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2018年09月19日

糖質制限食 その真価はまだ証明されていない.糖質制限食推奨者からの反論

糖質制限食 その真価はまだ証明されていない.糖質制限食推奨者からの反論
メディカルトリビューン 山田悟Dr  糖質制限食に対する新たな反対論への反駁から抜粋
“栄養バランスの良い食事”の概念は成立するのか
2018年08月29日 10:50

研究の背景:糖質制限食への反対論は終息したと結論していた

 私は明確に糖質制限食推奨者である。

2014年にわれわれがランダム比較試験(RCT)でエネルギー制限食に比較して糖質制限食が血糖管理に優れることを示し(Intern Med 2014; 53:13-19、関連記事「日本人でも糖質制限食は有効−初のRCT」)、同じ年にNIPPON DATA80というコホート研究において日本人では糖質摂取が少ない方が死亡率が低いことが示された(Br J Nutr 2014, 112, 916-924)。

少数例のRCTと多数例の観察研究のデータが合致していることから、緩やかな糖質制限食を日本人に対して推奨することはなんらデメリットをもたらさず、メリットのみを供給できると結論した(関連記事「糖質制限食にまつわる論争の終焉」)。

 また昨年(2017年)には、PURE studyというコホート研究が報告され、五大陸18カ国共通の観察結果として、糖質摂取量が少ない方が死亡率は低かったことが報告されている(Lancet 2017;390:2050-2062)。このことから、糖質制限食に対する反対論はもはや存在しえないと私は結論していた(関連記事「世界の食事摂取基準を変える!新研究」)。

 しかし、このたび、またまた糖質制限食反対論ともいうべき、新たな仮説が提唱された。

以前ご紹介したように、古くから欧米では糖質摂取が少ない方が死亡率が高くなるというコホート研究のデータがあった(関連記事「糖質制限食をめぐる議論の沸騰<1>」)。

これは線形関係で糖質摂取が多ければ多いほどよいとするような(低糖質スコアが1点上昇するごとにアウトカムが悪化するという)データであった。

 今回の新たな仮説は、米国のコホート研究のデータを基にしたもので、糖質摂取量と死亡率との関係性はU字であり、糖質摂取比率50〜55%で死亡率が最も低くなるというものである。それがしかも、Lancet関連誌(Lancet Public Health2018年8月16日オンライン版)に報告された。

 糖質制限食推奨者として直視すべき論文と考え、(糖質制限食推奨者からの視点という色眼鏡は除外し切れないが)こご紹介したい。

研究のポイント1:有名なARIC研究からの解析

 ARIC(Atherosclerosis Risk In Communities)研究は最近も取り上げた(関連記事「変わる糖尿病腎症の概念、治療も変わる?」)、30年の歴史を持つ米国の重要なコホート研究である(Am J Epidemiol 1989;129:687-702)。

1987〜89年の第1回訪問で43〜64歳の米国人が登録され、第6回訪問(2016〜17年)まで行われている。

今回の研究では、コホート全体の1万5,792人から食事記録がしっかりしていなかった人や極端にエネルギー摂取量が少ない(男性600kcal/日未満、女性500kcal/日未満)、あるいは多い(同4,200kcal/日超、同3,600kcal/日超)人を除外して、1万5,428人を中央値で25年フォローアップした結果を示している。

 まず研究者が実施したのは、ベースライン(第1回訪問)における糖質摂取比率でコホートを五分位に分け、各分位の死亡リスクを検討することであった。この解析方法は、これまでも多くのコホート研究で行われている。

 次に、restricted cubic splines(制限三次スプライン補間)という解析法を用いて、死亡リスクが最低となる糖質摂取比率を求めた。これが既存の研究にはなかった1つ目のポイントである。

 さらに、既報のコホート研究のデータを含めて解析し、死亡率の低くなる糖質摂取比率を求めている。この解析が既存の研究にはなかった2つ目のポイントである。

研究のポイント2:糖質摂取比率50〜55%で死亡リスクが最低

 コホートを糖質摂取比率で五分位にした際の、各分位の臨床特性を示した。
糖質摂取の最も少ない群の特性は、女性が少なく、白人が多く、糖尿病が多く、エネルギー摂取量は少ないが運動している者の比率が低くてBMIが高く、現喫煙者が多いということであった。

