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2022年08月08日

【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』3

⇒ 『魔王の娘は解放された』2からの続き


ー目次ー
【PART4 魔物退治の真相・後編】
【PART5 東の大陸への航海・前編】

【PART4 魔物退治の真相・後編】

魔族少年
「おねえちゃんお願い!」
「お母さんを連れて行かないで!」

魔族母
「私は退治されても、売られても構いません!」
「お願いです! この子だけは助けてください…!」

勇者
「……………。」
「……私は………。」
「……私は一体、何のために…?………」

(私は勇者として、誰を救えばいいんだろう……………?)

<北の洞窟>

勇者
「ねぇ…少し遠いんだけどさ。」

魔族母
「え…?」

勇者
「ここから東、王都よりも北へ行くと大きな森がある。」
「そこならきっと仲間もいるし、食べ物にも困らないと思う。」
「移住してみてはどうかな?」

魔族母
「わ、私たちを退治しないんですか…?」

勇者
「私にそんな資格はないよ。」
「確かに街の物資に被害はあったけど、
 元はと言えばあなたたちを追いやった人間に責任があるから。」

魔族母
「…他のニンゲンは私たちを欲望の目で見てきたのに、あなたはまったく違いますね。」
「とても……きれいな目をしています。」

勇者
「ありがとう…。」
「仲間のことは本当にごめんね。」
「人間をそういう生き物と思っても無理ない。」
「でも、悪い人間ばかりじゃないってことも知ってほしいんだ。」

魔族母
「あなたが謝ることなんて…。」
「お顔を上げてください。」

勇者
「…うん……。」
「この洞窟にもきっと人間の手が伸びる。」
「だから、どうか逃げ延びて。」

魔族母
「あ、ありがとうございます。」
「あなたのようなニンゲンに会えたこと、忘れません!」

魔族少年
「おねえちゃんありがとう!」
「またね!」

勇者
「うん、またね!」

勇者
「これで………良かったのかな…?」
「人間が魔物を捕らえて売るなんて。」
「あのとき戦った賊どもと同じ…。」

「悪いのはどっちなの…?」
「人間は、魔物は………どうして争ってるの…?」

<翌朝、町長の家>

町長
「そうですか…。」
「魔物は退治せず、逃がしたのですね?」

勇者
「はい、ごめんなさい町長さん…。」

町長
「とんでもない。」
「あなたは魔物の脅威を取り除いてくれました。」
「それだけでも感謝しています。」

勇者
「ありがとうございます…。」
「彼らには人間を襲う気はありませんでした。」
「むしろ人間に襲われ、住処を追われ、仕方なくやっていました。」

町長
「なんと…!」

勇者
「彼らが洞窟にいたのは、住処の森を人間が襲ったからでした。」
「それは魔物を捕らえて売りさばくため…ではありませんか?」

町長
「…どうやらあなたに隠し事はできないようですね。」
「実は…魔物退治というのは建前だったんです。」

勇者
「魔物退治は、建前…?」

町長
「本当はあなたの言う通り、魔物を捕らえるためです。」
「魔物ハンター組織からの指示で…。」

勇者
「詳しく聞かせてくれませんか?」

町長
「わかりました。」
「その前に、あなたはこの街へ来るのは初めてですか?」

勇者
「はい。活気にあふれたすばらしい街だと思います。」

町長
「そうですか…。」
「この街は表向きには栄えているように見えるでしょう。」
「ですが実態は隣国同士の取り合いに巻き込まれる、非常に不安定な土地です。」

勇者
「領土問題ですか?」

町長
「はい、立地的に中継貿易の要所ですから、街は常に利権争いの渦中にあります。」
「各国の文化が融合と言えば聞こえはいいですが、実際には差別も格差も大きい。」

勇者
「あの美味しい料理のウラに、差別や格差が…。」

町長
「その上、この街には他に大した産業も資源もありません。」
「だから少しでも魔物の脅威が増せば、この街はたちまち孤立し、貧困が蔓延します。」

勇者
「常に争いや貧困と隣り合わせなんですね…。」

町長
「ええ…。」
「だから住人の生活を守るためには、魔物の売買を手放すわけにはいかないんです。」

勇者
「…そんな事情が…。」

町長
「それに、魔物ハンターの多くがこの街の出身者です。」
「ほとんどが孤児です。」

勇者
「魔物ハンターの多くが孤児…?」

町長
「親の命を魔物に奪われた子や、親に捨てられた子、
 この街で差別や格差に苦しんだ子が組織に拾われています。」
「そして、彼らはその復讐心を魔物の捕獲に向けているんです。」

