2012年07月28日
シャイな壬生狼その弐〜自由を求めて〜
いろんなサークル、特にテニスサークルを回っているうちに、不思議とよく顔を合わせる奴が出てきた。不思議と同じようなサークルを回っている。テニスの体験練習中とかの待ち時間にこいつと話していた。
「なんか、よく会うなあ」
「ほんとだよ。お前。なんで?」そんな感じ。
話をしていると、なんとなく発想が似ている。でも、こいつはオイラみたいな田舎者じゃなくって、東京出身の奴だった。しかも、歳は2こ上だ。経歴が変わっている。東京の公立高校出身で、1浪して早稲田に入り、そしてそこで仮面浪人してこの大学に入ってきたようだ。
この大学が気に入ったのは「自由な校風」だということだった。
ああ、同じ人種か・・・・・・。
俺は人に支配されるということが嫌だった。親からも教師からも。だから、結構高校時代までそれらに反発していた。担任によく嫌味も言われた。この担任、高校時代の3年中2年担任だったのだが。こいつが東大出身だった。いけすかねえ奴だなって思ってた。懲役3年の高校生活だったけど、その高校はどっちかというと自由な校風だった。校則とかもゆるい。それでも窮屈だった。特にその担任の、授業のやり方が気に食わなかった。教えるのは確かに上手い部類だったが。授業中、一人に当てる。そして、その人が答えられない、どうやらあんまり予習してないらしいことがわかると、そいつを1時間中立たせっぱなしで、そいつしか当てない。国語教師。この高校、授業時間は1時限65分だった。
「何いばっていやがる。こいつ。なんて残酷なことしやがるんだ」って思ってた。人に恥をかかせるのを楽しんでるのか? 見せしめのつもりか? そいつのプライドはどうなる?
俺はこの当時、尾崎豊の音楽に没頭している。尾崎豊が亡くなったのは、俺の高校1年生当時だったと思うが、特に「15の夜」とか「卒業」とかは特に好きだった。共感する歌詞が多かった。俺はけして暴力での反抗はしないが、反抗心は強い。「この野郎は」としか思わない。
それって、教師という立場を利用してのイジメじゃねえのかよ。
代ゼミ、駿台、河合、四谷大塚などなど、有名塾、予備校で指導をしていたカリスマ講師40名以上によるハイクオリティな授業を受講できます
自由、というものに焦がれた。自由というものに対する渇望しかない。そんな高校時代。
だから俺は第一志望校を、日本で一番自由な大学と言われるその大学に絞った。
親父とは相当喧嘩した。
「東大に行け」
「誰があんな大学行くかよ。その大学卒業の教師は何人かいるけど、嫌な野郎が多い。その大学を志望してる奴らともほとんどの奴は話が合わない。別の人種」
こういう感じのやりとりは何か月も、数年も?か続いた気がする。その間に、珍しく親父に掴みかかっていった俺が、親父に見事に巴投げされることになる。親父は昔柔道してたみたいだ。その当時の人としては珍しく身長も175以上ある。
そのサークル入部活動の時に出会った男、S2の話に戻ろう。
そいつもなんだかそういう感じの奴。「そうだよな。教師って偉そうなんだよ」
住んでいる場所もほんとに近く。歩いて5分かからない。なにせこいつの家から一番近いコンビニは、俺の住むマンションの1階テナントだ。
「なんでこの場所選んだの?」
「街に近いから。で、その割に家賃安いし」
同じこと考えてやがる。一人暮らしの奴が多いので、よく友人とは家の話をしていた。結構みんな左京区で探してる人が多い。新築にこだわってる人もいる。ゴージャスな見た目を好んでいる人もいる。セパレートにこだわる人もいる。家賃は6万円ぐらいが多い。だが、この辺は意外と穴場なのだ。一応東山区になるのだが、道一本挟んだら左京区だ。だからほぼ左京区。移動手段はチャリ。だから大学からも街からも近いこの場所は最高の場所に思えた。家賃も俺の住むマンションは8帖東向き窓で共益費込4万円代。しかも2階角部屋。
