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市井の料理研究家兼ミリタリー研究家です。思いついたことを書いていきます。
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2023年12月06日

ASM-2Bって地上攻撃出来るの?

■ASM-2の改良型であるASM-2Bは中間誘導用にGPSが搭載された

■そのためASM-2Bは地上攻撃が出来るとされているが果たしてそうか

■恐らく、地上施設の攻撃は難しいが艦船への泊地攻撃は出来るであろう



ご無沙汰しております(^^)

93式空対艦誘導弾のwikiのページには以下のような記述があります。

1280px-JASDF_ASM-2(Dummy)_at_Gifu_Air_Base_October_30,_2016.jpg
画像引用元: By Hunini - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=52876836

93式空対艦誘導弾(きゅうさんしきくうたいかんゆうどうだん)は、日本が開発・配備した空対艦ミサイル(対艦誘導弾)別称はASM-2[1]、1993年から航空自衛隊に配備されている。改良版(ASM-2/B)は誘導方式にGPSを用いているため、座標を入力すれば対地攻撃も行うことができる。

引用元: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』93式空対艦誘導弾


何かミサイルにGPSが付くと、漏れなく地上攻撃能力が付いてくると言わんばかりですが、果たして本当にそうなんでしょうか?

◆仕様書にはそんなこと一切書かれていない◆

まず、手元にあるASM-2の最新の仕様書はH23.7.19改訂のCP-Y-0067Mですが、その中には地上攻撃に関することなどは一言も書かれてはいないことです。最初の文言である1.1.1 適用範囲には以下のように記述されています。

1.1 適用範囲
この仕様書は、戦闘機(以下、"搭載母機"という。)に搭載し、侵攻艦船に対する攻撃に使用する93式空対艦誘導弾(B)(以下、"ASM-2B"という)について規定する。


勿論、仕様書に書かれていないからと言ってそういう使い方はしないということはありません。開発している内にこういう使い方も出来るだろうと思って試験することもあります。例えば、某観測ヘリから某空対空ミサイルを地上目標に向かって撃ってみようとかです。

ただ、寡聞にしてASM-2Bを地上目標に向かって実射試験したとかいう類の話は聞いてません。また、地上目標相手だと、SSM-1のように地形回避や回り込み等の能力の確認が必要ですが、日本国内にそのような射場は無いため、米国カリフォルニア州ポイントマグー射場のような場所での試験が必要でしょう。そのような話も聞いたことありません(米国での試験なら少なくても公告位出るでしょう)。

◆GPSの搭載の目的はあくまでも誘導精度の向上◆

GPSに関してですが、これがどのように用いられるかは、ASM-2(B)の開発の元となったH12年度契約の「ASM-2の技術改善」の仕様書の中に以下の文言が出てきます。

ア 慣性装置
(ア) GPSからの信号により自己の位置情報をアップデートできるものとする。


また、航空幕僚監部技術部長より装備部長に対して発せられた空幕技1第12号(平成15.1.31)「93式空対艦誘導弾(B)の技術要求事項について(通知)」では以下の文言が出てきます。

(b) 慣性装置
慣性装置は、加速度検出、角速度検出、姿勢角計算、速度計算、位置計算、高度計算の各機能を有するものとする。また、GPS併用航法機能を有するものとする。


つまり、ASM-2(B)で新たに搭載されたGPSは中間誘導をこれ一つで担うものではなく、従来の慣性航法装置(ASM-2(B)では機械式から光学式へ変更されている)を補完するものであるということです。例えれば、時計の時刻の狂いを自動的に補正する類のモノでしょう。

なお、余談ですが慣性航法装置は機械式でも光学式でも航法精度にそれほど差が無く、下手をするとコンベンショナルな機械式の方が精度が高い場合もあるそうです。光学式は機械的可動部分が無いため、メンテナンスが不要で取得価格が安いというメリット(FOGの場合)があります。

慣性航法装置は時間が経つとともに誤差が徐々に蓄積していきますから、途中でGPSにより誤差修正が為されるならば航法精度の大幅な向上が見込めることでしょう。特に最終の目標捜索段階において目標を失探する可能性を低減し、相手に探知される可能性を高める再捜索の回避に役立つでしょう。

2011年のMAKS航空見本市で展示された、ウクライナの "Arsenal "社のジャイロスコープ
960px-Ring_laser_gyroscope_at_MAKS-2011_airshow (1).jpg
画像引用元: Nockson, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons

以下はスウェーデンSAAB社のFiber Optic Gyro(FOG)のページ
https://www.saab.com/products/fiber-optic-gyro-products

(補足)
FOGはRLG(Ring Laser Gyro)より精度は劣るが、コンパクトで価格が安く消費電力が小さい。そのため、ミサイルやUAVに多く用いられる。RLGは主に航空機に搭載される。


<追記>
もしかすると、ASM-2BへのGPS追加は従来の機械式慣性装置からFOGへの変更に伴う航法精度の低下を補うという目的もあるのかもしれません。


◆シーカーは地上目標を捉えられるのか◆

ASM-2のシーカーはIIRであり、アクティブ・レーダー式では持ちえない個艦識別能力、命中点選択能力を持ちます。ただ、基本的に赤外線シグネチャーが大きな艦船を狙うもので、大きな建物とかを狙うのならともかく、小さな目標を狙えるような高い赤外線画像解像度は持っていないと思われます(逆に温度が高いホットスポットはIRCCMの対象になる)。また、地上となると海上と違って雑多な赤外線ノイズがある訳で、それらを排除し目標を正確に識別する能力が求められます。以前、構想されていたASM-D/L(データリンク)も命中精度を上げるための試みでしたが、もし地上攻撃するのならそのような機能が必要になるでしょう。

