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市井の料理研究家兼ミリタリー研究家です。思いついたことを書いていきます。
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2022年11月27日

S-300は何故地上で爆発したのか

毎週更新から隔週更新にすることにした公約破りの管理人です(^^)

さて、今月15日にポーランドにミサイルが着弾して犠牲者が出るという事態が発生しました。この後、WWVという検索ワードがバズッたそうです。今回はどこの誰が撃ったミサイルとかは別にして、発射された地対空ミサイルが地上で爆発したのかという点に限って愚考してみたいと思います。

What is the S-300 missile that reportedly struck Poland?


管理人は浅学のため、旧東側の地対空ミサイルについては余り詳しくはありませんが、このミサイルはS-300の5V55ではないかという話があるので、5V55という前提で話を進めます。みんな大好き英語版wikiによると、5V55は主にSARH(Seni-Active Radar Horming)のようです。

まず、疑問に思うのはミサイルというのは自爆機能が付いているのではないかということだと思います。仰る通りで、通常対空ミサイルには自爆機能が備わっています。自腹で情報開示請求をした様々な文書をネットで共有されている大火力太郎先生(@Military_Hobbys)のサイトから、本邦の比較的最近の地対空ミサイルである11式短距離地対空誘導弾についての自爆機能を確認してみます。

11式短距離地対空誘導弾の仕様書からの抜粋
k)安全性 安全性は次による。

)1 射撃統制装置のコマンドアップリンク機能によって、飛しょう中の飛しょう体への自爆指令を送信し、自爆させることができるものとする
2)敵機と識別して射撃した目標を、射撃後に味方と判別した場合、コマンドアップリンク機能によって、自爆指令を飛しょう中の飛しょう体へ自動的に送信し、自爆する機能を有するものとする。
3)飛しょう体はタイマ自爆機能を有するものとする。

参照元: 11式短距離地対空誘導弾
https://t.co/KZS6GR6QO2


以下は以前公開されていた制式要綱からの抜粋です。

91式携帯地対空誘導弾からの抜粋
6.1.3 機  能

(1.4) 自  爆  弾頭付飛しょう体は,目標に命中しなかった場合,所定の時間経過後,自爆する。

引用元: 制式要綱 91式携帯地対空誘導弾


90式空対空誘導弾からの抜粋
3.2.2 母機搭載中の安全性・発射後の安全解除  母機搭載中の安全性及び発射後の安全解除は,次のとおりである。

(3) 誘導弾は,発射後目標に遭遇しない場合には,所定時間経過後自爆する。

引用元: 制式要綱 90式空対空誘導弾


ちょっと纏めると以下のような感じです。

誘導弾の自爆方式
(1)タイマによる設定時間で自爆
(2)指令による自爆

あと、最近のモノになると内蔵電源が切れたらとか様々な設定条件があるようです。以下はアイアンドームでの射撃映像。どうもSLS(Shoot Look Shoot)射撃している感じですが、幾つかのミサイルは自爆しているようにも見えます。

Iron Dome Intercepting a huge rocket wave Israel Gaza 2022 conflict


上記(2)についてはUTDC(Up To Date Command)付きのミサイルでないと実装出来ない機能ですが、これについては面白い話があります。勝手に姉妹サイトである 改自衛隊で奏でた交響曲 の管理人であるペンギン先生から教えていただいたのですが、AAM-4の艦載版であるXRIM-4が採用されなかったのは、以下のような背景があったとのことです。自分もXRIM-4関連で三宿にモノを収めた経験があるのですが、この話を聞いて長年の疑問が氷解しました。

AAM-4艦載型(XRIM-4)については、かなり完成度が高く使えるミサイルだったのですが、運用者側(特に射撃マーク)の迷走が原因でお蔵入りしてしまったところがあります。

中間の指令誘導方式はAAAM-4にも存在する仕様ですが、終末誘導のARHについて、味方誤射防止の自爆機能追加を要求されたのが響いています。

射撃特に大砲屋さんが、FCS-3の開発が進んださなかに「撃ちっぱなし機能」を嫌がり、「敵味方識別で最終的に味方と判明したとき自爆させる機能がないと安心して使えん!」とクレームが付きました。

XRIM-4側については、簡単に機能改修で対応できたのですがFCS-3及びATECS側で機能追加がなかなかうまくいかず、開発遅延の要因の一つになりました。

結局、大蔵省からコスト削減を要求されたときにFCS-3・ATECSを優先して一番完成していたXRIM-4を切り捨ててしまったのが要因です。

その後シースパローの老朽化更新の必要があるため、FCS-3搭載が必要なXRIM-4より慣れ親しんだシースパローの発展型ESSMを採用する判断が出たと聞いています。

ESSMだと、FCS-2でも機器の改修で発射が可能というのも影響しました。

当時はFCS-3自体が切り捨てられそうな状況だったので、何とか存続を願ってXRIM-4を犠牲にした状況です。

引用元: 改自衛隊で奏でた交響曲
https://fanblogs.jp/sstd7628/archive/266/0#comment


かなり話が脱線しました。以上のように通常は対空ミサイルには自爆機能が備わっています。旧東側の兵器を同じ基準で考えてよいのかという疑問も無いことはないですが、ここは備わっていると考えときます。

