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2020年08月15日

年齢学序説 博多大吉 幻冬舎よしもと文庫

博多大吉というと、本人もいささか自虐的に書いてるけど、お笑いの華丸大吉で児玉清のモノマネをするほうじゃないほう。正直言って地味で、あいづちをうってるだけという印象なんだけど、なんとなく人の良さが滲み出てて気にはなっていた。

で、読んでみたら、これが文章が上手い。プロならこうは書かないだろうなという文章なので(けなしているわけじゃありません)、ゴーストライターじゃないんだろうな。

人は、特定の年齢によって分岐点を迎えたり、成功へのきっかけをつかんだりという、まあ、ありがちといえばありがちな類型論なんだけど、それを妄想と言い切っているところが潔い。そして、その対象に対しての愛情に満ち溢れている。お笑い、プロレス、歌謡曲などいくつかのジャンルに渡って考察、いや、妄想を重ねているが、結局この人は人間が好きなんだな、なんなら相方の博多華丸が大好きなんだな、ということがよくわかる。

この本は単なるタレント本ではない。人間博多大吉の、人類礼賛の書だ。森羅万象を肯定する大吉教のバイブルなのだ。

2020年08月07日

STRAY SHEEP 米津玄師

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米津玄師の新作CD「STRAY SHEEP」を買いました。



「LEMON」「パプリカ」他、新曲9曲も含む全15曲。



買ったのは「通常版」「アートブック版(Blue-ray)」「アートブック版(DVD)」「おまもり版」のうち「アートブック版(Blue-ray)」。おまもり版は売り切れてました。

嫁はいち早くカラオケ対策のために歌いこむそうです。ご苦労様です(笑)。

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2020年08月06日

AX アックス 伊坂幸太郎 角川文庫

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グラスホッパー、マリアビートル、AXと続く殺し屋シリーズの最新作。らしいけど、マリアビートルを未読なので特にそれと認識せずに読み始めた。

面白い。どうやら、伊坂幸太郎の中ではこの殺し屋シリーズが一番肌に合う。

「グラスホッパー」は、複数の視点が最後にまとまってゆく様が見事だったが、本作は五編の連作のうちの四編が主人公の兜の視点で進む。最後の「FINE」では息子の克巳との視点の切り替わりで進むが、前の四編の登場人物たちの物語も同時に収束してゆく。さすが伊坂幸太郎。

まったく人物造形が上手い。闇の世界に堕ちなければいけなかった主人公、そのまわりにいる闇の住人達、主人公の光の部分を担う家族の存在。「グラスホッパー」は闇の部分をこれでもかと描いたが、本作はその闇と並行する光の部分にもかなりの重点を置いている。この殺し屋シリーズ、共通してミステリー、サスペンス、家族小説などの要素があるが、本作は家族小説の部分が多い。なので、「グラスホッパー」に比べると人が死なない。といっても、結構死ぬけど。ほっこり度は本作の方が強いので、読後感がより爽やかかもしれない。

それにしても、さすがストーリーテリングモンスター伊坂幸太郎。まったくもって脱帽です。

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2020年08月04日

あの家に暮らす四人の女

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いつも思うけど、三浦しをん、タイトルを付けるのが上手い。

あの家に暮らす四人の女。「あの」という指示語が使われている。視点から物理的な距離があるのか、それとも時間的な距離なのか。その距離がある家で暮らす「四人の女」。男がいないのか、いても無視されているのか。情報量が多すぎる。

で、読んでみると、その疑問全ての答えがある。見事だ

刺繍作家の佐知とおっとりとした母親・鶴代、佐知の友人・雪乃と雪乃の後輩の多恵美が暮らす古い洋館。そして敷地内に何故か居ついている老人・山田。シェアハウス系のテレビドラマみたいな展開は無い。あくまでもゆったりと時間が流れてゆく。その中で、現代の家族が抱える状況や問題が浮かび沈みする。

なんていうことのない日常から、典型的な事柄を切り取って、それを普遍的なものに昇華させる。本当に、三浦しをん、上手い

軽く読めるし、タイトルを含めた謎解きみたいなものが楽しいし、読んで損はありません。

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2020年07月24日

ビタミンF 重松清 新潮文庫

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家族小説を書かせたら右に出るもののいない重松清の王道家族小説

重松清本人の後記によると、Family、Father、Friend、Fight、Fragile、FortuneなどのFで始まるさまざまな言葉をキーワードにした7編。そして読んで元気になるからビタミンFらしい。

