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2020年11月19日
【健康への貢献】伝統的な日本食
日本人の平均寿命は伸び続け、長寿国として知られています。日本人は寿命が長いだけでなく、自立して生活できる期間を示す健康寿命も長くなっています。日本人が健康長寿である理由のひとつは、伝統的な日本食です。日本食は、お米を主食とし、魚や大豆製品、野菜などの食材、みそやしょう油といった調味料が伝統的に使われています。日本食の健康食としての要因は、健康維持に有益な魚や大豆製品、野菜などを数多く摂取することによるものと考えられます。
日本食は、戦後数十年を経て大きく変わってきました。お米の消費が半分に減り、肉や油脂の消費が、おおよそ5倍になっています。これは日本食が、高度経済成長期以降、急速に欧米化してきたからです。この欧米化に伴い、脂質を過剰摂取するために動脈硬化症、糖尿病などの生活習慣病が顕著に増加し、大きな問題となっています。すなわち、日本食は健康的と言われていますが、現代の日本食よりも欧米化前の伝統的な日本食の方がより、健康上有益であると考えられます。
伝統的な日本食は、近年の日本食と比較して、魚介類や大豆製品、野菜、果実、海藻、みそなどの調味料の使用量が多く、使用している食材の種類も豊富でした。このことは、単一の食材に過度な期待を抱き、特定の食材のみを大量に摂取するのではなく、魚介類はじめさまざまな種類の食材を摂取することが、健康維持に有益であることを示しています。
食習慣を見直すことで、日本食の健康に対する便益を効率よく取り入れることが可能となります。
日本人の平均寿命は伸び続け、長寿国として知られています。日本人は寿命が長いだけでなく、自立して生活できる期間を示す健康寿命も長くなっています。日本人が健康長寿である理由のひとつは、欧米と異なる特徴的な食生活のためと考えられています。日本の食事は、世界から健康食として注目され、「和食 日本人の伝統的な食文化」として、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
日本食は、お米を主食とし、魚や大豆製品、野菜などの食材、みそやしょう油といった調味料が伝統的に使われています。近年ではここに肉や乳製品、油脂、果実も加わり、多種多様な食材を摂取しています。日本食の健康食としての要因は、健康維持に有益な魚や大豆製品、野菜などを数多く摂取することによるものと考えられます。
日本食は、欧米と比べて、食材の多様さやさまざまな調理法が特徴となり、食材の持つ風味と鮮度を大切にしています。お米をはじめ、魚や大豆製品、野菜、きのこ類、海藻などさまざまな食材が使用されています。特に魚や海藻、大豆製品が豊富です。このような特徴は、東南アジアの国々とも共通点がありますが、一方で日本食は、肉や油脂、香りの強い香辛料の使用が少ないという相違点があります。新鮮な食材と豊富な水で、食材の持つ風味を最大限に生かした味付けが重視されています。
味付けは塩をはじめ、かつお節や昆布などをからとったうま味を豊富に含んだだし、大豆などを麹で発酵させたしょう油やみそが特徴です。日本酒や米酢などの米発酵調味料も使用され、甘みにはみりんや砂糖が使用されます。特に家庭では菜種油やごま油などの植物油を使い、牛脂やラードなどの動物性油脂はほとんど使用されません。このように日本食には、魚や大豆製品、野菜など多種多様な成分が少しずつ含まれており、これが健康維持に寄与していると考えられています。
日本食には魚が多く使用されています。特に青魚は、多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)を多く含み、心血管疾患や炎症性疾患、メタボリックシンドロームを予防するなど有益な効果が報告されています。一方で、 EPAとDHAは分子内に多くの二重結合を持つため、試験管ではリノール酸やオレイン酸と比べて、非常に酸化されやすくなります。
老化の進行には酸化ストレスが大きく関与しています。酸化ストレスとは、酸化反応により引き起こされる体にとって有害な作用のことで、活性酸素と抗酸化物質、抗酸化酵素とのバランスとして定義されています。ここでいう酸化とは、何らかの分子に酸素原子が結合することです。地球をとりまく大気には、酸素が約21%含まれており、呼吸をすることでこの酸素を取り入れ、食品を食べることにより糖質や脂質、たんぱく質などの栄養素を体内に取り込んでいます。取り込んだ栄養素からエネルギーをつくるためには、栄養素を燃やすこと、つまり酸化が必要になります。しかし、酸化は体の中の全体で起こっているため、酸化によって細胞が傷つけられることがあります。これが酸化ストレスです。
発生した酸化ストレスに対し、活性酸素を除去する能力が追い付かない状況になると、酸化ストレスがたまっていくことになります。その原因は、ストレスや紫外線、酸化された食べものなどを摂取することなどがあります。過度な運動も酸化ストレスを高める原因となります。
マウスを用いたある研究によると、加齢により生体内で酸化ストレスが促進され、加えて多価不飽和脂肪酸を摂取することで、酸化ストレスがさらに促進されることが報告されています。よって、魚の多価不飽和脂肪酸の摂取が、生体内の酸化ストレスを増加させ、老化を促進し、寿命を短縮する可能性は十分考えられます。人においても,多価不飽和脂肪酸の摂取で酸化ストレスの上昇が報告されています。よって、この結果だけから判断すると多量の多価不飽和脂肪酸の摂取は、注意が必要であることが考えられます。一方、マウスを用いた研究において、多価不飽和脂肪酸の摂取は、腫瘍や肝臓への脂質蓄積の抑制が顕著に認められています。このことから、抗酸化物質のビタミンEなどと一緒に多価不飽和脂肪酸を摂取することで、これらの酸化をコントロールしながら、多価不飽和脂肪酸の有する効果をのみを享受できるのではないかと考えます。
日本人の平均寿命は延び続け、長寿国となりました。日本人は寿命が長いだけでなく、自立して生活できる期間を示す健康寿命においても長いことが知られています。日本を世界有数の長寿国に導いた要因としては、欧米諸国と異なる独自の食生活の影響が大きいと考えられます。
日本人の食事は、お米を中心に、魚や大豆製品、野菜などの伝統的な食材に、肉や乳製品、果実などが加わり多様性にあふれています。また、摂取するたんぱく質や脂質は、良質で新鮮な魚介類の割合が高く、欧米諸国とは異なっています。近年、日本人の食事は世界から健康食として注目されており、人を対象とした調査では、日本人の食事が健康に好影響を及ぼすことが報告されています。