では、何故外れた筈のミサイルが空中で自爆ぜず地上で爆発したのかという点です。

SARHの5V55が指令自爆機能を持たないとしたら、やはり自爆の設定秒時以内に地上に落ちてしまったと考えられます。つまり、この際の射撃は目標を下から上に見ていたのではなくて、上から下に見ていたのではないかという考えが浮かびます。ただ、自立航行できない単なるSARHでは地上から見通し線外射撃が出来ません。となると目標は比較的低高度にありながらミサイルの射撃レーダーには捉えられる(イルミネーターで送信波を当てられる)高度だったということになります。

ミサイルは比較的低高度の目標へ向かいましたが、運悪く目標から逸れてしまったため自爆の設定秒時前に地上へと達して着発信管で起爆したのではないかと考えます。

以上は管理人の愚考に過ぎませんが、今後調査が進めば全容が明らかになるかもしれません。何れにしろ、今回の紛争が出来るだけ早く終了し、当地の人々が一日も早く日常の生活に戻れることを願ってやみません。

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2022年11月09日

wikiへ機関砲標的装置(A/A37U-36)の記事を投稿しました

毎週更新の公約を果たせず、毎月1回更新ペースになりそうな今日この頃(^^)

ちょっと思いついて機関砲標的装置(A/A37U-36)の記事をwikiへ投稿しました。

1620px-JASDF_A_A37U-36(AGTS-36)_right_side_view_at_Komatsu_Air_Base_September_17,_2018.jpg
引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=72819822による

前回のASM-2B及び改善弾と違って、今回は全くの新規投稿になります。

記事を書くに当たって少し調べていたんですが、ここ数年は防衛装備庁でも機関砲標的装置(A/A37U-36)関連の調達が全く為されていないのですね。搭載母機のF-15が装備してフライトすることも余り頻繁ではないようで、見掛けられることは稀になっているそうです。

これはやはり、Gunの訓練そのものが大きく減っているのでしょう。航空事業部の場合はスクランブル任務があるので、Gunの全廃は難しいかもしれませんが、Gunの存在価値そのものが大きく低下していると考えるべきでしょう。

我々が地方の部隊さんを訪問する際は、武器屋(装備隊武器小隊)さんが多いのですが、大きなエプロン付けた隊員の方が汗まみれになりながら機関砲の部品を洗浄している場面によく出くわします。「ああ、機関砲の整備って大変なんだな。」と思ったもんです。

これだけ手が掛かりながら機関砲の有効射程はほんの1km程度でしかありません。さらに当てるためには相当の操縦技術と熟練を要します。

Venezuelan F-16 shoots down OV-10 Bronco | November 27, 1992



これはベネゼエラの反乱軍のOV-10を空軍のF-16が20mm機関砲で撃墜する映像です。余り多くを語りませんが、近距離での空対空機関砲射撃の大変さが良く表れていると思います。これが相手が小さなドローンの場合はどうなるか。色んな感慨があると思います。

そして何と言ってもGunの地位を貶めたのは、AIM-9XやAAM-5などのIR-FPA(赤外線フォーカルプレーンアレイ)を備えた新世代短距離空対空ミサイルの進化でしょう。これらのミサイルにより交戦機会が大幅に拡大し、超低高度の目標にも対応出来るようになりました。

個人的には搭載型レーザー兵器の実用化が見えてきた昨今、Gunの将来は暗いと言わざるを得ないでしょう。また、Gunの代わりに以前に技術研究本部で研究されていたロケット弾ビーグル(フレシェット弾や知能化子弾を備えた空対空、空対地両用のロケット弾)ような新しい装備も登場するかもしれません。


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2022年10月22日

That's done(雑談)

週一回更新を公約してましたが、早くもネタ切れのため最近のニュースやトピックをネタにしてみたいと思います(^_^)

防衛装備庁、F−15緊急射出装置用部品、F−2緊急射出装置用部品を藤倉航装株式会社と契約

fujikura.jpg


引用元: 防衛装備庁 契約に係る情報の公表(中央調達分)令和4年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)
https://onl.la/42rZBA1

これはマル防から撤退するダイセルさんに代わって、藤倉航装さんがF-15とF-2の射出座席の御守りをするということですね。藤倉航装さんは一般の方には余り馴染みがないかもしれませんが、マル防の特に航空畑では結構お世話になる会社さんです。また、ダイセルさんにはXAAM-5の際に大変お世話になりました。


防衛装備庁、F−2JMPS機能付加を米空軍省と契約

JMPSはJoint Mission Planning Systemの略で任務計画作成用システムでWindowsベースのものです。作成したデータはDTM(Data Transfer Module)というある種のメモリーカードのようなもので、機体に取り込まれます。F-15のMSIP機もDTMを使用しますが、大昔に数が足りなくて何とかならないかと某所で相談されたのは内緒です(w

以下はDTMの参考例
https://www.mrcy.com/products/data-storage-and-transfer/avionic-storage-and-transfer-systems/DTM2-avionics-data-transfer-module


