2019年01月19日
今、フレイルと言う言葉が流行中です!
今、フレイルと言う言葉が流行中です!
第5回 糖尿病患者とフレイル・ADL【高齢者糖尿病診療のコツ】
CareNet 公開日:2019/01/15
荒木 厚 ( あらき あつし ) 氏
東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科 内科総括部長
J-CLEAR評議員
Q1 実際、糖尿病患者でどのようにフレイルを評価しますか?
高齢糖尿病患者ではフレイル・サルコペニア、手段的/基本的ADL、視力、聴力などの身体機能を評価することが大切です。
その中で、フレイルは要介護になることを防ぐという意味で重要な評価項目の1つでしょう。
フレイルは加齢に伴って予備能が低下し、ストレスによって要介護や死亡に陥りやすい状態と定義されます(図1)。
本邦ではフレイルは健康と要介護の中間の状態とされていますが、海外では要介護を含む場合もあります。
運動や食事介入によって一部健康な状態に戻る場合があるという可逆性も、フレイルの特徴です。
もう1つの大きな特徴は多面性で、身体的フレイルだけでなく、認知機能低下やうつなどの精神・心理的フレイル、閉じこもりなどの社会的フレイルも含めた広い意味で、フレイルを評価することが大切です。
フレイルにはさまざまな指標がありますが、ここでは大きく分けて3つのタイプを紹介します。
1つ目は身体的フレイルで、評価法としてCHS基準があります。
この基準はL.P.Friedらが提唱したもので、体重減少、疲労感、筋力低下、身体活動量低下、歩行速度低下の5項目のうち3項目以上当てはまる場合をフレイルとします。
体重減少は低栄養、筋力低下と歩行速度低下はサルコペニアの症状なので、Friedらによる身体的フレイルは、低栄養やサルコペニアを含む概念とも言えます。
本邦ではCHS基準のそれぞれの項目のカットオフ値や質問を修正したJ-CHS基準があります(表1)。
2つ目はdeficit accumulation model(障害蓄積モデル)によるフレイルで、高齢者に多い機能障害や疾患の集積によって定義されます。
36項目からなるFrailty Indexが代表的な基準です。
障害が多く重なることで予備能が低下し、死亡のリスクが大きくなるという考えに基づいて作成されていますが、項目数が多く、臨床的に使いにくいのが現状です。
3つ目は高齢者総合機能評価(CGA)に基づいたフレイルであり、身体機能、認知機能、うつ状態、低栄養などを総合的に評価した結果に基づいて評価するものです。
本邦では介護予防検診で使用されている「基本チェックリスト」がCGAに基づいたフレイルといえるでしょう。
ADL、サルコペニア関連、低栄養、口腔機能、閉じこもり、認知、うつなどの25項目を評価し、8項目以上当てはまる場合をフレイルとします1)(表2)。
外来通院の高齢糖尿病患者でまず簡単に実施できるのはJ-CHSでしょう。
基本チェックリストを行うことができれば、広い意味でフレイルの評価ができます。
基本チェックリストを行うのが難しい場合にはDASC-8を行って、(高齢者糖尿病の血糖コントロール目標における)カテゴリーIIの患者を対象にフレイル対策を行うという方法もあります。
Q2 糖尿病とフレイル・ADL低下の関係、危険因子は?
糖尿病患者は、高齢者だけでなく中年者でもフレイルをきたしやすいことがわかっています。
糖尿病がない人と比べて、糖尿病患者ではフレイルのリスクが約5倍、プレフレイルのリスクも約2.3倍と報告されています2)。また、糖尿病患者では手段的ADL低下を1.65倍、基本的ADL低下を1.82倍きたしやすいというメタ解析結果があります3)。
高齢糖尿病患者では、特に高血糖、重症低血糖、動脈硬化性疾患の合併がフレイルの危険因子として重要です。HbA1c 8.0%以上の患者はフレイル、歩行速度低下、転倒、骨折を起こしやすくなります(図2)。
もう一つ重要なことは、糖尿病にフレイルを合併すると死亡リスクが大きくなることです。
点数化して重症度が評価できるフレイルでは、フレイルが重症であるほど死亡のリスクが高まることがわかっています。
英国の調査では、糖尿病にフレイルを合併した患者では平均余命(中央値)は23ヵ月という、極端な報告もあります4)。
Q3 フレイルを合併した患者への運動療法、介入のタイミングや内容をどうやって決めますか?