勇者
「復讐…。」

町長
「間違っているのかもしれません…。」
「ですが、現実にはそういう子たちの居場所であり、生きる糧にもなっているんです。」

勇者
「魔物ハンター組織が……唯一の居場所…。」

町長
「私はこの街の長でありながら、彼らに何もしてあげられなかった。」
「相手が魔物とはいえ、誰かが不幸になる選択でしか、街を守れなかったんです。」

勇者
「………町長さん…。」

町長
「何でしょう?」

勇者
「この街に孤児院はありますか?」

町長
「孤児院ですか?」
「ありますが、現状では数が少ないです。」

勇者
「この街に孤児院を増やしていくのはどうでしょう?」
「居場所を失ってしまった子のために。」

町長
「ほう、孤児院の増設ですか。」

勇者
「はい。」
「この街を恵まれない子たちを受け入れる場所にするんです。」
「そうすればきっと雇用も増えて、治安も格差も改善できると思います。」

町長
「すばらしいお考えですね。」

勇者
「あ…ご、ごめんなさい!」
「差し出がましいことを言ってしまって。」

町長
「とんでもない。」
「私は今まで問題を見て見ぬふりをしていました。」
「これからはあの子たちの居場所を作る手助けをしていこうと思います。」

勇者
「よろしくお願いします、町長さん!」

町長
「…あなたはとても、優しい目をしていますね。」
「まるで世界を救う勇者さまのような、慈愛に満ちた目を。」

勇者
「わ、私が?!」
「そそそそんな…私はただの旅の者です…!」

町長
「ふふふッ、そういうことにしておきましょう。」

勇者
「な、何かおっしゃいましたか?!」

町長
「何でもありません。」
「旅のお方、どうぞ心ゆくまでこの街を楽しんでください。」
「美味しい料理店をご紹介しましょう。」

勇者
「あ、あり、ありがとうございます!」

<魔王城>

魔族少女
「魔王さま、ただいま戻りました。」

魔王
「よく無事に戻ってきてくれた。」
「今回の任務では大変な目に遭ったと聞いたぞ。」
「例の女勇者に助けられたそうだな。」

魔族少女
「はい、彼女は種族の分け隔てなく私を助けてくれました。」

魔王
「ニンゲンも千差万別か。」
「他罰的で、自己顕示欲の亡者、ばかりでもないな。」

魔族少女
「ええ、彼女はそんなニンゲンには見えませんでした。」

魔王
「お前が言うのなら信用できるな。」
「我らとて、これ以上の争いなど望んでおらん。」
「何千年も続く復讐合戦に疲れ切っている。」

魔族少女
「私も…できればニンゲンと争いたくはありません…。」

魔王
「まったくだな…。とはいえ今はニンゲンが優勢だ。」
「何度も和平交渉をしてきたが、奴らは一向に聞き入れぬ。」

側近
「それに、魔族の中にも復讐を叫ぶ者たちがいます。」
「ニンゲンとの戦いで家族を失った者もいます。」
「彼らに『ニンゲンを恨むな』と言っても難しいでしょう。」

魔族少女
「もしニンゲンに捕まっていたら……。」
「きっと私も彼らを恨んだと思います…。」

魔王
「無理もないな。」
「互いの復讐心を断ち切るには歴史を重ね過ぎた。」
「…とにかく、今回は危険な任務をよくやってくれた。」
「今は養生してくれ。」

魔族少女
「魔王さま、1つ気になることがあります。」

魔王
「何だ?」

魔族少女
「私を追ってきた魔物ハンターたちには魔法が通じませんでした。」
「4人とも魔法の素養がなかったのに。」
「魔法を無効にする武具か装飾品を身につけていたのかもしれません。」

魔王
「魔封じの武具か。」
「あれを作れるニンゲンは大魔導士レベルの使い手に限られる。」
「となると、奴らがどこから魔法具を手に入れているかも調べる必要があるな。」

魔族少女
「それに、彼らはまるで訓練されたような動きでした。」
「私もあっという間に追い詰められました…。」
「いくら数が多くても、ニンゲンが魔族を簡単に捕らえられるでしょうか?」

