2018年01月15日
【解説記事】第二種金融商品取扱業協会の自主ルールについての抜粋
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今回は文字ばっかりです
タイトルの通り、今回は解説記事です。
文字ばっかりです。長いです。すみません。
また、一部に正確性を犠牲にして概略を説明するような部分もあります。
金融の専門家ではない私が、それでも何とか理解した(と思われる)内容に関する解説記事となりますので
内容に関するご指摘は歓迎いたしますが、お叱りはお手柔らかにいただければ幸いです。
当サイトで紹介し、私が投資しているほとんどの事業者では、投資案件を組成するために第二種金融商品
取引業登録というものを行っています(maneoファミリーはmaneoマーケットが登録済)。
これは何の登録かというと、要は限定的な証券業、金融商品を扱うための登録です。
その第二種金融商品取引業は、一般社団法人の第二種金融商品取引業協会が自主規制機関となっています。
「匿名契約組合等のファンド業務や信託受益権業務の健全な発展を目指す」事がその目的です。
この二種業協会から、平成30年1月1日、つまり今年から新しい自主規制ルールが施工されました。
「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」という名称です。
内容はソーシャルレンディングにも大きな影響を与えるものですので、見ていきたいと思います。
自主規制ルール制定の理由はやっぱり
さて、まずは自主規制ルールがなぜ制定されたかですが。
大方予想はしていましたが、みんなのクレジット事件も無関係ではないでしょう。
証券取引等監視委員会は、行政処分勧告を2016年中に22件(この中にみんなのクレジットを含む)、
2017年11月までに5件行っています。
こういった問題や不正の原因として、二種業協会は「情報の非対称性」を挙げています。
ファンドの透明性が低く、事業者と投資家が持っている情報に偏りがあるため、この格差を埋めるような
取り組みが必要ということであり、同意できるものです。
事業型ファンドでは、金商法上、事業者が行う出資対象事業に対する規制や監督、開示義務や出資者への運用報告義務が課されておらず、ファンドの透明性・流動性が低いことから、出資者と事業者との間にファンドの状況について、情報格差が生じることとなります。
過去の投資者被害、行政処分事案では、事業者や事業者と関連する者が出資者との情報格差を利用して、出資金の目的外利用や、費消・流用している事案などが存在し、こうした事態を防ぐためには、事業者と出資者を結び付ける役割を担う正会員において、事業者と出資者との情報格差を埋める取組みが必要であると考えられます。
自主ルールの骨子
自主ルールの骨子は以下の通りです。
@ 事業型ファンドの販売・勧誘の審査の適正化
A 勧誘の適正化
B 事業型ファンド発行後のモニタリングの拡充
C ファンド報告書の作成、交付
全体的には当たり前の(真っ当な、という意味で)事を言っているという印象を持ちました。
金融庁の指導により、貸付先を匿名化しなければならないのは納得はともかく理解はできますが、しかし
例えばソーシャルレンディング事業者の経営母体などは匿名化の指導が入っていないでしょう。
公開できるものは全て公開する、という姿勢が大事になると思います。
「運営者」について
「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」を読む上では「運営者」という定義が重要になります。
文面を見ますと、運営者については以下の記述があります。
「事業者からの委託その他の法律行為に基づき出資対象事業の全部又は主要な業務を実施する者」が「運営者」とされ、同第4条第2項第5号において、正会員による審査、モニタリング等の対象となっている。
つまり運営者というのは、貸付金を使用して実質的に出資対象業務を行う事業体、ということです。
そして二種業協会の自主ルールでは、ソーシャルレンディング事業者はこの運営者の状況について、適宜
モニタリングする事を定められています。
この運営者について、「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に関するQ&A内には以下の
ように記述がされています。
Q4から:
事業者が倒産隔離のためのSPC(特別目的会社)であり、出資対象事業を全て別の者に委託している