防衛装備庁、スタンド・オフ電子戦機(その3)を川崎重工業と契約

動きが早いです。新造ではなくて既存機の改修なんですな。EC-1のアビオのお手伝いをした際に、「ああ、こいつは電子戦訓練だけじゃなくて、有事の際には実戦にも投入されるんだな。」と思いましたが、もう形振り構わず前面に出すようになりましたね。相手のデータリンクを妨害するということは、EC-1の後継だけでなく、スタンドオフ通信妨害を行うJ/ALQ-7を搭載するYS-11EAの後継でもあるわけですね。

photo040202.jpg
画像引用元: https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2020/html/n42203000.html


94th FS and 94th FGS makes history at WSEP 22-12
https://www.acc.af.mil/News/Article/3186034/94th-fs-and-94th-fgs-makes-history-at-wsep-22-12/

巷でF-22が1機で空対空ミサイルを28発搭載したと騒いでますが、原文見ると"the units employed 28 air-to-air missiles"となっているので、部隊単位で28発を使ったという意味だと思うのですが。。。

1機に数多くのミサイルを積みたい、又はミサイルの補給を空中で出来ないかという話は以前からあるのですが、個人的にはドローンにミサイルを搭載して戦闘機に随伴させるという方法が良いかなと考えてます。

They also demonstrated a high-level of proficiency while shooting the F-22's six-barrel, 20mm Gatling gun, and the M61A2 Vulcan at the Advanced Gunnery Target System.
引用元: https://www.acc.af.mil/News/Article/3186034/94th-fs-and-94th-fgs-makes-history-at-wsep-22-12/

Advanced Gunnery Target Systemというのが気になりますね。本邦も使っているAGTS-36 Aerial gunnery target systemとは違うんでしょうね。

AGTS-36 Aerial gunnery target system
https://meggittdefense.com/product/agts-36-aerial-gunnery-target-system/


Russia Is Using ‘Stolen’ Highway Cameras To Equip Its ‘Cutting Edge’ Orlan-10 Drones – Swedish Media
https://eurasiantimes.com/swedish-shocker-for-moscow-its-media-claims-dozens-of-stolen/



前回、Sensys Gatso社の速度違反自動取締装置をネタにしましたが、スウェーデン国内で多くの速度違反自動取締装置が壊され、内蔵の一眼レフカメラが盗まれ、それがロシアのUAVのOrlan10に使われているのではないかという記事。今回のウクライナ戦争で明らかになったのは、ドローンの尋常ではない消耗で、有人機の運用がSAMの脅威等で低調になった代わりに、ドローンが積極的に用いられているのでしょう。WWUは航空機の一大消耗戦でしたが、次の世界大戦はドローンの大消耗戦になるかもしれません。


Egypt, MHI, and Soryu submarine deal
https://www.tacticalreport.com/news/article/60627-egypt-mhi-and-soryu-submarine-deal

そう来たかという感じの記事。エジプトが本邦のそうりゅう級潜水艦に興味があるとの由。通常潜水艦の市場には英米という巨大プレイヤーは入ってこないし、今後はロシアも入ってこなくなるかもしれないので、本邦も市場に隙入るチャンスは充分にある。もし、エジプトがそうりゅう級を入手したら、周辺国のみならず特に核付き巡航ミサイルを装備した潜水艦を反撃能力として遊弋させているイスラエルも余り良い感情は持たないかもしれない。

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2022年10月12日

Sensys Gatso社の速度違反自動取締装置

今回はマル防ではなく、ちょっと変わった話題。中々興味深いものですよこれは。

徐々にではありますが、本邦にもスウェーデンのSensys Gatso社の速度違反自動取締装置が入ってきつつあります。移動型のMSSSと固定型のSSSの二種類があるようです。また、まだ本邦ではまだ未確認(導入予定とは聞いている)のようですが、車載型も存在します。なお、本邦では沖電気さんが御守りをしているとのことですが、車載型は別の会社さんの御守りのようです。

このような新型の速度違反自動取締装置の導入は、国内大手電機メーカーさんが市場から撤退してしまったこと(サポートも継続できないHシステムも次々と撤去されています)、従来型の追跡式や赤旗で止めてサイン会場にお連れする方式では危険で且つ効率的ではないこと、またスクールゾーンなどで広がるゾーン30(制限速度30km)等の施策もあり、出来るだけリソースを掛けずに取り締まりを実施したい警察側の目論見があるようです。

MSSS(可搬型)


SSS(固定型)


In-Vehicle(車載型)


現行の速度違反自動取締装置にはレーザー方式とレーダー方式、ループコイル方式等がありますが、こちらはレーダー方式です。そして従来のレーダー探知機では警報が出ないということで色々と話題となってます。
余談ながら、Sensys Gatso社は速度違反自動取締装置にはレーザー方式は適していないと考えているそうです。確かに某社のレーザー方式の速度違反自動取締装置は低性能が伝えられています。

