その一つとしてバネの発表についてみてみる。
以下がプレスリリース。
神鋼鋼線ステンレス(株)におけるJIS法違反の対象製品に関する安全確認結果について
2016年7月29日
株式会社神戸製鋼所
神鋼鋼線工業株式会社
http://www.kobelco.co.jp/releases/1195122_15541.html
まず、どういう問題があったか、というと、これだけでは判然としなくて、リンクをたどると、
6月のリリースより、
http://www.kobelco.co.jp/releases/1194893_15541.html
ばね用ステンレス鋼線(JIS G 4314)の一部について、引張強度の試験値の書き換えを行い、規格外品(※)を出荷していたことが判明・・・
(※)今回の対象材の引張強度は規格上の下限値の96%以上・・・
ということであり、ばね用のステンレス鋼の引張強度を4%下回るものをOKとして偽装していたということ。
安全性の確認というのは、
@62社(全体の98%)のばねメーカー様から、対象製品を使用して製造したばね製品の全てが、ばねメーカー様の出荷検査に合格しており、ばね製品の性能への影響がないことを確認しました。
さらに、
A「ばね」(第4版、2008年、日本ばね学会編)にある低温焼きなまし工程による機械的特性の向上効果の記載に基づき、引張強度が規格値を4%下回る対象製品が、ばね製品の製造工程で通常行われる低温焼きなまし工程を通じて製品に与える機械的特性の向上効果を検証するための再現実験をおこないました。
実験の結果、低温焼きなまし工程により対象製品の引張強度が向上し、ばね製品の設計時に適用される対象製品の引張強度の規格下限値を満足することが確認できました。・・・
ということ。
@については、強度不足の材料を使ったばねメーカーは(当然のことながら製品としてのバネをつくるために)それぞれのメーカー基準で個別にばねの性能をチェックして出荷しているので大丈夫というもの。
Aについては、バネを作るときの製造過程で熱処理をすることで4%下回った性能の材料を使っても4%以上になることが再現実験により確認ができた。
ということで、めでたしめでたし、という説明。
こんなに、都合よく説明できるなら、まあ、問題ないと言える。
これは、バネを製造するための材料を供給したのが神戸製鋼所の子会社の工場であり、製造過程の熱処理で強度不足の材料でも必要な強度を満たすことが分かった(分かっていたからインチキな強度不足の材料を堂々と出荷した)ということなのだ。
こうした材料レベル、かつ、加工を伴うことで性能が上がる(!)というケースなら確かに問題はないだろう。
しかし、JIS規格でない材料を使って、JIS規格のバネを作るという過程そのものが認められるのか?というのはやはり疑問が残る。
それでも実態上の安全は確認された(というか不都合はないことを確認した)ということで落ちを付けている。
<まとめると>
バネ製品を作る際に
強度▲4%材料・JIS規格未満材料 → バネに加工することで強度4%UP →バネJIS規格品OK
というもの。本当?って思うけれども、まあ、可能性はある。
ところが、加工を経て最終品となるような材料レベルではなく、製品レベルで強度不足の製品が提供される場合、つまり、加工なしで、そのままま使うような場合であれば、ただただ4%強度が低いままに製品が使われる。使われた製品は4%の強度不足を抱えてしまうということになる。
さらに、JIS規格は満たさないままなので、違法な製品から単に違法なものができているということになるのだ。
40年間も偽装を続けてきた神戸製鋼所。
このバネのケースのようなレアケースで済めばいいが、すべてをこのパターンで大丈夫ということはできない。
そのうち支離滅裂な説明が出てくると思われるが、今回の問題はEU,アメリカをも巻き込んでいるので、そう簡単には片付かないだろう。
特に法律などで明確に使用材料が規制されている場合については問題は深刻だ。
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