魔王
「賊どもの集まりにしては統率が取れすぎている、ということか。」

魔族少女
「はい、もしかしたら彼らのバックにはもっと大きな組織があるかもしれません。」
「その組織がニンゲンを集め、訓練しているのでしょう。」

魔王
「やはり、ただの野盗ではないようだな。」
「…側近よ。」

側近
「はい。」

魔王
「私はこれから魔法具についての文献を当たる。」
「魔法具への対抗策も練っておこう。」
「情報が出揃い次第、お前には新たな調査部隊の編成を頼みたい。」

側近
「かしこまりました。準備いたします。」
「魔術に長けた者たちにも協力を仰ぎましょう。」

魔族少女
「魔王さま! 側近さま!」
「私もその部隊に加えてください!」

魔王
「…わかった。」
「だが無理はするな、まずはそのケガを治せ。」
「その後で合流してもらおう。」

魔族少女
「魔王さま、ありがとうございます!」

魔王
「やれやれ…側近といい、こやつといい…。」
「休めと言っても聞かぬ者ばかりだ…。」

側近
「それだけ魔王さまをお慕いしている者が多いのですよ。」

魔王
「ああ………。」
「実に…嬉しい悲鳴だ…。」

【PART5 東の大陸への航海・前編】

<港町>

勇者
「着いた。潮風が気持ちいいなぁ。」
「それに、大きくて立派な船があんなに並んでる。」
「私、剣と魔法の修行ばかりで、世界のことを何も知らないな…。」

「また酒場へ行ってみよう。」
「船乗りや商人さんから話が聞けるかもしれない。」

<港町・酒場>

マスター
「魔王の情報ですか?」

勇者
「はい。船乗りや商人さんから、何か聞きませんか?」

マスター
「そうですねぇ。」
「少し昔の話ですが、かつては海を渡った東の大陸に魔王の領地があったそうです。」

勇者
「東の大陸に魔王の領地が?」

マスター
「えぇ。今もそうかはわかりませんがね。」
「昔の船乗りは東の大陸への航路をもっとも恐れてましたよ。」
「魔王の本拠地へ乗り込むようなものですからね。」

勇者
「確かに危険な航路ですね…。」
「今は東の大陸への船は出てるんですか?」

マスター
「出てますよ。1週間ほどの航海で着きます。」

勇者
「貴重な情報ありがとうございます!」

マスター
「行くなら気をつけてくださいね。海上にも魔物は出ますから。」
「まぁ、あなたは強そうですし大丈夫でしょう。」
「最近は船が沈められたって話も聞きませんしね。」

勇者
「商船が魔物に襲われることがあるんですか?」

マスター
「ええ。昔はしょっちゅうでしたよ。」
「今は船が襲われても撃退したという話がほとんどですね。」

勇者
「よ、よかった…。」

船乗り
「よう、姉ちゃん。」

勇者
「わわッ! は、はい!」

船乗り
「話は聞いてたぜ、魔王を倒してぇのか?」

勇者
「そ、そうです!」

船乗り
「へぇ、まるで勇者さまじゃねぇか。」
「せっかくだがな、今となっちゃ魔王なんて大したことねぇ。」
「魔物の残党だってハンターの手にかかりゃあ楽勝だ。」

勇者
「魔物ハンター…ですか?」
(西の街の町長さんが言ってたあいつらだ。)

船乗り
「あぁ。まだ街の外にも海にも魔物は出やがる。」
「だが魔物ハンターの奴らが捕まえてくれる。」
「おまけにそいつらを売りさばいて街を潤してくれる。」

勇者
「魔物ハンターが船を守ってるんですか?」

船乗り
「まぁ、『Win-Winの関係』ってやつだな。」
「俺らは航海の安全を守ってもらえる、あいつらは商売がはかどる。」
「特に東の大陸行きは1番おいしい航路だろうな。」

勇者
「東の大陸行きが…。」
「次に船が出るのは何日後ですか?」

船乗り
「次の出港は3日後だ。」
「行きたいなら港へ行って頼んでみな。」
「マスターの言う通りあんたは強そうだ、乗せてくれるだろ。」

勇者
「ありがとう、船乗りさん!」

<3日後、海上>

勇者
「…キョロキョロ…。」
「うーん…乗客はほとんど商人かな?」
「西の街で戦ったような人はいないみたい。」

船員
「へぇ、こりゃ珍しいお客さんだな。」
「あんた、商人じゃないみたいだが、東の大陸へ何しに行くんだい?」

勇者
「魔王を倒すためです。」

船員
「魔王を倒すのかい、ご立派なもんだ。」

勇者
「かつて魔王の拠点が東の大陸にあったと聞きましたが、本当ですか?」

船員
「あぁ。今もあるみたいだぜ。」
「最近はすっかりおとなしくなっちまったがな。」

勇者
「今でも船が魔物に襲われることがあるんですか?」

船員
「あるぜ。昔よりましになったがな。」
「まぁ、もし魔物が現れても大丈夫だ。」
「なんたってこの船には…。」

甲板員
「魔物だぁ! 魔物が出たぞぉ!」

船員
「おっと、出やがったな。」
「危険だからあんたは船室へ入ってな!」
「まぁ加勢してもいいが、出る幕はねぇぜ!」

勇者
「大きい………あれが海上の魔物…!」
「私も加勢に!」

ダダダッ

勇者
「…近くで見ると山のようだ…!」
「命を奪いたくはないけど、船を沈める気なら仕方ない!」
「はぁぁぁぁぁ!」

シュッ!

勇者
「…え…?!」
「あれは……乗客の商人?!」

ズバッ! ザシュッ!

勇者
「強い! あんなに大きな魔物を簡単に…。」
「それに戦い慣れてる。」
「まるで王都の兵士さんみたいな、きれいな連携…!」
「……ハッ!」

フワッ

勇者
「この空気は……!」
「魔力が動く!」
「危ない! 冷気魔法が来る!」

ビュオォォォ!

「遅かった…!!」
「……え?! 効いてない?!」

商人?は魔法陣を展開した!

勇者
「あれは捕縛の魔法陣と……体力を吸い取る魔法……!」
「とどめを刺さずに捕獲するつもり?!」
「もしかして………あの商人たちが魔物ハンター?!」



⇒ 『魔王の娘は解放された』4へ続く

⇒PART3動画版はこちら


【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』1

【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』2

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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