フレイルがあるとわかったら、運動療法と食事療法を見直します。
運動療法については、まず身体活動量が低下していないかをチェックします。
家に閉じこもっていないか、家で寝ている時間が多くないかを質問し、当てはまる場合は坐位または臥位の時間を短くし、外出の機会を増やすように助言をすることが大切です。
フレイル対策で有効とされているのが、レジスタンス運動と多要素の運動です。
レジスタンス運動は負荷をかけて筋力トレーニングを行うものです。
市町村の運動教室、介護保険で利用可能なデイケア、ジムでのマシントレーニング、椅子を使ってのスクワット、ロコトレ、ヨガ、太極拳などがあり、エルゴメーターや水中歩行などもレジスタンス運動の要素があります。
これらは少なくとも週2回以上行うことを勧めています。
多要素の運動は、レジスタンス運動ができないフレイルの高齢者に対して、ストレッチ運動から始まり、軽度のレジスタンス運動、バランス運動、有酸素運動を組み合わせて、レジスタンス運動の負荷を大きくしていく運動です。この多要素の運動も身体機能を高め、フレイル進行予防に有効であるとされています。
Q4 フレイルを合併した患者への食事療法、エネルギーアップのコツや腎機能低下例での対応を教えてください
フレイルを考慮した食事療法は十分なエネルギー量を確保し、タンパク質の摂取を増やすことがポイントです。
欧州栄養代謝学会(ESPEN)では高齢者の筋肉の量と機能を維持するためには実体重当たり少なくとも1.0〜1.2g/日のタンパク質をとることが推奨されています5)。
つまり、体重60sの人は70g/日のタンパク質摂取が必要になります。
フレイルのような低栄養または低栄養リスクがある場合には、さらに多く、体重当たり1.2〜1.5g/日のタンパク質をとることが勧められます。
フレイルがある場合、腎症3期まではタンパク質を十分にとり、腎症4期では病状によって個別に判断するのがいいと思います。
腎機能悪化の速度が速い場合や高リン血症の場合はタンパク質制限を優先し、体重減少、筋力低下などでフレイルが進行しやすい状態の場合はタンパク質摂取を増やすことを優先させてはどうかと考えています。
高齢者は肉をとることが苦手な場合もあるので、魚、乳製品、卵、大豆製品などを組み合わせてとることを勧めます。
また、タンパク質の中でも特にロイシンの多い食品、例えば「魚肉ソーセージを一品加える」といった助言もいいのではないでしょうか。
朝食でタンパク質を必ずとるようにすると、1日の摂取量を増やすことにつながります。
エネルギー量は従来、高齢者は体重×25〜30kcalとして計算することが多かったと思いますが、
フレイル予防を考えた場合、体重当たり30〜35kcalとして十分なエネルギー量を確保し、極端なエネルギー制限を避けることが大切です。例えば体重50sの女性では、1,600kcalの食事となります。
Q5 フレイルを合併した糖尿病患者への薬物療法、考慮すべきポイントは?
フレイルがある糖尿病患者の薬物療法のポイントは
1)低血糖などの有害事象のリスクを減らすような選択をする
2)フレイルの原因となる併存疾患の治療も行う
3)服薬アドヒアランス低下の対策を立てる
ことです。
特に重症低血糖には注意が必要で、フレイルだけでなく認知機能障害、転倒・骨折、ADL低下、うつ状態、QOL低下につながる可能性があります。
したがって、フレイルの患者では低血糖を起こしにくい薬剤を中心とした治療を行います。
メトホルミンやDPP-4阻害薬などをまず使用します。
SU薬を使用する場合は、できるだけ少量、例えばグリクラジド10〜20r/日で使用します。
フレイルの患者では、体重減少をきたしうるSGLT2阻害薬や高用量のメトホルミンの使用には注意を要します。
特に腎機能は定期的にeGFRで評価し、結果に応じて、メトホルミンやSU薬の用量を調整する必要があります。SU薬はeGFR45mL/分/1.73m2未満で減量、eGFR30mL/分/1.73m2未満で中止します。
フレイルの糖尿病患者は心不全、COPD、PADなど複数の併存疾患を有していることが多く、それがフレイルの原因となっている場合もあります。
したがって、フレイルの原因となる疾患を治療することも大切です。
心機能、呼吸機能、歩行機能を少しでも改善することが、フレイルの進行防止につながります。
また、軽度の認知機能障害を伴うことも少なくなく、服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。
多剤併用も問題となります。両者は双方向の関係があると考えられており、併存疾患の多さや運動療法の不十分さなどが多剤併用の原因となりえますが、多剤併用がフレイルにつながる可能性もあります。
したがって、こうした患者では治療の単純化を行うことが必要です。
服薬数を減らすことだけでなく、服薬回数を減らすことや服薬のタイミングを統一することも単純化の手段として重要です。
例えば、α-GIやグリニド薬を使用する場合には、すべての内服薬を食直前に統一するようにしています。
ADL低下や認知症がある場合には、重症低血糖のリスクが高いので、減量・減薬を考慮すべき場合もあります。
Q6 他にどのような治療上の注意点がありますか?
