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2020年12月11日

満月の泥枕 道尾秀介 光文社文庫

道尾秀介は以前「シャドウ」を読んで好印象だった。

で、新しく文庫になったのを見つけたので購入。

姪の汐子と下町で暮らす凸貝二美男は、泥酔した公園で奇妙な光景を目撃する。白髪の老人、叫び声、水音、歩き去る男。後日訪ねてきた謎の少年は、二美男が見たのは「自分の伯父が祖父を殺した」現場だと言う。遺体の捜索を依頼された二美男は、汐子や貧乏アパートの仲間と共にとんでもない事態に巻き込まれていく―。人生に悩み迷う時、背中を押してくれる傑作長編。

いちおうミステリー仕立てではあるものの、全体としては下町の人情話。最終的にはしんみりしてほっこりする道尾秀介ワールド。500ページ弱となかなか分量があるにかかわらず、読み進ませる燃料が立て続けに注ぎ込まれるので面白く読み進められる。スリルやサスペンス的なところや冒険譚的なところもあって一冊で何度もおいしい。

基本的にこの作者は人間が好きなんだろうなと思う。主人公の凸貝は辛い目にあったがゆえに貧乏アパートの一室でひっそりと生きているが、そんな主人公を人として強く感じる。なんというか、作者は人間を強く信じている。やはりそういうところで好感が持てる。

安物ではない人間ドラマを、あくまでもエンタテインメントとして読める秀作。


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