日本からアメリカなど海外への移民を調査した研究では、日本人は外国人に比べて動脈硬化症を発症する年齢は遅くなりますが、海外で育った二世は一世である親に比べ動脈硬化の発症が若年化し、三世四世になると外国人との差がほとんどなくなることが報告されています。がんの罹患率を調べた研究でも同様の結果が得られています。これは、親の世代が日本の食習慣を続けているのに比べ、その子孫は欧米の食生活に同化したためと推測されています。このように、日本人の移民が欧米の食事を摂ると、生活習慣病が増加し寿命が縮むという研究報告から、日本人の食事は長寿を導く健康食であると考えられます。
日本食は、戦後数十年を経て大きく変わってきました。お米の消費が半分に減り、肉や油脂の消費が、おおよそ5倍になっています。これは日本食が、高度経済成長期以降、急速に欧米化してきたからです。この欧米化に伴い、脂質を過剰摂取するために動脈硬化症、糖尿病などの生活習慣病が顕著に増加し、大きな問題となっています。すなわち、日本食は健康的と言われていますが、現代の日本食よりも欧米化前の伝統的な日本食の方がより、健康上有益であると考えられます。
このようなことから、近年では欧米型の現代の食生活が見直され、生活習慣病の予防を期待できる伝統的な日本食の価値が評価されています。国内ばかりでなく、国外でも生活習慣病の危険回避に有効であるとして、伝統的な日本食が、取り入れられています。WHOの調査では、日本の健康寿命が世界有数になった理由として、日本食の脂質の少なさを指摘しています。しかし、WHOは脂質の少ない日本食が心臓疾患を少なくしている一方、近年日本人の食事は脂質の多い肉食に変化しつつあると警告しています。つまり、健康寿命が世界有数になった背景には、伝統的日本食の効果があり、近年の食事の欧米化によって、その効果が低下していることを示唆しています。
確かに日本人の健康寿命を延ばしてきた世代は、伝統的な日本食を食べており、現代の欧米化された食事を食べている世代ではありません。このことから、欧米化し生活習慣病の増加を導いた現代の日本食よりも、長寿世界一を導いた伝統的な日本食の方が、健康に有益であると考えられます。
伝統的な日本食には、健康の維持や老化の予防が期待されます。伝統的な日本食は、近年の日本食と比較して、魚介類や大豆製品、野菜、果実、海藻、みそなどの調味料の使用量が多く、使用している食材の種類も豊富でした。
このことは、単一の食材に過度な期待を抱き、特定の食材のみを大量に摂取するのではなく、魚介類はじめさまざまな種類の食材を摂取することが、健康維持に有益であることを示しています。これらの点を考慮し、食習慣を見直すことで、日本食の健康に対する便益を効率よく取り入れることが可能となります。
日本人の平均寿命は伸び続け、長寿国として知られています。日本人は寿命が長いだけでなく、自立して生活できる期間を示す健康寿命も長くなっています。日本人が健康長寿である理由のひとつは、伝統的な日本食です。日本食は、お米を主食とし、魚や大豆製品、野菜などの食材、みそやしょう油といった調味料が伝統的に使われています。日本食の健康食としての要因は、健康維持に有益な魚や大豆製品、野菜などを数多く摂取することによるものと考えられます。
日本食は、戦後数十年を経て大きく変わってきました。お米の消費が半分に減り、肉や油脂の消費が、おおよそ5倍になっています。これは日本食が、高度経済成長期以降、急速に欧米化してきたからです。この欧米化に伴い、脂質を過剰摂取するために動脈硬化症、糖尿病などの生活習慣病が顕著に増加し、大きな問題となっています。すなわち、日本食は健康的と言われていますが、現代の日本食よりも欧米化前の伝統的な日本食の方がより、健康上有益であると考えられます。
伝統的な日本食は、近年の日本食と比較して、魚介類や大豆製品、野菜、果実、海藻、みそなどの調味料の使用量が多く、使用している食材の種類も豊富でした。このことは、単一の食材に過度な期待を抱き、特定の食材のみを大量に摂取するのではなく、魚介類はじめさまざまな種類の食材を摂取することが、健康維持に有益であることを示しています。
食習慣を見直すことで、日本食の健康に対する便益を効率よく取り入れることが可能となります。
2020年11月18日
【海水汽水淡水からの恵み】水産物の機能性
しじみは古くから肝臓に効く滋養食品として知られ、二日酔いの朝にしじみのみそ汁は、経験的に伝えられてきた民間療法の定番です。
中国の薬物書の古典「本草綱目」には、お酒の飲み過ぎで弱った肝臓を助け、血液中に含まれるビリルビンという成分が身体の組織に沈着し、肌や白目が黄色く染まって見える黄疸に効果があることが、記されています。日本でも江戸時代に黄疸の治療薬として用いられていました。
しじみを煮出して抽出し、濃縮した成分を主に顆粒状に加工します。栄養ドリンク剤に配合することもあります。
しじみは、メチオニンやタウリンなどを多く含み、弱った肝臓を修復し、強化することが報告されています。昨今の研究によると、しじみに含まれるアミノ酸の一種であるオルニチンは、肝臓で生成されるアンモニアの排出をサポートしています。 肝臓は摂取したアルコールの分解を担う器官のため、二日酔い対策にはオルニチン と言われる所以となっています。ビタミンB群も多く、特にビタミンB12の含有量は、魚介類の中で、しじみが最も高くなります。ビタミンB12には造血作用があり、貧血に有効で、脳神経にも働き、記憶力や集中力にも影響を与えます。そのほかにイノシトールというビタミン様物質が多く、肝臓に脂肪が蓄積することを防ぎます。しじみの呈味成分であるコハク酸は、胆汁の分泌を促進し、コレステロールの増加を抑制します。
ビタミンB12は水溶性のため、しじみを調理する場合、成分は煮汁に流れ出ることになります。しじみの身を食べるより、煮汁を飲む方が肝臓には効果的です。その点で、煮汁を煮詰めて有効な成分を濃縮したしじみ抽出物は効率的です。
また、土用しじみ、寒しじみと言われるように真夏と真冬に味が良くなります。栄養的にもこの頃が一番です。
※お試しとその行動から得られる納得感
最近は効果を実感してもらうために、低額でお試しができることが増えています。大きな負担なく気軽に試すことができるので、気になるときは体験してみることもありです。体験して納得できれば、継続することや友人などにも紹介することで喜ばれます。まずは最初の行動です。行動しなければ、何も変わりません。行動することが何よりも一番の近道です。効果に満足できなければ、その知見をもとに、納得して次回は別のものを試すことができます。
生牡蠣を煮出して抽出し、濃縮したものが牡蠣抽出物です。牡蠣は有史以前からヨーロッパや中国で用いられており、日本でも縄文時代の貝塚から牡蠣殻が発見されています。洋食の歴史も古く、日本では17世紀に広島で始められました。
抽出物を使用した栄養ドリンク剤、乾燥粉末を使用した錠剤やカプセルなどが市販されています。牡蠣の殻はカルシウムの原材料として使用されています。
牡蠣は良質のたんぱく質やビタミン、ミネラルをバランスよく含み、滋養強壮に効果があるとされています。なかでも、タウリンやグリコーゲン、亜鉛の含有量が傑出しているのが特徴で、これらの成分が体内で作用することになります。タウリンは、肝臓の代謝を活発にするので、肝臓病の予防に効果的です。また、血圧を正常に保ち、血栓を予防する作用も認められています。グリコーゲンはぶどう糖が多数つながった構造で、エネルギー源となり、亜鉛は酵素などの反応に欠かせません。