 中央値25年の観察期間中に6,283人が死亡した。
最も死亡率が高かったのは糖質摂取が最も少なかった第1五分位であった。
しかし、糖質摂取比率と死亡率との関係性は線形ではなく、U字形であった。
最も死亡率が低いのは糖質摂取比率50〜55%であり、
例えば50歳の人の平均余命は糖質摂取比率が30%未満なら29.1年、
50〜55%なら33.1年、
65%超なら32.0年と計算された。

研究のポイント3:従来の観察研究を統合しても糖質摂取比率50〜55%で死亡リスク最低

 次に研究者らは、ARIC研究の結果に既存のコホート研究のデータを統合して解析した。

 今回のARIC研究のスプライン曲線に、昨年報告されたPURE studyのスプライン曲線を重ね合わせてみると、やはり糖質摂取比率50〜55%程度で死亡リスクが最低となっていた。

 さらに、前記の研究を比較的糖質摂取比率の低いコホート研究(低糖質と中等度糖質を比較した研究と、糖質摂取比率の高いコホート研究(中等度糖質と高糖質を比較した研究)に分けてみると、いずれにおいても中等度糖質で死亡リスクが低くなっていた。

研究のポイント4:代替食品が動物性か植物性かで結果が異なる

 既存のNHS、HPFS、NIPPON DATA80の各研究においては、糖質摂取が少ない分位においてエネルギー摂取が少ないわけではなく、代わりに脂質あるいは蛋白質摂取が多くなっており、増えている脂質や蛋白質が植物性か動物性かで糖質摂取比率と死亡率との関係に影響が出るかについて検討がなされている。

 そこで、今回のARIC研究も含めて動物性食品で代替した場合と植物性食品で代替した場合の死亡のハザード比を求めると、植物性食品で代替している場合には糖質摂取比率が低ければ低いほど死亡率が低いという関係性であった。

 これを糖質摂取比率50%での死亡率を1とし、糖質摂取分布のZスコア〔(当該数値−平均値)/標準偏差〕を用いて糖質摂取と死亡率の関係性を見ると、植物性食品で代替している場合には、線形に糖質摂取が少ないほど死亡率が低かった。

すなわち、糖質摂取比率50〜55%で全死亡率が最も低いという現象は、さまざまな条件を超え一貫して見られる確固としたものでないことは明らかである。

 しかし、これらの結果を基にして、研究者らは「動物性食品で代替する糖質制限食は推奨できず、体重減量や心血管リスク低減のために糖質制限食を導入するのなら、植物性食品で代替することは考慮できる」と結論している。

私の考察1:交絡因子の存在が明らか、因果が逆転

 本研究はコホート研究であり、もとより直接的に因果関係を示すものではない。本研究の著者らと同様に「糖質摂取は50〜55%が適切なのだ」と明言する人も出てこよう。

 しかし、私は今回の著者らの主張に全く同意することができない(この辺り、私が糖質制限食推奨者であるということを踏まえて、読者の先生方にはお読みいただきたい)。

 まず、糖質摂取比率が50%未満から死亡率が上がっていることについて私の考えを述べる。

この点についてはバイアスや交絡因子の問題があると考える。
まず、このARIC研究では動物性食品で代替するか、植物性食品で代替するかで結果が変わってしまっており、交絡因子の存在が明らかである。
交絡因子が存在している以上、その結果は間違いなく因果関係ではない。

 そして、バイアスとして想像されるものはそれだけではない。そもそも、ARIC研究では糖質摂取の少ない群では女性が少なく、糖尿病が多く、エネルギー摂取量は少ないが運動している者の比率が低くてBMIが高く、現喫煙者が多かったのである。
これは、糖尿病や肥満が元来あって、その治療のために糖質摂取を控えている集団がこの中に少なからず存在していることを意味する。

 よく、因果の逆転というが、インスリン注射をしている糖尿病患者の方が、経口薬で済ませている糖尿病患者よりも平均HbA1cが高いことが知られている。
これは、インスリン注射が治療薬として弱いからではなく、インスリン注射が必要となるような糖代謝能力の弱い集団だからである。

