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2020年07月16日

琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 伊集院静 集英社文庫

サントリーの創業者、鳥井信治郎がウイスキーとビール造りに賭ける人生の物語を、作家伊集院静が著す。

時は明治十二年、大阪船場に男児が誕生する。鳥井信治郎。両替商を営む鳥井家の次男坊で、後のサントリーの創業者である。やがて信治郎は道修町の薬種商店(薬問屋)小西儀助商店に丁稚奉公に出て、そこで生涯を通じて慕う小西儀助に出会う。儀助は、本業の傍らワインやウイスキーの合成製造を手掛けていたが、その助手として臭覚味覚に優れた信治郎を重宝した。その中で、信治郎にワインやウイスキーに対する思いが強くなっていく。

信治郎は奉公先を変え、そして自分の店、寿屋洋酒店を立ち上げる。苦心の末に赤玉ポートワインがヒットして、その後、苦難の道が待つウイスキーの醸造、ビールの製造に突き進んでいく。

明治から昭和にかけての、日本そのものが動乱だった時代の物語だ。絢爛な明治末期から、日露戦争を発端とする軍国国家への道程を進み始め、そして太平洋戦争の終結。その中で、ひたすらワインやウイスキーの醸造製造を目指した鳥井信治郎。

サントリーというと、赤玉ポートワインに始まって、角瓶、オールド、レッドなどのウイスキー、サントリーモルツやプレモルなどは常に我々の生活と共にあった。物語の中で、信治郎の元でウイスキー醸造を手掛ける竹鶴政孝(のちのニッカウヰスキー創業者)が出てくることでもわかるが、この本には日本のウイスキー史という一面もある。そして、市井の人々をめぐる民族史とも読める。

どのジャンルでも、この時代に活躍した日本人はみなパワフルだ。否応なく迫りくる世界に対して、対峙し、理解し、取り入れる。ある意味、日本人が日本人として一番プライドを持っていた時代かもしれない。今の時代だからこそ、この時代の人々に教わることは多いだろう。

テレビ東京でドラマ化されてたようだ。見てみたい。

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