◆弾頭と信管◆

基本的に対艦ミサイルの弾頭は半徹甲弾になります。それは船殻を貫いて艦の船体内部や艦上構造物の内部へ食い込ませるためです。そのため、信管は必然的に遅延信管になります。地上目標だったら、弾頭は破片効果を狙って榴弾で、信管は着発又は空中炸裂を狙った近接信管が向いていると思われますが、そのような機能はASM-2Bには見受けられません。
<追記>
元々、無印ASM-2でもオートパイロット電子装置から自爆指令を出せますから、GPSの3D座標をトリガーにして起爆指令を出すことによって、疑似的に着発又は近接信管と同様なことは可能ではあるでしょう。


◆では地上攻撃できないのか◆

これまで、ASM-2Bの地上攻撃能力の可否を論じてきましたが、ASM-2Bになって新たに得た又は向上した能力があると考えます。

それは 泊地攻撃能力 です。

例えば以下のような写真の場合です。

HMS アンドロメダとキャンベラ
1007px-SS_Canberra_&_HMS_Andromeda_Falklands_1982.jpg
画像引用元: Ken Griffiths - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3531099による

フォークランド紛争時の写真ですが、艦船が狭い島嶼海域に停泊しています。これはミサイル側から見ると非常に難しい目標になります。何故なら、海側から見るとフネは島陰に隠れ、またシーカーに捉えられたとしてもフネの背景には島嶼の地形が入り込むため、艦船との識別が必要になります。さらにこれが港湾ともなると赤外線ノイズ源となる多くの地上施設も存在します。

このような目標を狙うには島嶼の地形を避けて正確に飛翔して背景に地形が入らない方向から狙う必要があります。そのためには非常に高い航法精度と多くのウェイポイントなどの経路をプリプログラムできる機能が必要になるでしょう。ASM-2B改善型はソフトウェアの改善により、新たに導入した地上支援器材によって多方向から目標を攻撃できる飛翔パターンを設定するための初期値(目標の位置情報)を設定できるようになったようです。

つらつら述べてきましたが、ASM-2B改善弾についてはまだまだ不明な点があり(仕様書の黒塗り部分が多いため)、もっと多様な機能があると想像できますが、それらについては今後の課題としておきましょう。

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タグ:ASM-2(B)

2023年11月07日

対電波放射源ミサイル(XASM−3)

■ASM-3は対レーダーミサイルとしても期待されている

■技術研究本部(当時)の研究開発項目として、対電波放射源ミサイル(XASM−3)というものが存在した

■元々、ASM-3は対レーダーミサイルとして始まったのかもしれない


新空対艦誘導弾XASM-3(E型)
1280px-JASDF_XASM-3-E_left_front_view_at_Gifu_Air_Base_November_19,_2017_01.jpg
画像引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64205374による

以前、補給本部の部内誌だった「つばさ」に掲載されていたXASM-3の構想図はもっとカクカクしていて、まるでウルトラホーク1号α号の趣がありましたが、大分丸くなったものです(w

実のところ、管理人はASM-3には全く関わっておりません。ただ、XAAM-4やXASM-2でお世話になった技術幹部の方が、開発室長となり孤軍奮闘されていたことから、その推移を見守っておりました。もれ聞くところに依ると、ソ連崩壊後は大規模な艦船による侵攻は予想しえないということから、このプロジェクトについては何時ポシャってもおかしくない状況だったそうで、関係者のご努力の賜物だったと言えるでしょう。

F-2からのXASM-3の発射シーン


退役した護衛艦しらねを標的とした試験の様子も間接的ながらお聞ききして、この手の試験では何時もお世話になる某社さんはさぞご活躍されているんでしょうなとほくそ笑んだりしたものです。

標的艦となったしらねの回航の様子


いやぁ、アスロックやMK42、シースパロー発射装置も付いたままなんですね。何か凄く勿体ないような気がします(w

ところで、この標的艦には従来の標的には無かったある装置が備わっておりました。それは艦船のレーダーを模擬する装置です。ただ、従来の標的のようにMDI(射撃評価装置)も備わっていたため、多くは語りませんが色々と大変だったそうです。。。。

何でこんな苦労してまでこの装置を付けたかというと、XASM-3にはアクティブとパッシブの二種類のレーダーシーカーが備わっており、相手艦船のレーダー波を受信しての艦艇識別と電波妨害時のECCMを行うためです。ASM-3がパッシブ電波シーカによる目標識別等の機能で艦種の識別を行うことは、部内誌上でGM開発官が明言しています。

さて、管理人は某所で以下のような話を聞いたことがあります。

「航空事業部がHARM(AGM-88)の導入を見送ったのは、開発中のXASM-3に対レーダーを担わせるため。」

確かに高速性能とパッシブレーダーを持つXASM-3はその任にふさわしいと言えるでしょう。そして、公開されている公文書の中に以下の文言が出てきます。

対電波放射源ミサイル(XASM−3)

これは会計検査院の平成16年度決算検査報告の中で出てくる文言です。

報告書の内容としては、技術研究開発として研究されていたものの、その後開発に移行していないとして槍玉に上がっています。管理人は知らなかったのですが、技術研究本部(当時)の技術研究項目として「対電波放射源ミサイル(XASM−3)」というものが存在したということでしょう。航空事業部の対レーダーミッションというと、真っ先に挙げられるのは海洋SEADですが、もしかするとXASM-3は元々海洋SEADで使われることをメインに構想されたものなのかもしれません。