 糖質摂取が少ない人の方で糖尿病が多く、BMIが高いと聞けば、ここに因果の逆転が存在することはほぼ間違いないであろう。
一般集団よりも死亡率が上がりそうな集団であることが容易に予測される。
糖質摂取量の多寡が死亡率を決めているのではなく、死亡率を決めるなにがしか(例えば肥満や糖尿病の存在)が糖質摂取量を決めさせていると予測されるのではなかろうか。

私の考察2:介入試験での確認が必要

 次に,人種差、民族差というものについての考察が欠如している。
研究ごとの糖質摂取比率の違いは、単に国ごとの生活習慣の差異であることを意味するし、さらにそれを無視して50〜55%という糖質摂取比率を世界中の人々に推奨するためには、糖質処理能力に関する人種差の存在を否定する必要があろう。
そして、それは不可能である(Diabetes Res Clin Pract 2004;66 suppl1:S37-S43、Diabetes Care 2013;36:1789-1796)。

 そもそも既存の複数の研究をプールして解析する目的とは、検出力不足の解消や偶然を排除するためである。
コホート研究は基本的に多数例での解析が可能な研究法なので、通常、検出力不足は生じ難いという利点を持つものの、弱点としてバイアスや交絡因子を除外できない。
そして、それは複数の研究をまとめたところで払拭できない。
よって、このような形で複数のコホート研究をまとめても、一切、因果関係に近づくことはできないのである。

 今回のARIC研究の著者らが示す結論が真に賛同を得るためには、糖質摂取比率を50〜55%に設定する介入試験での確認が必要だと指摘せざるをえない。
現時点で糖質摂取比率50〜55%を良い栄養バランスの指標とするなど、私にはとてもできないのである。

 「コホート研究を基に因果関係の存在を断定して臨床上の勧告をつくり上げる」というと、
2010年の日本脂質栄養学会のコレステロールガイドラインを思い出す(関連記事「検証・日本脂質栄養学会コレステロールガイドライン」)。

ARIC研究の著者らの「動物性食品で代替する糖質制限食は推奨できず、もし、体重減量や心血管リスク低減のために糖質制限食を行うのであれば、植物性食品で代替することは考慮できる」という結論は、コホート研究で因果関係を読み込めると信じている、データの読み方を知らぬ人たちには受容されてしまうであろう。

 8年ぶりに頭痛を感じる思いである。

2018年09月18日

過活動膀胱(切迫する尿意,溜まっていないのにすぐ行きたくなる)の原因にビタミンD不足!

過活動膀胱(切迫する尿意,溜まっていないのにすぐ行きたくなる)の原因にビタミンD不足!

トルコの大学病院老年病科に入院し、
ビタミンD欠乏状況と尿失禁の有無を評価し得た高齢患者705例(平均年齢72.3±6.4歳、女性62.8%)を対象に、
ビタミンD欠乏と尿失禁の関連を調べた研究によると、

過活動膀胱(OAB)の発症と

血清ビタミンD値、
MMSEスコア(認知症判定試験)、
血清ALP値との間には

負の相関がみられたが、

血清カルシウム値との間には正の相関がみられたことが報告されている。

目を見れば分かる?早期パーキンソン病 網膜の薄さで発症を予測

目を見れば分かる?早期パーキンソン病
網膜の薄さで発症を予測
 2018年08月25日 06:00

 ドパミンは運動の制御に必要な神経伝達物質であり、
パーキンソン病(PD)患者では、この神経伝達物質を放出する脳細胞であるドパミン神経細胞が徐々に失われていくことが知られている。

韓国・Seoul National University Boramae Medical CenterのJee-Young Lee氏らは、網膜の菲薄化がドパミン神経細胞の減少と関連しているとNeurology(2018年8月15日オンライン版)に報告した。

目は早期PDを映す脳の窓

 今回の研究の意義について、Lee氏は「網膜の菲薄化がPD進行の予測因子であるドパミン神経細胞の減少と関連することが初めて明らかになった。
また、網膜の薄さがPDの重症度と関連することも分かった。
今後研究が進めば、眼の画像検査を実施することで、運動障害を来す前の早期にPDを診断できるようになるかもしれない」と説明している。

