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2019年01月31日
定年後の準備ができなかった外科医の助言
定年後の準備ができなかった外科医の助言
2018年12月06日 06:15 メディカルトリビューン
私個人は、白内障と老眼で、2重に見えたり、ピントがなかなか合わせられず、眼精疲労も蓄積する一方、
また、ドライアイも出てきて、4年前にメスを起きました。
その後、脳血管障害を中心に診る病院に転職し、脳神経まで診れるようになり、総合診療科医としてオールマイティーとなりました。
高校大学時代、社会人になってからの友人、知人との交流は、専門バカにならないためにも必要で、いろいろ教えてもらうことが多いです。一社会人として、知らないといけないこと、知らないと損をすることが多いですが、学校で教わることはあまりありませんでした。
外科専門医の定年退職後についてのアドバイスは、医師だけには関わらず、他の職種の方にも共通点、普遍性があると重い、転載しました。
さて本題です。
わが国では、100歳以上の高齢者が7万人近くに上るなど、100歳まで生きることが現実的となった。
そのような中、心身ともに豊かな定年後を迎えるには、
『セカンドキャリア』を見据えた現役時代を過ごすことが重要である。
原宿リハビリテーション病院(東京都)病院長の四津良平氏は、慶應義塾大学での心臓血管外科医時代に低侵襲心臓外科手術(Minimally invasive cardiac surgery; MICS)の先駆者として名をはせた。
同氏は、手術に追われ、定年退職前にセカンドキャリアの準備ができなかった自身の経験を踏まえ、第80回日本臨床外科学会(11月22〜24日)で若手医師に助言した。
後のことは考えず、定年直前まで手術に没頭
四津氏は、MICSの術式開発や、その普及に尽力した(写真1)。
MICSはそれまでの傷跡が生々しく残る胸骨正中切開術とは異なり、わずかな傷跡しか残らないため(写真2)、患者に好まれ、定年ぎりぎりまで全国から患者が殺到。
そのため、同氏は定年後の準備を全くできずに定年の日を迎えたという。
セカンドキャリアについて考えた際、まず悩んだのが外科医を続けるか否かであった。
外科医を続けるには、「今までの集中力や体力が継続できなければ、心臓という人間の最も大切な臓器を扱う特性上、患者を死に至らせるかもしれない」と懸念する一方、「メスを置いて助手になり現場を支えることもできるが、それで満足できるのだろうか」と引退への迷いも生じた。
心臓血管外科医からリハビリテーション専門病院の院長に
そのような折、ゴルフ仲間で心臓外科医の先輩(佐賀大学名誉教授・伊藤翼氏)から、原宿リハビリテーション病院への誘いがあり、二つ返事で引き受けた。
同院は、急性期病院から紹介された術後の亜急性期患者のリハビリテーションを行う施設で、300床を超える病床全てがリハビリテーション専門となる世界最大規模の専門病院である。
患者は高齢者が多く、同院の役割は、術後の患者の日常生活動作(ADL)を改善させ自宅に帰すことで、患者の90%が自宅に退院している。
現在、四津氏は院長職の傍ら、心臓血管外科医としての経験を生かし、心臓手術を受けた患者のリハビリテーションにも携わっている(写真3)。
このような高齢患者を診ながら、同氏が思い浮かべるのは病(脳血管疾患)で倒れた自身の両親のことだ。
同氏は医師でありながら、両親には一度も聴診器を当てたことがなかった。
今となってはそれが悔やまれ、「せめて目の前の患者は良くなってほしい」と親孝行の思いで治療している。
将来を見据えて人脈を広げることが大切
一生懸命働いている医師ほど、現役時代に定年後のことを考える余裕はない。
医師は異業種との交流が少なく、心臓血管外科の分野だけにとどまるとそれはさらに限られる。
実際、原宿リハビリテーション病院の在籍医師の多くは四津氏の心臓血管外科医時代のつながりで構成されている。
セカンドキャリアの選択肢を広げる方策として、
同氏は「若いときから自分の診療科だけでなく、他科の医師も含めてできる限り多くの分野に人脈を広げること」
「留学や転勤、病気などのライフステージの転換期で長期的なキャリアを描き直すこと」を挙げ、現役世代に呼びかけた。(伊達俊介)
2018年12月06日 06:15 メディカルトリビューン
私個人は、白内障と老眼で、2重に見えたり、ピントがなかなか合わせられず、眼精疲労も蓄積する一方、
また、ドライアイも出てきて、4年前にメスを起きました。
その後、脳血管障害を中心に診る病院に転職し、脳神経まで診れるようになり、総合診療科医としてオールマイティーとなりました。
高校大学時代、社会人になってからの友人、知人との交流は、専門バカにならないためにも必要で、いろいろ教えてもらうことが多いです。一社会人として、知らないといけないこと、知らないと損をすることが多いですが、学校で教わることはあまりありませんでした。
外科専門医の定年退職後についてのアドバイスは、医師だけには関わらず、他の職種の方にも共通点、普遍性があると重い、転載しました。
さて本題です。
わが国では、100歳以上の高齢者が7万人近くに上るなど、100歳まで生きることが現実的となった。
そのような中、心身ともに豊かな定年後を迎えるには、
『セカンドキャリア』を見据えた現役時代を過ごすことが重要である。
原宿リハビリテーション病院(東京都)病院長の四津良平氏は、慶應義塾大学での心臓血管外科医時代に低侵襲心臓外科手術(Minimally invasive cardiac surgery; MICS)の先駆者として名をはせた。
同氏は、手術に追われ、定年退職前にセカンドキャリアの準備ができなかった自身の経験を踏まえ、第80回日本臨床外科学会(11月22〜24日)で若手医師に助言した。
後のことは考えず、定年直前まで手術に没頭
四津氏は、MICSの術式開発や、その普及に尽力した(写真1)。
MICSはそれまでの傷跡が生々しく残る胸骨正中切開術とは異なり、わずかな傷跡しか残らないため(写真2)、患者に好まれ、定年ぎりぎりまで全国から患者が殺到。
そのため、同氏は定年後の準備を全くできずに定年の日を迎えたという。
セカンドキャリアについて考えた際、まず悩んだのが外科医を続けるか否かであった。
外科医を続けるには、「今までの集中力や体力が継続できなければ、心臓という人間の最も大切な臓器を扱う特性上、患者を死に至らせるかもしれない」と懸念する一方、「メスを置いて助手になり現場を支えることもできるが、それで満足できるのだろうか」と引退への迷いも生じた。
心臓血管外科医からリハビリテーション専門病院の院長に
そのような折、ゴルフ仲間で心臓外科医の先輩(佐賀大学名誉教授・伊藤翼氏)から、原宿リハビリテーション病院への誘いがあり、二つ返事で引き受けた。
同院は、急性期病院から紹介された術後の亜急性期患者のリハビリテーションを行う施設で、300床を超える病床全てがリハビリテーション専門となる世界最大規模の専門病院である。
患者は高齢者が多く、同院の役割は、術後の患者の日常生活動作(ADL)を改善させ自宅に帰すことで、患者の90%が自宅に退院している。
現在、四津氏は院長職の傍ら、心臓血管外科医としての経験を生かし、心臓手術を受けた患者のリハビリテーションにも携わっている(写真3)。
このような高齢患者を診ながら、同氏が思い浮かべるのは病(脳血管疾患)で倒れた自身の両親のことだ。
同氏は医師でありながら、両親には一度も聴診器を当てたことがなかった。
今となってはそれが悔やまれ、「せめて目の前の患者は良くなってほしい」と親孝行の思いで治療している。
将来を見据えて人脈を広げることが大切
一生懸命働いている医師ほど、現役時代に定年後のことを考える余裕はない。
医師は異業種との交流が少なく、心臓血管外科の分野だけにとどまるとそれはさらに限られる。
実際、原宿リハビリテーション病院の在籍医師の多くは四津氏の心臓血管外科医時代のつながりで構成されている。
セカンドキャリアの選択肢を広げる方策として、
同氏は「若いときから自分の診療科だけでなく、他科の医師も含めてできる限り多くの分野に人脈を広げること」
「留学や転勤、病気などのライフステージの転換期で長期的なキャリアを描き直すこと」を挙げ、現役世代に呼びかけた。(伊達俊介)
2019年01月24日
『帯状疱疹』
『帯状疱疹』
小さい時にかかる水疱瘡、大人になって、寝不足、ストレスなどで体力が落ちた時に帯状疱疹という形で再燃します。
神経の根っこにウイルスが生き残る。人間の免疫力が落ちた時に勢力を復活させることによって起こります。
神経の走行に従った皮疹、水疱とチクチクした痛みが特徴です。
かかったことがない人が触ると水疱瘡を発症します。
高齢者になって帯状疱疹になると、神経痛が残る人が多いので、帯状疱疹ワクチンを接種することが薦められ始めました。
帯状疱疹ワクチン:高齢社会での戦略
2018年12月11日 06:15
類を見ない速度で高齢化が進むわが国にとって加齢による疾患発症リスクを最小限にすることが医療には求められている。その意味で高齢者に対するワクチン接種は有効な戦略と位置付けられる。
高齢者向けのワクチンとしては定期接種化された肺炎球菌ワクチンが注目されているが、近年新たに接種可能となったのが帯状疱疹ワクチン。
専門となる皮膚科だけでなく、内科など他科でも患者からの相談が今後増えることが予想されている。
そこで、帯状疱疹ワクチンについて愛知医科大学皮膚科学講座教授の渡辺大輔氏に解説してもらった。
帯状疱疹の患者は右肩上がりで増えている
患者3,224例の調査によると、「帯状疱疹」という疾患について「何も知らなかった」が20.7%、「名前だけ知っていた」が38.8%、「ある程度知っていた」が39.7%などとなっており、疾患としての知名度が高いとはいえない現状が明らかになっている(臨床皮膚科 2011; 65: 721-728)。
しかし、渡辺氏は「年間60万人が発症するといわれ、80歳までに3人に1人がかかる、とても身近な疾患」と強調する。
宮崎県皮膚科医会所属の皮膚科46施設で1997年から行われている帯状疱疹の患者調査「宮崎スタディ」では、発症率が1997年には3.61/ 1,000人・年だったが2017年には6.07/1,000人・年と68.1%も上昇した。
この20年間に宮崎県の人口は8.3%減少したにもかかわらず、発症数は54.5%も増加していた。
帯状疱疹は身近な疾患であるばかりでなく、患者数が増加し続けている。また、宮崎スタディでは帯状疱疹の発症率は70歳代だけでなく、20〜40歳代でも上昇傾向にあった。
