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2020年07月20日

平成大家族 中島京子 集英社文庫

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なかなか楽しい家族小説。

緋田龍太郎は、歯科医の定年引退して自宅で悠々と暮らしていた。気がかりは、30も過ぎて引きこもっている長男の克郎と、90才になった義母のタケだが、それでも朝食を終えて庭に差し込む陽光を眺めているのは心地よく平和だった。

まず、長女の逸子が夫の聡介と息子のさとるを伴って転がり込んできた。聡介の事業が失敗して自己破産をしたのだ。次に、次女の友恵が離婚して帰ってきた。友恵に子供がいなかったのがまだ救いだったが。

これからは静かに暮らしていくのだろうと龍太郎が思っていた緋田家は、さとるの反乱や、友恵の妊娠発覚、年を重ねるとともにボケてゆくタケと、波乱を帯びてゆく。

現在、4世代総勢8人が同居する家は少ないだろう。しかも、それぞれがそれなりに問題を抱えている。そして、新たな問題は否応なく起こってゆく。まあ、「それなりの問題」を抱えていない人とか、「それなりの問題」が起こらない家族なんかもいないだろうけど。そんな、「普通」とか「普通じゃない」とかを合わせ持って生きていかなければいけない現代の家族を、ゆるやかに描く。

さすが「小さいおうち」で直木賞を取った中島京子。実にうまい。軽いタッチでゆるやかに描く中に、光と闇を忍び込ませる。けっして問題提起とか現状批判とか、振りかぶったものではない。血族を扱って、目もくらむような底に連れていかれるようなものでもない。でも、「あー、こういうことあるよね」と読み進む裏で、何か記憶の底にあるものが呼び起こされる。やっぱり、人間の基本って家族なんだなと思う。

軽く読めるし、作者は本当に人というものが好きなんだな、と思わせる。秀作。ドラマになったら是非見たい。

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