そして対レーダーミサイルの代表格はAGM-88HARMですが、このミサイルの弾頭であるWDU-37/B 爆風破砕弾頭は137.75 pounds(約66kg)に過ぎません。このミサイルはレーザー近接/着発信管により起爆し、爆風破片効果により目標を破壊しますが、この程度の弾頭ですとレーダーアンテナを破壊して機能停止に追い込む程度で、レーダー本体を破壊するには威力が小さ過ぎるのではないかとの懸念があります。そのため、完全に相手レーダーを破壊するためには、より大威力のミサイルが求められており、ASM-3の使用はそれに合致したものと言えるでしょう。

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タグ:XASM-3

2023年10月28日

マル防は儲からない

■本邦ではマル防からの撤退が相次いでいる

■米国においても2010年から10年間でマル防に従事する中小企業の40%が撤退している

■マル防を維持するためには国有化が必要



以前、ドイツ研究の大家であった篠田 雄次郎先生がご著書で以下のような話をされていました。

ユダヤ人は工作機械をやりたがらないと聞く。何故なら手間暇掛かる割に大当たりが少ないからだ。これは逆に言うと、手間暇惜しまず大当たりを狙わなければ、食いっぱぐれがないということで、これこそドイツ人向けの商売である。

引用元: 日本人とドイツ人―猫背の文化と胸を張る文化 (カッパ・ブックス) 篠田 雄次郎


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マル防もこれに似たものがあります。さらに付け加えるなら、

手間暇惜しまず大当たりを狙わず、官側の理不尽な要求を堪え、毎年受注が来るとは限らない

以上のことを受け入れられる度量が必要です。慈善事業じゃないんですから、こんな商売誰もやりたがらないでしょう。実際、本邦においてマル防から撤退する会社が相次いでいます。実は以前はそうでも無かったのです。管理人が禄を食ませて頂いた某マル防関連会社は利益率の高さで有名でした。それが変化したのは一連の過大請求事案以降でしょうか。

マル防撤退で一番著名なのは、装甲車両をやってたコマツさんでしょうが、これがプライムメーカーでなくサブコンやパーツサプライヤレベルになると枚挙にいとまがありません。

先日、えい航標的の記事をアップした際に、長年えい航標的を製造していた国内メーカーが事業撤退するらしいことが分かって驚きましたが、今後も同じような事業撤退は続くのでしょう。

このようなマル防からの事業撤退は本邦だけと思ってましたが、実は米帝でも同様なんだそうです。以下はDefence One 記事です。

As demand for arms booms, lack of modernization stymies weapons production

Some small firms at the heart of the defense industry see little benefit to automation and digitization.

https://www.defenseone.com/business/2023/10/demand-arms-booms-lack-modernization-stymies-weapons-production/391533/

こちらの記事を要約すると、

 ●兵器生産は多くの中小部品サプライヤーに依存している

 ●生産を拡大したいのであれば、これらの小規模工場も生産を拡大する必要がある。

 ●しかしながら近年、このような中小企業の数は減少している。

 ●国防総省の調査によると、2010年から2020年の間に防衛産業に従事する中小企業の数は40パーセント減少し、この傾向が続けば今後10年間で推定1万5000社が廃業するとみられる。

 ●これらの会社には生産増に対応する設備投資を実施する余力はない。また、資金があっても従業員の高齢化により投資意欲が沸かない。

まるで、何処かの某国のことみたいじゃないですか(w

記事では対応策として以下のことを提案しています。

 ●このような中小企業への依存を減らすために、AIを使って兵器を設計しより一般的で入手可能なコンポーネントを使用する。

 ●政府所有の製造業の余剰能力を利用して、政府が小規模の下層メーカーから購入するのと同じ種類の部品を製造する。

つまり、カスタム品ではなく出来るだけCOTS品を使い、代替えが効かないものは国有化しろと言っている訳です。まぁ、何処の国でも同じような結論に達するわけです。

本邦でも防衛産業支援法が成立し、企業の設備の国有化が可能になりました。恐らく、国有化した設備を別の事業者へ貸与して生産を続けることになるのでしょう。将来的には戦前の工廠の復活もあり得るかもしれません。

呉海軍工廠(1945年10月)
1280px-Kure_Naval_Arsenal_Panorama_in_Japan_October_1945.jpg

画像引用元: Asahi Shimbun - Asahi Shimbun - https://www.asahi.com/special/nuclear_peace/gallery/konosekai/019.html, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=138919170による

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2023年10月25日

AAM-5ベースのSAMは何故出てこないのか

■近年のミサイルはASM-1やAAM-4を始めとして、派生型が開発されファミリー化している

■AAM-5と同世代の赤外線誘導AAMは何れもSAMの派生型が開発されている

■AAM-5がSAM化されないのは何故か


以前、会社にいらっしゃった航空事業部のOBの方から以下のような相談を受けたことがあります。

「〇〇くん、AAM-5を拡販するとしたら何処が良い?」(OB氏)

「陸さんのOHやAH用に売り込んだら如何でしょう。いざとなれば陸上目標へも使えますよ」(オラ)

M41戦車へ発射されたAIM-9L
893px-AIM-9L_hits_tank_at_China_Lake_1971.jpg

画像引用元: By U.S. Navy - U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.488.022.024, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11855314

「おーいいね。」(OB氏)

