はい。今年初めの学怪2次創作です。
今回の話も、時系列上は前々作の後の話になります。
学怪の事を知ってる前提で書いている仕様上、知らない方には分かりにくい事多々だと思いますので、そこの所ご承知ください。
よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。
それと、今回は些かコミカル調になる予定です。
幾ばくかのキャラ崩壊がありますので、そこの所御承知の程お願いいたします
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―3―
「うわぁあああっ!!」
絶叫とともに、レオはベッドの上で飛び起きた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
流れる汗を拭いながら、周りを見回す。
目に入るのは、見慣れた自分の部屋の風景。
閉められたカーテンの隙間からは、日の光が差し込んでいた。
「ゆ・・・夢・・・?」
ホッとしながら、視線を彷徨わせる。
と、その視界に入ったのは部屋の壁時計。
時計の針が示していたのは―
10時15分。
「・・・・・・。」
一瞬、止まるレオの時間。
―そして、
「でぇえええええ!?」
レオの叫びが家中に響いた。
「ハア、ハア、ハア・・・」
すっかり高くなった日の下、レオは学校への道を急いでいた。
「な、何でこんな事に・・・?」
けさ、柿ノ木家は極めて稀といえる災難に見舞われていた。
あろう事か、家中の目覚まし時計が機能を停止したのである。
故障に電池切れ。
理由は様々あれど、至る結果は同じである。
家族全員が見事に寝坊し、顔を洗う暇もあらばこそ、慌てて家を飛び出す破目になった。
恐らく、今頃は父親も、会社で同僚達の白い目に晒されながら、上司の叱責を受けている事だろう。
息を切らして走るレオ。
その目前で、信号が赤に変わった。
「うええ、ここの信号、長いんだよなぁ〜。」
ジリジリしながら待っていると・・・
コロコロ・・・
その足元に、不自然に転がってくる一本の空き缶。
それはイライラしているレオの足の下に潜り込み―
ツルン
「へ?」
空き缶を踏んだレオは、前のめりにつんのめる。
その先にあるのは、当然の如く車が行き交いする車道。
パッパーッ
「ひええええええーっ!?」
同時に響き渡る、クラクションの音とレオの悲鳴。そして―
「バッカヤロー!!死にてぇのかー!!」
お定まりの台詞を吐き捨てながら走り去るトラック。
「ハアハア、あ、危なかった・・・!!」
トラックをスレスレで避け、青息を吐くレオ。
と、引いた左足に感じる妙な違和感。
「?」と見下ろしてみると、何やらフサフサしたものを踏みつけている。
その先に視線を走らせてみると・・・
そこにあったのは、尻尾を踏まれ、怒りに燃える目でこちらを睨みつける野良犬の姿。
「う、うわわ!!す、すいません!!」
慌てて足を引くレオ。
「こ、これは決して故意ではなくてですね!!不可抗力と言いますか運命のいたずらと言いますか・・・」
必死に頭を下げ、弁解をするが、野良犬の顔は険しいままである。
「だ・・・駄目ですか・・・?」
などと問いかけるレオに、低く唸りながらゆっくりと頷く野良犬。
そして―
『ワン!!ワワン!!ワワワンッ!!』
「ひ、ひぇえええええええーっ!!」
逃げ出すレオと、それを猛然と追撃する野良犬。
走り去る一人と一匹を、他の人々はただ茫然と見送るだけだった。
「ひい、ひい、ひい・・・!!」
逃げるレオを、野良犬は執拗に追いかけてくる。
・・・よほど頭にきているらしい。
「も、もう勘弁してください〜!!」
『ギャワワン!!ワン!!(勘弁するか!!ヴォケ!!)』
建物の隙間を掻い潜り、植え込みを突っ切り、溝川を飛び越える。
しかし、それでもなお野良犬は追ってくる。
やがて、レオの目の前に見えてきたのは行く先の道を塞いでいる、一枚の看板。
それに記されていた文字は、
(この先工事中。通行禁止。)
「う、うぇえええー、そ、そんなー!!」
後ろを振り向けば、勝利を確信した表情で迫ってくる野良犬の姿。
切羽詰った事態。
もはやこれまでか!?
・・・と思われた時、
レオの目に飛び込んできたのは、一本の脇道。
「て、天の助け!!」
迷う事なく、そこに飛び込むレオ。
と―
レオの姿が消えた。
『ワオ?』
ポカンとする野良犬。
するとそこへ―
「あ〜、だれだ〜?悪戯しやがって。」
件の看板の奥から現れたのは、作業着姿の男。
「こっちじゃねえっつうのに。」
そう言いながら、看板を置いてあった道からレオの消えた道へと移す。
「さーて、忙しくなる前に昼飯済ませちまうか。」
そう言うと、男は道の奥へと消えていった。
『・・・・・・。』
その男を見送ると、野良犬はテコテコとレオの消えた道へと向かう。
そこには、工事で掘られたらしい大穴がポッカリと口を開けていた。
それを覗き込む野良犬。
その視線の先にあったのは、穴の底で陸揚げされた烏賊の様にのびるレオの姿。
相当な勢いで落っこちたらしく、その身体は半分土砂に埋まり、ピクピクと痙攣している。
その様を見た野良犬は、満足気に頷くとクルリと踵を返し足取りも軽く去っていくのであった。
B-2に続く