7通りの家族がいれば、当然のように7通りの有り様がある。家族それぞれの思いとは別に、まるでそれそのものが生き物のように、家族は変容してゆく。その中で、立ち止まって逡巡したり、決断して再び歩き始めたりする。そんなことを繰り返して、一度始まってしまった家族は否応なく進んでゆく。

どこにでもいそうな人達の、どこででも起こりそうなことを切り取った中編集。だからこそ、私達の物語なのだ。

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2020年07月20日

平成大家族 中島京子 集英社文庫

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なかなか楽しい家族小説。

緋田龍太郎は、歯科医の定年引退して自宅で悠々と暮らしていた。気がかりは、30も過ぎて引きこもっている長男の克郎と、90才になった義母のタケだが、それでも朝食を終えて庭に差し込む陽光を眺めているのは心地よく平和だった。

まず、長女の逸子が夫の聡介と息子のさとるを伴って転がり込んできた。聡介の事業が失敗して自己破産をしたのだ。次に、次女の友恵が離婚して帰ってきた。友恵に子供がいなかったのがまだ救いだったが。

これからは静かに暮らしていくのだろうと龍太郎が思っていた緋田家は、さとるの反乱や、友恵の妊娠発覚、年を重ねるとともにボケてゆくタケと、波乱を帯びてゆく。

現在、4世代総勢8人が同居する家は少ないだろう。しかも、それぞれがそれなりに問題を抱えている。そして、新たな問題は否応なく起こってゆく。まあ、「それなりの問題」を抱えていない人とか、「それなりの問題」が起こらない家族なんかもいないだろうけど。そんな、「普通」とか「普通じゃない」とかを合わせ持って生きていかなければいけない現代の家族を、ゆるやかに描く。

さすが「小さいおうち」で直木賞を取った中島京子。実にうまい。軽いタッチでゆるやかに描く中に、光と闇を忍び込ませる。けっして問題提起とか現状批判とか、振りかぶったものではない。血族を扱って、目もくらむような底に連れていかれるようなものでもない。でも、「あー、こういうことあるよね」と読み進む裏で、何か記憶の底にあるものが呼び起こされる。やっぱり、人間の基本って家族なんだなと思う。

軽く読めるし、作者は本当に人というものが好きなんだな、と思わせる。秀作。ドラマになったら是非見たい。

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2020年07月16日

琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 伊集院静 集英社文庫

サントリーの創業者、鳥井信治郎がウイスキーとビール造りに賭ける人生の物語を、作家伊集院静が著す。

時は明治十二年、大阪船場に男児が誕生する。鳥井信治郎。両替商を営む鳥井家の次男坊で、後のサントリーの創業者である。やがて信治郎は道修町の薬種商店(薬問屋)小西儀助商店に丁稚奉公に出て、そこで生涯を通じて慕う小西儀助に出会う。儀助は、本業の傍らワインやウイスキーの合成製造を手掛けていたが、その助手として臭覚味覚に優れた信治郎を重宝した。その中で、信治郎にワインやウイスキーに対する思いが強くなっていく。

信治郎は奉公先を変え、そして自分の店、寿屋洋酒店を立ち上げる。苦心の末に赤玉ポートワインがヒットして、その後、苦難の道が待つウイスキーの醸造、ビールの製造に突き進んでいく。

明治から昭和にかけての、日本そのものが動乱だった時代の物語だ。絢爛な明治末期から、日露戦争を発端とする軍国国家への道程を進み始め、そして太平洋戦争の終結。その中で、ひたすらワインやウイスキーの醸造製造を目指した鳥井信治郎。

サントリーというと、赤玉ポートワインに始まって、角瓶、オールド、レッドなどのウイスキー、サントリーモルツやプレモルなどは常に我々の生活と共にあった。物語の中で、信治郎の元でウイスキー醸造を手掛ける竹鶴政孝(のちのニッカウヰスキー創業者)が出てくることでもわかるが、この本には日本のウイスキー史という一面もある。そして、市井の人々をめぐる民族史とも読める。

どのジャンルでも、この時代に活躍した日本人はみなパワフルだ。否応なく迫りくる世界に対して、対峙し、理解し、取り入れる。ある意味、日本人が日本人として一番プライドを持っていた時代かもしれない。今の時代だからこそ、この時代の人々に教わることは多いだろう。