「壮年期に児をもうけるとその児が水痘を発症することで自身が水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に再感染しブースター効果(免疫増強効果)が得られていたが、そうしたライフイベントの減少や核家族化により高齢者が児と同居することが少なくなったなど社会構造の変化が影響している」と同氏は帯状疱疹の増加理由を説明する。
2014年に水痘ワクチンが定期接種化されたことの影響も見逃せない。
定期接種化により水痘を発症する小児が激減したためブースター効果が得られにくくなったと考えられる。
ワクチン接種はなぜ必要か
帯状疱疹には有効な抗ヘルペスウイルス薬が存在するが、厄介なのは帯状疱疹後神経痛(PHN)を起こす可能性があること。
PHNを発症すると帯状疱疹の皮膚症状が治癒した後も痛みが残存し、患者のQOLを著しく低下させてしまう。
香川県小豆郡在住の50歳以上の住民1万2,522人が参加した前向き調査「小豆島スタディ」ではPHNへの移行率は19.7%だった。PHNへの移行を防ぐことは難しく、また確実に治療する手段も確立していない。高齢な人ほどPHNに移行しやすく、帯状疱疹が重症化しやすいことが分かっている。
PHN以外にも、顔面神経麻痺を主としたラムゼー・ハント症候群、髄膜炎、脳炎・血管炎による脳梗塞などの合併症を起こすリスクが帯状疱疹には潜んでいる。
渡辺氏は「帯状疱疹ワクチンは発症リスクを低くできるし、発症したとしても重症化が防げる。
リスクが高まる50歳以降はワクチン接種が望ましい」と推奨している。
帯状疱疹の治療は皮疹出現後3日以内に抗ヘルペスウイルス薬の投与を開始することが原則とされており、これが重症化・PHNへの移行を防ぐことにもなるが、患者が自己判断で受診を遅らせるなど実際には早期治療が開始できない場合もある。こうしたケースを防ぐためにもワクチン接種は有効と考えられる。
弱毒生ワクチンに続き サブユニットワクチンが承認
帯状疱疹ワクチンとして現在接種可能なのは、乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」のみになる(表1)。
「ビケン」は皮下注射の1回接種。「ビケン」と同じOka株から製造されている米国でのワクチン「zostavax」の臨床成績ではあるが、約3年間の追跡で帯状疱疹の発症を51.1%減らし、PHNへの移行を66.5%減らした(図)。
「接種に当たって注意してほしいのは、弱毒ワクチンである関係からHIV感染者などの免疫不全状態の人に接種ができないこと。こうした不適当者のスクリーニングを確実に行ってほしい」としている。
発熱や妊婦など通常のワクチンでも接種不適当とされる者に加え、表2に示すような免疫が低下している人への接種を行ってはならないとされている。
まだ臨床での接種はできないが、今年(2018年)承認を受けた帯状疱疹ワクチンに「シングリックス」がある。VZVの糖蛋白に免疫を増強するアジュバントを添加したサブユニットワクチンで、筋肉注射の2回接種。50歳以上の健常者で帯状疱疹の発症を97.2%減らし、PHNへの移行を91%減らした(N Engl J Med 2015; 372: 2087-2096)。
その一方で、第V相臨床試験では局所性、全身性の副反応が60〜80%に発現しており、副反応が比較的多いことが指摘されている。ただ、重篤な副反応はプラセボと同等だった。
この2剤の特徴について渡辺氏は「接種回数が異なる。また、ビケンは免疫不全患者などに接種できないが、シングリックスは接種できることが大きな違い。
一方、シングリックスは副反応が割と高い頻度で出現する可能性がある。
ビケンは水痘ワクチンとして30年以上使われており、安全性に関しては蓄積がある」とまとめている。
皮膚科以外の診療科への啓発も大切
実際の臨床での帯状疱疹ワクチンの接種率はまだ低い状況にあるという。
帯状疱疹ワクチンの接種対象は50歳以上となっているが、渡辺氏は「50歳は働き盛りなのでワクチンで帯状疱疹の発症リスクを減らしておく方が望ましい。
その年代でワクチンを接種しなかった人でも70歳以上は重症化しやすくPHNへの移行率も高くなるので、接種を勧めたい。
糖尿病など基礎疾患を持つ患者でも帯状疱疹発症リスクは上がるので、接種しておく方がいい」と接種対象者は広いとしている。
帯状疱疹に関しては診断と治療でも変化が見られている。簡単にVZV抗原が検出できるキット「デルマクイック」、腎機能低下例での投与量の減量が必要ない、1日1回投与の抗ヘルペスウイルス薬「アメナメビル」が登場し、診断も治療もより行いやすくなった。
こうした状況の中で「帯状疱疹は早期発見・早期治療が原則。かかりつけの内科医などでも典型例は診ることができるので、すぐに治療を開始してもらうことが望ましい。
鑑別に迷う例や重症例、症状が悪化する例、痛みが強い例などは迷わず皮膚科に紹介してほしい」と同氏は言う。
冒頭の帯状疱疹の患者調査では、皮膚科以外の他科受診状況も聞いており、内科、整形外科の受診が多かった。
帯状疱疹の診療では内科などの役割も大きいと考えられ、帯状疱疹ワクチンについても皮膚科以外にも啓発していきたいと同氏は強調している。
小さい時にかかる水疱瘡、大人になって、寝不足、ストレスなどで体力が落ちた時に帯状疱疹という形で再燃します。
神経の根っこにウイルスが生き残る。人間の免疫力が落ちた時に勢力を復活させることによって起こります。
神経の走行に従った皮疹、水疱とチクチクした痛みが特徴です。
かかったことがない人が触ると水疱瘡を発症します。
高齢者になって帯状疱疹になると、神経痛が残る人が多いので、帯状疱疹ワクチンを接種することが薦められ始めました。
帯状疱疹ワクチン:高齢社会での戦略
2018年12月11日 06:15
類を見ない速度で高齢化が進むわが国にとって加齢による疾患発症リスクを最小限にすることが医療には求められている。その意味で高齢者に対するワクチン接種は有効な戦略と位置付けられる。
高齢者向けのワクチンとしては定期接種化された肺炎球菌ワクチンが注目されているが、近年新たに接種可能となったのが帯状疱疹ワクチン。
専門となる皮膚科だけでなく、内科など他科でも患者からの相談が今後増えることが予想されている。
そこで、帯状疱疹ワクチンについて愛知医科大学皮膚科学講座教授の渡辺大輔氏に解説してもらった。
帯状疱疹の患者は右肩上がりで増えている
患者3,224例の調査によると、「帯状疱疹」という疾患について「何も知らなかった」が20.7%、「名前だけ知っていた」が38.8%、「ある程度知っていた」が39.7%などとなっており、疾患としての知名度が高いとはいえない現状が明らかになっている(臨床皮膚科 2011; 65: 721-728)。
しかし、渡辺氏は「年間60万人が発症するといわれ、80歳までに3人に1人がかかる、とても身近な疾患」と強調する。
宮崎県皮膚科医会所属の皮膚科46施設で1997年から行われている帯状疱疹の患者調査「宮崎スタディ」では、発症率が1997年には3.61/ 1,000人・年だったが2017年には6.07/1,000人・年と68.1%も上昇した。
この20年間に宮崎県の人口は8.3%減少したにもかかわらず、発症数は54.5%も増加していた。
帯状疱疹は身近な疾患であるばかりでなく、患者数が増加し続けている。また、宮崎スタディでは帯状疱疹の発症率は70歳代だけでなく、20〜40歳代でも上昇傾向にあった。
「壮年期に児をもうけるとその児が水痘を発症することで自身が水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に再感染しブースター効果(免疫増強効果)が得られていたが、そうしたライフイベントの減少や核家族化により高齢者が児と同居することが少なくなったなど社会構造の変化が影響している」と同氏は帯状疱疹の増加理由を説明する。
2014年に水痘ワクチンが定期接種化されたことの影響も見逃せない。
定期接種化により水痘を発症する小児が激減したためブースター効果が得られにくくなったと考えられる。
ワクチン接種はなぜ必要か
帯状疱疹には有効な抗ヘルペスウイルス薬が存在するが、厄介なのは帯状疱疹後神経痛(PHN)を起こす可能性があること。
PHNを発症すると帯状疱疹の皮膚症状が治癒した後も痛みが残存し、患者のQOLを著しく低下させてしまう。
香川県小豆郡在住の50歳以上の住民1万2,522人が参加した前向き調査「小豆島スタディ」ではPHNへの移行率は19.7%だった。PHNへの移行を防ぐことは難しく、また確実に治療する手段も確立していない。高齢な人ほどPHNに移行しやすく、帯状疱疹が重症化しやすいことが分かっている。
PHN以外にも、顔面神経麻痺を主としたラムゼー・ハント症候群、髄膜炎、脳炎・血管炎による脳梗塞などの合併症を起こすリスクが帯状疱疹には潜んでいる。
渡辺氏は「帯状疱疹ワクチンは発症リスクを低くできるし、発症したとしても重症化が防げる。
リスクが高まる50歳以降はワクチン接種が望ましい」と推奨している。
帯状疱疹の治療は皮疹出現後3日以内に抗ヘルペスウイルス薬の投与を開始することが原則とされており、これが重症化・PHNへの移行を防ぐことにもなるが、患者が自己判断で受診を遅らせるなど実際には早期治療が開始できない場合もある。こうしたケースを防ぐためにもワクチン接種は有効と考えられる。
弱毒生ワクチンに続き サブユニットワクチンが承認
帯状疱疹ワクチンとして現在接種可能なのは、乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」のみになる(表1)。
「ビケン」は皮下注射の1回接種。「ビケン」と同じOka株から製造されている米国でのワクチン「zostavax」の臨床成績ではあるが、約3年間の追跡で帯状疱疹の発症を51.1%減らし、PHNへの移行を66.5%減らした(図)。
「接種に当たって注意してほしいのは、弱毒ワクチンである関係からHIV感染者などの免疫不全状態の人に接種ができないこと。こうした不適当者のスクリーニングを確実に行ってほしい」としている。
発熱や妊婦など通常のワクチンでも接種不適当とされる者に加え、表2に示すような免疫が低下している人への接種を行ってはならないとされている。