 Lee氏らは、平均2年以内にPDと診断された未治療の患者49例(平均年齢69歳)と年齢をマッチさせた対照54例を比較した。

 参加者に対し、徹底した眼科的検査に加え、黄斑の光干渉断層撮影(OCT)を実施し、網膜の各層を高解像度で画像化した。
また、PD患者のうち28例に対しては、ドパミントランスポーターのPET画像検査も実施し、脳内のドパミン神経細胞密度を測定した。

黒質の神経細胞減少と関連

 その結果、PD患者では5層の網膜のうち特に内側の2層が薄いことが明らかになった。
例えばPD群では、ある領域の網膜の最も内側の層で厚みが平均35μmであったのに対し、対照群では37μmであった(P<0.05)。

 網膜菲薄化は黒質のドパミン神経細胞の減少と関連しており(P<0.001)、
さらにPDの重症度とも関連していた(P<0.05)。

PDの重症度はHoehn-Yahrの分類で1〜5のスコアで表される。
網膜菲薄化が最大(網膜厚30μm未満)の参加者では、同スコアの平均値が2をわずかに上回ったが、最小(同約47μm)の参加者では約1.5であった。

 Lee氏は「今後、より大規模な研究を実施して今回の知見を確認するとともに、
ドパミン神経細胞の減少と網膜菲薄化がなぜ関連するのかを明らかにする必要がある」と指摘。

「これらが確認されれば、網膜の画像検査によりPDの早期治療が始められるだけでなく、
治療効果の正確なモニタリングによりPDの進行を遅らせることができる可能性もある」と期待している。

 今回の研究の限界として、測定したのは網膜の限られた領域のみであった点、長期の追跡ではなかった点が挙げられるという。
(谷本真幸)

2018年09月16日

種類を漸増するより,最初から3剤の方が降圧効果が早い!? 軽中等症の高血圧、低用量3剤配合剤vs.通常ケア

種類を漸増するより,最初から3剤の方が降圧効果が早い!?
軽中等症の高血圧、低用量3剤配合剤vs.通常ケア
/JAMA
提供元:ケアネット 公開日:2018/08/28

 軽症〜中等症の高血圧症患者において、
低用量3剤配合降圧薬による治療は通常ケアと比較して、
目標血圧を達成した患者の割合が有意に高かったことが、
オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のRuth Webster氏らによる無作為化試験結果が、示された。

著者は「低用量3剤配合を第一選択としたり、単剤治療と置き換えたりすることは、
血圧コントロールを改善する有効な方法となる可能性がある」とまとめている。

コントロール不良の高血圧症は世界的な公衆衛生上の問題となっており、新たな治療戦略が求められている。JAMA誌2018年8月14日号掲載の報告。

テルミサルタン(アンジオテンシン変換酵素阻害剤)20mg/アムロジピン(カルシウム拮抗剤)2.5mg/chlorthalidone (サイアザイド系利尿剤)12.5mgの配合剤

 研究グループは、低用量3剤配合降圧薬治療が通常ケアと比べて、より良好な血圧コントロールを達成するかを、無作為化非盲検試験にて検討した。

被験者は、収縮期血圧>140mmHgおよび/または拡張期血圧>90mmHgの成人、および糖尿病/CKD(慢性腎臓病)で>130mmHgおよび/または>80mmHgの成人で、降圧治療の開始が必要(未治療)または漸増治療が必要(単剤療法を受けている)な患者とした。

登録は、2016年2月〜2017年5月までスリランカの11の市中病院で行われ、フォローアップは2017年10月に終了した。

 被験者は、1日1回、固定用量の3剤配合降圧薬(テルミサルタン20mg量、アムロジピン2.5mg量、chlorthalidone 12.5mg量)治療を受ける群(349例)、通常ケア群(351例)に無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は、6ヵ月時点の目標収縮期/拡張期血圧(140/90mmHg未満、または糖尿病/CKD患者は130/80mmHg未満)を達成した患者割合とした。