それからS2とたびたび一緒に行動することになった。二人で一緒にサークルも見て回る。話も面白い奴だった。何せ人生経験が2年違う。いろんな事を知っている。歳が違うが、同じ学年なので、タメ口で話していた。そうしてくれる方がいいって人が多かったから、そうするようにしていた。まあ、そんなことにこだわる奴はあまりいない。
こいつは入学の経緯も変わっていれば、入学の試験も変わっていた。論文だけの試験というのが経済学部にあった。それだ。ものすごく特殊な試験。それもあって、いろんなことを知っている。
S2曰はく「俺が普通の試験で入れるはずないじゃん。あれぐらいだよ俺が入れるの」
S2は、その当時流行のサラサラヘアーが特徴の、イケメン。
サークルはこの時期、新入生の勧誘に忙しい。部員を集めなければならない。週に3回ぐらいは新歓の飲み会を開いているし、テニスは毎日やってる。俺はテニスの練習にも参加したが、それより飲み会が好きになってた。大学に入って初めて酒を飲んだが(ナイショ)、はじめっからめちゃくちゃ強かった。イッキも軽々やる。顔色もけして変わらない。先輩たちはいろんなイッキコールを駆使して飲ませにかかる。一番きつかったのは、ビンダビンダS2の売り芸。S2はさらに自分自身が回転しながらこれをやる。
オイラはこの飲み会とか、テニスの後のアフターとかで戸惑った。何せ、今まで笑いをとろうと思って人と話したことがあまりない。そんなに意識しない。
「自分、ボケ殺しやな」とか言われる。なんだそれ? って始めは思った。なにせやっぱり関西人は多い。面白い人が多い。先輩たちはしゃべりが鍛えられている。S2もちょっと戸惑ってたみたいだったが、何せこいつは仮面浪人とはいえ、早稲田のテニスサークルのキャリアがある。それなりにこなす。
「笑いか……」その時初めて意識しはじめた。地方出身者の苦労の一つだ。
サークルを回っているうちに、言葉はもう3週間ぐらいでこっちの言葉に変わりつつはあった。もともと小4から中1まで大阪にいたし、音には慣れていた。昔は大阪弁をしゃべっていた。
この関西では、「おもんない」って烙印を押されるのは、最大の屈辱であるらしい。
…………だからみんな、べしゃりを磨くのか。何より、そういう土壌で育っている。
昔俺が住んでいたところは、千里ニュータウン。桃山台駅の近く。マンションばっかり。何せマンションの名前はA1、A2、A3とかD20とかそんな感じだ。よく高層のマンションを使ってエレベーター鬼ごっことかしてた。そこに住んでる人たちは、結構いろんな地方出身者が多い。転校生も多い。一番仲が良かったキャプテン翼の岬君みたいな人は、岐阜出身だった。あ、俺はけして翼君タイプじゃありません。その当時、どっちかと言うと日向小次郎です。サッカーのプレイスタイルとかも。その小学校では必ずセンターフォワード。直線的ドリブル。タックルしてきた人も、人の足ごと吹っ飛ばしてました。ワンマンプレイみたいなのは、先生に怒られてました。「もっとポストプレーとかもしろ! 視野を広げろ!」って。
べしゃりのスキル……。これが、この地域でのモテキ到来のための大きな障害として立ち塞がった。
「どないしよ。これじゃ、俺モテへん。せっかく一人暮らし始めて自由になったのに……。憧れのキャンパスライフが遠ざかって行く……。いつまでもデラべっぴんが恋人かよ。悲しすぎるぜ」直線ドリブルで突破するか? いや、サークルに来てる女の子達はほとんど関西人だ。ほとんど京都大阪兵庫。三都物語。女の子の中には「クールだね」って言ってくれる人いるけど、先輩からは「自分、もっとしゃべれや」って言われる。