まだ臨床での接種はできないが、今年(2018年)承認を受けた帯状疱疹ワクチンに「シングリックス」がある。VZVの糖蛋白に免疫を増強するアジュバントを添加したサブユニットワクチンで、筋肉注射の2回接種。50歳以上の健常者で帯状疱疹の発症を97.2%減らし、PHNへの移行を91%減らした(N Engl J Med 2015; 372: 2087-2096)。
その一方で、第V相臨床試験では局所性、全身性の副反応が60〜80%に発現しており、副反応が比較的多いことが指摘されている。ただ、重篤な副反応はプラセボと同等だった。
この2剤の特徴について渡辺氏は「接種回数が異なる。また、ビケンは免疫不全患者などに接種できないが、シングリックスは接種できることが大きな違い。
一方、シングリックスは副反応が割と高い頻度で出現する可能性がある。
ビケンは水痘ワクチンとして30年以上使われており、安全性に関しては蓄積がある」とまとめている。
皮膚科以外の診療科への啓発も大切
実際の臨床での帯状疱疹ワクチンの接種率はまだ低い状況にあるという。
帯状疱疹ワクチンの接種対象は50歳以上となっているが、渡辺氏は「50歳は働き盛りなのでワクチンで帯状疱疹の発症リスクを減らしておく方が望ましい。
その年代でワクチンを接種しなかった人でも70歳以上は重症化しやすくPHNへの移行率も高くなるので、接種を勧めたい。
糖尿病など基礎疾患を持つ患者でも帯状疱疹発症リスクは上がるので、接種しておく方がいい」と接種対象者は広いとしている。
帯状疱疹に関しては診断と治療でも変化が見られている。簡単にVZV抗原が検出できるキット「デルマクイック」、腎機能低下例での投与量の減量が必要ない、1日1回投与の抗ヘルペスウイルス薬「アメナメビル」が登場し、診断も治療もより行いやすくなった。
こうした状況の中で「帯状疱疹は早期発見・早期治療が原則。かかりつけの内科医などでも典型例は診ることができるので、すぐに治療を開始してもらうことが望ましい。
鑑別に迷う例や重症例、症状が悪化する例、痛みが強い例などは迷わず皮膚科に紹介してほしい」と同氏は言う。
冒頭の帯状疱疹の患者調査では、皮膚科以外の他科受診状況も聞いており、内科、整形外科の受診が多かった。
帯状疱疹の診療では内科などの役割も大きいと考えられ、帯状疱疹ワクチンについても皮膚科以外にも啓発していきたいと同氏は強調している。
2019年01月23日
『血圧を水圧に例えると』
黒澤明監督の用心棒の最後のシーンで、仲代達矢演じる侍が、三船敏郎演じる用心棒に切られて、血しぶきが出るシーンがありました。決闘の末、大血管を切られての出血なので、血圧200mmHg以上、なので、約3m噴き出すことになり、実に写実的な演出だったことになります!
■診察室での会話
医師 体調はいかがですか?
患者 体調はいいんですが、血圧が高いって言われても
自覚症状がなくて…。
医師 確かにそうですね。
患者さんの中には、頭痛、頭が重い、ふらふらする、
耳鳴り、鼻血などの症状で気づく方もいますが、
ほとんどの方は自覚症状を感じません。
患者 そうなんですよ。あまり、実感がわかなくて…。
医師 それなら、いい方法がありますよ。
患者 それはどんな方法ですか?(興味津々)
医師 血圧を水圧に例えるとわかりやすいですよ。
患者 血圧を水圧に例える!?
医師 そうです。
血圧が160mmHgということは『13.6』をかけると水圧に
なりますので、水圧では2.2mになります。
患者 そんなになるんですか!
血圧には気をつけないといけませんね(納得した顔)。
●ポイント
血圧を水圧に例えることで、わかりやすくイメージできるようになります
●資料
血圧 180mmHg
→ 水圧 2.5m
血圧 170mmHg
→ 水圧 2.3m
血圧 160mmHg
→ 水圧 2.2m
血圧 150mmHg
→ 水圧 2.0m
血圧 140mmHg
→ 水圧 1.9m
血圧 130mmHg
→ 水圧 1.8m
血圧 120mmHg
→ 水圧 1.6m
*計算式
水銀(Hg)の比重=13.6
水圧=血圧×13.6
講師紹介
坂根 直樹 ( さかね なおき ) 氏
京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長
2019年01月22日
冠動脈石灰化スコア(CACスコア)の隠れた実力
冠動脈石灰化スコア(CACスコア)の隠れた実力
肥満の人、
コレステロール値が気になる、
家族に狭心症、心筋梗塞にかかった人がいる
方は読んでみてください。
単純CTによる冠動脈石灰化スコアの隠れた実力
造影剤使わず低線量、スコアがゼロなら「超低リスク」
2018/12/27 高志 昌宏=シニアエディター
2018年11月に発表された米国の新しいコレステロール管理ガイドラインでは、
冠動脈石灰化(coronary artery calcium:CAC)スコアによるリスク層別化が推奨に加えられた。
欧米ではCACスコアと心血管イベントの関連について多くのエビデンスがあり、リスク評価指標としての臨床的意義が確立している。我が国でも活用できそうだ。
桜橋渡辺病院の小山靖史氏
「健診で異常が指摘されたといった集団の場合、動脈硬化性疾患の好発年齢となる60歳代になっても、
冠動脈石灰化の指標であるCACスコアがゼロなら男性の95%、女性の98%は冠動脈疾患をほぼ否定できる。CACスコアは心血管疾患のより精緻なリスク評価を可能にする有用な指標で、
比較的低リスクな1次予防の人の追加の検査や治療方針の決定に威力を発揮する」
こう話すのは、桜橋渡辺病院(大阪市北区)心臓・血管センター画像診断科長の小山靖史氏だ。
同病院には、明らかな冠動脈疾患の症状はないが健診で血液生化学や心電図の異常を指摘されたとして、
循環器系の精査を目的とした紹介患者が多く受診する。
このような患者に対して小山氏は、まず造影剤が不要な単純CTで心臓と臍部を撮影。
冠動脈石灰化と腹部肥満を評価した上で、追加の検査や治療方針を考える。
図1は、CACスコアがゼロおよび1〜100の患者について、冠動脈CTで有意狭窄(50%以上)病変の存在が否定された割合を見たもの。CACスコアがゼロであれば女性は年齢にかかわらず、男性でも60歳代程度までは、有意狭窄が見つかる確率はかなり低いことが分かる。
「高齢男性を除けば、CACスコアがゼロなら造影剤を使う冠動脈CTまで行う必要はまずないだろう」(小山氏)。
CACスコアがゼロであれば、女性は年齢にかかわらず、男性でも60歳代程度までは、有意狭窄が見つかる率はかなり低い。有意狭窄否定率が低くCACスコアでは冠動脈疾患を否定できない階層を赤字で示した。(小山氏による、図はクリックで拡大)
一方でスコアが1以上であれば、一定の割合で有意狭窄が見つかってくる。CACスコアは動脈硬化の指標であり、一般に若年層では低値だ。その若年層でスコアが高値の場合は年齢不相応な石灰化ということになり、冠動脈CTを含めた精査が必要という。
桜橋渡辺病院では検査症例がデータベース化されており、新たな患者でCACスコアを調べると有意狭窄が見つかる確率が自動的に算出され、電子カルテに表示される。「CACスコアによる判定を説明した上で、性・年齢、糖尿病や高血圧といった危険因子、さらには社会的状況も踏まえ患者とよく話し合って、冠動脈CTや負荷試験まで行うか、コレステロールが高ければどの程度の強度のスタチン治療を行うかなど、その後の方針を決めている」と小山氏。
CACスコアがゼロなら冠動脈にプラークはない
CTによる冠動脈石灰化の評価で最も一般的な方法は、提唱者の名前が冠されたアガトストン・スコアだ。
提唱は1990年で、CACスコアといえば通常はアガトストン・スコアを指す。
1980年代に実用化された電子ビームCTによってCTの時間分解能が飛躍的に高まり、心電図と同期させた心臓の断層撮影が可能になった。
現在ではマルチスライスCTでも同等な精度で計測できるようになっている。
75歳男性の心臓単純CT画像
冠動脈の左主幹部、前下行枝、回旋枝に高度の石灰化を認める。
本症例のCACスコアは約573で、冠危険因子として高血圧、喫煙、脂質異常症がある。
内臓脂肪面積は175.5cm2でメタボリック症候群の診断基準を満たしていた。
(小山氏による写真)
同スコアでは、各スライスでCT値が130HU以上、面積が1mm2以上ある高吸収域を有意な石灰化領域とし、その面積に、各石灰化領域の最大CT値によって1から4の重み付けの係数を乗じる。これを、冠動脈起始部から心尖部まで3ミリ間隔で撮影された全スライスで行い、合算する。現在のCT装置では計測はほぼ自動化されており、数分で結果が出るそうだ。
石灰化は動脈硬化の最終像というイメージがあるが、実は炎症や組織の破綻・修復に伴う微細な石灰化は、比較的早期から始まっている。また、病理所見では石灰化所見の数倍のプラークが認められるが、存在部位は必ずしも一致しない。そこでCACスコアは、冠動脈全体の動脈硬化の程度を示す指標と見なされている。
虚血性心疾患対策を国是とする米国では冠動脈石灰化に関してもかなり以前から多くの研究が行われ、エビデンスも豊富だ。既に2006年、米国心臓協会(AHA)は無症状の1次予防の人を対象とした冠動脈石灰化の評価について、表1のようにまとめている。
表1 CTによる冠動脈石灰化プラーク評価の解釈と指針
(1)CACスコアがゼロなら、不安定プラークを含めた動脈硬化性プラークの存在は高率で否定できる。
(2)CACスコアがゼロなら、有意狭窄病変は高率で否定できる(陰性的中率95〜99%)
(3)CACスコアがゼロなら、今後2〜5年間の心血管イベントのリスクは低い(年間0.1%)
(4)CACスコアが1以上なら、冠動脈に動脈硬化性プラークが存在する。
(5)冠動脈石灰化の量が多いほど、性・年齢にかかわらず動脈硬化性プラークの量も多い。
(6)冠動脈石灰化の総量は動脈硬化性プラークの総量との関連が強いものの、
動脈硬化性変化の全体量は過小評価している。
(7)CACスコアが高ければ(100超)、今後2〜5年間の心イベントのリスクは高い(年間2%超)
(8)冠動脈石灰化の評価により、標準的な中等度リスクを持つ人のリスク予測能が改善される。
CACスコアの測定は、冠動脈イベントが中等度リスク(年間1.0〜2.0%)の人に対して、
リスク再評価を伴う臨床上の意思決定のときに考慮すべきである。
(9)CACスコアが1以上の患者において、リスク層別化の補助を超えた追加の検査
(負荷試験や冠動脈カテーテル検査など)の判断は、CACスコアだけでは行うべきでない。
CACスコアは狭窄の重症度との関連はほとんどなく、
病歴や広く使われている他の臨床的基準で判断すべきである。
(出典:Circulation. 2006;114:1761-91.)