「でも、AAM-5って1発6千万ですよね。陸さんから見たら1発で装甲車1両分飛んでいくことになりますよ。」(オラ)

「だよねー(笑)。」(OB氏)

その後、AAM-5は改良型であるAAM-5(B)が開発されますが(開発主任は良く存じ上げている方です)、SAMなどの派生型は開発されずに今日に至っています。

AAM-5の同世代の海外の赤外線誘導AAMは何れもSAMの派生型が開発されています。

一番有名なのは図らずもAAM-5のそっくりさん(笑)であるドイツのIRIS-Tでしょう。ウクライナにも供与されています。

IRIS-T SL(surface-launched)
1194px-Eldenhet_98_IRIS-T_SLS.png

画像引用元: Matti Blume - File:ILA_2018,_(1X7A6890).jpg, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=111003281による

AIM-132(ASRAAM)はレーダーシーカーへ変更され、CAMM (Common Anti-Air Modular Missile) として艦載型や陸上型が開発されています。

A Sky Sabre air defence missile system of the Royal Artillery.
1008px-Royal_Artillery_Sky_Sabre_system.jpg

画像引用元: By Ministry of Defence - https://www.defenceimagery.mod.uk/, archived source, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116190856

勿論、我らがAIM-9も様々な派生型が開発されています。一番有名なのはRIM-116 RAMでしょう。これはAIM-9の弾体とFIM-92のシーカー及びパッシブシーカーを組み合わせ、回転させることによりジャイロの省略し、二本の長さが違うロッドアンテナへコニキャルスキャンをさせるというアイデア一杯のシロモノでした。そのため、開発に手間取り何度も開発中止の危機に陥ったり、本邦のあぶくま型DE艦への装備化が見送られるなどの紆余曲折がありました。

USS Green Bay (LPD-20)から発射されるRAM
1087px-thumbnail.jpg

画像引用元: U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Larry S. Carlson - この画像データはアメリカ合衆国海軍が ID 090929-N-2515C-482 で公開しているものです。パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8370861による

少し世代が違いますが、おフランスのMICAもMICA VLSとして陸上発射型が開発されています。

Lanceur terrestre du missile "VL Mica" Exposition MBDA au salon du Bourget 2015
896px-MBDA_MICA_VL_Lanceur_terrestre_Paris_Air_Show_2015.jpg

画像引用元: Tiraden - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=41070763による

そして最後はAAM-5のライバルであったイスラエルのPython(XAAM-5開発時に航空事業部へラファエル社から強力な売り込みがあった)です。

SPYDER air defense missile system
908px-SPYDER.jpg

画像引用元: By Ereshkigal1 - Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4793482

以上のように、赤外線誘導AAMは例外無くSAMなどの派生型が開発されています。では、何故AAM-5はSAMなどの派生型が出てこないのでしょうか?

明確な答えは知る由もないのですが、恐らくは、、、、、

短SAMとバッティングするからではないでしょうか。

つまりは業界への仕事の割り振りの問題です。

11式短距離地対空誘導弾
1280px-Type_11_(SAM)_firing,_Japan_GSDF.jpg

画像引用元: 防衛省 - 出典:防衛省ホームページ https://www.flickr.com/photos/90465288@N07/39227773454/in/album-72157632230016328/, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=88146565による

余り知られてはいませんが、11式短SAMは極めて優秀なシーカーを持ち、個人的にはこのミサイルの存在が地べた事業部がAHを手放す切っ掛けの一つになったと勝手に考えています

そんな状況ですが、近SAMと基地防SAMを統合化することにより「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」の開発が現在行われており、もしかすると従来の体系に何らかの変化があるかもしれません。今後の展開に期待しましょう。

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タグ:SAM AAM-5

2023年09月29日

イスラエルは何故E-2Cに見切りをつけたのか?

■イスラエルはE-2Cを比較的短期間で運用を終了した

■攻勢を旨とするイスラエル軍はE-2Cの鈍足を許容できなかったのではないか

■我が航空事業部も高速なAEWを装備するかもしれない


以前、懇意にさせて頂いたマル防関係商社の社長さんからこんな話を聞いたことがあります。
知り合いのイスラエル人からこう言われたそうです。

第192飛行隊のE-2C ホークアイ
960px-Hatzerim_290110_Hawkeye.jpg
画像引用元; Oren Rozen - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11043572による

「部品取り用にリタイヤさせるE-2Cを1機丸ごと買わないか。」

今となっては事の真偽は分かりませんが、中々豪気なお話ではあります。

さて、イスラエルは1978年にE-2Cを4機購入して1996年頃まで運用し、2008年から導入されたガルフストリーム G550 CAEWによって更新されています。4機の内の1機は博物館に展示され、2002年に残りの3機はアップデート後にメキシコへ売却されています。

シンガポール空軍のG550 CAEW
1084px-RSAF_Gulfstream_IAI_G550_CAEW_(Conformal_Airborne_Early_Warning).jpg
画像引用元: Owen65 - Flickr: RSAF Gulfstream/IAI G550 CAEW (Conformal Airborne Early Warning), CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22771562による

本邦にE-2Cが入ってきたのは1983年ですから、ほぼ同時期です。本邦がそれから40年に渡って運用し続けているのに対して、イスラエルでの運用は僅か十数年に留まっています。E-2Cは艦載機だけあって丈夫な機体で、機体のサービスライフは10,000飛行時間と聞いたことがあります。イスラエル空軍で年間どの位飛んでいたのか分かりませんが、後に他国へ売却されたことを考えると、サービスライフは充分に残っていたと思われます。

それでは何故イスラエルはE-2Cを早期に退役させたのでしょうか?