場合、ファンド対象事業の実態や継続性、リスクを把握するためには、ファンドの事業者だけではなく
実質的な事業運営者の情報提供が必要。
Q7から:
事業者が20%以上の議決権を保有する合弁会社などが主要貸付先にあたる場合、この合弁会社などが
運営者に該当する。
Q8から:
運用財産の50%超を貸し付けている子会社などは、運営者に該当する。
SPCや子会社、合弁会社などを用いても「実質的な貸付金の業務を行う会社」が変わる事はありませんので
それらのモニタリングが必要になる、という自主ルールになります。
当然のことですが、情報開示の観点からは一歩前進だと思います。
その他のポイント
それ以外に自主ルールで目に付いたポイントを紹介します。
Q22から:
事業者及び運営者のモニタリング項目の一つに財務状況の審査がある。
例えばファンドの貸付事業以外に関する多額の借入が認められるような場合、この借入金の返済状況は
信用リスクや事業の継続性に影響を与えるので、モニタリングする必要がある。
また、借入のリスケジューリングについてもモニタリングの対象に含める必要がある。
Q23から:
事業者は事業計画を審査し、「普通に考えてその事業に貸し付ける投資家がいるかどうか」を判断する。
「明らかにこの事業に投資はしないだろう」というファンドは募集しないこと。
また、投資家に対しては分かりやすい説明を行うこと。
Q26から:
過去のファンドで目標通りに分配・償還を実施している貸付先と言えど、その事実だけを持って十分な
信用があると判断することはできない。
ポンジスキームの場合でも、見た目には分配・償還が実施されているように見える。
まとめ
今回の二種業協会の自主ルールはかなり重要なものであり、ソーシャルレンディングにそれなりのお金を
投資されている投資家は、目を通しておくべき内容だと思います。
あくまでも自主規制ルールですので強制力は微妙で、劇的な効果は見られないかもしれません。
しかし、ソーシャルレンディング事業者の中で二種業協会に所属しない理由もなく、また所属している以上
このルールに従わない事のメリットも無いことから、あぶり出しには使えそうです。
少なくとも、二種業協会に所属しないソーシャルレンディング事業者とは取引をすべきではないでしょう。
(*ただし、そもそも第二種金融商品取引業ではないクラウドバンクなどの業者は、二種業協会には
所属していないので、この例からは外れます)
(自主規制ルールのスキーム)
下記、関連ページへのリンクです。
・第二種金融商品取引業協会
・事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則 (本文)
・「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」のポイント (ルールのスキームと要約)
・「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に関するQ&A (FAQ)
・パブリックコメント結果
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posted by SALLOW at 12:50
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コメントありがとうございます。
運営者の定義が重要であるということ、同意見をいただけて心強く思います。
確かに、Q&Aやパブリックコメントを見ても、いくつかの意見は「何とかして網を逃れる方法はないか」と探っているようなものがありました。
(Q26なんて最たるものだと思います)
法律も自主ルールも、日本の場合は根底に性善説があると思っていますので、なかなか網の目をくぐろうとする悪意の事業者相手には難しいところがありますね。
ただ少なくとも、slinvestor様の引用されたパブリックコメントにあるように、貸付型ファンドが事業型ファンドに取り込まれ同様の規制を受ける事になったのは大きな前進だと思います。
このようなルールが制定された以上、今後各事業者がどこまで真摯に、かつ投資家保護の観点に立ってルールを遵守していく姿勢を打ち出すのか、注意深く見ていこうと思います。
クラウドバンクは二種業協会所属ではありませんが、グループ会社に貸し付けていた情報を公開したのはこの自主ルールに基づいた結果だと思います。
そういった意味で、クラウドバンクについては好印象を抱きました。
相当な労力をかけて、記事を作成されたことと思います。