フレイルがある患者では、認知機能障害、手段的ADL低下、身体活動量低下、うつ状態、低栄養、服薬アドヒアランス低下、社会的サポート不足などを伴っている場合が少なくありません。
したがって、状態を包括的に評価できるCGAを行い、その結果に基づき、運動/食事/薬物療法だけでなく、社会的サポートを行うことが大切になります。
介護保険を申請し、要介護と認定されれば、デイケアなどのサービスを受けることもできます。
認定されない場合でも、老人会、地域の行事、講演会などの社会参加を促して、閉じこもりを防ぐことが社会的なフレイルを防ぐために重要だと考えています。
参考文献
1) Satake S, et al.Geriatr Gerontol Int.2016;16:709-715.
2) Hanlon, et al. Lancet Public Health. 2018 Jun 13. [Epub ahead of print]
3) Wong E et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2013 ;1: 106–14.
4) Hubbard RE, et al. Diabet Med. 2010 ;27:603-606.
5) Deutz NE, et al.Clin Nutr 2014;33:929-936.
6) Kalyani RR, et al. J Am Geriatr Soc. 2012;60:1701-7.
7) Park SW et al. Diabetes. 2006;55:1813-8.
8) Yau RK, et al. Diabetes Care. 2013;36:3985-91.
9) Schneider AL et al. Diabetes Care. 2013;36:1153-8.
第5回 糖尿病患者とフレイル・ADL【高齢者糖尿病診療のコツ】
CareNet 公開日:2019/01/15
荒木 厚 ( あらき あつし ) 氏
東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科 内科総括部長
J-CLEAR評議員
Q1 実際、糖尿病患者でどのようにフレイルを評価しますか?
高齢糖尿病患者ではフレイル・サルコペニア、手段的/基本的ADL、視力、聴力などの身体機能を評価することが大切です。
その中で、フレイルは要介護になることを防ぐという意味で重要な評価項目の1つでしょう。
フレイルは加齢に伴って予備能が低下し、ストレスによって要介護や死亡に陥りやすい状態と定義されます(図1)。
本邦ではフレイルは健康と要介護の中間の状態とされていますが、海外では要介護を含む場合もあります。
運動や食事介入によって一部健康な状態に戻る場合があるという可逆性も、フレイルの特徴です。
もう1つの大きな特徴は多面性で、身体的フレイルだけでなく、認知機能低下やうつなどの精神・心理的フレイル、閉じこもりなどの社会的フレイルも含めた広い意味で、フレイルを評価することが大切です。
フレイルにはさまざまな指標がありますが、ここでは大きく分けて3つのタイプを紹介します。
1つ目は身体的フレイルで、評価法としてCHS基準があります。
この基準はL.P.Friedらが提唱したもので、体重減少、疲労感、筋力低下、身体活動量低下、歩行速度低下の5項目のうち3項目以上当てはまる場合をフレイルとします。
体重減少は低栄養、筋力低下と歩行速度低下はサルコペニアの症状なので、Friedらによる身体的フレイルは、低栄養やサルコペニアを含む概念とも言えます。
本邦ではCHS基準のそれぞれの項目のカットオフ値や質問を修正したJ-CHS基準があります(表1)。
2つ目はdeficit accumulation model(障害蓄積モデル)によるフレイルで、高齢者に多い機能障害や疾患の集積によって定義されます。
36項目からなるFrailty Indexが代表的な基準です。
障害が多く重なることで予備能が低下し、死亡のリスクが大きくなるという考えに基づいて作成されていますが、項目数が多く、臨床的に使いにくいのが現状です。
3つ目は高齢者総合機能評価(CGA)に基づいたフレイルであり、身体機能、認知機能、うつ状態、低栄養などを総合的に評価した結果に基づいて評価するものです。
本邦では介護予防検診で使用されている「基本チェックリスト」がCGAに基づいたフレイルといえるでしょう。
ADL、サルコペニア関連、低栄養、口腔機能、閉じこもり、認知、うつなどの25項目を評価し、8項目以上当てはまる場合をフレイルとします1)(表2)。
外来通院の高齢糖尿病患者でまず簡単に実施できるのはJ-CHSでしょう。
基本チェックリストを行うことができれば、広い意味でフレイルの評価ができます。
基本チェックリストを行うのが難しい場合にはDASC-8を行って、(高齢者糖尿病の血糖コントロール目標における)カテゴリーIIの患者を対象にフレイル対策を行うという方法もあります。
Q2 糖尿病とフレイル・ADL低下の関係、危険因子は?