肥満の人、
コレステロール値が気になる、
家族に狭心症、心筋梗塞にかかった人がいる
方は読んでみてください。
単純CTによる冠動脈石灰化スコアの隠れた実力
造影剤使わず低線量、スコアがゼロなら「超低リスク」
2018/12/27 高志 昌宏=シニアエディター
2018年11月に発表された米国の新しいコレステロール管理ガイドラインでは、
冠動脈石灰化(coronary artery calcium:CAC)スコアによるリスク層別化が推奨に加えられた。
欧米ではCACスコアと心血管イベントの関連について多くのエビデンスがあり、リスク評価指標としての臨床的意義が確立している。我が国でも活用できそうだ。
桜橋渡辺病院の小山靖史氏
「健診で異常が指摘されたといった集団の場合、動脈硬化性疾患の好発年齢となる60歳代になっても、
冠動脈石灰化の指標であるCACスコアがゼロなら男性の95%、女性の98%は冠動脈疾患をほぼ否定できる。CACスコアは心血管疾患のより精緻なリスク評価を可能にする有用な指標で、
比較的低リスクな1次予防の人の追加の検査や治療方針の決定に威力を発揮する」
こう話すのは、桜橋渡辺病院(大阪市北区)心臓・血管センター画像診断科長の小山靖史氏だ。
同病院には、明らかな冠動脈疾患の症状はないが健診で血液生化学や心電図の異常を指摘されたとして、
循環器系の精査を目的とした紹介患者が多く受診する。
このような患者に対して小山氏は、まず造影剤が不要な単純CTで心臓と臍部を撮影。
冠動脈石灰化と腹部肥満を評価した上で、追加の検査や治療方針を考える。
図1は、CACスコアがゼロおよび1〜100の患者について、冠動脈CTで有意狭窄(50%以上)病変の存在が否定された割合を見たもの。CACスコアがゼロであれば女性は年齢にかかわらず、男性でも60歳代程度までは、有意狭窄が見つかる確率はかなり低いことが分かる。
「高齢男性を除けば、CACスコアがゼロなら造影剤を使う冠動脈CTまで行う必要はまずないだろう」(小山氏)。
CACスコアがゼロであれば、女性は年齢にかかわらず、男性でも60歳代程度までは、有意狭窄が見つかる率はかなり低い。有意狭窄否定率が低くCACスコアでは冠動脈疾患を否定できない階層を赤字で示した。(小山氏による、図はクリックで拡大)
一方でスコアが1以上であれば、一定の割合で有意狭窄が見つかってくる。CACスコアは動脈硬化の指標であり、一般に若年層では低値だ。その若年層でスコアが高値の場合は年齢不相応な石灰化ということになり、冠動脈CTを含めた精査が必要という。
桜橋渡辺病院では検査症例がデータベース化されており、新たな患者でCACスコアを調べると有意狭窄が見つかる確率が自動的に算出され、電子カルテに表示される。「CACスコアによる判定を説明した上で、性・年齢、糖尿病や高血圧といった危険因子、さらには社会的状況も踏まえ患者とよく話し合って、冠動脈CTや負荷試験まで行うか、コレステロールが高ければどの程度の強度のスタチン治療を行うかなど、その後の方針を決めている」と小山氏。
CACスコアがゼロなら冠動脈にプラークはない
CTによる冠動脈石灰化の評価で最も一般的な方法は、提唱者の名前が冠されたアガトストン・スコアだ。
提唱は1990年で、CACスコアといえば通常はアガトストン・スコアを指す。
1980年代に実用化された電子ビームCTによってCTの時間分解能が飛躍的に高まり、心電図と同期させた心臓の断層撮影が可能になった。
現在ではマルチスライスCTでも同等な精度で計測できるようになっている。
75歳男性の心臓単純CT画像
冠動脈の左主幹部、前下行枝、回旋枝に高度の石灰化を認める。
本症例のCACスコアは約573で、冠危険因子として高血圧、喫煙、脂質異常症がある。
内臓脂肪面積は175.5cm2でメタボリック症候群の診断基準を満たしていた。
(小山氏による写真)
同スコアでは、各スライスでCT値が130HU以上、面積が1mm2以上ある高吸収域を有意な石灰化領域とし、その面積に、各石灰化領域の最大CT値によって1から4の重み付けの係数を乗じる。これを、冠動脈起始部から心尖部まで3ミリ間隔で撮影された全スライスで行い、合算する。現在のCT装置では計測はほぼ自動化されており、数分で結果が出るそうだ。
石灰化は動脈硬化の最終像というイメージがあるが、実は炎症や組織の破綻・修復に伴う微細な石灰化は、比較的早期から始まっている。また、病理所見では石灰化所見の数倍のプラークが認められるが、存在部位は必ずしも一致しない。そこでCACスコアは、冠動脈全体の動脈硬化の程度を示す指標と見なされている。
虚血性心疾患対策を国是とする米国では冠動脈石灰化に関してもかなり以前から多くの研究が行われ、エビデンスも豊富だ。既に2006年、米国心臓協会(AHA)は無症状の1次予防の人を対象とした冠動脈石灰化の評価について、表1のようにまとめている。
表1 CTによる冠動脈石灰化プラーク評価の解釈と指針
(1)CACスコアがゼロなら、不安定プラークを含めた動脈硬化性プラークの存在は高率で否定できる。
(2)CACスコアがゼロなら、有意狭窄病変は高率で否定できる(陰性的中率95〜99%)
(3)CACスコアがゼロなら、今後2〜5年間の心血管イベントのリスクは低い(年間0.1%)
(4)CACスコアが1以上なら、冠動脈に動脈硬化性プラークが存在する。
(5)冠動脈石灰化の量が多いほど、性・年齢にかかわらず動脈硬化性プラークの量も多い。
(6)冠動脈石灰化の総量は動脈硬化性プラークの総量との関連が強いものの、
動脈硬化性変化の全体量は過小評価している。
(7)CACスコアが高ければ(100超)、今後2〜5年間の心イベントのリスクは高い(年間2%超)
(8)冠動脈石灰化の評価により、標準的な中等度リスクを持つ人のリスク予測能が改善される。
CACスコアの測定は、冠動脈イベントが中等度リスク(年間1.0〜2.0%)の人に対して、
リスク再評価を伴う臨床上の意思決定のときに考慮すべきである。
(9)CACスコアが1以上の患者において、リスク層別化の補助を超えた追加の検査
(負荷試験や冠動脈カテーテル検査など)の判断は、CACスコアだけでは行うべきでない。
CACスコアは狭窄の重症度との関連はほとんどなく、
病歴や広く使われている他の臨床的基準で判断すべきである。
(出典:Circulation. 2006;114:1761-91.)
2019年01月21日
水分摂取と各飲料水の糖分について【実践型!食事指導スライド】
水分摂取と各飲料水の糖分について【実践型!食事指導スライド】
医療機関や企業で、2万件近い食事改善に向けた提案やカウンセリングを行ってきた管理栄養士・浅野まみこ氏がコンパクトにまとめたスライドをお届けします。
公開日:2018/07/04
医療者向けワンポイント解説
水分摂取と各飲料水の糖質比較
1日の水分摂取量の目安として、約1.5〜2.0Lといわれています。これは、コップ1杯を200mLと換算して、8〜10杯ほどです。
水分には、
「酸素や栄養素を運ぶ働き」
「老廃物を排泄する働き」
「血液を循環させる働き」
「汗として体温を調整する働き」
「体液の性状を一定に保つ働き」など多くの働きがあります。
朝、起きがけの1杯から始め、こまめな水分摂取が必要です。
大手2社のスポーツドリンク(ペットボトル500mL)で清涼飲料水の糖質を比較した場合、A社は23.5g、B社は31gでした。
これを1本3gのスティックシュガーで換算すると、
A社は約8本分、B社は約10本分に相当します。
また、最近では、水と間違えてしまうような清涼飲料水もあります。これでは、水分を摂取しているつもりで、糖質を大量に摂取してしまうことになります。
飲料に入っている糖分の問題点は、もう1つあります。裏の表示を見ると「果糖ぶどう糖液糖」「果糖 砂糖」などの表記があります。
果糖(フルクトース)やブドウ糖(グルコース)は単糖類に分類され、それ以上加水分解されない糖のため、体内に入るとすぐに腸管から吸収されます。
また、液糖であることでより吸収がされやすくなります。吸収された糖は、血糖値の急上昇へつながるため、血糖コントロールへの影響、糖化など、生活習慣病のリスクが高くなります。
また、果糖は、内臓肥満やメタボへの影響が強く、米国・カリフォルニア大学デービス校のStanhope氏らは「ヒトにエネルギー比25%のフルクトース(果糖)を10週間摂取させると、内臓脂肪の増加、脂質代謝異常、インスリン抵抗性の発症が引き起こされる」と報告しています1)。
さらに、果糖はグレリンの抑制作用がなく、満腹中枢にも働かないため、その点においても肥満を助長させる大きな要因となります。
空調のきいた室内にいることが多い、運動などをあまりしないなど、大量に汗をかくような環境ではない方や、食事がきちんと食べられている方は、食事から塩やミネラルが摂れるので、水、お茶、麦茶(ミネラル含有)などを中心に水分を摂取してもらいましょう。
まずは清涼飲料水の糖質量の多さを認識してもらうこと、清涼飲料水に多く含まれる果糖摂取のリスクを患者さんに認識してもらうことが大切です。
飲み物を買う際には、原材料名が記載されたラベルの確認を習慣にするよう伝えることもお勧めします。
参考文献
1) Stanhope KL, et al. J Clin Invest. 2009;119:1322‒1334.
