました。

私が止めたときの、憎しみに満ちた勇者さんの表情。
あれはきっと、彼女がニンゲンとして最後に見せた表情なのでしょう。

「運命に翻弄された少女」
そんな言葉ではとても表すことはできませんでした。

私は、ニンゲンであることに絶望した少女の心と身体を、
精一杯、抱きしめました。

【PART10 ニンゲンからの解放 前編】

<数日後、魔王城>

魔王
「勇者の様子はどうだ?」

魔族少女
「泣き疲れて…眠ったところです。」
「戻ってからお食事もほとんど取ってなくて…。」

魔王
「それだけショックが大きかったか。無理もない。」
「あの若さで大きな運命を背負わされた挙句、簡単に裏切られたのだからな。」

魔族少女
「はい…。あまりにもかわいそうで…見てられませんでした。」

魔王
「ニンゲンとは何と欲深く、利己的な生き物だろうか…。」
「血がつながっていないとはいえ、我が子として育てた者さえ捨てるとは。」

魔族少女
「勇者さんは『もう帰る場所がない』と言って、自白魔法を使いました。」

側近
「ニンゲン界では禁忌の魔法…。」
「それだけの覚悟を決めていたんでしょうね。」

魔族少女
「おそらく…。」

魔王
「お前もよく敵陣深くから帰ってきてくれたな。」
「お前の勇気ある行動のおかげで真実を知ることができた。感謝している。」

魔族少女
「魔王さま…ありがとうございます。」

魔王
「勇者が目覚めたら話したいことがある。」
「悪いが引き続き彼女を看てやってくれ。」

魔族少女
「もちろんです。」

魔王
「側近よ。」

側近
「はい。心得ております。魔王さまならそうなさるでしょう。」

魔王
「ははは、さすがだな。私の考えなどお見通しか。」

側近
「長くお傍におりますから。」

魔王
「賛成してくれるか?」

側近
「もちろんです。」
「魔族はもちろん、ニンゲンにとっても最良の結果になるでしょう。」

魔王
「感謝する。では勇者の目覚めを待とう。」

側近
「はい、魔王さま。」

<翌日、魔王城・謁見の間>

魔王
「あの娘から話を聞かせてもらった。つらかったな。よく帰ってきてくれた。」

勇者
「『帰って』って…。どういうこと?」

魔王
「お前は『帰る場所がない』と言った。」
「ならば、ここを新たな”帰る場所”にするのもよいだろう。」

勇者
「え?!」

魔王
「単刀直入に言おう。」
「お前さえよければ我らの、魔族の仲間になる気はないか?」



⇒ 『魔王の娘は解放された』8 -最終回- へ続く



【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』1

【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』2

【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』3

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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