糖尿病患者は、高齢者だけでなく中年者でもフレイルをきたしやすいことがわかっています。
糖尿病がない人と比べて、糖尿病患者ではフレイルのリスクが約5倍、プレフレイルのリスクも約2.3倍と報告されています2)。また、糖尿病患者では手段的ADL低下を1.65倍、基本的ADL低下を1.82倍きたしやすいというメタ解析結果があります3)。
高齢糖尿病患者では、特に高血糖、重症低血糖、動脈硬化性疾患の合併がフレイルの危険因子として重要です。HbA1c 8.0%以上の患者はフレイル、歩行速度低下、転倒、骨折を起こしやすくなります(図2)。
もう一つ重要なことは、糖尿病にフレイルを合併すると死亡リスクが大きくなることです。
点数化して重症度が評価できるフレイルでは、フレイルが重症であるほど死亡のリスクが高まることがわかっています。
英国の調査では、糖尿病にフレイルを合併した患者では平均余命(中央値)は23ヵ月という、極端な報告もあります4)。
Q3 フレイルを合併した患者への運動療法、介入のタイミングや内容をどうやって決めますか?
フレイルがあるとわかったら、運動療法と食事療法を見直します。
運動療法については、まず身体活動量が低下していないかをチェックします。
家に閉じこもっていないか、家で寝ている時間が多くないかを質問し、当てはまる場合は坐位または臥位の時間を短くし、外出の機会を増やすように助言をすることが大切です。
フレイル対策で有効とされているのが、レジスタンス運動と多要素の運動です。
レジスタンス運動は負荷をかけて筋力トレーニングを行うものです。
市町村の運動教室、介護保険で利用可能なデイケア、ジムでのマシントレーニング、椅子を使ってのスクワット、ロコトレ、ヨガ、太極拳などがあり、エルゴメーターや水中歩行などもレジスタンス運動の要素があります。
これらは少なくとも週2回以上行うことを勧めています。
多要素の運動は、レジスタンス運動ができないフレイルの高齢者に対して、ストレッチ運動から始まり、軽度のレジスタンス運動、バランス運動、有酸素運動を組み合わせて、レジスタンス運動の負荷を大きくしていく運動です。この多要素の運動も身体機能を高め、フレイル進行予防に有効であるとされています。
Q4 フレイルを合併した患者への食事療法、エネルギーアップのコツや腎機能低下例での対応を教えてください
フレイルを考慮した食事療法は十分なエネルギー量を確保し、タンパク質の摂取を増やすことがポイントです。
欧州栄養代謝学会(ESPEN)では高齢者の筋肉の量と機能を維持するためには実体重当たり少なくとも1.0〜1.2g/日のタンパク質をとることが推奨されています5)。
つまり、体重60sの人は70g/日のタンパク質摂取が必要になります。
フレイルのような低栄養または低栄養リスクがある場合には、さらに多く、体重当たり1.2〜1.5g/日のタンパク質をとることが勧められます。
フレイルがある場合、腎症3期まではタンパク質を十分にとり、腎症4期では病状によって個別に判断するのがいいと思います。
腎機能悪化の速度が速い場合や高リン血症の場合はタンパク質制限を優先し、体重減少、筋力低下などでフレイルが進行しやすい状態の場合はタンパク質摂取を増やすことを優先させてはどうかと考えています。
高齢者は肉をとることが苦手な場合もあるので、魚、乳製品、卵、大豆製品などを組み合わせてとることを勧めます。
また、タンパク質の中でも特にロイシンの多い食品、例えば「魚肉ソーセージを一品加える」といった助言もいいのではないでしょうか。
朝食でタンパク質を必ずとるようにすると、1日の摂取量を増やすことにつながります。
エネルギー量は従来、高齢者は体重×25〜30kcalとして計算することが多かったと思いますが、
フレイル予防を考えた場合、体重当たり30〜35kcalとして十分なエネルギー量を確保し、極端なエネルギー制限を避けることが大切です。例えば体重50sの女性では、1,600kcalの食事となります。
Q5 フレイルを合併した糖尿病患者への薬物療法、考慮すべきポイントは?