管理人としても、果たしてどのような構成、また速度をどのような方法で測定しているのか興味があるところです。

こちらのページを見てみます。
https://www.beamstraffic.com/dss.html

prod_big_ssII.jpg
引用元: https://www.beamstraffic.com/dss.html

SSSの内部が見える写真が掲載されています。小さくて見難いですが、真ん中にある黒い円形の物がレーダーモジュール(こちらはRS240というレーダーモジュールのようです)で、その下に一眼レフカメラのようなものが確認できます。このカメラはファームを改修した日本製一眼レフ(Canon又はNikon)でカメラのインターフェイスはUSB接続だそうです。制御は対環境性のLinux PCとのことで、撮影データはSDカードに収められるそうです。まぁ、COTS品のオンパレードですね。なお、海外の固定型では撮影データを3Gや4G回線で、外部へ送信するものもあるとのことです。

このレーダーモジュールはSensys Gatso社製品には速度違反自動取締装置だけでなく他に鉄道関連など広範に使われており、SSSやMSSSに使われているものはRS242と呼ばれているようです。なお、FCCでマニュアルが公開されています。こちらの外部インターフェイスは車でお馴染みのCAN-BUSのようです。

名称の24というのは恐らく周波数でしょう(24GHz帯)。また日本国内で使われているということは、技適を取っている筈なので総務省電波利用ホームページで調べてみました。

https://www.tele.soumu.go.jp/giteki/SearchServlet?pageID=jg01_01&PC=005&TC=N&PK=1&FN=355tuv&SN=%94F%8F%D8&LN=12&R1=*****&R2=*****

注目すべきはその周波数と送信出力(空中線電力)です。送信出力(空中線電力)は何と0.0025W です。これじゃレーダー探知機で捉えるのは難しいというのも分かる気がします。所謂、マル防でいうLPI(Low Probability of Intercept)ですね。最初、この内容を見たとき、このレーダーはFM-CW方式なのかなと思いました。確か同じスウェーデンの対艦ミサイルRBS-15のレーダーシーカーもFM-CW方式でしたね。

なお、外見は不格好ながら管理人はこのミサイルを結構高く評価しており、もし世界中で好きなミサイルを5つ挙げよと言われたら、恐らくこのミサイルを入れます(w

960px-RBS_15_Mk4.jpg
引用元: By Swadim - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=82133183

レーダーの方式ですが、先ほどのページの中に以下のような記載があります。

Continuous speed verification by applying two independent methods

引用元: https://www.beamstraffic.com/dss.html


つまり2つの独立した方法で継続的に速度検証を行っていると書かれています。2つの独立した方法とは恐らく、速度測定と距離測定を別個同時に行っているということだと思います。

だとするとレーダーの方式はFM-CW方式ではなく、FCM(Fast-Chirp Modulation)方式が考えられます。というのは、FM-CW方式で速度と距離を算出する際は同じくビート周波数を使って行いますが、FCM方式では距離はビート周波数、速度は位相差を用いていることから、2つの独立した方法と言えると思います。また、FM-CW方式では周波数ペアリングの問題で複数同時ターゲットを追尾補足することは技術的に難しいことを考えると、やはりFCM方式の可能性が高くなります。

最後にこの速度違反自動取締装置の価格なんですが、MSSSはスウェーデン現地価格で7万€程とお聞きしました。まぁ、本邦契約価格だと御守り代も含めて1千数百万円ってところじゃないでしょうか。下手すると億単位と噂される某社さんのHシステムやオービスなどに比べると、大幅に安いと言えます。


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2022年10月01日

アクティブ・デコイはミサイルへと向かう

先日の記事(結局はデコイしかない)の続きです。

その中で、セミアクティブレーダー誘導の対空ミサイルには曳航式デコイ(ジャマー)が有効であること、またアクティブレーダー誘導に対して曳航式は余り有効ではないことを述べました。

航空事業部某技術幹部殿曰く

「曳航型はセミアクティブレーダー誘導には有効だが、アクティブレーダー誘導には有効ではないので、射出型デコイが必要だ。」

浅学な自分は最初この意味が分かりませんでした。しかし、現在はこうではないかと推測しています。

航空事業部には射出型デコイとしてJ/ALQ-9というものをF-15j/DJに装備しています。これは珍しいもので、部隊の方も名前は聞いたことあるけど見たことが無いと言わしめる程です。"F-15用射出型ECM装置"で検索すると入札公告等で結構ヒットします。そして特筆すべきはこのJ/ALQ-9の性能については特定防衛秘密に指定されていることです。

参議院情報監視審査会の活動経過

戦闘機用射出型 ECM 装置(J/ALQ−9)の J/S 比、初期設定値、ドップラー周波数及び妨害可能時間に関する定量的データ(試験により得られたデータを除く。)

引用元: 参議院情報監視審査会の活動経過


(注)J/S比のJはミサイルが受信する妨害波の電力、Sはミサイル自身のレーダ受信電力のことで、これが1を下回ると妨害が有効ではなくなる。

さて、このJ/ALQ-9ですが、前方型と後方型があります。これも何故デコイに前方型と後方型があるのか、またこのデコイは外観の写真等が全く出てきません。従って一般的にはどんな形なのかも分からないのです。
それは何故なのか。

