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2023年09月15日

航空事業部は何故AAM-4を選んだのか

■各国が続々とAIM-120を採用する中、日本は独自開発したAAM-4の装備を選択した

■AAM-4の選択は航空事業部のアクティブホーミング誘導ミサイル化を10年遅らせたとの批判もある

■当時、巡航ミサイルの脅威に晒されていた航空事業部はAIM-120には満足できなかったのであろう




ネット上で文谷先生がAAM-4Bの調達について辛辣に批判しておりました。

防衛省の合理的な説明がつかない、「国産兵器」と「米国製」のダブル購入
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/329118

小松基地で展示されたAAM-4
重量や大きさは従来のAIM-7と同等(投下特性をAIM-7と合わせている)
AAM-4.jpg
画像引用元: 日本語版ウィキペディアのShiftさん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107674464による

AAM-4の開発時は、管理人は開発元(GM2室)に近いところにいた訳ですが、AAM-4導入にに当たって、航空事業部から「AAM-4買うんでAIM-120要りません。」と内局へ一筆入れています。つまり、完全に退路を断ってAAM-4導入を邁進した訳です(実際には後に飛行教導隊の運用研究で120発程度のAIM-120を購入している)。

F-16の翼端に搭載されるAIM-120
AAM-4に比べて小型で軽量(約2/3)なAIM-120は写真のようにSRMランチャに搭載可能で汎用性が高い。
900px-AIM-120_AMRAAM.jpg
画像引用元: Staff Sergeant Vince Parker (USAF) - http://www.defenselink.mil/photos/Dec1998/981228-F-6082P-996.jpg, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2130562による

といことで、航空事業部の非常に強い意志が無ければAAM-4じゃなくてAIM-120装備化の芽もあったことになります。それ程までに航空事業部はAAM-4を推していました。

航空事業部がAAM-4推しだった理由は一体何だったのでしょうか。

参考までに当時(90年代中頃)、開発メーカーが配布していたXAAM-4のパンフレットにはXAAM-4の特徴として以下のように書かれています。

(1)長い射程---攻撃範囲を広げ、先制攻撃を可能とする。

(2)撃ち放し性---母機生存性を高める。

(3)長いスタンドオフレンジ---母機生存性を高める。

(4)多目標同時対処能力---保有航空機の効率的運用を可能とする。

(5)高いECCM性---強度の電子戦環境下でも対処する。

(6)高い被発見性---進行に対する防御が探知されなければより効率的な運用が可能となる。

(7)大きい撃破能力---航空機だけでなくASM等小型目標も撃破する。

(8)超低空目標対処能力---低高度目標についても対処可能である。


引用元:XAAM-4 新中距離空対空誘導弾 開発メーカー配布パンフレット


このパンフに依るとAAM-4は以下だと言ってるわけです。管理人が特に重要と考えるものを赤字にしています。

長射程
・撃ちっ放し性
・多目標同時攻撃
・ECCM能力
・LPI(Low Probability of Intercept、低傍受可能性)

・高い撃破能力(SSKP)
・超低空目標対処


以上の点を鑑みると、航空事業部がこのミサイルに何を期待しているか薄らと見えてくると思います。
そして管理人的に考えて、このミサイルが主に想定した目標は以下じゃないかと思います。

・超低高度を飛翔する低RCSの巡航ミサイル

・高高度を高速で飛翔するASM

・強力なジャマーを伴った敵攻撃機

どうでしょうか。AIM-120は非常に優れたミサイルですが以下の点についてAAM-4は優位性があると考えます。

・高い誘導精度と大きな弾頭重量(AIM-120のほぼ倍)による高い撃破率

・高度な被探知性(AIM-120では発射母機からの指令誘導波を捉えられて早めの回避行動を取られた)

・高いECCM性(AAM-4では特殊な送信方法を用いることにより効率的に妨害成分を排除)

以上から、AAM-4は航空事業部が求めていた能力を具現化したものだったと言えます。

F-35の導入により航空事業部の空軍化が推進され、空対空ミサイルに求められる能力も変わってくると思われます。その場合は各国が保有し、アップデートも早く、より汎用性が高いAIM-120の方が重視されてくるかもしれません。ただ、AAM-4は中SAM改や新艦対空誘導弾、次期中距離空対空誘導弾にしっかりと遺伝子は残しました。そこは強調しておきたいと思います。

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タグ:AIM-120 AAM-4
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