頭が下がります。
さて、この「運営者」という定義が、この自主規制ルールの肝になるという指摘には、私も同意です。
なぜ、このような回りくどい言い回しになっているかというと、このような規則を作ると、必ずみんクレのような法の盲点をついてくる事業者が出てくるので、ルールの作成者が、抜け道防止のため、いろいろ苦心した結果、このようなわかりくい定義になったのでは。
要は、みんクレの例でいけば、「運営者」としてBWJをきっちり定義付けすることで、BWJの財務情報を開示させ、詐欺スキームを撲滅したいという思いから、この「運営者」という独特の定義を作ったのかなと私は推測しています。
参考に、「「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」(案)の制定に対するパブリックコメントの概要及び本協会の考え方」の7項番を引用します。
「7 本規則案は、最近の行政処分事例にあったいわゆる貸付型ファ
ンドにも第2条第4項により条件付きながら適用される。貸付型
クラウドファンディングが事業型ファンドの規制対象に取り込ま
れた意義は大きい。貸付型クラウドファンディング規制の在り方
を検討する端緒を開いたと高く評価できるのではないか。」
「ご意見、ありがとうございます。
いわゆる貸付型ファンドは、本規則の対象となり、特に、全部又
は主要な貸付先がグループ会社であるときは、当該会社は、運営者
として、本規則が適用されます。」
この自主規制ルールは、SL投資家にとって今後重要な意味をもってくると思いますので、よくウオッチし、投資家間で情報共有したほうがよい事項があれば、ブログにアップしていこうと思います。
こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします。
透明性の確保、匿名性の回避というのは、ソーシャルレンディングにとって永遠のテーマになりそうな気がします。法規制が変われば別ですが、そうそう変わるとも思えませんので。
投資する事業者を選ぶ一つの基準に、「法規制の網目をかいくぐってでも情報開示する姿勢があるかどうか」というのを加えるべきかもしれません。
そうなると、maneoはともかくLCやプレリート、SBIが候補に挙がるわけです。ただプレリートはもう少し何とかしろという思いでいっぱいですが。あそこまでオープニングでコケた業者もなかなかないのではないでしょうか。
香港と米国の子会社の件、瀧本社長のブログにありましたね。
ただスマートレンドとかアメリカンファンディングも、maneoシステムを使ってお金を落としてくれる客である事には違いないので、どのくらい本腰を入れてこれら業者のパイを喰いに行くかは注目したいと思います。
個人的な思いは、できればクラウドクレジットと重複するような案件を出してもらいたいのですが、米国と香港では難しいかもしれません。
プレリートファンドやLCレンディングのように形として、融資先企業が分かり、そのページから偶然投資先がわかるという三店方式みたいなものあればいいように思いますね。
ソーシャルレンディングも私募投信や私募リートファンドの一番の欠点とされる透明性確保が課題になります。
利回りだけ取れば、短期かつ少額分散と5〜8%程度の利回りしかない私募投信や本当のプレリートより使いやすいですね。
出資者がよく分からないけどお金が出てくるでは困るわけですし、仕組みを知らずに投資するのはやはり投機となるように思います。
マネオのブログに香港と米国に子会社作りましたとあり、大手一強がスマートレンドやガイア、アメファン潰しに来てるなと感じましたね。
日本では、なかなか借り手がいないのでしょうか?
ご訪問、コメントありがとうございます。
そうですね。警察も行政も、問題が起きなければ動きません。
役人が最も嫌うものは、「責任を取ること」「仕事が増えること」ですから。
従ってみんクレ問題は起きるべくして起きたと言えるのかもしれません。ただ、遅きに失した感はありますが、ようやっと動いてくれたということで今後は多少期待できます。
黎明期の業界は色々あるのが世の常です(仮想通貨も、GOX事件がありましたし)。今後、黎明期を脱して安定的な成長期に入ろうとするソーシャルレンディングに期待したいと思います。
(などと人ごとのように書いていますが、私もみんクレに144万円ほど拘束されています。おそらく9割程度は吹き飛ぶのではないかと)
ンクレがここまで暴走できなかったかもしれないのに・・・
何事も問題が起こらなければ動かないのが行政ですね。