やはり、その理由は速度じゃないでしょうか。

イスラエル空軍は鈍足なE-2Cに満足できなかったと思います。

イスラエルの国土は狭くて縦深性が無いため、出来るだけ自国より遠いところで相手と戦わなければなりません。つまり防御より攻撃を優先するお国柄です。その場合、鈍足のE-2Cでは運用に非常に苦労することになります。何しろ戦闘機に随伴できないので、戦闘機よりもずっと前に離陸して目的地に展開しなくてはなりません。

元々、E-2CはF-14と組み合わせて米帝の空母機動部隊を旧ソ連の爆撃機や潜水艦から発射される対艦ミサイルから守るのが主な任務です。その場合、速度よりも滞空時間や艦載機としての能力が優先されます。本邦の航空事業部のような基本的に防空を主任務とする場合でも非常に適した機体と言えるでしょう。また、意外と知られていませんが、狭い本邦の航空基地では艦載機として翼が折りたためることによるフットプリントの小ささも重宝されています。E-2Cの導入時の経緯を知る方(空幕OB)に聞いたことがありますが、やはり格納庫などの施設面の要因が大きかったと仰っておりました。

E-2 Hawkeye in Formation with F-14 Tomcats
E-2 in Formation with F-14  Tomcats.jpg
画像引用元: National Naval Aviation Museum
https://www.history.navy.mil/content/history/museums/nnam/explore/collections/aircraft/e/e-2c-hawkeye0/e-2-hawkeye-in-formation-with-f-14-tomcats.html


また、E-2Cは巨大なロートドームを背負っておりますが、そのレーダーは航空機用としては異例とも言える非常に低い周波数帯(UHF(400 - 450 MHz))を使用しています。これは小さな目標探知やレイドアセスメント等では不利になりますが、各種クラッター排除や探知距離の延伸には有利であり、またステルス機に対しても一定の効果がある(ステルスが対応する周波数帯から外れているため)との話もあります。あと、細かいことは差し控えますが、鈍足であることはレーダーの信号処理において有利に働くことも申し添えておきます。

以上のように、E-2Cは拠点防空用としては非常に高い能力を発揮します。それ故に航空事業部もE-2Cを使い続け、且つE-2Dを新たに増勢しているのでしょう。

そんな中で、航空事業部はF-35の増勢と共に従来の防空軍から空軍になろうとしています。それは本邦の厳しい防衛環境を反映しているからでしょう。つまり専守防衛から攻勢的な軍事組織に変革しようとしている訳です。そうなると、近い将来には航空事業部もガルフストリーム G550 CAEWのような戦闘機に随伴できる足の速いAEWが装備されるかもしれません。

これをベースにするならせめてエンジンは替えてね(w
1080px-JMSDF_P-1_(4).jpg
画像引用元: 海上自衛隊, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57291096による

さて新たなAEWが装備された場合、航空事業部のE-2C/Dはどうなるのでしょう?

その答えは、、、、

空母用に海洋事業部へ管理替えするんですよ(w


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posted by keenedge1999 at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | E-2C

2023年09月15日

航空事業部は何故AAM-4を選んだのか

■各国が続々とAIM-120を採用する中、日本は独自開発したAAM-4の装備を選択した

■AAM-4の選択は航空事業部のアクティブホーミング誘導ミサイル化を10年遅らせたとの批判もある

■当時、巡航ミサイルの脅威に晒されていた航空事業部はAIM-120には満足できなかったのであろう




ネット上で文谷先生がAAM-4Bの調達について辛辣に批判しておりました。

防衛省の合理的な説明がつかない、「国産兵器」と「米国製」のダブル購入
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/329118

小松基地で展示されたAAM-4
重量や大きさは従来のAIM-7と同等(投下特性をAIM-7と合わせている)
AAM-4.jpg
画像引用元: 日本語版ウィキペディアのShiftさん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107674464による

AAM-4の開発時は、管理人は開発元(GM2室)に近いところにいた訳ですが、AAM-4導入にに当たって、航空事業部から「AAM-4買うんでAIM-120要りません。」と内局へ一筆入れています。つまり、完全に退路を断ってAAM-4導入を邁進した訳です(実際には後に飛行教導隊の運用研究で120発程度のAIM-120を購入している)。

F-16の翼端に搭載されるAIM-120
AAM-4に比べて小型で軽量(約2/3)なAIM-120は写真のようにSRMランチャに搭載可能で汎用性が高い。
900px-AIM-120_AMRAAM.jpg
画像引用元: Staff Sergeant Vince Parker (USAF) - http://www.defenselink.mil/photos/Dec1998/981228-F-6082P-996.jpg, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2130562による

といことで、航空事業部の非常に強い意志が無ければAAM-4じゃなくてAIM-120装備化の芽もあったことになります。それ程までに航空事業部はAAM-4を推していました。

航空事業部がAAM-4推しだった理由は一体何だったのでしょうか。

参考までに当時(90年代中頃)、開発メーカーが配布していたXAAM-4のパンフレットにはXAAM-4の特徴として以下のように書かれています。

(1)長い射程---攻撃範囲を広げ、先制攻撃を可能とする。

(2)撃ち放し性---母機生存性を高める。

(3)長いスタンドオフレンジ---母機生存性を高める。

(4)多目標同時対処能力---保有航空機の効率的運用を可能とする。

(5)高いECCM性---強度の電子戦環境下でも対処する。

(6)高い被発見性---進行に対する防御が探知されなければより効率的な運用が可能となる。

(7)大きい撃破能力---航空機だけでなくASM等小型目標も撃破する。

(8)超低空目標対処能力---低高度目標についても対処可能である。


引用元:XAAM-4 新中距離空対空誘導弾 開発メーカー配布パンフレット


このパンフに依るとAAM-4は以下だと言ってるわけです。管理人が特に重要と考えるものを赤字にしています。

長射程
・撃ちっ放し性
・多目標同時攻撃
・ECCM能力
・LPI(Low Probability of Intercept、低傍受可能性)