実はこのデコイは飛翔体という名称で、主契約会社である富士通さんから特許が取られています。そちらの特許情報からこのデコイがどういうものなのかを知ることができます。

飛翔体
https://patents.google.com/patent/JP4237873B2/ja?oq=JP4237873B2

全体の外観図
0004237873-2.png
引用元: 飛翔体

収納状態
0004237873-3.png
引用元: 飛翔体

なお、以下の特許も関連するようです。

小型電子機器用カートリッジアセンブリ
https://patents.google.com/patent/JP3904727B2/ja?oq=JP3904727B2

飛翔体および射出装置
https://patents.google.com/patent/JPH08207898A/ja?oq=JPH08207898A

電波妨害装置
https://patents.google.com/patent/JP3660773B2/ja?oq=JP3660773B2

航空機
https://patents.google.com/patent/JP2005114457A/ja?oq=JP2005114457A

自分は以前、某所にてこのデコイを拝見したことがありますが(実物は鮮やかな赤色で塗装されています)、外観図よりももっと細長い感じです。直径は大人の親指よりちょっと太い程度の大きさです。

このデコイはF-15J/DJのチャフ・フレアディスペンサー であるAN/ALE-45に搭載されており、必要時に射出されます(まず機体搭載型ECMで妨害を開始し、ミサイル側が妨害に引っ掛かったのをトリガーとして、射出型デコイを発射してその後に内装型ECMの妨害を停止するか徐々に弱める。従って、射出式デコイはECMコントローラの判断で自動的に射出される)。射出されると展開翼を開いて飛翔し、熱電池を動力源として電波を発信して電波妨害を開始します。この際にこのデコイは射出されて単純に直下に落下するのではなくて、水平方向に飛翔する。そして、前方用では前方に、後方用には後方にアンテナが付いており、そこからそれぞれの方向へ妨害波を発信します。

AN/ALE-45J
左側筐体がチャフ及びデコイ用、右側筐体がフレア用
1280px-AN_ALE-45J_countermeasure_dispensers_at_JASDF_Komatsu_Air_Base_September_17,_2018_01.jpg

引用元: By Hunini - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=72818798

つまり、このデコイは相手のミサイルの方向へ送信アンテナを向けて飛翔する形になります。これが前方用と後方用が存在する所以です。

聞き及んだところによると、一度に4器のデコイが射出され、それそれの方向へ電波妨害を行いながら飛翔することになります。なお、曳航式の場合は母機と一緒に飛翔するため母機と同じ速度となるため、速度欺瞞の必要はありませんが、射出型になると発射母機と飛翔速度がことなるため、最適な△f(母機とデコイのドップラ周波数の変位分)を算出し、妨害成分に乗せてやる必要があります。

以上のことから、航空事業部某技術幹部殿の発言の真意はこういうことじゃないかと推察しています。

この射出型デコイは電波妨害を実施しながら、ミサイル側へ向かって飛翔し、状況によっては相手ミサイルと発射母機の間に割り込んで妨害を実施し、より実効性が高い妨害を実施することができる。それに対して母機の近辺を飛翔する曳航式は射出型に比べて送信出力を大きく出来る利点があるが、自らレーダー波を送信するアクティブレーダーホーミング誘導に対しては、距離が近くなるとミサイルが受信する妨害波の電力がミサイル自身のレーダ受信電力よりも低くなってくる(J/S比が1以下になる)ため、妨害の効果が無くなり妨害対処可能な距離範囲が短くなってしまう。つまり母機との距離が曳航索によって固定されているが故にアクティブレーダーホーミング誘導に対して脆弱であると言えます。

そしてこのJ/ALQ-9の姿が余り公に晒されないのは、元々配備数が多くないこともさることながら、この形態による飛翔性能を外観から余り類推されたくない意図があるのかもしれません。

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2022年09月24日

誘導爆弾は重いで(思い出)

兵頭二十八先生のブログを拝見していたら面白そうな記事を見つけました。

https://st2019.site/

「New Look At Air Force’s Ship-Killing Smart Bomb In Action, Seeker Details Revealed」
https://www.thedrive.com/the-war-zone/new-look-at-air-forces-ship-killing-smart-bomb-in-action-seeker-details-revealed

QUICKSINK


QUICK SINKと呼ばれる2,000ポンドのJDAMベースの対艦誘導爆弾です。現在、米空軍のAir Force Research Laboratoryで開発中の物のようです。母機から投下されると目標の付近に着水して水中で爆発し、魚雷や機雷のようにバブルパルスで艦のキールを折って沈没に至らしめるのでしょう。

なお、QUICK SINKのシーカー方式は以下で、レーダーと画像赤外線の複合のようです。初期・中期はINS/GPSで、終末誘導は複合シーカーという組み合わせでしょう。

AFRL has now confirmed that the Quicksink seeker, the model of which is seen below, is a dual-mode system that combines a radar seeker with an imaging infrared (IIR) camera, as The War Zone has postulated since this program was publicly announced last year would all but certainly be the case. The radar seeker is contained in the front portion of the nose while the camera is installed in a fairing on the side. This is all then integrated onto the front of an otherwise standard GBU-31/B JDAM, which retains its GPS-assisted inertial navigation system (INS) guidance package in the tail.