副次評価項目は、フォローアップ中の平均収縮期/拡張期血圧の差、有害事象による降圧治療の中断などであった。

6ヵ月後の目標血圧達成患者、70% vs.55%

 無作為化された患者700例(平均年齢56歳、男性42%、糖尿病29%、平均収縮期/拡張期血圧154/90mmHg)のうち、675例(96%)が試験を完了した。

 6ヵ月時点の評価で、3剤配合降圧薬群の目標血圧達成割合は、通常ケア群に比べて有意に高かった(70% vs.55%、リスク差:12.7%[95%信頼区間[CI]:3.2〜22.0]、p<0.001)。

 また、6ヵ月時の平均収縮期/拡張期血圧は、3剤配合降圧薬群125/76mmHgに対し、通常ケア群134/81mmHgであった。

フォローアップ中の無作為化後の血圧の補正後差は、収縮期血圧−9.8mmHg(95%CI:−7.9〜−11.6)、拡張期血圧−5.0mmHg(−3.9〜−6.1であった(いずれもp<0.001)。

 有害事象は全体で、被験者255例(3剤配合降圧薬群38.1% vs.通常ケア群34.8%)で419件が報告された。

最も多く共通して認められたのは、筋骨格系疼痛(それぞれ6.0%、8.0%)、めまい、意識障害(presyncope)、失神(5.2%、2.8%)であった。

有害事象のため治療中止となった患者の割合は両群間で有意な差はなかった(6.6% vs.6.8%)。
(ケアネット)
原著論文はこちら Webster R, et al. JAMA. 2018;320:566-579.

2018年09月15日

「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は症候群」、個々に応じた治療を

臨床ニュース
「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は症候群」、個々に応じた治療を
【第50回日本動脈硬化学会】 他科との連携が重要

MMJ2018年8月27日 (月)配信 消化器疾患内分泌・代謝疾患

 第50回日本動脈硬化学会総会・学術集会(会長・山下静也りんくう総合医療センター病院長)が7月12、13日、大阪市内で開かれた。

テーマは「深く識る動脈硬化学〜これまでの半世紀と未来への提言〜」。
12日にはCutting Edge Symposium 3日本消化器病学会合同シンポジウム「NAFLD/NASHと動脈硬化症〜臨床的観点から〜」が開かれ、6人の演者が登壇した。
佐賀大学医学部附属病院肝疾患センターの江口有一郎センター長は「NAFLD/NASHにおける食事運動療法と薬物療法」と題して話した。(MMJ編集長・吉川学)

運動療法とGLP-1薬の効果を検討
 最初に、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)には内臓脂肪過多の例が多く、内臓脂肪型肥満を有するNASHの治療としては、生活習慣の改善が基本になると指摘。

適切な食事運動療法による7%以上の減量でNASHの病理学的な改善、
10%以上の減量で肝線維化の改善に有効であることが確認されていると説明した。

 しかし、実際の食事運動療法を維持するのは課題が多いとし、関連医療機関で実施している非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)外来パスについて紹介した。

2006年から18年6月まで194人が取り組み、目標は初回体重の5%減。毎月1回、医師による診察、保健師、管理栄養士、理学療法士による個別指導、看護師・検査技師による身体計測を行い、体重管理のツールとしてグラフ化体重日記を使った。

これは有効で減量より体重のコントロールだと指摘した。
この結果、3カ月の継続で肝脂肪化が改善し、6カ月の継続でLDL-C以外が改善したと述べた。

 一方、運動療法については、有酸素運動とレジスタンス運動の機序は異なるが、NAFLDの治療に有効であると指摘したうえで、患者はランニングをやる傾向があるが1カ月もすると足が痛いなどと言って継続しなくなる。
スクワットなどの筋トレでも十分な効果があると話した。

 薬物療法については現在、NASHに保険適応がある薬剤は存在せず、

合併する糖尿病、脂質異常症、高血圧など状況に応じて適切な治療薬の検討がなされ、

ビタミンE、チアゾリジン誘導体、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬、エゼチミブ、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などが使用されてきたと説明した。