どうする?? 俺。
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「なんか、よく会うなあ」
「ほんとだよ。お前。なんで?」そんな感じ。
話をしていると、なんとなく発想が似ている。でも、こいつはオイラみたいな田舎者じゃなくって、東京出身の奴だった。しかも、歳は2こ上だ。経歴が変わっている。東京の公立高校出身で、1浪して早稲田に入り、そしてそこで仮面浪人してこの大学に入ってきたようだ。
この大学が気に入ったのは「自由な校風」だということだった。
ああ、同じ人種か・・・・・・。
俺は人に支配されるということが嫌だった。親からも教師からも。だから、結構高校時代までそれらに反発していた。担任によく嫌味も言われた。この担任、高校時代の3年中2年担任だったのだが。こいつが東大出身だった。いけすかねえ奴だなって思ってた。懲役3年の高校生活だったけど、その高校はどっちかというと自由な校風だった。校則とかもゆるい。それでも窮屈だった。特にその担任の、授業のやり方が気に食わなかった。教えるのは確かに上手い部類だったが。授業中、一人に当てる。そして、その人が答えられない、どうやらあんまり予習してないらしいことがわかると、そいつを1時間中立たせっぱなしで、そいつしか当てない。国語教師。この高校、授業時間は1時限65分だった。
「何いばっていやがる。こいつ。なんて残酷なことしやがるんだ」って思ってた。人に恥をかかせるのを楽しんでるのか? 見せしめのつもりか? そいつのプライドはどうなる?
俺はこの当時、尾崎豊の音楽に没頭している。尾崎豊が亡くなったのは、俺の高校1年生当時だったと思うが、特に「15の夜」とか「卒業」とかは特に好きだった。共感する歌詞が多かった。俺はけして暴力での反抗はしないが、反抗心は強い。「この野郎は」としか思わない。
それって、教師という立場を利用してのイジメじゃねえのかよ。
代ゼミ、駿台、河合、四谷大塚などなど、有名塾、予備校で指導をしていたカリスマ講師40名以上によるハイクオリティな授業を受講できます
自由、というものに焦がれた。自由というものに対する渇望しかない。そんな高校時代。
だから俺は第一志望校を、日本で一番自由な大学と言われるその大学に絞った。
親父とは相当喧嘩した。
「東大に行け」
「誰があんな大学行くかよ。その大学卒業の教師は何人かいるけど、嫌な野郎が多い。その大学を志望してる奴らともほとんどの奴は話が合わない。別の人種」
こういう感じのやりとりは何か月も、数年も?か続いた気がする。その間に、珍しく親父に掴みかかっていった俺が、親父に見事に巴投げされることになる。親父は昔柔道してたみたいだ。その当時の人としては珍しく身長も175以上ある。
そのサークル入部活動の時に出会った男、S2の話に戻ろう。
そいつもなんだかそういう感じの奴。「そうだよな。教師って偉そうなんだよ」
住んでいる場所もほんとに近く。歩いて5分かからない。なにせこいつの家から一番近いコンビニは、俺の住むマンションの1階テナントだ。
「なんでこの場所選んだの?」
「街に近いから。で、その割に家賃安いし」
同じこと考えてやがる。一人暮らしの奴が多いので、よく友人とは家の話をしていた。結構みんな左京区で探してる人が多い。新築にこだわってる人もいる。ゴージャスな見た目を好んでいる人もいる。セパレートにこだわる人もいる。家賃は6万円ぐらいが多い。だが、この辺は意外と穴場なのだ。一応東山区になるのだが、道一本挟んだら左京区だ。だからほぼ左京区。移動手段はチャリ。だから大学からも街からも近いこの場所は最高の場所に思えた。家賃も俺の住むマンションは8帖東向き窓で共益費込4万円代。しかも2階角部屋。