浅野 まみこ ( あさの まみこ ) 氏
株式会社エビータ代表取締役・管理栄養士 食生活コンサルタント
[略歴]
総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて1万8,000人以上の栄養相談を実施。その経験を生かし、企業のコンサルティング、レシピ開発など多方面で活躍中。年間100時間以上の講演を行い、全国をとび回っている。NHKおはよう日本 TBS「名医のTHE太鼓判」をはじめ、フジテレビ「ダイバイヤー」の準レギュラーを務めるなど、メディアや雑誌に多数出演。飲食店や大手食品会社のヘルシー商品の考案や、駅弁やコンビニ商品のプロデュースを担当。「食生活が楽しいと人生が100倍楽しい!」をモットーに活動をしている。
420名以上の隊員が所属する「栄養士戦隊☆」を主催、隊長を務める。夕刊フジ「きょうから実践 外食・コンビニ健康法」を毎週水曜に連載中。
新著: 『血糖値を下げる夜9時からの遅ごはん』(誠文堂新光社)『「コンビニ食・外食」で健康になる方法』(草思社)
ホームページ: http://e‒vita.jp/
公式ブログ: http://ameblo.jp/evita/
医療機関や企業で、2万件近い食事改善に向けた提案やカウンセリングを行ってきた管理栄養士・浅野まみこ氏がコンパクトにまとめたスライドをお届けします。
公開日:2018/07/04
医療者向けワンポイント解説
水分摂取と各飲料水の糖質比較
1日の水分摂取量の目安として、約1.5〜2.0Lといわれています。これは、コップ1杯を200mLと換算して、8〜10杯ほどです。
水分には、
「酸素や栄養素を運ぶ働き」
「老廃物を排泄する働き」
「血液を循環させる働き」
「汗として体温を調整する働き」
「体液の性状を一定に保つ働き」など多くの働きがあります。
朝、起きがけの1杯から始め、こまめな水分摂取が必要です。
大手2社のスポーツドリンク(ペットボトル500mL)で清涼飲料水の糖質を比較した場合、A社は23.5g、B社は31gでした。
これを1本3gのスティックシュガーで換算すると、
A社は約8本分、B社は約10本分に相当します。
また、最近では、水と間違えてしまうような清涼飲料水もあります。これでは、水分を摂取しているつもりで、糖質を大量に摂取してしまうことになります。
飲料に入っている糖分の問題点は、もう1つあります。裏の表示を見ると「果糖ぶどう糖液糖」「果糖 砂糖」などの表記があります。
果糖(フルクトース)やブドウ糖(グルコース)は単糖類に分類され、それ以上加水分解されない糖のため、体内に入るとすぐに腸管から吸収されます。
また、液糖であることでより吸収がされやすくなります。吸収された糖は、血糖値の急上昇へつながるため、血糖コントロールへの影響、糖化など、生活習慣病のリスクが高くなります。
また、果糖は、内臓肥満やメタボへの影響が強く、米国・カリフォルニア大学デービス校のStanhope氏らは「ヒトにエネルギー比25%のフルクトース(果糖)を10週間摂取させると、内臓脂肪の増加、脂質代謝異常、インスリン抵抗性の発症が引き起こされる」と報告しています1)。
さらに、果糖はグレリンの抑制作用がなく、満腹中枢にも働かないため、その点においても肥満を助長させる大きな要因となります。
空調のきいた室内にいることが多い、運動などをあまりしないなど、大量に汗をかくような環境ではない方や、食事がきちんと食べられている方は、食事から塩やミネラルが摂れるので、水、お茶、麦茶(ミネラル含有)などを中心に水分を摂取してもらいましょう。
まずは清涼飲料水の糖質量の多さを認識してもらうこと、清涼飲料水に多く含まれる果糖摂取のリスクを患者さんに認識してもらうことが大切です。
飲み物を買う際には、原材料名が記載されたラベルの確認を習慣にするよう伝えることもお勧めします。
参考文献
1) Stanhope KL, et al. J Clin Invest. 2009;119:1322‒1334.
浅野 まみこ ( あさの まみこ ) 氏
株式会社エビータ代表取締役・管理栄養士 食生活コンサルタント
[略歴]
総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて1万8,000人以上の栄養相談を実施。その経験を生かし、企業のコンサルティング、レシピ開発など多方面で活躍中。年間100時間以上の講演を行い、全国をとび回っている。NHKおはよう日本 TBS「名医のTHE太鼓判」をはじめ、フジテレビ「ダイバイヤー」の準レギュラーを務めるなど、メディアや雑誌に多数出演。飲食店や大手食品会社のヘルシー商品の考案や、駅弁やコンビニ商品のプロデュースを担当。「食生活が楽しいと人生が100倍楽しい!」をモットーに活動をしている。
420名以上の隊員が所属する「栄養士戦隊☆」を主催、隊長を務める。夕刊フジ「きょうから実践 外食・コンビニ健康法」を毎週水曜に連載中。
新著: 『血糖値を下げる夜9時からの遅ごはん』(誠文堂新光社)『「コンビニ食・外食」で健康になる方法』(草思社)
ホームページ: http://e‒vita.jp/
公式ブログ: http://ameblo.jp/evita/
2019年01月20日
子宮頸がんリスクとワクチン接種率に逆相関
こんなに見事な結果が出ていることをマスコミはきちんと国民に知らせないー何を基準にニュースを選択しているのか?
子宮頸がんリスクとワクチン接種率に逆相関
2018年12月18日 06:05
子宮頸がんの予防対策として大きな期待が寄せられ、
2010年度から公費負担、
2013年4月から定期接種化されたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンだが、
接種後の副反応とされる症状を懸念する報道が相次ぎ、
同年6月14日、厚生労働省は積極的な接種勧奨を差し控えると通達、5年を経た現在も継続されている。
それにより、HPVワクチン接種率に出生年度によって大きな格差が生じている。
大阪大学産科学婦人科学病理研究室の八木麻未氏は、
出生年度別の子宮頸がん罹患リスクの評価を行うとともに、
HPVワクチン接種の有効性を検証。
出生年度ごとの子宮頸がん罹患リスクがHPVワクチン接種率と逆相関することを明らかにし(Sci Rep 2018; 8: 5612)、
第22回日本ワクチン学会(12月8〜9日)において報告した。
HPVワクチン接種率は出生年度によって格差が大きい
子宮頸がんのほとんどはハイリスク型のHPVが子宮頸部に感染し持続感染することによって発症する。
子宮頸がんの予防は子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)と子宮頸がん検診の2本柱となっている。
子宮頸がん検診は前がん病変の早期発見・早期治療を目的としているのに対し、
HPVワクチンはハイリスク型のHPV-16、18型の感染自体を予防するものだ。
日本におけるHPV型別分布によると、16、18型がおよそ6割を占めており、日本で接種可能なHPVワクチン(2価ワクチン、4価ワクチン)はハイリスク型の中では16、18型を予防するものであることから、およそ6割の子宮頸がんがワクチンの接種によって予防可能であると考えられる。
しかし、接種勧奨の差し控えにより出生年度別のHPVワクチン接種率には大きな格差が生じており、
公費助成導入前である1993年度生まれの人のワクチン接種率は0%、
公費助成導入後の1994〜99年度生まれの人では約70%、
積極的勧奨中止以降である2000年度生まれ以降の人では接種率は激減し、事実上、接種停止状態となっている。
その一方で、HPVワクチンの有効性を検証するさまざまな報告がなされており、特に、秋田県、宮城県からは20〜24歳時の子宮頸がん検診における細胞診異常予防効果が示されている。
しかしながらこれらの既報には、20〜24歳では出生年度によってHPVワクチン接種者の割合が異なり、細胞診異常は年齢を重ねた方が出やすいために、非接種者において検診の異常が出やすいという研究調査上の弱点がある。
そこで八木氏らは、出生年度ごとのHPVワクチン接種率と20歳時の子宮頸がん検診における細胞診異常の頻度を明らかにし、
出生年度ごとの子宮頸がん罹患リスクの評価を行うとともに、HPVワクチン接種の有効性を評価した。
ワクチン導入・接種世代の細胞診異常率は導入前世代に比べて大きく減少
1990〜95年度生まれの女性(1990〜93年度生まれがワクチン導入前世代、1994〜95年度生まれがワクチン導入・接種世代)を対象とし、福島県いわき市・川崎市・大津市・大阪市・大阪府高槻市・松山市・福岡市から20歳の子宮頸がん検診時の対象者の人数および細胞診異常の人数、16歳までのHPVワクチン累積初回接種率についてのデータ提供を受け、解析を行った。
HPVワクチン接種率が0%のワクチン導入前世代における細胞診異常率を調べたところ、
ASC-US(軽度病変疑い)以上の細胞診異常率は
1990年度3.7%(84人/2,285人)、
91年度3.7%(92人/2,474人)、
92年度4.3%(79人/1,849人)、
93年度4.3%(75人/1,725人)であった。
一方、ワクチン接種世代におけるHPVワクチン接種率は
1994年度64%(9,038人/1万4,153人)、
95年度75%(1万642人/1万4,254人)であり、
ASC-US以上の細胞診異常率はいずれも3.0%であった。
さらにワンランク上の異常所見であるLSIL(軽度病変)以上の細胞診異常率を見ると、
ワクチン導入前世代は
1990年度2.2%、
91年度1.6%、
92年度2.4%、
93年度2.5%、
ワクチン接種世代では
1994年度0.8%、
95年度0.4%と、
ワクチン接種率が低いほど細胞診異常率が高まっていた(図)。
ワクチン導入前世代とワクチン導入・接種世代に2分して比較すると、
ASC-US以上の細胞診異常率は前者が3.96%、後者が3.01%とワクチンの導入によって24%減少、