このうち、メトホルミンは肝脂肪化改善などで効果があり、肝細胞がんの発生率の調整リスク比を低下させたとする報告や、

SGLT2阻害薬については、肝機能への影響を評価する多くの試験が行われていることなどを紹介。

トランスアミラーゼは下がっているが、線維化については分からず、7種のうちどれが一番効果を示すかについては不明であると述べた。

 また、GLP-1受容体作動薬リラグルチドについて、2型糖尿病患者で肝生検によりNASHと診断されたうち24週間の食事運動療法で改善しなかった症例に48週間投与したところ、体重が減少し、病理学的にも肝臓の脂肪化が改善したと述べた。

さらに脂質改善薬エゼチミブにより、高LDL血症が改善したというデータを示した。

 最後に「NAFLD/NASHは背景がたくさんある症候群と考えるべきだろう。

個々の症例に応じたテーラーメード治療が望まれる。
これは消化器内科だけでは実施するのは難しく、他科、多職種の連携が必要である」と訴えた。

2018年09月14日

「こころの個性」に関わる遺伝子を検出

「こころの個性」に関わる遺伝子を検出
東北大、SLC18A1遺伝子がヒトの精神機能に影響

人類の進化過程で自然選択によって有利に進化してきたSLC18A1遺伝子が、ヒトの精神機能に影響を与え、「こころの個性」に関わる遺伝子であることが見出された

QLifePro 医療ニュース2018年8月27日 (月)配信

 東北大学は8月21日、人間がもつ多様な「こころの個性(精神的個性)」に関わる遺伝子を特定する研究結果を発表した。

この研究は、同大大学院生命科学研究科の佐藤大気(博士後期課程学生)と河田雅圭教授によるもの。

研究結果は「Evolution Letters」に掲載されている。

 精神疾患は遺伝率が高く、しばしば生物学的な適応度(生存や繁殖)に大きな影響を与える可能性がある。

その一方で、精神疾患という表現型は、ヒトが持つ「個性」の一部として捉えることもできる。

実際に、近年行われた多くの研究では、精神疾患と精神的個性の遺伝的背景には、かなりの重なりがあることが見出されている。

 過去の理論研究は、これら個性にかかわる遺伝的変異は積極的に維持されうると提唱しているが、実際に精神疾患および精神的個性に関わる遺伝的変異が、自然選択によって積極的に維持されていることを明確に示す証拠は、これまで報告されていなかった。

 今回の研究では、精神疾患の関連遺伝子に着目。

哺乳類15種のゲノム配列を用いて、人類の進化過程で加速的に進化した精神疾患関連遺伝子588個の進化速度を推定した。

また、約2,500人分の現代人の遺伝的多型データを用いて、集団中で積極的に維持されている遺伝的変異の特定を試みたという。

 その結果、3つの遺伝子(CLSTN2、FAT1、SLC18A1)が人類の進化過程で自然選択を受け、加速的に進化してきたことが判明。

なかでも、人類の進化過程で自然選択によって有利に進化してきたSLC18A1遺伝子が、ヒトの精神機能に影響を与え、「こころの個性」に関わる遺伝子であることが見出されたという。

さらに、ヒトの集団内で、この遺伝子は遺伝的多様性をもち、自然選択によって異なる遺伝子型が、集団中に積極的に維持されていることが示されたという。

 今回の研究成果は、ヒトのこころの多様性が進化的に積極的に保たれている可能性を進化遺伝学的手法により初めて示したもの。

研究グループは、「本研究の進化学的な知見は、個性や精神・神経疾患の生物学的意義や治療の方向性について示唆を与えると期待される」と述べている。

2018年09月13日

日本人の飲食での水分摂取量と心血管死リスク 水分摂取量が多いと、男女共に心血管疾患(CVD)死亡リスクが低い!

日本人の飲食での水分摂取量と心血管死リスク
水分摂取量が多いと、男女共に心血管疾患(CVD)死亡リスクが低い!