タウリンの1日摂取量約1gをすべて乾燥牡蠣抽出物粉末で摂取するためには、20g必要になります。生の牡蠣の場合、タウリンはぬるぬるした部分に多く含まれているので、新鮮な牡蠣を生食することが、理想的な食べ方です。また、加工によって失われやすい亜鉛は、生の牡蠣にはたっぷり含まれており、1日1個の牡蠣で、亜鉛の1日の所要量をほぼとることができます。なお、5〜9月は牡蠣の産卵期間のため、中毒を起こしやすく、有効成分の含量も減少しています。
海藻はミネラルの宝庫と言われるようにヨウ素やカルシウム、鉄などが豊富で、ビタミンやたんぱく質をバランスよく含み、食物繊維が多く、低エネルギーであることから、特に中高年には欠かせない食品です。
こうした海藻の有効な特性は、栄養ドリンク剤や健康食品などに生かされています。ヨウ素の摂取量が全体的に不足しているアメリカでは、海藻がヨウ素補給食品として用いられています。
海藻は、甲状腺ホルモンの原材料となるヨウ素を特に多く含んでいます。新陳代謝を高める作用があり、老化の予防や子供の成長促進にも欠かすことができない成分です。海藻のぬめり成分であるアルギン酸やカラギーナン、フコイダンなどの硫酸化多糖類は、コレステロールを取り除き、血圧を下げます。そのほかにカルシウムは脳細胞の活性化や骨粗しょう症を予防します。また、海藻にエイコサペンタエン酸(EPA)が含まれていることも解明され、血液をさらさらにすることで流れを良くし、動脈硬化や心筋梗塞を予防します。
ワカメは比較的浅い海に育つため、葉緑素が多いことが特徴です。生ワカメは、ビタミンAやビタミンCを多く含み、緑黄色野菜と似た成分組成です。ヨウ素やカルシウムに加え、抗血栓作用のあるフコイダンも含んでいます。
ヒジキは100gあたり9.2gもの食物繊維を含んでいます。この食物繊維は不溶性のため、消化管に刺激を与えて、働きを活発にし、便秘の予防や改善に有効です。また、カルシウムや鉄を多く含み、イライラの防止や骨の強化、貧血にも効果を発揮します。
ノリはビタミンAやビタミンB群、ビタミンC、カルシウム、鉄などが多く、代謝機能を高め、老化の防止に良いと言われています。
モズクのぬめり成分アルギン酸は、コレステロールを取り込んで排出する効果があります。また、余分なナトリウムを排出して血圧を下げる働きがあります。
寒天の原材料は、天草やオゴノリです。カルシウムのほか、特に食物繊維を多く含みます。整腸作用に加え、コレステロールを減らし、高血圧や動脈硬化の予防に効果的です。
しじみは、メチオニンやタウリンなどを多く含み、弱った肝臓を修復し、強化することが報告されています。しじみに含まれるアミノ酸の一種であるオルニチンは、肝臓で生成されるアンモニアの排出をサポートしています。 肝臓は摂取したアルコールの分解を担う器官のため、二日酔い対策にはオルニチン と言われる所以となっています。ビタミンB群も多く、特にビタミンB12の含有量は、魚介類の中で、しじみが最も高くなります。ビタミンB12には造血作用があり、貧血に有効で、脳神経にも働き、記憶力や集中力にも影響を与えます。
牡蠣は、良質のたんぱく質やビタミン、ミネラルをバランスよく含み、滋養強壮に効果があるとされています。なかでも、タウリンやグリコーゲン、亜鉛の含有量が傑出しているのが特徴です。タウリンは、肝臓の代謝を活発にするので、肝臓病の予防に効果的です。また、血圧を正常に保ち、血栓を予防する作用も認められています。
海藻はミネラルの宝庫と言われるようにヨウ素やカルシウム、鉄などが豊富で、ビタミンやたんぱく質をバランスよく含み、食物繊維が多く、低エネルギーです。海藻は、甲状腺ホルモンの原材料となるヨウ素を特に多く含んでいます。新陳代謝を高める作用があり、老化の予防や子供の成長促進にも欠かすことができない成分です。海藻のぬめり成分であるアルギン酸やカラギーナン、フコイダンなどの硫酸化多糖類は、コレステロールを取り除き、血圧を下げます。そのほかにカルシウムは脳細胞の活性化や骨粗しょう症を予防します。
※お試しとその行動から得られる納得感
最近は効果を実感してもらうために、低額でお試しができることが増えています。大きな負担なく気軽に試すことができるので、気になるときは体験してみることもありです。体験して納得できれば、継続することや友人などにも紹介することで喜ばれます。まずは最初の行動です。行動しなければ、何も変わりません。行動することが何よりも一番の近道です。効果に満足できなければ、その知見をもとに、納得して次回は別のものを試すことができます。
2020年11月17日
【薬食同源】明治時代に普及したカレー
明治時代初期に日本へ初めて入ってきたカレーは、欧風カレーです。外国文化の憧れのまとは、先進国であるヨーロッパの国々のハイカラで高級な食文化でした。これに当時の上流階級や知識階級が傾倒していました。このような人々が、ヨーロッパで食べていた欧風にアレンジされたカレーを喜んで受け入れていました。
カレーの普及に寄与した人物の一人に「少年よ、大志を抱け」で有名なクラーク博士がいたことは、あまり知られておりません。明治9年に来日し、1年余りの期間、札幌農学校で教鞭をとったクラーク博士は、学校の寮の規則に「生徒は米食を食すべからず。ただし、ライスカレーはその限りに非ず。」という一文を加えました。その理由は、それまで肉食が禁止されていた日本人はどうしても栄養が不足し、体格が虚弱であると考え、欧米のようにパン食や肉食を奨励したからです。
そこには、日本人の主食である米への依存もありました。ご飯ばかり食べ、おかずを軽視していては、栄養不足につながります。そこで、日本人が好きなご飯に栄養価の高いカレーを組み合わせることで、受け入れられやすいと考えました。
また、カレーは肉を細かくして煮込み、香辛料が肉のくさみを消す効果があるので、肉食に慣れていない日本人に抵抗感が少ないことも、カレーを受け入れる土壌となりました。
日本の料理書で初めてカレーの名前が登場するのが、文明開化後間もない明治5年に出版された西洋料理指南という書物で、その調理法は今のカレーとはかなり異なっていました。原材料が煮上がってからカレー粉を入れ、さらに煮込み、食塩を加えて小麦粉を溶いて入れるとあります。これはまるで日本料理の片栗粉によるとろみづけと同じです。
また、原材料は鶏肉と魚介類が主体で、今の日本のカレーに欠かせないジャガイモやニンジン、玉ねぎは使われず、野菜はネギだけです。これは、ジャガイモやニンジンなどがいずれも日本で普及するのが、明治の北海道開拓が本格化してからのことであり、牛肉や豚肉は高価だったからです。