引用先: https://www.thedrive.com/the-war-zone/new-look-at-air-forces-ship-killing-smart-bomb-in-action-seeker-details-revealed


ミサイル全盛の今日、なんで誘導爆弾なのかと疑問を持たれるとお思いでしょうが、実は本邦の航空事業部においても、誘導爆弾が必要だと唱えている一派が存在します(逆にそんなの不要と考える方もおります。実際にGM関連の某3佐殿から「こんなもの役に立つんですかね。」と耳打ちされました。まぁXGCS-2の開発は航開5室で、GMにとっては商売敵でもあります。)

何故、そのような声があるのかというと、ミサイルは基本的に艦の上部構造物を破壊して戦闘力を奪うものであり、沈没至らしめるためには船体内で爆発する誘導爆弾が必要だという意見です。

本邦には誘導爆弾として91式爆弾用誘導装置(GCS-1)が存在し、その後継装備として展開翼を持つXGCS-2(新型普通爆弾)が開発されましたが、必要性と技術的な課題から実用化されずに終わっています。

GCS-1(500ポンドと750ポンドタイプ)
gcs-1 - コピー.jpg
画像引用元: 管理人が撮影

余談ながら、GCS-1の実射試験に立ち会った方に依ると、標的は赤外線放熱ドームを載せた双胴船が使われましたが、500ポンドタイプが命中した時はスポッと抜けていくのに対して(試験弾のため炸薬は入っていない)、750ポンドタイプが命中した時は標的船全体が大きく揺れたんだそうです。

専用弾体まで作ったXGCS-2に比べると、このQUICKSINKは既存のJDAMからの派生型であることと(従って安い。見積もりでは1,000発量産で5万ドル程度。XGCS-2はGPS/INSタイプで約5,000万円以下が目標。)、水中に突入する(船体へは侵徹しない)という点で極めて現実的と言えます。(逆にXGCS-2がポシャッたのはこの辺りに起因します。)

USAFがQUICKSINKを配備し始めれば、航空事業部も大いに興味を持つでしょう。QUICKSINKの弱点は射程が短い(投下高度にも依るが約15マイル程度)ことですが、ASM-2やASM-3などのスタンドオフレンジが長いミサイルでエリア防空艦などの戦闘艦を黙らせた後に、輸送艦艇や支援艦艇などのリスクの低いターゲットを攻撃するには非常にコスパが高い装備となることでしょう(高価なミサイル等を使用しなくても済むため)。

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2022年09月18日

イスラエルもの

巷はIAI Harop導入の話題で盛り上がっています。

攻撃型無人機、自衛隊に試験導入へ…島しょ防衛強化へ25年度以降に本格配備 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220913-OYT1T50279/

個人的にもこれはノーマークで、市ヶ谷でどんな人間が絵を描いていたか、興味があるところです。
イスラエルものは、本邦にもそれなりに入っていますが、余り目立ちません。それは正面装備のような派手なものが入っていないからでしょう。

640px-IAI_Harop_PAS_2013_01.jpg

画像引用元: Julian Herzog, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26893410による


一番有名なのはF-2の600ガロンドロップタンクでしょうか。あと、AAM-5用に導入されたJHMCS(Joint Helmet Mounted Cueing System)も元を辿ればイスラエル(エルビット社)のものですし、日本版JTACがLJDAMの誘導に使うレーザーデジグ(恐らくノースロップグラマン社製GLTD III)もイスラエルっぽい感じがします。

F-2の増槽メーカーの話
https://wikiwiki.jp/yusuki/F-2%E3%81%AE%E5%A2%97%E6%A7%BD%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%81%AE%E8%A9%B1

勝手に姉妹サイトであるペンギンさんのページにもイスラエル製装備導入の話が出てきます。

【艦補処】イスラエル製装備輸入に関わり思うこと。
https://fanblogs.jp/sstd7628/archive/162/0

ここで海自は、どんなイスラエル製装備を導入しているのか?そんな疑問が出てくると思います。

私からの答えは、

『絶対に秘密の装備品!存在しない装備品になっているから!』

という答えになります。

ホントにヤバい装備品です!ウワサは聞いていたけど自分が担当になるとは・・・

『特別警備隊関係の物です!』と言えればよいのですが、もっとヤバいものです。

導入していることがバレると、国会で問題になるレベルの装備です。

『この装備だけは絶対に公表するな!』

それほど扱いが厳しい代物です。


最初、自分はこの装備はエリント、コミント(特に潜水艦)に関するものかと思ってましたが、「国会で問題になるレベル」というと、もっとやばいものかもしれません。
例えば、海底ケーブルをxxxxとか、相手国の港湾奥深く侵入するUUVとか。。。。
何か国際法や相手国の主権を侵害するレベルのものじゃないか。
そしてお役人であるGA隊でそんなおっかないことが出来るのは、これが本邦独自の行動ではなく米国からの任務移管又は指示によるものじゃないかと推察されます。

実は自分は一度だけイスラエルものを官側に売り込んだ経験があります。
具体的にどういうものかの言及は避けますが、とある技本開発品に付随する装備とだけ申し上げておきましょう。