 わが国の前向きコホート研究であるJapan Collaborative Cohort(JACC)研究で、飲食物からの水分摂取量が多いと、男女共に心血管疾患(CVD)死亡リスクが低いことが示された。
また、女性では虚血性脳卒中リスクも低かった。

提供元:ケアネット 公開日:2018/08/24

Public Health Nutrition誌オンライン版
2018年8月15日号に掲載。

 本研究の対象は、JACC研究に登録され、飲食物からの水分摂取量のデータが入手可能な40〜79歳の男性2万2,939人および女性3万5,362人。潜在的死因は国際疾病分類に基づいた。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間(中央値19.1年)中に、男性1,637人および女性1,707人がCVDで死亡した。

・男女共に、水分摂取量が多いとCVD死亡リスクが低い傾向にあった。

・水分摂取量の最低五分位の参加者と比べた、
最高五分位の参加者における全CVD死亡の多変数調整ハザード比[HR](95%CI)は、
男性で0.88(0.72〜1.07、傾向のp=0.03)、
女性で0.79(0.66〜0.95、傾向のp=0.10)であった。

・冠動脈疾患による死亡のHRは、
男性で0.81(0.54〜1.21、p=0.06)、
女性で0.60(0.39〜0.93、傾向のp=0.20)であった。

・女性では、虚血性脳卒中による死亡リスクの低下もみられた(HR:0.70、0.47〜0.99、傾向のp=0.19)。

・男女とも、水分摂取量と出血性脳卒中による死亡率の間に関連はなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Cui R, et al. Public Health Nutr. 2018 Aug 15:1-7. [Epub ahead of print]

2018年09月12日

プロの料理人が選ぶ

posted by 田中松平 at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 栄養

握力が弱いが、2型糖尿病リスクが高い 閉眼片足立ちが下手も2型糖尿病リスクに関連

2型糖尿病リスクの評価に簡便な体力テストが有用か
握力が弱いが、2型糖尿病リスクが高い
閉眼片足立ちが下手も2型糖尿病リスクに関連


握力とバランス感覚が重要な指標に、東北大

国際医学短信2018年8月22日 (水)配信 一般内科疾患内分泌・代謝疾患その他

 握力と片足バランスという簡便に測定できる体力テストの成績で、
日本人の2型糖尿病の発症リスクを評価できる可能性があると、
東北大学大学院運動学分野講師の門間陽樹氏らの研究グループが「Journal of Epidemiology」7月28日オンライン版に発表した。

これらの体力テストは従来の全身持久力テストよりも簡便に行えることから、糖尿病スクリーニングの指標として有用性が高いと考えられるという。

 研究グループは、新潟県労働衛生医学協会の健診データを用いて、体力テストを2回以上行った糖尿病を発症していない成人2万1,802人を対象に、最大で6年間追跡して解析した。

対象者の年齢は20〜92歳で、女性が6,649人だった。
体力テストには、
筋力を評価する「握力」と
下半身のパワーを評価する「垂直飛び」、
バランス感覚を評価する「閉眼片足立ち」のほか、
「立位体前屈」(柔軟性)や「全身反応時間」(反射神経)、「仰臥位足上げ」(筋持久力)が含まれた。

対象者をこれらの成績で4つの群に分けて、糖尿病の新規発症との関連を調べた。

 中央値で5年の追跡期間において、972人が新たに糖尿病を発症した。

解析の結果、体重当たりの握力の成績が悪いほど2型糖尿病リスクが高いことが分かった(最も握力が高い群と比較した、他の3つの群における2型糖尿病発症のオッズ比は1.16〜1.56)。

また、閉眼片足立ちの成績も2型糖尿病リスクと有意に関連していた(同じくオッズ比は1.03〜1.49)。

 さらに、垂直飛びと立位体前屈の成績についても2型糖尿病リスクとの関連が認められたが、BMIで調整後の解析ではこれらの関連は有意ではなくなった。

仰臥位足上げと筋持久力については、2型糖尿病リスクとの関連は認められなかった。

 以上の結果を踏まえて、研究グループは「今回の研究から、

簡便に測定できる握力の成績で2型糖尿病リスクを評価できる上に、
バランス能力と2型糖尿病リスクとの関連も初めて明らかになった。

これらの体力テストの成績は独立して2型糖尿病の発症に関与すると考えられ、今後のより詳細な検討が期待される」と話している。

HealthDay News 2018年8月20日
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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