ところが、日露戦争が勃発したことで、状況は一変します。海軍の横須賀鎮守府が、兵士の食糧としてカレーを採用しました。1908年の海軍割烹術指南書には、カレーのつくり方が掲載されています。カレーは一皿でおかずとご飯、汁物を兼ねていて、かつ大人数分を一度につくることができ、栄養バランスに優れています。まさに軍隊の料理として最適でした。
このような理由から、一般生活の中では明治時代の後半までカレーは一部の洋食店の高級料理でしたが、兵士たちの間で広まりを見せます。軍隊でカレーの美味しさを知り、つくった経験のある地方出身者などが、除隊後地元でカレーを広めました。カレーの浸透の立役者は、軍隊でした。
昭和12年の陸軍省検閲済軍隊調理法にも、カレー汁が紹介されています。ここには原材料として牛肉やジャガイモ、ニンジン、玉ねぎを使っています。今のカレーの基本要素は、すでにこの時点で確立しています。
日本に上陸したカレーに欠かせないカレー粉は、C&Bカレーを筆頭とする輸入カレー粉が幅をきかせていました。
明治の終わり頃になると、国産カレー粉が発売されました。発売元はなんと薬屋です。当時カレー粉の原材料である香辛料は、いわば漢方薬でした。漢方薬専門の薬屋では、昔からこれらを取り扱っていました。故にカレー粉も販売するようになりました。明治38年に日本初のカレー粉を販売した大和屋(現在のハチ食品)は、大阪の薬問屋でした。同じく大阪の浦上商店(現在のハウス食品)も薬問屋でした。
日本で初めて純国産カレー粉の製造が始まったのは、大正12年に日賀志屋(ひがしや 現在のヱスビー食品)が、ヒドリ印を売り出してからです。ちなみに製品名の「ヒ」はSun、「ドリ」はBirdであることから、S&Bのブランド名はつくられました。
家庭にもカレー人気に火がついたことから、大正末から昭和にかけて、浦上商店がホームカレーやハウスカレーなる製品を相次いて販売しました。
日本風カレーの薬味の定番は、福神漬けです。どうしてカレーと福神漬けが結びついたのでしょうか。
明治時代に日本郵船の欧州航路の一等客室食堂で、メニューの中にカレーがありました。そこで偶然にも福神漬けが添えて出されていました。船内で福神漬けの添えられたカレーを食べ、これを気に入った人が、日本郵船のカレーと共に福神漬けを持ち込みました。その結果、福神漬けが知られるようになりました。
一方、カレーの付け合わせではなく、福神漬けが単体で全国に知られるようになったきっかけがあります。日清日露戦争のときに、軍隊の携行食糧として福神漬けが採用されており、その美味しさを知った兵士が、除隊後福神漬けを故郷へ持ち帰りました。
そもそも福神漬けとは、明治10年頃東京は池之端の酒悦(現在も酒悦)が考案した大根やナス、かぶ、うり、しそ、れんこん、なた豆を原材料とした漬物で、原材料が7種類であることから、七福神にあやかって福神漬けと名付けられました。
カレーの普及に寄与した人物の一人に「少年よ、大志を抱け」で有名なクラーク博士がいたことは、あまり知られておりません。明治9年に来日し、1年余りの期間、札幌農学校で教鞭をとったクラーク博士は、学校の寮の規則に「生徒は米食を食すべからず。ただし、ライスカレーはその限りに非ず。」という一文を加えました。その理由は、それまで肉食が禁止されていた日本人はどうしても栄養が不足し、体格が虚弱であると考え、欧米のようにパン食や肉食を奨励したからです。
明治時代の後半までカレーは一部の洋食店の高級料理でしたが、兵士たちの間で広まりを見せます。軍隊でカレーの美味しさを知り、つくった経験のある地方出身者などが、除隊後地元でカレーを広めました。カレーの浸透の立役者は、軍隊でした。
明治の終わり頃になると、国産カレー粉が発売されました。発売元はなんと薬屋です。当時カレー粉の原材料である香辛料は、いわば漢方薬でした。漢方薬専門の薬屋では、昔からこれらを取り扱っていました。故にカレー粉も販売するようになりました。
明治時代に日本郵船の欧州航路の一等客室食堂で、メニューの中にカレーがありました。そこで偶然にも福神漬けが添えて出されていました。船内で福神漬けの添えられたカレーを食べ、これを気に入った人が、日本郵船のカレーと共に福神漬けを持ち込みました。
2020年11月16日
【ナポリ発祥】イタリアが誇るピザ
パスタと並びイタリアが誇る料理は、ピザです。しかし、その語源となるとイタリアの権威ある料理辞書でもはっきりしていないと記されています。それでは、どのようにしてつくられるようになったのでしょうか。ピザの初期の形状は、現在でも食べるフォカッチャというのが有力な説です。イタリア中南部で食べられていたフォカッチャは、小麦粉に酵母、塩、オリーブオイルを混ぜて発酵させ、焼いた食べ物です。これにチーズや肉をのせ、あるいは南イタリアでは新鮮な魚介類をのせて食べていました。
ところが、これではピザに欠かせないトマトソースがありません。トマトソースが登場するのは、まだ先の時代です。16世紀は、やっとピザという言葉が書物に記されるようになりました。ただし、この時代でもピザは依然としてフォカッチャに近い食べ物でした。なにしろ、肝心のトマトソースが未だイタリアには登場していないからです。
南米原産のトマトがイタリアで栽培されるようになるのは、大航海時代の16世紀半ばです。当時はあくまで観賞用で、料理に使われるようになるのは18世紀になってからです。この時代になって、ようやく現在のピザにつながる系譜が始まりました。
ピザといえばイタリアのナポリです。1830年当時にはピザ専門店であるピッツェリアが登場しています。これは、ピザという料理が飲食店として成り立つようになったことを示しています。ナポリ近郊のヴェスビオス火山の火山岩を使った窯が登場したのもこの頃です。味や特徴でライバル店と競い合うほど、ピザは人気の料理となりました。
さらにピザに関する伝説もあります。ピザマルゲリータの誕生の物語です。名門サヴォイ家の出身で、イタリア国王ウンベルト1世の王妃であるマルゲリータが、ある時庶民の食べるピザに興味を持ちました。そこで、ナポリの有名ピッツェリアの店主を呼んで、食べることにしました。サヴォイ家といえば、イタリアを統一した王家です。そこで有名ピッツェリアの店主は、敬意を払ってトマトソースの赤、バジルの緑、モッツァレラチーズの白でイタリア国旗を表した特製ピザをつくって、マルゲリータに捧げました。そのため、このピザにピザマルゲリータという名前がつきました。
※お試しとその行動から得られる納得感
最近は味や香り、食感を実感してもらうために、普段よりもリーズナブルにお試しができることが増えています。大きな負担なく気軽に試すことができるので、気になるときは体験してみることもありです。体験して納得できれば、リピートや友人などにも紹介することで喜ばれます。まずは最初の行動です。行動しなければ、何も始まりません。行動することが何よりも一番の近道です。もしも、味や香り、食感に十分満足できなければ、その知見をもとに納得して次回は別のものを試すことができます。
【森山ナポリ】食材の美味しさをギュッと瞬間冷凍で閉じ込めた、本格ナポリピザをご家庭で!