・高い撃破能力(SSKP)
・超低空目標対処


以上の点を鑑みると、航空事業部がこのミサイルに何を期待しているか薄らと見えてくると思います。
そして管理人的に考えて、このミサイルが主に想定した目標は以下じゃないかと思います。

・超低高度を飛翔する低RCSの巡航ミサイル

・高高度を高速で飛翔するASM

・強力なジャマーを伴った敵攻撃機

どうでしょうか。AIM-120は非常に優れたミサイルですが以下の点についてAAM-4は優位性があると考えます。

・高い誘導精度と大きな弾頭重量(AIM-120のほぼ倍)による高い撃破率

・高度な被探知性(AIM-120では発射母機からの指令誘導波を捉えられて早めの回避行動を取られた)

・高いECCM性(AAM-4では特殊な送信方法を用いることにより効率的に妨害成分を排除)

以上から、AAM-4は航空事業部が求めていた能力を具現化したものだったと言えます。

F-35の導入により航空事業部の空軍化が推進され、空対空ミサイルに求められる能力も変わってくると思われます。その場合は各国が保有し、アップデートも早く、より汎用性が高いAIM-120の方が重視されてくるかもしれません。ただ、AAM-4は中SAM改や新艦対空誘導弾、次期中距離空対空誘導弾にしっかりと遺伝子は残しました。そこは強調しておきたいと思います。

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タグ:AIM-120 AAM-4

2023年09月06日

GCS-1の制御系

■令和6年度概算要求が発表された

■新地対艦・地対地精密誘導弾とはKの新SSMのことだった

■GCS-1は投下前から制御翼が制御開始しているという話


令和6年度概算要求が発表されましたね。中々のボリュームで読むのに苦労しました(w

防衛力抜本的強化の進捗と予算
https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/2024/yosan_20230831.pdf

一時期、すわXGCS-2復活かと世間を騒がせた新地対艦・地対地精密誘導弾も実はKの新SSMだっというオチもついておりました(w

勝手に姉妹サイト ペンギン先生のサイト
精密誘導弾ってなんやろなあ?【防衛省】』

新型普通爆弾ことXGCS-2
GCS-1のように後付けの爆弾用誘導キットではなく、弾体や信管も新規開発の意欲作で、電動で展開する大きな翼が特徴。だが研究のみで終了し、開発へと移行しなかった。開発へ移行しなかったのは予算の問題、また技術的な課題もあったとの話がある。
E59BB3EFBC92E38080XGCS-2-b5e71.png

画像引用元: https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11339364/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/16/jigo/sankou/11.pdf

XGCS-2の話が盛り上がってくると、前作であるGCS-1(91式爆弾用誘導装置)の話題もちらほらと出てました。GCS-1は管理人にとっても大変思い出深い装備で、色々と勉強させて頂きました。ただ、GCS-1の技術試験・実用試験は昭和62年〜昭和63年に実施されており、古の昭和の装備なんですね(ああ歳がばれる)。

gcs-1 - コピー.jpg
管理人撮影

先日、とあるサイトを見ていたら気になる記述がありました。

操舵翼と揚力翼と太い弾体があいまって、きれいに母機から分離させることが大仕事。弾が後を向いたり、主翼と尾翼の間を跳び抜けていくこともありましたが、分離前に操舵翼を制御開始させることで対応できました。

引用元: 爆弾用誘導装置XGCS-1の技術試験・実用試験
http://ryusunryusun.seesaa.net/article/a53171945.html


何故、この表現が目を引いたかというと、制式要綱の内容とは明らかに異なるためです。

3.主要機能

3.1 誘導装置 誘導装置の主要機能は,次のとおりである。

(1) 投  弾  誘導爆弾は,搭載母機から投弾される。

(2) 初  期  誘導爆弾は,投弾後に安定翼が展開し,操だ翼のロックが解除され,ウィンドベーン状態になり,非制御状態で落下する。

(3) 中  期  誘導爆弾は,姿勢安定後に制御を開始し,ピッチ系及びヨー系は0G指令の加速度制御を,ロール系は一定レートのロール制御を行い,目標に接近する。この間に,誘導部は目標の捜索を行う。

(4) 終末期   誘導爆弾は,目標から放射される赤外線を誘導部の視野内に捕らえると,ホーミング誘導を開始し,目標へ誘導される。

引用元: 制式要綱 91式爆弾用誘導装置 P5001


制式要綱上ではタマの制御は投弾後の飛翔中期となっています。これは当然の話で、投弾前に操舵翼を制御するとすれば、タマが活性化されてなければなりません。これはどういうことかというと、投弾前に電源と操舵翼の制御用のガスサーボ装置が起動しなくてはなりません。

ということは、機体とタマはアンビリカルケーブル等で接続されており、

@機体からタマに対して今から投弾するから起動せよという指令が伝わる
A電源(熱電池?)が活性化され、又はMIL-STD-1760のように機体から誘導制御部内に必要な電力を供給される。
Bガスサーボ装置が活性化され内蔵のガス発生器からのホットガスを発生して操舵翼を制御する。

ことになります。

上記はちょっと考え難く(特にbomb rackを噛ました場合)、どういうことかと考えていたのですが、このブログ上で仰られているタマはJM117(340kg爆弾)ベースの91式爆弾用誘導装置U型のことじゃないかと思います。

U型の場合はパイロン直付けになる訳ですから、機体とのインターフェイスも容易で且つ投下特性もシビアであり、タマ側で何とかしなくてはならないのも分かる気がします。

次回も誘導爆弾の話をしたいと思います。

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2023年07月22日

UH-2は名機になるか?