その際の官側の反応ですが、、、

「イスラエルものかぁ」

「アラブ諸国との関連がなぁ」

といったもので、散々だった記憶があります。なお、イスラエルの会社の方ともご一緒しましたが、彼らはとてもビジネスライクで融通も効き、米国の会社を通してイスラエルの名前を出さないでくれというこちらの要望も二つ返事で了解してくれました。結局はその開発計画自体がポシャッたので日の目を見ることはありませんでしたが、彼らのプロ意識にはとても感銘したのを覚えています。

そんな時代から、IAI Harop導入の話が出てきたわけですから、自分にとっては隔世の感があります。

これからは幾つものイスラエル製装備が堂々と堰を切ったように本邦に入ってくることでしょう。

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2022年09月06日

【緊急投稿】P-1はダメな子っぽい

海洋事業部の国産哨戒機P-1だが、どうもダメな子であるという話が市井まで伝わり始めたようだ。一部マスコミもそろそろ騒ぎ始めるだろう。これはマル防業界では既に知られた話ではあるが、もはやどうにもならん所まで来ているという意見もちらほら出ている。

よく聞く話としては以下の感じ。

@運用経費がバカ高い。
A上記も関連して稼働率が低い
B一部搭載機器が使えない
C肝心のASW能力が低い


@、Aに関してはに機体、エンジン共に本邦でしか使われていないものであり、運用経費の増大は避け難い問題である。また、近年は落ち着いたようだが、搭載エンジンにかなり重大な不具合があり、この事業自体の継続が危ぶまれたこともあった。また、既にP-1の行く末を案じてか、某海外メーカーではP-1用のスペシャル品製造から撤退したところもあるという。

Bについては某kytnセンセが公にした某搭載品が使えない問題が代表的。ここでは言及を避けるが、多少内部を知る人間として、他にも公になっていない問題があるんじゃないかと推察する(特に輸入品のソフトウェアが絡むモノとか)

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引用元: Hunini, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:JMSDF_P-1(5504)_HAQ-2_EO_IR_sensor_right_front_low-angle_view_at_Kanoya_Air_Base_April_30,_2017_02.jpg

Cの問題が一番深刻でP-1とP-8では例え同じ目標を捉えても、P-8は立ち所に解析して答えを出すのに対して、P-1は解析出来ずにunknownとなることが多いとの由。P-1は改良型のP-1C7/BL2の調達が始まっているが、それでもP-8との差は埋められないだろうという意見が専らである。よく言われるのがシグネチャデータベースなどソフトウェア関連の出来の違いだが、P-8と比べるとハードも含めて全体的に後塵を拝しているのだろう。

さて今後のP-1だが、以下のような選択肢が考えられる

(a)兎に角がんばって追いつく
(b)器はそのままに、臓物をP-8のものに入れ替える。
(c)P-1はディスコンして、P-8を買う。


業界雀の間では(b)の可能性が論じられている。(c)は以前から燻っている話だが、ここまで来るとサンクコストが大き過ぎる。また、次期戦闘機までI社の仕事が切れる。(a)は恐らくどんなに頑張っても無理であろうとの判断からである。

個人的にはP-1は古い思想の下で新しい技術を使って作った機体という印象がある。そのため、P-8には出だしから後塵を拝している。ASWに限らないもっと広範な任務に活用できるなら活路を見出せるかもしれない。

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タグ:P-8 哨戒機 P-1

2022年09月01日

結局はデコイしかない

唐突ですが、最近セミアクティブレーダーホーミング誘導への電波妨害は難しいのかという質問を受けました。
自分は以下のように回答しました。

「難しいですね。」

これは意外に思われるかもしれません。アクティブレーダーホーミング誘導全盛の今日では古色蒼然たるセミアクティブへの電波妨害は今日の技術を以てしても難しいのです。

セミアクティブレーダーホーミング誘導は2つの情報を頼りに目標へ向かいます。相手の角度と速度です。これも意外に思われるかもしれませんが、ミサイルの誘導自体には距離情報は必要ありませんし、またミサイル側で距離情報を得る手段もありません。

この内、誘導に本当に必要なものは角度情報のみです。では速度情報は何に使うかというと相手が真目標であるか偽目標であるかの識別に使われます。

以下の写真はセミアクティブレーダーホーミング誘導の艦対空ミサイルであるRIM-7の最後尾部分です。最後尾の上部に白い小さなアンテナ上の物が確認できると思います。(赤丸内)

800px-RIM-7_Sea_Sparrow_aft_wing_left_rear_view_in_JMSDF_1st_Service_School_May_6,_2019.jpg

引用元: Hunini, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
詳細: RIM-7シースパロー艦対空ミサイル 後翼。2019年5月6日 海上自衛隊第1術科学校 江田島クラブ2階の海上自衛隊歴史ゾーンにて。

これがレファレンスレシーバーで、発射母艦のCWイルミネータのCW波を受信します。さらに、ミサイル前方のアンテナで捉えた目標の反射波を重畳させ増幅することにより、ビート周波数(唸り)を得ます。この信号の周波数が規定内にあることでミサイルは目標として認識します。

なお、余談としてアクティブレーダーホーミングのAAM-4でも最後尾に同様の小さなアンテナが見受けられますが、あれは、発射母機からの指令送信波の受信アンテナです。(残念ながら使える写真無し)