それからS2とたびたび一緒に行動することになった。二人で一緒にサークルも見て回る。話も面白い奴だった。何せ人生経験が2年違う。いろんな事を知っている。歳が違うが、同じ学年なので、タメ口で話していた。そうしてくれる方がいいって人が多かったから、そうするようにしていた。まあ、そんなことにこだわる奴はあまりいない。
こいつは入学の経緯も変わっていれば、入学の試験も変わっていた。論文だけの試験というのが経済学部にあった。それだ。ものすごく特殊な試験。それもあって、いろんなことを知っている。
S2曰はく「俺が普通の試験で入れるはずないじゃん。あれぐらいだよ俺が入れるの」
S2は、その当時流行のサラサラヘアーが特徴の、イケメン。
サークルはこの時期、新入生の勧誘に忙しい。部員を集めなければならない。週に3回ぐらいは新歓の飲み会を開いているし、テニスは毎日やってる。俺はテニスの練習にも参加したが、それより飲み会が好きになってた。大学に入って初めて酒を飲んだが(ナイショ)、はじめっからめちゃくちゃ強かった。イッキも軽々やる。顔色もけして変わらない。先輩たちはいろんなイッキコールを駆使して飲ませにかかる。一番きつかったのは、ビンダビンダS2の売り芸。S2はさらに自分自身が回転しながらこれをやる。
オイラはこの飲み会とか、テニスの後のアフターとかで戸惑った。何せ、今まで笑いをとろうと思って人と話したことがあまりない。そんなに意識しない。
「自分、ボケ殺しやな」とか言われる。なんだそれ? って始めは思った。なにせやっぱり関西人は多い。面白い人が多い。先輩たちはしゃべりが鍛えられている。S2もちょっと戸惑ってたみたいだったが、何せこいつは仮面浪人とはいえ、早稲田のテニスサークルのキャリアがある。それなりにこなす。
「笑いか……」その時初めて意識しはじめた。地方出身者の苦労の一つだ。
サークルを回っているうちに、言葉はもう3週間ぐらいでこっちの言葉に変わりつつはあった。もともと小4から中1まで大阪にいたし、音には慣れていた。昔は大阪弁をしゃべっていた。
この関西では、「おもんない」って烙印を押されるのは、最大の屈辱であるらしい。
…………だからみんな、べしゃりを磨くのか。何より、そういう土壌で育っている。
昔俺が住んでいたところは、千里ニュータウン。桃山台駅の近く。マンションばっかり。何せマンションの名前はA1、A2、A3とかD20とかそんな感じだ。よく高層のマンションを使ってエレベーター鬼ごっことかしてた。そこに住んでる人たちは、結構いろんな地方出身者が多い。転校生も多い。一番仲が良かったキャプテン翼の岬君みたいな人は、岐阜出身だった。あ、俺はけして翼君タイプじゃありません。その当時、どっちかと言うと日向小次郎です。サッカーのプレイスタイルとかも。その小学校では必ずセンターフォワード。直線的ドリブル。タックルしてきた人も、人の足ごと吹っ飛ばしてました。ワンマンプレイみたいなのは、先生に怒られてました。「もっとポストプレーとかもしろ! 視野を広げろ!」って。
べしゃりのスキル……。これが、この地域でのモテキ到来のための大きな障害として立ち塞がった。
「どないしよ。これじゃ、俺モテへん。せっかく一人暮らし始めて自由になったのに……。憧れのキャンパスライフが遠ざかって行く……。いつまでもデラべっぴんが恋人かよ。悲しすぎるぜ」直線ドリブルで突破するか? いや、サークルに来てる女の子達はほとんど関西人だ。ほとんど京都大阪兵庫。三都物語。女の子の中には「クールだね」って言ってくれる人いるけど、先輩からは「自分、もっとしゃべれや」って言われる。
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