ピザの発祥の地はナポリです。この地には、ナポリに伝わる伝統的なピザのつくり方を守るべくナポリピザ協会があります。
同協会が認めたナポリのピザを名乗るには、さまざまな条件をパスする必要があります。その条件とは、薪窯を使用すること、生地にオリーブオイルを練り込まないこと、生地は手でこねるか協会指定の機械を使うこと、生地は必ず手で延ばすことなどです。このほかにもさまざまな条件が設定されています。
日本ではイタリア風のピザが人気ですが、一般的に日本のイタリア風ピザの生地は、1枚の大きさが130〜150gです。たまに1枚180gというお店もあり、これはナポリと同様です。本場ナポリには、1枚180gのお店が多いです。さらに200g以上のピザを提供するお店もあります。
ピザとトーストを融合させたものが、ピザトーストです。日本で発明されました。このメニューはいつ頃から喫茶店などに登場したのでしょうか。
その背景には、ふたつの時代の潮流がありました。ひとつは、喫茶店の中で食事のメニューを取り入れたお店が人気を集めるようになったのが、昭和40年代以降であることです。もうひとつは、全国規模でピザブームが同じく昭和40年代にあったことです。
この2つのブームが重なり合って、昭和40年代半ば頃にピザトーストが喫茶店の新しいメニューとして登場しました。ただし、当時ピザトーストという名前はまだなく、パンを使ったピザなどと呼ばれていました。
それがピザトーストの名前で一世を風靡したのが昭和51年です。東京は日比谷にピザトーストを看板メニューにした喫茶店が、オープンしたのがきっかけでした。
ピザにタバスコをかけますか。多くの人はタバスコをかけて、ピザを食べています。しかし、ピザにタバスコをかけて食べるのは、世界中広しといえど、日本だけのようです。
タバスコの正式名称は、タバスコペッパーソースです。アメリカはマキルヘニー社製のホットソースで、日本ではホットソースの代名詞になっています。
なぜ日本人は、ピザにホットソースをかけたくなるのでしょうか。ホットソースが日本に伝わったのは、さまざまなアメリカの文化がなだれ込んできた戦後です。そのときにイタリア生まれのピザが、アメリカを経由して上陸しました。当時の日本におけるホットソースの輸入代理店が、日本に登場したばかりの喫茶店に売り込み、喫茶店の定番メニューであるスパゲッティやピザにホットソースが使われました。ここに日本独自のピザの食べ方が誕生しました。もちろん、そのホットソースはタバスコです。
なお、イタリアでは唐辛子などの辛み成分をオリーブオイルに移行させ、タバスコの代わりにさまざまな料理に使用しています。
パスタと並びイタリアが誇る料理は、ピザです。しかし、その語源となるとイタリアの権威ある料理辞書でもはっきりしていないと記されています。それでは、どのようにしてつくられるようになったのでしょうか。ピザの初期の形状は、現在でも食べるフォカッチャというのが有力な説です。イタリア中南部で食べられていたフォカッチャは、小麦粉に酵母、塩、オリーブオイルを混ぜて発酵させ、焼いた食べ物です。
当時サヴォイ家といえば、イタリアを統一した王家です。そこで有名ピッツェリアの店主は、敬意を払ってトマトソースの赤、バジルの緑、モッツァレラチーズの白でイタリア国旗を表した特製ピザをつくって、王妃マルゲリータに捧げました。そのため、このピザにピザマルゲリータという名前がつきました。
ピザの発祥の地はナポリです。この地には、ナポリに伝わる伝統的なピザのつくり方を守るべくナポリピザ協会があり、薪窯を使用すること、生地にオリーブオイルを練り込まないこと、生地は手でこねるか協会指定の機械を使うこと、生地は必ず手で延ばすことなどさまざまな条件が設定されています。
ピザとトーストを融合させたものが、ピザトーストです。日本で発明され、昭和40年代以降に喫茶店を中心に普及しました。
多くの人はタバスコをかけて、ピザを食べています。しかし、ピザにタバスコをかけて食べるのは、世界中広しといえど、日本だけのようです。
※お試しとその行動から得られる納得感
最近は味や香り、食感を実感してもらうために、普段よりもリーズナブルにお試しができることが増えています。大きな負担なく気軽に試すことができるので、気になるときは体験してみることもありです。体験して納得できれば、リピートや友人などにも紹介することで喜ばれます。まずは最初の行動です。行動しなければ、何も始まりません。行動することが何よりも一番の近道です。もしも、味や香り、食感に十分満足できなければ、その知見をもとに納得して次回は別のものを試すことができます。
【森山ナポリ】食材の美味しさをギュッと瞬間冷凍で閉じ込めた、本格ナポリピザをご家庭で!
2020年11月15日
【成長】健康に関連する食品市場の動向
健康に関連する特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメントなどのいわゆる健康食品は、2019年も成長を持続し、食による健康促進に貢献しています。高齢化や健康志向を追い風に同市場は、1兆4,500億円という巨大な規模に成長しました。2020年は、免疫機能向上への関心が高まることに伴い、新需要が発生しつつあります。
1990年代に制度が発足した特定保健用食品(トクホ)市場は、生活習慣病対策などに対応する市場であり、国が健康強調表示を許可承認する独自の制度として誕生しました。昨今では健康志向の浸透により、一大市場を形成し、通販の分野も含め需要を拡大し続けています。
機能性表示食品制度は、2015年4月にアベノミクスでの成長戦略のひとつとして始動しました。多額の費用や厳格な審査が必要となる特定保健用食品(トクホ)とは異なり、研究結果や論文などの科学的根拠を自己責任のもと示すことで、申請が可能となり、消費者庁で受理されれば、パッケージ上で機能性を明記することができます。
健康に関連する特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメントなどのいわゆる健康食品は、2019年も成長を持続し、食による健康促進に貢献しています。6年目となる機能性表示食品は拡大を続け、特定保健用食品(トクホ)及び栄養機能食品と合わせ、制度型健康食品としてさまざまな健康ニーズに対応しています。高齢化や健康志向を追い風に同市場は、1兆4,500億円という巨大な規模に成長しました。2020年は、先行き不透明なものの免疫機能向上への関心が高まることに伴い、新需要が発生しつつあります。
2019年の市場は、機能性表示食品が2桁増を継続しており、特定保健用食品(トクホ)も前年以上の伸びを見せ、市場規模を拡大させました。機能性表示食品は、登録数が3,000に迫り、金額規模も急伸しています。小売業や食品メーカーによる継続的な提案や価値訴求、情報発信が功を奏し、特に大きなボリュームを占める清涼飲料及び乳製品では、小売業でも必須製品に位置付けられ、需要に対応しています。日本健康栄養食品協会の調査によると、2019年の特定保健用食品(トクホ)市場は、前年比約0.9%増の6,493億円となり、7年連続で6,000億円台を維持しています。このことは、消費者の健康志向の強さを改めて証明しています。販売チャネルは、スーパーやコンビニ、ドラッグストアのいずれも堅調に推移しています。
1990年代に制度が発足した特定保健用食品(トクホ)市場は、生活習慣病対策などに対応する市場であり、国が健康強調表示を許可承認する独自の制度として誕生しました。国際的にも注目された中、国内の健康志向の高まりに伴い、1999年に市場規模で2,000億円を突破すると、2年後の2001年には倍増となる4,000億円に到達しました。昨今では健康志向の浸透により、一大市場を形成し、通販の分野も含め需要を拡大し続けています。
特定保健用食品(トクホ)の用途別の構成比は、整腸が2019年も59.5%と最大規模を誇っています。2015年から増加傾向で、3,400億円を超える乳酸菌を主軸に、オリゴ糖や食物繊維などのニーズにも対応しています。中性脂肪及び体脂肪は構成比24.4%となり、2019年は前年比4.2%増の1582億円に拡大しています。そのほかにコレステロールや血糖値関連は、大きく減少している一方、血圧や歯、肌は堅調に推移し、骨やミネラルは大きく増加しています。
2020年の市場動向としては、製品そのものの価値に加え、生活習慣病予防などと結びつけた価値の訴求が必要となります。既存消費者の囲い込みはもちろんのこと、高価格帯の製品が主流なため、お試しを含めた消費にいかに直結できるかがカギを握ると考えられます。
機能性表示食品制度は、2015年4月にアベノミクスでの成長戦略のひとつとして始動しました。特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品に続く保健機能表示制度に位置付けられます。多額の費用や厳格な審査が必要となる特定保健用食品(トクホ)とは異なり、研究結果や論文などの科学的根拠を自己責任のもと示すことで、申請が可能となり、消費者庁で受理されれば、パッケージ上で機能性を明記することができます。
機能性表示食品は、特定保健用食品(トクホ)と比較して、売場は完全に構築されていませんが、参入企業は依然増加傾向にあります。初年度となった2015年こそ模索状態が続いきましたが、生鮮分野での登録製品が誕生したことに加え、缶詰や冷凍食品など特定保健用食品(トクホ)にはない分野での製品化などもあります。初年度450億円の市場規模は、2016年に1,300億円、2017年に1,750億円、2018年に2,000億円を突破すると、2019年も2桁成長を継続しました。
6年目を迎える機能性表示食品は、2019年の出荷ベースで2,600億円に到達しています。届出登録数も2020年5月の時点で3,000件に迫り、おおよそ1年間で4割以上増加しています。既存の有力ブランドの機能性表示食品へのリニューアルや新製品投入などが通年で需要を喚起することで、特飲料では定番化が続きました。
有力ブランドの機能性表示食品化は、2019年もさらに加速し、「お〜いお茶 濃い茶」に代表されるブランドが仲間入りし、需要を喚起しました。当初の課題であった受理スピードの遅さは、システムの見直しや人員増強、データベース化などで改善されました。2017年からの登録品数の劇的な増加は、参入企業の増加とシステム改善によるところが大きく、2020年中には4,000品目到達も視野に入ります。目玉とされていた生鮮分野での製品化も順調に増加し、モヤシやトマトなどの野菜、ミカンやバナナなどの果物が主軸となりますが、魚介類や肉類でも登録製品が実現しています。缶詰や冷凍食品などでも登録製品が生まれるなど、裾野は拡大しています。
一方で特定保健用食品(トクホ)と比べた場合、認知度が低いことや売場の構築がなされていないなどの課題もあります。制度の根幹にある科学的根拠の自己責任に対する考え方も、消費者側では認識不足が否めず、今後の啓蒙活動が必要となります。また、広告の虚偽誇大問題などは業界と行政が一体となり、改善していかなければならない問題です。
健康に関連する食品を購入している人に対して実施した、ある調査会社のアンケートによると、30歳代以上の体に関する悩みとしては、まず疲労が挙げられます。続いて眼の疲れ及び視力低下といった眼の悩みです。女性に関しては、肌のハリやシワ、シミに対する悩みが高くなります。健康に関連する食品に対する1カ月あたりの支出金額は、2,000〜3,000円超となります。
健康に関連する食品を摂取する目的としては、健康の維持増進が40〜50%を占め、特定の健康機能よりも、日頃の健康を維持するために摂取していることが多いです。また、疲労回復は、30〜40歳代で高い傾向が見られ、日頃の疲れを解消する目的で摂取することが多いです。女性の場合は、肌のハリやシワ、シミが30%前後を占め、男性の場合は、整腸が20%前後を占めています。
摂取している健康に関連する食品の主な成分としては、30〜40歳代がマルチビタミン・やミネラル類、50歳代以上はDHA及びEPAが1位という結果です。その他にビタミンCやビタミンB群、50歳代以上においては、ブルーベリーがランクインしています。
健康に関連する特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメントなどのいわゆる健康食品は、2019年も成長を持続し、食による健康促進に貢献しています。高齢化や健康志向を追い風に同市場は、1兆4,500億円という巨大な規模に成長しました。2020年は、先行き不透明なものの免疫機能向上への関心が高まることに伴い、新需要が発生しつつあります。
1990年代に制度が発足した特定保健用食品(トクホ)市場は、生活習慣病対策などに対応する市場であり、国が健康強調表示を許可承認する独自の制度として誕生しました。昨今では健康志向の浸透により、一大市場を形成し、通販の分野も含め需要を拡大し続けています。
機能性表示食品制度は、2015年4月にアベノミクスでの成長戦略のひとつとして始動しました。特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品に続く保健機能表示制度に位置付けられます。多額の費用や厳格な審査が必要となる特定保健用食品(トクホ)とは異なり、研究結果や論文などの科学的根拠を自己責任のもと示すことで、申請が可能となり、消費者庁で受理されれば、パッケージ上で機能性を明記することができます。
2020年11月14日
【体を整える】断食のもたらす影響
断食というと痩身をイメージする人が多いかもしれません。しかし、断食の目的は痩せることではなく、体を整えることと宗教上での修行にあります。
昨今は断食のもたらす身体への影響が見直され始め、健康法や疾患予防法としての断食に注目が集まっています。断食は体内を整えることができることから、多くの人が行っています。
断食というと痩身をイメージする人が多いかもしれません。しかし、断食の目的は痩せることではなく、体を整えることと宗教上での修行にあります。
昨今は断食のもたらす身体への影響が見直され始め、健康法や疾患予防法としての断食に注目が集まっています。断食は体内を整えることができることから、多くの人が行っています。その過程で、体脂肪を燃焼するため、結果的に痩せることがあります。
断食は、紀元前から行われてきました。そのルーツは、宗教における修行の一環としての断食です。キリスト教や仏教、イスラム教、ヒンズー教などさまざまな宗教の宗派のもと、断食が精神修行として行われていました。現在でも有名なのは、イスラム教におけるラマダンではないでしょうか。ヒジュラ暦と呼ばれる暦の第9月におよそ1カ月間、イスラム教徒の人々は断食を行います。1カ月間という長い期間、飲まず食わずのため、大丈夫と思われるかもしれませんが、断食が行われるのは日の出から日没までの間です。日が沈んでから翌朝までは、飲食しても大丈夫です。日が沈むと街は、大勢の人々で賑わいます。皆が買い求めるのは、ナツメヤシなどの軽食です。レストランなどもラマダンの間は、深夜遅くまで営業しています。昨今では、夜にたくさん食べ過ぎて、ラマダンで太ったという人も続出しているようです。
古来より宗教行為として行われてきた断食ですが、昨今は断食のもたらす身体への影響が見直され始め、注目が集まっています。断食を行うことで、体中ではどのような変化が起こるのでしょうか。
アメリカの大学が2014年に発表した研究結果によると、断食を行えば古い免疫細胞が一掃され、新たな免疫細胞が産生され始めることから、断食には健康効果があること明らかにされました。免疫細胞が産生されることで心血管の状態が改善され、持久力が向上するほか、血圧の低下や炎症の改善といったメリットがもたらされると考えられています。ただし、研究結果よるとこの利点を享受するためには、3日間にわたって断食しなくてはなりませんが、年に1〜2回実践すれば十分とのことです。
昨今の研究によると、断食は老化を遅らせ、さまざまな疾患を予防することが報告されています。体には約60兆個の細胞があり、この細胞は日々老化しています。老化の原因は、細胞内のたんぱく質や遺伝子が酸化により損傷すること、不要なたんぱく質が蓄積すること、老化に関与する遺伝子が働くことなどが挙げられます。断食は、細胞を老化に導く原因を取り除き、寿命を延ばす働きがあることが明らかになってきました。
栄養を取り除いた環境で細菌や昆虫を育てたところ、通常よりも最大で4倍程長く生き延びたという報告もあります。これらの生物が栄養のない状態に陥ると、細胞内にある変化が起こることが知られています。それは、細胞を損傷させる活性酸素を取り除くスーパーオキシドジスムターゼという酵素や細胞を保護するヒートショックプロテインというたんぱく質の量が増加するということです。これらによって細胞を老化から守る働きが強化され、寿命が延びると考えられています。
人が断食を行うと、外からエネルギーを取り込めなくなるため、まず体中にあるぶどう糖を優先的に消費します。ぶどう糖は血液中を巡っているほか、肝臓に蓄えられています。24時間ほど断食を行うと、血液中のぶどう糖は20%ほど低下し、肝臓にあるぶどう糖も枯渇し始めます。ここで引き起こされることは、インスリンやインスリン様成長因子の減少です。インスリンは、血液中のぶどう糖濃度が上がると分泌され、ぶどう糖をグリコーゲンや中性脂肪として蓄えるよう促し、血糖値を一定に保つ働きがあります。断食中はインスリンが減少し、同様にインスリン様成長因子も減少します。このインスリンとインスリン様成長因子は、細胞の老化を抑えるたんぱく質を抑制することで、老化を促進することが知られています。つまり、断食でインスリンとインスリン様成長因子が減少すると、老化を抑えるたんぱく質が活性化し、細胞の老化を抑制します。
細胞の中にあるたんぱく質を分解する現象をオートファジーといいます。生命活動を営む上で、たんぱく質は欠かせません。断食によって、たんぱく質の原材料となるアミノ酸が不足すると、必要なたんぱく質をつくることができなくなります。そのため、体内に存在するあまり必要とされないたんぱく質をアミノ酸まで分解し、そのアミノ酸でより必要とされるたんぱく質をつくります。このオートファジーによって、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβと呼ばれる不要なたんぱく質が、分解されることがあります。このように不要なたんぱく質が除去されることで、老化の予防につながります。
断食を行うと、脳の一部の領域で脳由来神経栄養因子という物質の量が増えることが分かっています。脳由来神経栄養因子は、神経細胞の栄養として知られています。脳由来神経栄養因子は、神経細胞を新たに作り出し、神経細胞同士のつながりを強化、神経細胞の死滅を予防する働きがあります。そのため、記憶や認知機能の向上が期待されています。
断食というと痩身をイメージする人が多いかもしれません。しかし、断食の目的は痩せることではなく、体を整えることと宗教上での修行にあります。昨今は断食のもたらす身体への影響が見直され始め、健康法や疾患予防法としての断食に注目が集まっています。断食は体内を整えることができることから、多くの人が行っています。
アメリカの大学が2014年に発表した研究結果によると、断食を行えば古い免疫細胞が一掃され、新たな免疫細胞が産生され始めることから、断食には健康効果があること明らかにされました。免疫細胞が産生されることで心血管の状態が改善され、持久力が向上するほか、血圧の低下や炎症の改善といったメリットがもたらされると考えられています。
また、断食は老化を遅らせ、さまざまな疾患を予防することが報告されています。体には約60兆個の細胞があり、この細胞は日々老化しています。老化の原因は、細胞内のたんぱく質や遺伝子が酸化により損傷すること、不要なたんぱく質が蓄積すること、老化に関与する遺伝子が働くことなどが挙げられます。断食は、細胞を老化に導く原因を取り除き、寿命を延ばす働きがあることが明らかになってきました。
さらに断食を行うと、脳の一部の領域で脳由来神経栄養因子という物質の量が増えることが分かっています。脳由来神経栄養因子は、神経細胞を新たに作り出し、神経細胞同士のつながりを強化、神経細胞の死滅を予防する働きがあります。そのため、記憶や認知機能の向上が期待されています。
このように断食は、体にさまざまな影響を与えます。専門家による指導を受けた上で、適切な断食を実施してみてはいかがでしょうか。
2020年11月13日
【たしなむ程度】お酒の適量
適量のお酒は、楽しい気持ちを増加させる効果や緊張感の緩和、良好な対人関係を促す効果をもち、ストレスを解消させる働きがあります。
お酒を飲むと気分がよくなるのは、アルコールが大脳新皮質の活動を鈍くするからです。それによって、感情や本能を司る大脳辺縁系の働きが活発になり、精神が高揚します。
節度ある適度な飲酒は、1日あたり純アルコールに換算して20g程度とされています。このくらいの量であれば、ほどよくお酒を楽しめます。
飲んだお酒に含まれるアルコールは、胃から約20%、小腸から約80%が吸収されます。それから血液に入り、全身にいきわたります。体内のアルコールの大部分は、肝臓で代謝されます。肝臓でアルコールは、アセトアルデヒドを経て酢酸まで分解されます。酢酸は血液によって全身をめぐり、筋肉や脂肪組織などで水と二酸化炭素に分解されて体外に排出されます。摂取されたアルコールの2〜10%は、そのまま呼気や尿、汗として排泄されます。
血液に入ったアルコールは、脳まで到達します。するとアルコールが、脳の網様体に働きかけ、麻痺させます。その結果として、酔った状態になります。
アルコール摂取量の基準とされるお酒の1単位とは、純アルコールに換算して20gです。1単位を各種アルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、35度の焼酎は1合(180ml)、ワインは1杯(120ml)が目安となります。
お酒の適量には個人差があり、また同じ人であってもその日の状態によって、酔いの具合が異なるため、一概には表せませんが、厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、節度ある適度な飲酒は、1日あたり純アルコールに換算して20g程度とされています。このくらいの量であれば、ほどよくお酒を楽しめるということです。
体重60kgの人が、1単位のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは3〜4時間体内に留まります。2単位の場合は、アルコールが体内から消失するまで6〜7時間かかります。個人差もあるため、体質的にお酒に弱い人はもっと長い時間がかかります。そのため、深夜まで飲むと、翌朝起床後まで体内にアルコールが残っていることから、二日酔いとなります。
アルコールの血中濃度と酔いの状態は、以下の通りです。
適量のお酒は、楽しい気持ちを増加させる効果や緊張感の緩和、良好な対人関係を促す効果をもち、ストレスを解消させる働きがあります。
お酒を飲むと気分がよくなるのは、アルコールが大脳新皮質の活動を鈍くするからです。それによって、感情や本能を司る大脳辺縁系の働きが活発になり、精神が高揚します。 さらにビールやワイン、ウイスキーなどの香りにはリラックス効果があります。
※お試しとその行動から得られる納得感
最近は味や香り、食感を実感してもらうために、普段よりもリーズナブルにお試しができることが増えています。大きな負担なく気軽に試すことができるので、気になるときは体験してみることもありです。体験して納得できれば、リピートや友人などにも紹介することで喜ばれます。まずは最初の行動です。行動しなければ、何も始まりません。行動することが何よりも一番の近道です。もしも、味や香り、食感に十分満足できなければ、その知見をもとに納得して次回は別のものを試すことができます。
諸説ありますが、お酒の効用を医学的に裏づける報告によると、適量のお酒を適正に飲んでいる人は、お酒を全く飲まない人や大量に飲む人に比べて、死亡率が低くなっています。日本で男性を対象とした研究でも、平均して2日に日本酒換算で1合(純アルコールでおおよそ20g)程度お酒を飲む人が、死亡率が最も低いとする結果が報告されています。諸外国でも、女性を含め、近似した研究結果が出ています。このことを示すグラフの形状から、Jカーブ効果と呼ばれています。 ただし、毎日大量に飲んでいる人やアルコール依存症患者は、J の文字が示す通り死亡率が極端に高くなっています。これは、アルコールの心筋梗塞や狭心症などに対する予防効果が要因と考えられています。アルコールが心臓病を予防する善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを抑制するからです。
飲んだお酒に含まれるアルコールは、胃から約20%、小腸から約80%が吸収されます。それから血液に入り、全身にいきわたります。血液に入ったアルコールは、脳まで到達します。するとアルコールが、脳の網様体に働きかけ、麻痺させます。その結果として、酔った状態になります。
アルコール摂取量の基準とされるお酒の1単位とは、純アルコールに換算して20gです。1単位を各種アルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、35度の焼酎は1合(180ml)、ワインは1杯(120ml)が目安となります。厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、節度ある適度な飲酒は、1日あたり純アルコールに換算して20g程度とされています。このくらいの量であれば、ほどよくお酒を楽しめるということです。