Beat.png

引用元: コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、Barak Shだと推定されます(著作権の主張に基づく) - コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、投稿者自身による著作物だと推定されます(著作権の主張に基づく), Copyrighted free use, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4124203による

上図では赤が周波数110 Hzの波、緑が周波数104 Hzの波、青が重ね合わせた波であり6 Hzのうなりが見られる。

引用元: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%8A


これは何か最近の超ハイテク(wみたいな感じがしますが、実は大戦期からある技術です。(VT信管とか)

何故このような面倒臭いことをしているかというと、我々は普段認識することはありませんが、お空には一杯ノイズ源となりうるものが存在します。例えば、天使さんとか妖精さんとか、一反木綿やスカイフィッシュとか、モスマンやUFOとかです(w ー−−−嘘です。実際には雲や雨粒、鳥、浮遊物とかですね。

話が脱線しましたが、セミアクティブレーダーホーミング誘導を妨害するにはこの速度情報と角度情報を妨害すれば良いことになります。角度情報の妨害方法は置いとくとして、速度情報の欺瞞には先ほどの相手の速度情報取得のプロセスを妨害してやれば良いことになりますが、実はこれが難しいのです。

というのは、ミサイルが受信している目標と同様の反射波を作り出すためには、ミサイルと目標間の近接速度を知ることが必要になりますが、それは狙われている目標自身でなければ分かりません。また、狙われている目標自身も相手のミサイルの速度が分かりませんから、出来ることとしては受信した相手のイルミネータ波を増幅して返してやること位です。そしてそれは逆に目標の信号を増幅するだけとなります。

さらにこれは余り認識されてはいませんが、セミアクティブレーダーホーミング誘導はミサイル自体はパッシブなので、ミサイル自身がどの方向から来るか分からないという問題があります。

下図のようにセミアクティブレーダーホーミング誘導はイルミネータからの反射波を辿って誘導されますが、それがイルミネータの方向とはイコールではないということです(反射波が必ずしもイルミネータの方向に向く訳ではない)。特に目標の近辺まで慣性又は指令誘導されるミサイルではその傾向が強くなります。

Missile_homing.jpg

引用元:
By Gregory Wilson - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15521196

では、他に有用な方法は無いでしょうか? 在ります。デコイです。

何故なら妨害波として変調されていない強い信号を出すしかないとなったら、自身に相手ミサイルを引き寄せてしまいますから、妨害波を自ら出さなければ良いのです。

デコイには通常、以下の2つのタイプがあります。

(1)曳航型(AN/ALE-50、DASSなど)
(2)射出型(J/ALQ-9、EADなど)


写真はAN/ALE-55、光ファイバーで牽引される。

AN_ALE-55_m02006120800272.jpg

引用元: By This file is a work of a sailor or employee of the U.S. Navy, taken or made as part of that person's official duties. As a work of the U.S. federal government, it is in the public domain in the United States. - http://www.deagel.com/library2/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3753891

この内、曳航型は以下の特徴があります。

1. 母機と一緒に飛翔するため、速度欺瞞の必要が無いこと。
2. 射出型に比べて送信出力や動作時間が長く出来ること。
3. タイプによっては母機から電力や妨害指示を得られること。
4. タイプによっては使用後に回収が可能なこと。


これらの特徴は戦闘機や攻撃機のみならず、低高度を長時間飛行する輸送機や哨戒機にも有用なものとなります。ただ、本邦の運用側からは曳航型は好まれていないようですね。

そして、ある時に航空事業部の某技術幹部殿からこう言われたことがあります。

「曳航型はセミアクティブレーダー誘導には有効だが、アクティブレーダー誘導には有効ではないので、射出型デコイが必要だ。」

これはどういう意味でしょうか。射出型については次回に解説します。

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2022年08月21日

wikiにASM-2の解説を少し追加しました

wikiにASM-2の解説を少し追加しました。大した内容ではありません。wikiへの投稿は色々と差し障りがあることから、出来るだけ数字は書かないというスタンスだったので、今回追加したのは以下の部分だけです。

運用側からのASM-2の評価
技術研究本部の開発計画
巡航ミサイル型標的


特に開発計画については、数字を入れられなかったので、若干消化不良な内容です。
巡航ミサイル型標的も運用高度やレーダー反射面積等の数字は省きました。巡航ミサイル型標的には恐らく、指令受信装置も搭載されていたと思われるのですが、裏が取れないため書かないでおきました。ただ、スモーク発生装置の搭載については追記しています(とある資料で確認できたため)。

次は主要構造について書いてみるつもりです。

ああ、恥かしながら長らく気づかなかったのですが、ASM-2の制式要綱の用途の項目にはこう書かれているのですね。

1.用  途  93式空対艦誘導弾(以下,誘導弾という。)は,戦闘機(以下,搭載母機という。)に搭載し,主として侵攻する戦闘艦艇を攻撃し,その防空能力を無力化するために使用するものである。

引用元: 制式要綱 93式空対艦誘導弾


つまり、用途としてはASM-3と丸被りなわけです(ASM-3はパッシブレーダーによる個艦識別能力を持つ)。ASM-2が戦闘艦、特に広域エリア防空艦をターゲットにしているというのは銘記しておくべきでしょう。

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