はい。こんばんは。土斑猫です。
お待たせしました。アニメ学校の怪談二次創作掲載です。
何とか今週中に間に合いました。
短いけどねorz
それではいつも通り、下の”続く”からどうぞ♪
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―7―
「グェエエエエエエエッ!?」
「レオ君!?」
「お、おい!?」
像が砕けた途端、叫び声を上げながら、レオが昏倒する。
しかし、皆がそれに気を取られるのもほんの一瞬。
次の瞬間―
オォオアヴァアアァアアア・・・!!
怖気の走る叫びが響く。
「!!」
皆の視線が走る先。
そこにあるのは、たった今木っ端微塵になった御神体。
その破片から、ザワザワと大量の髪の毛が這い出してきていた。
それを見た皆の顔から、血の気が引く。
「ち・・・ちょっと、これ・・・」
「や、やばいんじゃねぇか・・・?」
「桃姉ちゃん!!離れて!!」
敬一郎の声に、慌てて下がる桃子。
そんな彼女らの目の前で、髪の毛は寄り集まり何かを形作っていく。
「は、早く逃げねぇと・・・」
「で、でも、“これ”このまんまにしてていいの!?」
「そ、そんな事言ったってよ、どうしようも・・・」
「・・・大丈夫ですわ。」
「「「!?」」」
不意に桃子の口から放たれた言葉に、皆が耳を疑う。
「も、桃子ちゃん!?」
「だ、大丈夫って・・・!?」
「・・・・・・。」
皆の疑念の声には答えず、桃子は何かの確信を持った様な眼差しで前を見据える。
ウヴゥァアアァアアアア・・・
その視線の先で、響く怨声。
蠢き、寄り集まった髪の毛が、ブルブルと戦慄く様に震える。
ゾゾゾゾ・・・
やがてその中から生えてくるのは、枯れ木の様に痩せ細り、干土の様に赤黒くひび割れた手足。
人としての関節の在り様を無視し、螺子くれる様に動いたそれらがギシリと軋んだ音を立てて地面を噛む。
ギシギシ・・・ギシギシ
乾いた骨と骨を鳴らしながら、四本の手足がギギギ・・・と萎びた髪に覆われた身体を持ち上げる。 そして―
ゴル・・・ゴル・・・ゴリュ・・・ゴトン・・・
重い音と共に、俯いた頭部が地面に落ちた。
「「「「・・・・・・。」」」」
その異様に、息を飲む皆。
アァア゛アァアアアアアア゛・・・
再び響く声。
低く。
昏く。
冷たく。
悲しく。
生きとし生けるもの、全てを憎悪する声。
クワンクワンと割れ鐘の様に響き渡るそれに、皆の足が竦む。
桃子は動かない。
レオは昏倒したまま。
そして、この距離。
もう、逃げる術はない。
さつきの頬を、冷たい汗がすべる。
怯えて泣きじゃくる敬一郎を抱き締めたのは、彼を守るためか。それとも己の恐怖の拠り所を求めるが故か。
ア゛ァア゛ァアアアア・・・
また響く声。
ギギギギギ・・・
それと共に、その身体が不自然に螺子くれていく。
ギギ・・・ギギギ・・・ギギギギギ・・・
まるで、バネを捻じ込む様に軋み込んでいく身体。
「く・・・来る・・・」
さつきがそう呟いた瞬間―
ギィビャンッ
錆びたバネが弾ける様な音とともに、その身体が宙に舞う。
そして、餌に飛びかかる蛇の様に伸びた手が向けられるのは―
「も、桃子ちゃん―!!」
先に逃した獲物を、今度こそ手中に収めんとしてか、“彼女”―畑怨霊(はたおんりょう)は真っ直ぐに桃子へと飛び掛っていた。
節くれだった指が、罅割れた爪が、桃子の顔にかかろうとしたその時―
フッ
月が、陰った。
「―え?」
思わず、皆が上を見上げる。
その視界に入ってきたのは―
『おとぉろぉしぃいいいいいいいい!!』
そんな、咆哮とも絶叫ともとれない声とともに降ってくる巨大な影。
ズドォオオオオオオオオンッ
凄まじい地鳴りとともに響き渡る着地音。
桃子の前スレスレに落ちた“それ”に、畑怨霊(はたおんりょう)の枯れ木の様な身体は木っ端の如く弾き飛ばされる。
「な、なな、何何何!?何なの!?」
「落ち着け。馬鹿!!」
突然の事態にパニくるさつき達にかけられる、冷めた声。
見れば、いつの間に来たのか天邪鬼がさつきの足元に座り、呆れた様な顔でこちらを見上げていた。
「あ、ああ、天邪鬼!!なな、何よ!?“あれ”!?」