テレビ東京でドラマ化されてたようだ。見てみたい。

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2020年07月10日

古本屋は楽し

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仕事が休みだったので、奥さんを歯医者に車で送っていったんですが、終わるまでの時間つぶしをどうしようかなと思ってたら、三軒先に古き良き感じの古本屋が

車を歯医者の駐車場に置いたまま中に入ってみました。

んー。この匂い。古本屋の匂いですねー。

店内はそんなに広くないんですが、入ってまず地域史とかの歴史書があって、その向かいに文学全集。次の棚が文庫。文庫も、歴史ものやミステリーとかにちゃんとジャンル分けされてます。奥に向かっていくと、美術書や音楽書などの芸術関連。一番奥に辞書など。

芸術関連に掘り出し物がないかなと一通り見渡して、文庫の棚へ。

結局これだけ買いました。

三浦しをん あの家に暮らす四人の女 中公文庫








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中村文則 掏摸(スリ) 河出文庫








掏摸 (河出文庫) [ 中村文則 ]


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中村文則 何もかも憂鬱な夜に 集英社文庫








何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫) [ 中村文則 ]


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中島京子 平成大家族 集英社文庫








平成大家族 (集英社文庫) [ 中島京子 ]


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中山七里 いつまでもショパン 宝島社文庫








いつまでもショパン (宝島社文庫) [ 中山七里 ]


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中山七里 おやすみラフマニノフ 宝島社文庫








おやすみラフマニノフ (宝島社文庫) [ 中山七里 ]


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町田康 バイ貝 双葉文庫








バイ貝 [ 町田 康 ]


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重松清 ビタミンF 新潮文庫








ビタミンF (新潮文庫 新潮文庫) [ 重松 清 ]


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本屋って楽しいね。

2020年07月03日

絶版の本って再販できるの? の答え(つづき)

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この前の投稿で「復刊ドットコム」を紹介しましたが、せっかくなので復刊した本をいろいろ見てみました。


おお、懐かしい。西原理恵子の初期の作品「パチンコにはちょっとひとこといわせてもらいたい」。

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西原理恵子「パチンコにはちょっとひとこといわせてもらいたい」

税込1,047円。在庫50冊。ポチッとな。


桜玉吉「なげやり1 なぁゲームをやろうじゃないか!!」。これはアマゾンで販売してるのね。

桜玉吉「なげやり1 なぁゲームをやろうじゃないか!!」


これまた懐かしい。島本和彦「大合本 燃える!! 女子プロレス」。

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島本和彦「大合本 燃える!! 女子プロレス」

税込3,520円かあ。でも600ページあるもんなあ。残り24冊かあ。うーん、ポチッ。


そして、どどんっ。わかる人にしかわからないヤツ!

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オリヴィエ・メシアン 著 / 細野孝興 訳 音楽言語の技法

『1954年に『わが音楽語法』というタイトルで刊行された、20世紀を代表するフランスの作曲家 オリヴィエ・メシアンの作曲技法書が、このたび新訳版として刊行決定!』

待ってました!待ってましたよ!何?税込7,700円?安いっ!20,000円は覚悟してたから。


本好きなら、是非復刊ドットコム
一日中遊べますよ(笑)。



絶版の本って再販できるの? の答え

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引っ越しの時にお気に入りに本やCDがどこかに行っちゃった、なんてことありませんか?

しかも、買いなおそうと思って調べたら絶版で手に入らない、古本としても入手困難!


このブログにも書いたんですが、私、作曲家の吉松隆さんが好きで、

なかなかやんの好きなもののブログ 吉松隆 「朱鷺によせる哀歌」

吉松隆さんが書いた本も集めてたんですが、割と初期に書いた本で「魚座の音楽論」という本が引っ越しでどこかに行っちゃったんですよ。すっごい好きな本だったんですけどね。

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で、調べるとこれが絶版。古本としても入手困難。ああ。


そんな私に救いの手が!

復刊ドットコム。こんなサイトがあるんですね。




絶版廃盤になった本を復刊リクエストを募って復刊する、言ってみれば本のクラウドファンディングみたいなもの?違うか。

で、復刊リクエストを確認したら、おお!、「魚座の音楽論」の復刊リクエストの投票が2票入ってる!

さっそく会員登録してリクエスト投票しました。どれくらい投票は集まると復刊されるんだろう。もしできたら、もしできたらで構いません、復刊リクエストしてもらえるとありがたいです。


プロフィール
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なかなかやん
音楽大好き、読書大好き。いろいろ聴きます。DTMなんかもやります。作曲もします。小説も書いてみたいです。
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