■UH-1Jの後継機としてUH-2が納入されつつある

■UH-1Jは知られざる名機

■UH-2導入は混乱した地べた事業部航空畑の健全化をもたらすかもしれない



UH-1Jの後継機であるUH-2が昨年度納入されました。令和3年度に補正予算分も併せて大量発注されているようですから、4国契約と考えると来年辺りは目にする機会も多くなるでしょう。前作のUH-1Jの初飛行の知らせを会社で聞いた記憶がありますから、隔世の感があります。

UH-2(機体番号45151)
XUH-2_arriving_at_Camp_Akeno.jpg
画像引用元: By 陸上自衛隊航空学校・明野駐屯地 (JGSDF Aviation School, Camp Akeno), CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=78496847

写真の機体にはMWS(ミサイル警戒装置)とRWR(レーダー警戒装置)、FLIRが付いていますが、MWSは米国ノースロップ・グラマン社のAN/AAR-47辺りでしょうか。RWRはAH-1Sと同様にAN/APR-39辺り、また写真では確認できませんが、CMD(カウンターメジャーディスペンサ)はBAE社のAN/ALE-47でしょう。

CV-22Bに搭載されたAN/AAR-47
AN-AAR-47_on_CV-22B_Osprey.jpg
画像引用元: By Boevaya mashina - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=118332331

AH-1Sに搭載されたAN/APR-39
1272px-JGSDF_AH-1S(73455)_AN_APR-39_RWR_antenna(fwd_left)_at_Asia_and_The_Pacific_Ocean_Trade_Center_March_10,_2013.jpg
画像引用元: By Hunini - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=85574473

MCH-101掃海・輸送ヘリコプター(8651号機) 右スポンソン後部に装備されたAN/ALE-47
1080px-JMSDF_MCH-101(8651)_AN_ALE-47_Countermeasures_Dispenser_System_right_side_view_at_MCAS_Iwakuni_May_5,_2018.jpg
画像引用元: By Hunini - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=69031388

細かく搭載機器関連を見てみましたが、CNI(Communications, Navigation, & Identification)系とこの辺りが原型機であるベル412EPIとの最大の違いでしょう。勿論、データバスはMIL-STD-1553Bです。有体に言うと、UH-2は412EPIへ軍用データバスを追加した機体と言えるかもしれません。

なお、漏れ伝わる話に依るとUH-2の生産は3段階に分かれており、150機のうち最初の50機は完全ノックダウン、次の50機は国産化率50%、次の50機で国産化率100%を目指すそうです。

UH-2にはその導入の経緯から毀誉褒貶がありますが、個人的には当初構想されていたOH-1ベースの国産機じゃなくて良かったと思ってます。業界内ではK案が選定された後も以下の理由等でやはりF(S)案が良いという声が多かったのですし、実際K案が進んでいたらさらなる混乱を引き起こしていたと想像します。

・K案のベースとなるOH-1は運用側から必ずしも評価が高い機体ではなかった。そのためK案にも一抹の不安があった。

・前作のUH-1Jは手が掛からず使い勝手が大変良いことから、運用側からの評価が非常に高かった。また、ライセンス生産機でありながら、国産化率が高かったため有事(311)の部品調達や前倒し修理などの緊急対応が可能だった。

・ペーパープラン機よりも、既に実績がある機体ベースの方が。。


汎用ヘリや攻撃ヘリのベースとなることを期待されたOH-1はエンジンの問題その他を抱えて、当初の計画から大幅に縮小されて、担っていた任務は近い内に無人機へ移行して早期退役することとなりました。個人的に三宿の小ヘリ時代から馴染みがあるので、余り言いたくはないのですが失敗作です。

これにより、近い将来地べた事業部の航空畑はCH-47JA、UH-60JA、UH-2、無人機へと集約することになります。UH-60JAは高性能な機体ですが、高価でありまた既に調達を終えてますから今後の主力とはなり得ません。CH-47JAは今後も調達が予定されていますが、数的にも実質的に地べた事業部航空畑の中核となるのはUH-2でしょう。従って、今後のUH-2の評価が地べた事業部航空畑の行く末を決めることになります。場合によってはさらなる増産も期待出来るでしょう。

自分的には名機UH-1JのDNAを引き継いだUH-2も高い評価が得られる筈と思っています。

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2023年07月17日

9K330 Tor


■9K330 Torがドローンに対してミサイルを発射した珍しい映像が公開された

■9K330 Torのミサイル自体の誘導精度は高そうだ

■近接信管が作動しなかったのは信管が活性化されてなかったか、近接信管が小さくて低速なドローンを捉えられなかったことが考えられる

■旧東側の兵器を決して侮ってはならない



大変珍しい映像が公開されました。9K330 Torがドローンに対してミサイルを発射した映像をドローン側から捉えています。

Russian 9K330 Tor Missile Fail To Intercept Ukrainian Drone


まずミサイルの9M330ですが、みんな大好きwiki(日本語版)によると誘導方式は赤外線誘導+TV誘導式無線指令誘導となっています。ただ、ミサイルの写真を見ると頭部に赤外線シーカーが装備されているようには見えません。