LSIL以上の細胞診異常率は2.11%、0.58%と
73%減少したことになり、ワクチン接種率と細胞診異常率が逆相関することが示された。
以上から八木氏は「各出生年度における子宮頸がん罹患リスクがワクチン接種率と逆相関することが示されたとともに、HPVワクチン接種による細胞診異常の予防効果が示された。
今後、引き続き解析を行い、組織診異常の予防効果を検証する予定である」と述べた。
(長谷川愛子)
子宮頸がんリスクとワクチン接種率に逆相関
2018年12月18日 06:05
子宮頸がんの予防対策として大きな期待が寄せられ、
2010年度から公費負担、
2013年4月から定期接種化されたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンだが、
接種後の副反応とされる症状を懸念する報道が相次ぎ、
同年6月14日、厚生労働省は積極的な接種勧奨を差し控えると通達、5年を経た現在も継続されている。
それにより、HPVワクチン接種率に出生年度によって大きな格差が生じている。
大阪大学産科学婦人科学病理研究室の八木麻未氏は、
出生年度別の子宮頸がん罹患リスクの評価を行うとともに、
HPVワクチン接種の有効性を検証。
出生年度ごとの子宮頸がん罹患リスクがHPVワクチン接種率と逆相関することを明らかにし(Sci Rep 2018; 8: 5612)、
第22回日本ワクチン学会(12月8〜9日)において報告した。
HPVワクチン接種率は出生年度によって格差が大きい
子宮頸がんのほとんどはハイリスク型のHPVが子宮頸部に感染し持続感染することによって発症する。
子宮頸がんの予防は子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)と子宮頸がん検診の2本柱となっている。
子宮頸がん検診は前がん病変の早期発見・早期治療を目的としているのに対し、
HPVワクチンはハイリスク型のHPV-16、18型の感染自体を予防するものだ。
日本におけるHPV型別分布によると、16、18型がおよそ6割を占めており、日本で接種可能なHPVワクチン(2価ワクチン、4価ワクチン)はハイリスク型の中では16、18型を予防するものであることから、およそ6割の子宮頸がんがワクチンの接種によって予防可能であると考えられる。
しかし、接種勧奨の差し控えにより出生年度別のHPVワクチン接種率には大きな格差が生じており、
公費助成導入前である1993年度生まれの人のワクチン接種率は0%、
公費助成導入後の1994〜99年度生まれの人では約70%、
積極的勧奨中止以降である2000年度生まれ以降の人では接種率は激減し、事実上、接種停止状態となっている。
その一方で、HPVワクチンの有効性を検証するさまざまな報告がなされており、特に、秋田県、宮城県からは20〜24歳時の子宮頸がん検診における細胞診異常予防効果が示されている。
しかしながらこれらの既報には、20〜24歳では出生年度によってHPVワクチン接種者の割合が異なり、細胞診異常は年齢を重ねた方が出やすいために、非接種者において検診の異常が出やすいという研究調査上の弱点がある。
そこで八木氏らは、出生年度ごとのHPVワクチン接種率と20歳時の子宮頸がん検診における細胞診異常の頻度を明らかにし、
出生年度ごとの子宮頸がん罹患リスクの評価を行うとともに、HPVワクチン接種の有効性を評価した。
ワクチン導入・接種世代の細胞診異常率は導入前世代に比べて大きく減少
1990〜95年度生まれの女性(1990〜93年度生まれがワクチン導入前世代、1994〜95年度生まれがワクチン導入・接種世代)を対象とし、福島県いわき市・川崎市・大津市・大阪市・大阪府高槻市・松山市・福岡市から20歳の子宮頸がん検診時の対象者の人数および細胞診異常の人数、16歳までのHPVワクチン累積初回接種率についてのデータ提供を受け、解析を行った。
HPVワクチン接種率が0%のワクチン導入前世代における細胞診異常率を調べたところ、
ASC-US(軽度病変疑い)以上の細胞診異常率は
1990年度3.7%(84人/2,285人)、
91年度3.7%(92人/2,474人)、
92年度4.3%(79人/1,849人)、
93年度4.3%(75人/1,725人)であった。
一方、ワクチン接種世代におけるHPVワクチン接種率は
1994年度64%(9,038人/1万4,153人)、
95年度75%(1万642人/1万4,254人)であり、
ASC-US以上の細胞診異常率はいずれも3.0%であった。
さらにワンランク上の異常所見であるLSIL(軽度病変)以上の細胞診異常率を見ると、
ワクチン導入前世代は
1990年度2.2%、
91年度1.6%、
92年度2.4%、
93年度2.5%、
ワクチン接種世代では
1994年度0.8%、
95年度0.4%と、
ワクチン接種率が低いほど細胞診異常率が高まっていた(図)。
ワクチン導入前世代とワクチン導入・接種世代に2分して比較すると、
ASC-US以上の細胞診異常率は前者が3.96%、後者が3.01%とワクチンの導入によって24%減少、
LSIL以上の細胞診異常率は2.11%、0.58%と
73%減少したことになり、ワクチン接種率と細胞診異常率が逆相関することが示された。
以上から八木氏は「各出生年度における子宮頸がん罹患リスクがワクチン接種率と逆相関することが示されたとともに、HPVワクチン接種による細胞診異常の予防効果が示された。
今後、引き続き解析を行い、組織診異常の予防効果を検証する予定である」と述べた。
(長谷川愛子)
2019年01月19日
今、フレイルと言う言葉が流行中です!
今、フレイルと言う言葉が流行中です!
第5回 糖尿病患者とフレイル・ADL【高齢者糖尿病診療のコツ】
CareNet 公開日:2019/01/15
荒木 厚 ( あらき あつし ) 氏
東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科 内科総括部長
J-CLEAR評議員
Q1 実際、糖尿病患者でどのようにフレイルを評価しますか?
高齢糖尿病患者ではフレイル・サルコペニア、手段的/基本的ADL、視力、聴力などの身体機能を評価することが大切です。
その中で、フレイルは要介護になることを防ぐという意味で重要な評価項目の1つでしょう。
フレイルは加齢に伴って予備能が低下し、ストレスによって要介護や死亡に陥りやすい状態と定義されます(図1)。
本邦ではフレイルは健康と要介護の中間の状態とされていますが、海外では要介護を含む場合もあります。
運動や食事介入によって一部健康な状態に戻る場合があるという可逆性も、フレイルの特徴です。
もう1つの大きな特徴は多面性で、身体的フレイルだけでなく、認知機能低下やうつなどの精神・心理的フレイル、閉じこもりなどの社会的フレイルも含めた広い意味で、フレイルを評価することが大切です。
フレイルにはさまざまな指標がありますが、ここでは大きく分けて3つのタイプを紹介します。
1つ目は身体的フレイルで、評価法としてCHS基準があります。
この基準はL.P.Friedらが提唱したもので、体重減少、疲労感、筋力低下、身体活動量低下、歩行速度低下の5項目のうち3項目以上当てはまる場合をフレイルとします。
体重減少は低栄養、筋力低下と歩行速度低下はサルコペニアの症状なので、Friedらによる身体的フレイルは、低栄養やサルコペニアを含む概念とも言えます。
本邦ではCHS基準のそれぞれの項目のカットオフ値や質問を修正したJ-CHS基準があります(表1)。
2つ目はdeficit accumulation model(障害蓄積モデル)によるフレイルで、高齢者に多い機能障害や疾患の集積によって定義されます。
36項目からなるFrailty Indexが代表的な基準です。
障害が多く重なることで予備能が低下し、死亡のリスクが大きくなるという考えに基づいて作成されていますが、項目数が多く、臨床的に使いにくいのが現状です。
3つ目は高齢者総合機能評価(CGA)に基づいたフレイルであり、身体機能、認知機能、うつ状態、低栄養などを総合的に評価した結果に基づいて評価するものです。
本邦では介護予防検診で使用されている「基本チェックリスト」がCGAに基づいたフレイルといえるでしょう。
ADL、サルコペニア関連、低栄養、口腔機能、閉じこもり、認知、うつなどの25項目を評価し、8項目以上当てはまる場合をフレイルとします1)(表2)。
外来通院の高齢糖尿病患者でまず簡単に実施できるのはJ-CHSでしょう。
基本チェックリストを行うことができれば、広い意味でフレイルの評価ができます。
基本チェックリストを行うのが難しい場合にはDASC-8を行って、(高齢者糖尿病の血糖コントロール目標における)カテゴリーIIの患者を対象にフレイル対策を行うという方法もあります。
Q2 糖尿病とフレイル・ADL低下の関係、危険因子は?
糖尿病患者は、高齢者だけでなく中年者でもフレイルをきたしやすいことがわかっています。
糖尿病がない人と比べて、糖尿病患者ではフレイルのリスクが約5倍、プレフレイルのリスクも約2.3倍と報告されています2)。また、糖尿病患者では手段的ADL低下を1.65倍、基本的ADL低下を1.82倍きたしやすいというメタ解析結果があります3)。
高齢糖尿病患者では、特に高血糖、重症低血糖、動脈硬化性疾患の合併がフレイルの危険因子として重要です。HbA1c 8.0%以上の患者はフレイル、歩行速度低下、転倒、骨折を起こしやすくなります(図2)。
もう一つ重要なことは、糖尿病にフレイルを合併すると死亡リスクが大きくなることです。
点数化して重症度が評価できるフレイルでは、フレイルが重症であるほど死亡のリスクが高まることがわかっています。
英国の調査では、糖尿病にフレイルを合併した患者では平均余命(中央値)は23ヵ月という、極端な報告もあります4)。
Q3 フレイルを合併した患者への運動療法、介入のタイミングや内容をどうやって決めますか?