フレイルがある糖尿病患者の薬物療法のポイントは
1)低血糖などの有害事象のリスクを減らすような選択をする
2)フレイルの原因となる併存疾患の治療も行う
3)服薬アドヒアランス低下の対策を立てる
ことです。
特に重症低血糖には注意が必要で、フレイルだけでなく認知機能障害、転倒・骨折、ADL低下、うつ状態、QOL低下につながる可能性があります。
したがって、フレイルの患者では低血糖を起こしにくい薬剤を中心とした治療を行います。
メトホルミンやDPP-4阻害薬などをまず使用します。
SU薬を使用する場合は、できるだけ少量、例えばグリクラジド10〜20r/日で使用します。
フレイルの患者では、体重減少をきたしうるSGLT2阻害薬や高用量のメトホルミンの使用には注意を要します。
特に腎機能は定期的にeGFRで評価し、結果に応じて、メトホルミンやSU薬の用量を調整する必要があります。SU薬はeGFR45mL/分/1.73m2未満で減量、eGFR30mL/分/1.73m2未満で中止します。
フレイルの糖尿病患者は心不全、COPD、PADなど複数の併存疾患を有していることが多く、それがフレイルの原因となっている場合もあります。
したがって、フレイルの原因となる疾患を治療することも大切です。
心機能、呼吸機能、歩行機能を少しでも改善することが、フレイルの進行防止につながります。
また、軽度の認知機能障害を伴うことも少なくなく、服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。
多剤併用も問題となります。両者は双方向の関係があると考えられており、併存疾患の多さや運動療法の不十分さなどが多剤併用の原因となりえますが、多剤併用がフレイルにつながる可能性もあります。
したがって、こうした患者では治療の単純化を行うことが必要です。
服薬数を減らすことだけでなく、服薬回数を減らすことや服薬のタイミングを統一することも単純化の手段として重要です。
例えば、α-GIやグリニド薬を使用する場合には、すべての内服薬を食直前に統一するようにしています。
ADL低下や認知症がある場合には、重症低血糖のリスクが高いので、減量・減薬を考慮すべき場合もあります。
Q6 他にどのような治療上の注意点がありますか?
フレイルがある患者では、認知機能障害、手段的ADL低下、身体活動量低下、うつ状態、低栄養、服薬アドヒアランス低下、社会的サポート不足などを伴っている場合が少なくありません。
したがって、状態を包括的に評価できるCGAを行い、その結果に基づき、運動/食事/薬物療法だけでなく、社会的サポートを行うことが大切になります。
介護保険を申請し、要介護と認定されれば、デイケアなどのサービスを受けることもできます。
認定されない場合でも、老人会、地域の行事、講演会などの社会参加を促して、閉じこもりを防ぐことが社会的なフレイルを防ぐために重要だと考えています。
参考文献
1) Satake S, et al.Geriatr Gerontol Int.2016;16:709-715.
2) Hanlon, et al. Lancet Public Health. 2018 Jun 13. [Epub ahead of print]
3) Wong E et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2013 ;1: 106–14.
4) Hubbard RE, et al. Diabet Med. 2010 ;27:603-606.
5) Deutz NE, et al.Clin Nutr 2014;33:929-936.
6) Kalyani RR, et al. J Am Geriatr Soc. 2012;60:1701-7.
7) Park SW et al. Diabetes. 2006;55:1813-8.
8) Yau RK, et al. Diabetes Care. 2013;36:3985-91.
9) Schneider AL et al. Diabetes Care. 2013;36:1153-8.
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8477748
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック