2015年07月09日
本紹介 No. 027『原始仏典』
『原始仏典』
前回の本紹介では中村先生の『原始仏教』の中で原始仏教聖典からのことばを適宜引用しておりましたが、そもそも原始仏教聖典(原始仏典)にはどのようなものがあるのでしょうか。
同じく中村先生のご著書から原始仏典についての本を読んでみます。
中村 元 著 『原始仏典』(ちくま学芸文庫 2011)
以前から中村先生のご著書 岩波文庫『ブッダのことば』、『ブッダの真理のことば・感興のことば』などに一通り目を通してはおりますがそのほかの原始仏典についても知りたいと思います。
構成
文庫本、422ページ、主にインド出土の仏教異物のモノクロ写真が各章の扉に載せてあります。
構成は以下の通り。
はしがき
I 釈尊の生涯
序 章 原始仏典へのいとぐち
第一章 誕生と求道 『スッタニパータ』(1)
第二章 悪魔の誘惑 『サンユッタ・ニカーヤ』(1)
第三章 最後の旅 『大パリニッバーナ経』
第四章 仏弟子の告白・尼僧の告白
『テーラガーター』『テーリーガーター』
U 人生の指針
第一部 人生の指針
第一章 ブッダのことば 『スッタニパータ』(2)
第二章 真理のことば 『ダンマパダ』
第三章 生きる心がまえ 『サンユッタ・ニカーヤ』(2)
第四章 人間関係 『シンガーラへの教え』
第五章 ジャータカ物語
第二部 後世における発展
第六章 アショーカ王のことば 『岩石詔勅』
第七章 ギリシア思想との対決 『ミリンダ王の問い』
解説 宮元啓一
内容
まずはじめに、本書を読んで、本書を書かれた当時に中村先生がいつも心に留めていた思いは世界平和への願いだったろうと感じました。
特にこれからの時代において世界平和を実現させるために必要な智慧の幾つかが原始仏典に説かれていますよということを教えてくださっているのだと思いました。
本書はNHKテレビでの『インドの思想と文化」と、ラジオでの「こころを読む ー 仏典」という二つの連続講義を中心に歴史的、体系的にまとめた七冊シリーズ本のはじめの二冊(『原始仏典T 釈尊の生涯』と『原始仏典U 人生の指針』共に1987 東京書籍)を一冊に合本したものです。
全体をざっと見ると、前半のI 釈尊の生涯では釈尊の誕生から入滅と仏弟子のことばがぞれぞれの原始仏典からの引用とともに解説されております。
後半のU 人生の指針は二部に分けられ、第一部 人生の指針では釈尊や仏弟子のことばのなかから重要なものを取り上げ解説をし、また、ブッダの前世譚を寓話や説話の形で伝える『ジャータカ』についても紹介しています。
第二部 後世における発展においてはアショーカ王碑文や『ミリンダ王の問い』といった原始仏典の範疇には直接は入らないと思われるものであっても原始仏教とその意義を理解する上で重要と考えられるものについて解説がされています。
文庫本とはいえ422ページといえばそれなりの分量なので読むのに難儀するかといえばさにあらず、思ったよりもすんなり読めます。
これは先生の柔らかい語り口とともに現代社会との接点を見出そうとすることによる問題意識の発現、および、表現をできるだけ平易であるようにとつとめる中村先生のご尽力の結果、大変読みやすく、理解しやすいようになっているためと思われます。
本書だけでも原始仏典の概要は理解されます。しかし、ほかにもっとたくさんの大切なことばや人生の指針となるエピソードがあるのかと思うとそれも読んでみたい。
僕にとっては本書は原始仏典へのガイダンスとしての役割を果たす良い本です。
曼荼羅作画とのかかわり
部派仏教から大乗仏教そして密教へと原始仏教から時代を隔てたとしても、仏教の底に流れる釈尊の教えの本質には変わらないものがあるのだろうと思います。
両界曼荼羅に描かれているものが原始仏典に表現されている様々な事柄といかに関わるのかという観点に立ってみると、またちがった両界曼荼羅の魅力が感じられます。
原始仏典のどの言葉がどの図像とかかわっているかと想像しながら両界曼荼羅を理解するのは楽しい。
本書では原始仏典に述べられている言葉の現代的な意味について各所で言及しています。時代や場所が異なっても人としてよりよく生きる生き方に違いはないという強い信念を感じます。
両界曼荼羅もなにかそういう念いをもって描きたいと思います。
では、また〜ヾ(。・ω・。)ノ
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