フレイルがあるとわかったら、運動療法と食事療法を見直します。
運動療法については、まず身体活動量が低下していないかをチェックします。
家に閉じこもっていないか、家で寝ている時間が多くないかを質問し、当てはまる場合は坐位または臥位の時間を短くし、外出の機会を増やすように助言をすることが大切です。
フレイル対策で有効とされているのが、レジスタンス運動と多要素の運動です。
レジスタンス運動は負荷をかけて筋力トレーニングを行うものです。
市町村の運動教室、介護保険で利用可能なデイケア、ジムでのマシントレーニング、椅子を使ってのスクワット、ロコトレ、ヨガ、太極拳などがあり、エルゴメーターや水中歩行などもレジスタンス運動の要素があります。
これらは少なくとも週2回以上行うことを勧めています。
多要素の運動は、レジスタンス運動ができないフレイルの高齢者に対して、ストレッチ運動から始まり、軽度のレジスタンス運動、バランス運動、有酸素運動を組み合わせて、レジスタンス運動の負荷を大きくしていく運動です。この多要素の運動も身体機能を高め、フレイル進行予防に有効であるとされています。
Q4 フレイルを合併した患者への食事療法、エネルギーアップのコツや腎機能低下例での対応を教えてください
フレイルを考慮した食事療法は十分なエネルギー量を確保し、タンパク質の摂取を増やすことがポイントです。
欧州栄養代謝学会(ESPEN)では高齢者の筋肉の量と機能を維持するためには実体重当たり少なくとも1.0〜1.2g/日のタンパク質をとることが推奨されています5)。
つまり、体重60sの人は70g/日のタンパク質摂取が必要になります。
フレイルのような低栄養または低栄養リスクがある場合には、さらに多く、体重当たり1.2〜1.5g/日のタンパク質をとることが勧められます。
フレイルがある場合、腎症3期まではタンパク質を十分にとり、腎症4期では病状によって個別に判断するのがいいと思います。
腎機能悪化の速度が速い場合や高リン血症の場合はタンパク質制限を優先し、体重減少、筋力低下などでフレイルが進行しやすい状態の場合はタンパク質摂取を増やすことを優先させてはどうかと考えています。
高齢者は肉をとることが苦手な場合もあるので、魚、乳製品、卵、大豆製品などを組み合わせてとることを勧めます。
また、タンパク質の中でも特にロイシンの多い食品、例えば「魚肉ソーセージを一品加える」といった助言もいいのではないでしょうか。
朝食でタンパク質を必ずとるようにすると、1日の摂取量を増やすことにつながります。
エネルギー量は従来、高齢者は体重×25〜30kcalとして計算することが多かったと思いますが、
フレイル予防を考えた場合、体重当たり30〜35kcalとして十分なエネルギー量を確保し、極端なエネルギー制限を避けることが大切です。例えば体重50sの女性では、1,600kcalの食事となります。
Q5 フレイルを合併した糖尿病患者への薬物療法、考慮すべきポイントは?
フレイルがある糖尿病患者の薬物療法のポイントは
1)低血糖などの有害事象のリスクを減らすような選択をする
2)フレイルの原因となる併存疾患の治療も行う
3)服薬アドヒアランス低下の対策を立てる
ことです。
特に重症低血糖には注意が必要で、フレイルだけでなく認知機能障害、転倒・骨折、ADL低下、うつ状態、QOL低下につながる可能性があります。
したがって、フレイルの患者では低血糖を起こしにくい薬剤を中心とした治療を行います。
メトホルミンやDPP-4阻害薬などをまず使用します。
SU薬を使用する場合は、できるだけ少量、例えばグリクラジド10〜20r/日で使用します。
フレイルの患者では、体重減少をきたしうるSGLT2阻害薬や高用量のメトホルミンの使用には注意を要します。
特に腎機能は定期的にeGFRで評価し、結果に応じて、メトホルミンやSU薬の用量を調整する必要があります。SU薬はeGFR45mL/分/1.73m2未満で減量、eGFR30mL/分/1.73m2未満で中止します。
フレイルの糖尿病患者は心不全、COPD、PADなど複数の併存疾患を有していることが多く、それがフレイルの原因となっている場合もあります。
したがって、フレイルの原因となる疾患を治療することも大切です。
心機能、呼吸機能、歩行機能を少しでも改善することが、フレイルの進行防止につながります。
また、軽度の認知機能障害を伴うことも少なくなく、服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。
多剤併用も問題となります。両者は双方向の関係があると考えられており、併存疾患の多さや運動療法の不十分さなどが多剤併用の原因となりえますが、多剤併用がフレイルにつながる可能性もあります。
したがって、こうした患者では治療の単純化を行うことが必要です。
服薬数を減らすことだけでなく、服薬回数を減らすことや服薬のタイミングを統一することも単純化の手段として重要です。
例えば、α-GIやグリニド薬を使用する場合には、すべての内服薬を食直前に統一するようにしています。
ADL低下や認知症がある場合には、重症低血糖のリスクが高いので、減量・減薬を考慮すべき場合もあります。
Q6 他にどのような治療上の注意点がありますか?
フレイルがある患者では、認知機能障害、手段的ADL低下、身体活動量低下、うつ状態、低栄養、服薬アドヒアランス低下、社会的サポート不足などを伴っている場合が少なくありません。
したがって、状態を包括的に評価できるCGAを行い、その結果に基づき、運動/食事/薬物療法だけでなく、社会的サポートを行うことが大切になります。
介護保険を申請し、要介護と認定されれば、デイケアなどのサービスを受けることもできます。
認定されない場合でも、老人会、地域の行事、講演会などの社会参加を促して、閉じこもりを防ぐことが社会的なフレイルを防ぐために重要だと考えています。
参考文献
1) Satake S, et al.Geriatr Gerontol Int.2016;16:709-715.
2) Hanlon, et al. Lancet Public Health. 2018 Jun 13. [Epub ahead of print]
3) Wong E et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2013 ;1: 106–14.
4) Hubbard RE, et al. Diabet Med. 2010 ;27:603-606.
5) Deutz NE, et al.Clin Nutr 2014;33:929-936.
6) Kalyani RR, et al. J Am Geriatr Soc. 2012;60:1701-7.
7) Park SW et al. Diabetes. 2006;55:1813-8.
8) Yau RK, et al. Diabetes Care. 2013;36:3985-91.
9) Schneider AL et al. Diabetes Care. 2013;36:1153-8.
第5回 糖尿病患者とフレイル・ADL【高齢者糖尿病診療のコツ】
CareNet 公開日:2019/01/15
荒木 厚 ( あらき あつし ) 氏
東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科 内科総括部長
J-CLEAR評議員
Q1 実際、糖尿病患者でどのようにフレイルを評価しますか?
高齢糖尿病患者ではフレイル・サルコペニア、手段的/基本的ADL、視力、聴力などの身体機能を評価することが大切です。
その中で、フレイルは要介護になることを防ぐという意味で重要な評価項目の1つでしょう。
フレイルは加齢に伴って予備能が低下し、ストレスによって要介護や死亡に陥りやすい状態と定義されます(図1)。
本邦ではフレイルは健康と要介護の中間の状態とされていますが、海外では要介護を含む場合もあります。
運動や食事介入によって一部健康な状態に戻る場合があるという可逆性も、フレイルの特徴です。
もう1つの大きな特徴は多面性で、身体的フレイルだけでなく、認知機能低下やうつなどの精神・心理的フレイル、閉じこもりなどの社会的フレイルも含めた広い意味で、フレイルを評価することが大切です。
フレイルにはさまざまな指標がありますが、ここでは大きく分けて3つのタイプを紹介します。
1つ目は身体的フレイルで、評価法としてCHS基準があります。
この基準はL.P.Friedらが提唱したもので、体重減少、疲労感、筋力低下、身体活動量低下、歩行速度低下の5項目のうち3項目以上当てはまる場合をフレイルとします。
体重減少は低栄養、筋力低下と歩行速度低下はサルコペニアの症状なので、Friedらによる身体的フレイルは、低栄養やサルコペニアを含む概念とも言えます。
本邦ではCHS基準のそれぞれの項目のカットオフ値や質問を修正したJ-CHS基準があります(表1)。
2つ目はdeficit accumulation model(障害蓄積モデル)によるフレイルで、高齢者に多い機能障害や疾患の集積によって定義されます。
36項目からなるFrailty Indexが代表的な基準です。
障害が多く重なることで予備能が低下し、死亡のリスクが大きくなるという考えに基づいて作成されていますが、項目数が多く、臨床的に使いにくいのが現状です。
3つ目は高齢者総合機能評価(CGA)に基づいたフレイルであり、身体機能、認知機能、うつ状態、低栄養などを総合的に評価した結果に基づいて評価するものです。
本邦では介護予防検診で使用されている「基本チェックリスト」がCGAに基づいたフレイルといえるでしょう。
ADL、サルコペニア関連、低栄養、口腔機能、閉じこもり、認知、うつなどの25項目を評価し、8項目以上当てはまる場合をフレイルとします1)(表2)。
外来通院の高齢糖尿病患者でまず簡単に実施できるのはJ-CHSでしょう。
基本チェックリストを行うことができれば、広い意味でフレイルの評価ができます。
基本チェックリストを行うのが難しい場合にはDASC-8を行って、(高齢者糖尿病の血糖コントロール目標における)カテゴリーIIの患者を対象にフレイル対策を行うという方法もあります。
Q2 糖尿病とフレイル・ADL低下の関係、危険因子は?
