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2024年04月04日

艦載ミサイルは何が違う

■陸上向けミサイルの艦載化には安全性の向上が必須

■最近のミサイルには不感型(IM)ロケットモータがよく使われる

■LOVAとIMによりミサイルの安全性は大幅に高まる



JGSDF_Type_03_Chū-SAM_Kai.png

米国ホワイトサンズ・ミサイル実験場での03式中距離地対空誘導弾 (改)の発射
画像引用元: 防衛装備庁 - https://www.mod.go.jp/atla/soubi_system.html, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=113530740による

文谷先生が開発中の艦対空誘導弾について私見を述べてらっしゃいます。

国産ミサイルは本当に使い物になるのか? 防衛省・新導入の艦対空誘導弾「A-SAM」によぎる一抹の不安

管理人はA-SAMの前身であるXRIM-4では若干の係わりがあったので、こちらの内容については一部異論があるのですが、ミサイルの艦載化について以下の部分については特筆すべきでしょう。

ただ、軍艦での利用には不安が残る。陸上向けミサイルの転用なので本質的に軍艦に向いてはいない。例えば海軍型の発射器の規格と相性が悪い。必須となる艦船攻撃モードの実装も怪しい。

引用元: 国産ミサイルは本当に使い物になるのか? 防衛省・新導入の艦対空誘導弾「A-SAM」によぎる一抹の不安
https://news.yahoo.co.jp/articles/bd0291df85b737099f01a42c39f297c060a99c2a?page=1


陸上向けミサイルと艦載ミサイルの違いを語るうえで、よく語られるのが安全性に対する要求の違いです。艦載ミサイルは狭い艦内で取り扱われることから、陸上で運用される物以上に安全性を高めなくてはなりません。その中でよく聞かれるのがLOVA化とIM化です。

LOVA(Low Vulnerability)は一言でいえば誘爆対策です。本邦のミサイルではASM-2の弾頭がLOVA化の先鞭を着けたことが良く知られています。具体的に炸薬はPBX(Polymer bonded explosive)系を採用し、以下のような過酷な試験を行っています。

 スレッド試験
 地上でロケットを使って高速で滑走して目標へ衝突させ、爆発しないかどうか確認する。

 殉爆試験
 弾頭を一定間隔で複数配置し、その内の一つを爆発させて誘爆しないかどうか確認する。

 熱感度試験
 燃焼させた軽油の上に弾頭を吊るし、何度で爆発するか確認する。

なお、ロケットモーターの推進薬にもLOVA化が行われており、熱や摩擦、衝撃に強いことが要求されます。

LOVA化は陸上のミサイルにも普及しつつあるのですが、艦載ミサイルで特筆すべきこととしてIM化が進んでいることが挙げられます。

IM(Insensitive munitions)は不感化とも呼ばれ、一言で言えばわざと壊れ易くすることで安全性を高める方策です。

IM化の代表例として Steel strip laminateが挙げられます。これは薄い鋼鈑を樹脂で接着しながら円筒状に巻いていくもので、その中に推進薬を入れます。

Steel strip laminateを使ったロケットモーターケースの製造
laminate_strip.jpg
画像引用元: 英国Roxel社 https://www.roxelgroup.com/en/competencies-uk/

火災や被弾した際は、ストリップの接着が溶けることによりモーターケースは原型を留めずにバラバラになります。そうすることで推進薬はむき出しの状態となり、例え着火したとしてもただ単に燃えるだけで、推進力を得てミサイルが飛び出すような恐れは無くなります。

SSLモーターケースを用いて、はっきりとIM化を謳っているミサイルとして代表的なものはMBDA社のBimstone2があります。

Brimstone Sea Spear missile


LOALで撃っていると思われるが、発射された3発のミサイルがそれぞれ近接した3つの別々の目標に命中していることに注目。

今後、ミサイルのLOVA化とIM化はプラットフォームの枠を超えて大幅に進むと思われ、シーカーや弾頭、誘導装置等に比べると目立たない分野ですが、注目すべき技術でしょう。

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