「見りゃわかんだろ。『おとろし』のやつだよ。」
その言葉に、さつきは思わず目の前の“それ”を見る。
長く伸びたザンバラ髪。
冗談みたいに大きな顔。
その顔から直接生える、無骨で太い指と鋭い爪。
人一人悠々と飲み込めそうな、巨大な口。
そして、爛々と光る満月の様な双眼。
それは正しく、水鏡に映して見た護り鬼、「おとろし」の姿。
「で、でも何で!?何でこんなにハッキリ姿が見えんの!?」
「ああ、『穏形』を止めたんだ。力を解放して、具現化してやがる。」
「な、何でそんな事・・・」
「決まってんだろ!?けじめをつけさせる為だよ。」
「けじめ・・・?」
「ああ、長い事、主人の姿を“あんな奴”に好きな様にされてた事のな。」
天邪鬼がそう言った瞬間―
『ゴォアアアアアアアアアアアッ!!』
「ヒッ!?」
「キャアッ!!」
夜天に響き渡る、轟音の様な咆哮。
見れば、その巨大な口を開き、おとろしが吼えていた。
その声に垣間見えるのは、純然たる怒りの感情。
「あ、あいつ、お・・・怒ってる?」
「そりゃそうさ。形だけの器とは言え、こんだけ長い間主人の姿を汚されたんだ。そうとう頭に来てる筈だぜ。」
そう言って、天邪鬼はニヒヒと笑う。
『ごぉあぁああああああ!!』
と、おとろしがまた、吠えた。
その大窟の様な口がガパリと開き、杭の如き牙が露わになる。
「!!」
それを見た天邪鬼が叫んだ。
「お前ら、しっかり踏ん張れよ!!」
「へ?」
「え?」
皆が、その言葉の意味を理解しかねる。
しかし、次の瞬間―
ゴヒュゥアアアアアアアッ
おとろしの口が、凄まじい勢いで周りの大気を吸い込み始めた。
「ワプッ!?」
「ヒャア!!」
「ちょっ!!何よ、これぇ!?」
思わずスカートを押さえながら叫ぶさつき。
「いいから黙ってふんばれ!!ついでにそいつも抑えとけ!!」
天邪鬼に怒鳴られて見れば、昏倒していたレオの身体がズルズルとおとろしの大風に吸い寄せられている。
「「わわっ!!」」
慌ててその身に覆い被さるさつきとハジメ。
「まったく、どこまで手間かけさせやがるんだ!?」
「何なのよ!?まったくもう!!」
吹き荒ぶ大風に堪えながら喚く二人。
と―
い゛ぃいぃいいい゛いいいいい!!
その耳に金物が軋る様な、耳障りな音―否、声が聞こえてきた。
見ると、畑怨霊がおとろしの大風に巻き込まれ、悲鳴を上げていた。
おとろしの後ろにいるさつき達でさえ、必死の態で耐えているのである。真正面にいる“彼女”には堪ったものではない。
地面に爪を立て、必死に抗うがそれも空しく、ただズルズルと引きづられて行く。
ザワァッ
長い黒髪が伸び、おとろしに襲い掛かるが、当のおとろしはものともしない。
それどころかさらに大きく口を開け、吸い込む風の力を増す。
ビィウゴォオオオオオオオオオッ
「うわわわわわわっ!!」
「ちょ、ちょっと!!タンマタンマー!!」
このままでは自分達も耐えられない。
そんな恐怖に、さつき達が戦き始めたその時―
バキィッ
鈍い音が、吹き荒ぶ風音の中に響く。
あ゛ぁああ゛ぁぁああああああっ!!
―地面を噛んでいた畑怨霊の爪が剥がれ、濁った赤い雫を散らしていた。
それと同時に、その痩せた身体が浮き上がり、おとろしの口へと吸い込まれていく。
ああぁ゛ああぁあ゛ああああ!!
悲鳴を上げる畑怨霊の身体が、暗い巨穴の中へと落ちていく。
節くれだった指が太い牙を掴み、最期の抵抗を試みるがそれも一瞬。
牙を掴む指がズズッと引き込まれ―
ズルッ
外れた。
あ゛ぁああ゛ぁぁああああああ゛ああぁ゛ああぁあ゛ああああーーーーー!!
長く尾を引く断末魔。
そして―
グァシャァアアアアアンッ
まるで牢獄の戸が閉じる様な音を立てて、おとろしの口が閉まる。
「「「「・・・・・・。」」」」
風の束縛が止む中、あぜんとその様を見守るさつき達。
その目の前で、
バキッ ボリッ ボリッ ゴリュッ
閉じられた口がムゴムゴと動く。
やがて―
ゴクリッ
大きな音を立てて、おとろしの身体が大きく揺れた。
「あ・・・。」
「あ〜あ・・・。」
「・・・食べちゃった・・・。」
茫然と呟く敬一郎。
そんな彼の言葉に答える様に、おとろしがゲフゥッと一つ、大きなゲップをした。
続く