糖尿病患者は、高齢者だけでなく中年者でもフレイルをきたしやすいことがわかっています。
糖尿病がない人と比べて、糖尿病患者ではフレイルのリスクが約5倍、プレフレイルのリスクも約2.3倍と報告されています2)。また、糖尿病患者では手段的ADL低下を1.65倍、基本的ADL低下を1.82倍きたしやすいというメタ解析結果があります3)。
高齢糖尿病患者では、特に高血糖、重症低血糖、動脈硬化性疾患の合併がフレイルの危険因子として重要です。HbA1c 8.0%以上の患者はフレイル、歩行速度低下、転倒、骨折を起こしやすくなります(図2)。
もう一つ重要なことは、糖尿病にフレイルを合併すると死亡リスクが大きくなることです。
点数化して重症度が評価できるフレイルでは、フレイルが重症であるほど死亡のリスクが高まることがわかっています。
英国の調査では、糖尿病にフレイルを合併した患者では平均余命(中央値)は23ヵ月という、極端な報告もあります4)。
Q3 フレイルを合併した患者への運動療法、介入のタイミングや内容をどうやって決めますか?
フレイルがあるとわかったら、運動療法と食事療法を見直します。
運動療法については、まず身体活動量が低下していないかをチェックします。
家に閉じこもっていないか、家で寝ている時間が多くないかを質問し、当てはまる場合は坐位または臥位の時間を短くし、外出の機会を増やすように助言をすることが大切です。
フレイル対策で有効とされているのが、レジスタンス運動と多要素の運動です。
レジスタンス運動は負荷をかけて筋力トレーニングを行うものです。
市町村の運動教室、介護保険で利用可能なデイケア、ジムでのマシントレーニング、椅子を使ってのスクワット、ロコトレ、ヨガ、太極拳などがあり、エルゴメーターや水中歩行などもレジスタンス運動の要素があります。
これらは少なくとも週2回以上行うことを勧めています。
多要素の運動は、レジスタンス運動ができないフレイルの高齢者に対して、ストレッチ運動から始まり、軽度のレジスタンス運動、バランス運動、有酸素運動を組み合わせて、レジスタンス運動の負荷を大きくしていく運動です。この多要素の運動も身体機能を高め、フレイル進行予防に有効であるとされています。
Q4 フレイルを合併した患者への食事療法、エネルギーアップのコツや腎機能低下例での対応を教えてください
フレイルを考慮した食事療法は十分なエネルギー量を確保し、タンパク質の摂取を増やすことがポイントです。
欧州栄養代謝学会(ESPEN)では高齢者の筋肉の量と機能を維持するためには実体重当たり少なくとも1.0〜1.2g/日のタンパク質をとることが推奨されています5)。
つまり、体重60sの人は70g/日のタンパク質摂取が必要になります。
フレイルのような低栄養または低栄養リスクがある場合には、さらに多く、体重当たり1.2〜1.5g/日のタンパク質をとることが勧められます。
フレイルがある場合、腎症3期まではタンパク質を十分にとり、腎症4期では病状によって個別に判断するのがいいと思います。
腎機能悪化の速度が速い場合や高リン血症の場合はタンパク質制限を優先し、体重減少、筋力低下などでフレイルが進行しやすい状態の場合はタンパク質摂取を増やすことを優先させてはどうかと考えています。
高齢者は肉をとることが苦手な場合もあるので、魚、乳製品、卵、大豆製品などを組み合わせてとることを勧めます。
また、タンパク質の中でも特にロイシンの多い食品、例えば「魚肉ソーセージを一品加える」といった助言もいいのではないでしょうか。
朝食でタンパク質を必ずとるようにすると、1日の摂取量を増やすことにつながります。
エネルギー量は従来、高齢者は体重×25〜30kcalとして計算することが多かったと思いますが、
フレイル予防を考えた場合、体重当たり30〜35kcalとして十分なエネルギー量を確保し、極端なエネルギー制限を避けることが大切です。例えば体重50sの女性では、1,600kcalの食事となります。
Q5 フレイルを合併した糖尿病患者への薬物療法、考慮すべきポイントは?
フレイルがある糖尿病患者の薬物療法のポイントは
1)低血糖などの有害事象のリスクを減らすような選択をする
2)フレイルの原因となる併存疾患の治療も行う
3)服薬アドヒアランス低下の対策を立てる
ことです。
特に重症低血糖には注意が必要で、フレイルだけでなく認知機能障害、転倒・骨折、ADL低下、うつ状態、QOL低下につながる可能性があります。
したがって、フレイルの患者では低血糖を起こしにくい薬剤を中心とした治療を行います。
メトホルミンやDPP-4阻害薬などをまず使用します。
SU薬を使用する場合は、できるだけ少量、例えばグリクラジド10〜20r/日で使用します。
フレイルの患者では、体重減少をきたしうるSGLT2阻害薬や高用量のメトホルミンの使用には注意を要します。
特に腎機能は定期的にeGFRで評価し、結果に応じて、メトホルミンやSU薬の用量を調整する必要があります。SU薬はeGFR45mL/分/1.73m2未満で減量、eGFR30mL/分/1.73m2未満で中止します。
フレイルの糖尿病患者は心不全、COPD、PADなど複数の併存疾患を有していることが多く、それがフレイルの原因となっている場合もあります。
したがって、フレイルの原因となる疾患を治療することも大切です。
心機能、呼吸機能、歩行機能を少しでも改善することが、フレイルの進行防止につながります。
また、軽度の認知機能障害を伴うことも少なくなく、服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。
多剤併用も問題となります。両者は双方向の関係があると考えられており、併存疾患の多さや運動療法の不十分さなどが多剤併用の原因となりえますが、多剤併用がフレイルにつながる可能性もあります。
したがって、こうした患者では治療の単純化を行うことが必要です。
服薬数を減らすことだけでなく、服薬回数を減らすことや服薬のタイミングを統一することも単純化の手段として重要です。
例えば、α-GIやグリニド薬を使用する場合には、すべての内服薬を食直前に統一するようにしています。
ADL低下や認知症がある場合には、重症低血糖のリスクが高いので、減量・減薬を考慮すべき場合もあります。
Q6 他にどのような治療上の注意点がありますか?
フレイルがある患者では、認知機能障害、手段的ADL低下、身体活動量低下、うつ状態、低栄養、服薬アドヒアランス低下、社会的サポート不足などを伴っている場合が少なくありません。
したがって、状態を包括的に評価できるCGAを行い、その結果に基づき、運動/食事/薬物療法だけでなく、社会的サポートを行うことが大切になります。
介護保険を申請し、要介護と認定されれば、デイケアなどのサービスを受けることもできます。
認定されない場合でも、老人会、地域の行事、講演会などの社会参加を促して、閉じこもりを防ぐことが社会的なフレイルを防ぐために重要だと考えています。
参考文献
1) Satake S, et al.Geriatr Gerontol Int.2016;16:709-715.
2) Hanlon, et al. Lancet Public Health. 2018 Jun 13. [Epub ahead of print]
3) Wong E et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2013 ;1: 106–14.
4) Hubbard RE, et al. Diabet Med. 2010 ;27:603-606.
5) Deutz NE, et al.Clin Nutr 2014;33:929-936.
6) Kalyani RR, et al. J Am Geriatr Soc. 2012;60:1701-7.
7) Park SW et al. Diabetes. 2006;55:1813-8.
8) Yau RK, et al. Diabetes Care. 2013;36:3985-91.
9) Schneider AL et al. Diabetes Care. 2013;36:1153-8.
2019年01月18日
インフルエンザ異常行動
2019年01月16日
『看護師さんもハードな仕事!』
『看護師さんもハードな仕事!』
看護師2交代制の病棟、「夜勤16時間以上」が6割〔読売新聞〕
2018年12月18日 14:45
医療機関で働く看護師らの勤務体制で、「2交代制」を採用する病棟は約4割に上り、
このうち6割近くが16時間以上の夜勤を行っていることが、
日本医療労働組合連合会(組合員17万7093人)の実態調査で分かった。
長時間の夜勤は、看護師らの健康を害するだけでなく、患者の安全に影響を及ぼす恐れもある。
今年6月の勤務実績を加盟組合から集計。回収数は378施設で、看護師や助産師ら看護職員の勤務実態は、2616の病棟単位で調べた。
24時間を日勤と夜勤に分ける2交代制の病棟の割合は39%で、データが残る1999年以降で最高を記録した。
このうち「16時間以上の夜勤」を行っている病棟は59%に上った。
2交代制の夜勤に入る回数は平均で月4・12回だった。
勤務の終了から、次の勤務開始までの休息時間(勤務間インターバル)について、最も短い場合を尋ねたところ、
疲労の回復が難しい「8時間未満」の施設が45%あった。
長時間夜勤や勤務間インターバルが短い働き方は、看護師の心身に及ぼす悪影響が懸念される。
同連合会は「看護師の多くが過酷な長時間の夜勤を強いられている。患者と職員の命と安全を守るためにも、労働環境の抜本的な改善が必要だ」としている。
(2018年12月18日 読売新聞)
医師については、なかなか公表されないのは、医師会、学会に政治手腕がないから?
看護師2交代制の病棟、「夜勤16時間以上」が6割〔読売新聞〕
2018年12月18日 14:45
医療機関で働く看護師らの勤務体制で、「2交代制」を採用する病棟は約4割に上り、
このうち6割近くが16時間以上の夜勤を行っていることが、
日本医療労働組合連合会(組合員17万7093人)の実態調査で分かった。
長時間の夜勤は、看護師らの健康を害するだけでなく、患者の安全に影響を及ぼす恐れもある。
今年6月の勤務実績を加盟組合から集計。回収数は378施設で、看護師や助産師ら看護職員の勤務実態は、2616の病棟単位で調べた。
24時間を日勤と夜勤に分ける2交代制の病棟の割合は39%で、データが残る1999年以降で最高を記録した。
このうち「16時間以上の夜勤」を行っている病棟は59%に上った。
2交代制の夜勤に入る回数は平均で月4・12回だった。
勤務の終了から、次の勤務開始までの休息時間(勤務間インターバル)について、最も短い場合を尋ねたところ、
疲労の回復が難しい「8時間未満」の施設が45%あった。
長時間夜勤や勤務間インターバルが短い働き方は、看護師の心身に及ぼす悪影響が懸念される。
同連合会は「看護師の多くが過酷な長時間の夜勤を強いられている。患者と職員の命と安全を守るためにも、労働環境の抜本的な改善が必要だ」としている。
(2018年12月18日 読売新聞)
医師については、なかなか公表されないのは、医師会、学会に政治手腕がないから?