9M330
1109px-9M330_surface-to-air_missile_of_Tor_system.jpg
画像引用元: By Vitaly V. Kuzmin - http://www.vitalykuzmin.net/?q=node/598, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=39789341

一見して前翼操舵の制御系ユニット部の後ろが弾頭部、黄色の線が電波式近接信管の窓でしょう。その後ろがロケットモーター部、最後部が別体っぽく見えるのはTVCが装備されてるのか、ただ弾体にケーブルトンネルが見えないところを見るとTVC無しかもしれません。

海外のサイトを拝見すると、9M330の誘導方式はRadio command guidanceとなってますが、外見から見るとこちらの方が正しいように思われます。果たして何処から赤外線誘導という話が出てきたかと思ったら、管理人もよく拝見する戦車研究室の9K330の記述も赤外線誘導となってました。ここから文章を引かれたかもしれません。

ミサイルの誘導方式として無線指令誘導方式は古めかしく感じるかもしれませんが、ミサイル自体にシーカーが存在しないので、ミサイル自体を安価に出来ること。ミサイルへチャフやフレアなどの妨害が無効なこと、パッシブなので目標はミサイルが向かってくる方向が分からないことなど、メリットがそれなりにあります。デメリットとしては多目標同時の対応が難しいこと、送信コマンドが妨害される可能性があること、遠距離の場合は誘導精度が劣ることでしょうか。

さて、ミサイル発射の映像ですが、VLSからコールドラウンチで発射された後に一旦らせん状に機動して目標の方へミサイルを向けているように見えます。これは発射母機側からコマンドを受けて方向転換をしているのか、またサイドスラスタ無し空力制御で素早く方向を変えるためなのか(通常だと相当高く上げないといけない)なんでしょうか。

ミサイルが横方法に機動せずにほぼ一直線に飛んできているところを見ると、この目標(ドローン)はかなり速度が遅い目標じゃないかと思われます。恐らく固定翼のドローンじゃなくて、クワッドローターのような目標だったんじゃないかと考えられます。

この映像を見た際に、疑問を感じるのは何故近接信管が作動しなかったかということだと思います。ミサイル自体のミスディスタンスは結構接近していましたので、最適位置で起爆していれば、このドローンは間違いなく破壊されていたでしょう。

そこで近接信管が作動しなかった理由を幾つか考えてみました。なお、理由として故障は除くこととします。

@近接信管がまだアーミングされていなかった
A目標(ドローン)が低速且つ小さな目標だったため、起爆する目標の対象とならなかった。
B近接信管から起爆信号は出たが、着発信管がまだアーミングされていなかった

@は目標の距離が近かったため、ミサイルの近接信管がまだ活性化(起爆できる状態)されていなかったという説です。地上から発射する砲弾やミサイルの場合、発射直後から近接信管が作動すると自軍内で誤爆してしまう可能性があるため、一定時間後に活性化するようになっています。そのため、距離が近すぎたのでまだ近接信管が活性化してなかったため起爆しなかった可能性です。

Aは目標が遅すぎ小さ過ぎていたため、近接信管が目標として感知せず、起爆信号を出すに至らず起爆しなかった可能性です。

Bは近接信管から起爆信号は発せられたが、信号を受信した着発信管がまだ活性化されてなかった可能性です。これは旧東側のミサイルに当てはまるかどうかは分かりませんが、国内で開発されている対空ミサイルは実際に弾頭を起爆させるのは着発信管と近接信管のどちらかになっています。

近接信管からの起爆信号により着発信管で起爆し、且つ着発信管は衝撃で起爆するもの
(1) 着発信管

(a) 近接信管からの起爆信号により,弾頭又は発煙弾頭を起爆させる。

(b) 実弾及び演習弾が目標に直撃した場合,又は所定の秒時飛しょうした場合,弾頭及び発煙弾頭を起爆させる。

引用元: 81式短距離地対空誘導弾


近接信管の起爆信号により着発信管で起爆、着発信管の起爆信号も近接信管を介すもの
6.4 着発信管  着発信管は,弾着時の衝撃加速度を検知して,近接信管に着発信号を出力する。

 また,近接信管から作動信号を受け,弾頭に起爆エネルギーを出力する。主な性能は,表10に示すものが標準である。

引用元: 制式要綱 90式空対空誘導弾


以上が考えられるのですが、ここはAの説を取っておきたいと思います。目標が非常に小さく低速な目標で、且つミサイルが充分に速度が出ていない状態だったため、起爆に必要なシグネチャーが得られてなかったんじゃないかと思います。

とはいえ、短距離ではありますがこのミスディスタンスには驚きました。いつも思うことですが、我々は旧東側の兵器を常に上から目線で見がちです。しかし、そこには我々が普段目にする、米国、欧州のものとは違う技術、創意工夫、思想があります。決して侮ってはいけないと考えます。

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2023年07月07日

wikiに任務艦のページをアップしました。

みんな大好き、任務艦のページをWikipediaへ作成しました

任務艦
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%BB%E5%8B%99%E8%89%A6

何せ秘密の存在の為、参考資料等もなく類推に類推を重ねています。

そのため、早速識者から幾つかの添削が加えられたようです。

お時間がある際にでもご笑覧下さい(^^)

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