適量のお酒は、楽しい気持ちを増加させる効果や緊張感の緩和、良好な対人関係を促す効果をもち、ストレスを解消させる働きがあります。
お酒を飲むと気分がよくなるのは、アルコールが大脳新皮質の活動を鈍くするからです。それによって、感情や本能を司る大脳辺縁系の働きが活発になり、精神が高揚します。 諸説ありますが、お酒の効用を医学的に裏づける報告によると、適量のお酒を適正に飲んでいる人は、お酒を全く飲まない人や大量に飲む人に比べて、死亡率が低くなっています。
※お試しとその行動から得られる納得感
最近は味や香り、食感を実感してもらうために、普段よりもリーズナブルにお試しができることが増えています。大きな負担なく気軽に試すことができるので、気になるときは体験してみることもありです。体験して納得できれば、リピートや友人などにも紹介することで喜ばれます。まずは最初の行動です。行動しなければ、何も始まりません。行動することが何よりも一番の近道です。もしも、味や香り、食感に十分満足できなければ、その知見をもとに納得して次回は別のものを試すことができます。
2020年11月12日
【長期的視野と複合思考】食品産業の戦略
少子高齢化による人口減少社会において、どうすれば事業活動を継続できるのでしょうか。どのように需要を掘り起こせるのでしょうか。世界市場にどのような形で存在感を示せるでしょうか。
食品産業が抱える課題は、日本の産業全体が抱える課題の縮図とも言えます。人口減少のペースに合わせて需要が減少すれば、日本の食品産業の規模は、2050年には現在の4分の3になってしまいます。そのような状況に陥らないための企業戦略が必要となります。
重要なことは、製品開発やマーケティングを通じた需要創造によって売上を増やすことです。国内市場における需要創造は、健康志向や高齢化など日本の経済社会の変化に応じて新たな製品を投入すること、従来の製品に新たな価値を見いだして提供することが考えられます。日本の食品産業は、新たな製品を次々と投入する製品開発力に溢れています。食品産業が、強みと機会を土台にして新しい需要、新しい消費を喚起すれば、日本経済全体にも貢献できる可能性があります。
日本経済の活性化のために必要なことは、今までなかったような製品やサービスが提供され、新たな需要を創り出すことです。食品産業は、日本経済が抱える需要不足という閉塞を打ち破る可能性を秘めています。1世帯あたりの1ヵ月間の実質の食料消費支出は2011年の6.7万円から2016年の7.3万円と約9%増加しています 。消費者庁の調査でも、現在お金を掛けているものとして挙げられたのは、食べることが69.9%で最も多く、今後お金を掛けたいと思っているものも食べることが50.8%で最も多い状況です。
日本の食品産業は、さまざまな食材や調理法といった独特な食文化に育まれた歴史や伝統を背景に他国にない製品を生み出してきました。また、世界で最も敏感で厳しい消費者に鍛えられてきています。さらに高齢者の増加や個食化は今後世界の多くの地域が直面する市場変化ですが、日本はこれらを既に経験し、対応してきています。
こうした強みを活かせば、日本市場で育てられた製品を海外に売り込み、さらに日本向け製品を土台に現地市場の好みに応じて、製品開発を進め、提供することで海外市場、とりわけアジアで急増する新たな富裕層をターゲットにした市場を開拓することができます。輸出により、日本で製造されることの魅力が増せば、世界に向けて食品を送り出すだけでなく、日本のマザー工場やモデル店舗で培った技術を海外に展開することも可能になります。
人材確保が他の産業に増して深刻な食品産業にとって、効率的な生産は費用削減だけでなく、稼働率を維持し安定的に生産を続けるためにも待ったなしの課題です。働き方改革もこの観点から、積極的に進める必要があります。手の込んだ労働集約性の比較的高い生産工程が、必要な製品を効率的に生産することは、どの国も実現できていません。新たな技術の応用は、消費者の潜在的な需要をつかむ売り方の革新にも繋がります。電子商取引による製造販売など新たな手法を採用することで、製造業者が直接消費者の需要動向を把握し、製品開発や生産調整に活かすことも可能です。
食品産業は、近年頻発する自然災害、経営者の高齢化に伴う廃業、不公正な取引、生産過程における細菌やカビ、異物などの混入など、さまざまな事業リスクにさらされています。需要があるのに生産を継続できなくては、出荷できません。ほかにない製品を作る技術を有していても、廃業しては活かすことができません。生産費用を削減しても、それに応じて価格も下がってしまえば利益は増えません。利益が増えなければ新たな製品開発や生産性向上のための投資も増やせません。製品の安全性に対する信頼が一度損なわれてしまえば、ブランド価値が毀損し、従前のような支持を顧客から取り付けるためには何倍もの努力が求められます。競争力強化の取り組みに加え、こうしたリスクを避け、つかんだ機会を逸しないための整備も欠かせません。
食品産業の戦略、つまり需要を引き出す新たな価値創造、海外市場の開拓、自動化や働き方改革による労働生産性の向上について、具体的に取り組むべき事項はどのようなことでしょうか。
付加価値の高い製品やサービスを消費者からの支持を得て提供できるようにするには、潜在化している新しい市場を見いだし、その魅力を消費者へ訴求することが必要となります。
食品産業の製品やサービスは、以前人気があったもの、海外で人気があったものが突然今になって日本で人気を獲得することもあり、技術や流行からの積み上げだけでは必ずしも魅力ある製品やサービスを生み出せません。すなわち、食品産業の流行は、不確実かつ不連続です。それが食品産業の難しいところでもあり、また挑みがいのあるところでもあります。
付加価値を高めるという意味で、どの程度の資金を使ってどの程度の価値を上げたかという価値の見える化を図り、独自に設定した評価指標に対する貢献度を算定し、人事の評価に反映させていく仕組みづくりも必要となります。
新しい価値を創造するためには、多様で能力あふれる人材を確保することが不可欠です。専門性や経験が異なれば生活スタイルも異なってきます。様々な経験や専門性を有する人材を集め、能力を発揮できる環境を整備しなければなりません。
食品の技術開発は、必ずしも売れる製品につながる訳ではありません。積み上げで新しいものを創り出す技術開発を不連続な食品産業の流行に合わせて進めることは困難です。潜在的な市場のニーズを見据えて高度な技術開発を進めれば、顧客から強い支持を得て、他社の追随を許さない製品を生み出すことも可能です。食品産業の企画や開発の担当者は、食品化学や栄養学などの知識を有した者が多いですが、技術開発力を高めるためには、そのほかの専門性を有する者を採用すること、産学も含め異業種とも交流してオープンな研究環境を整えることなどが求められます。
2016年に日本政策金融公庫が実施した調理時間に対する考え方のアンケート調査によると、今より減らしたいが20〜50歳代の女性では5割となっています。家族で食べるために、市販の弁当や総菜などの調理済み食品を購入する理由を聞いたアンケート調査によると、20〜50歳代の女性の半数以上が調理する時間がないと回答しています。このことから、簡便性を追求した製品開発が望まれていることがうかがえます。
新規製品でなくとも、日本の食品産業の強みとなる生産工程と品質をアピールする製品を従来のラインアップに加えることで、培ったブランドを土台にしつつ、企業としてのブランドを強化することも可能です。より高級な製品を加えることで、それに準じる製品の消費も喚起することにもなります。
健康への寄与を訴える際には、信頼性のある情報発信が求められます。法律に基づき機能性を表示できる保健機能食品には、特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品、機能性表示食品があり、信頼性のある情報発信をこれらの表示制度を活用して行うことも有効です。
食品の魅力は、包装や容器の性能向上により鮮度保持の期間や賞味期限を伸ばすことでも高められます。日本の包装技術は高水準であり、安全性や保存性を高める包装及び容器を用いることで、海外輸出による需要開拓が可能となります。
新しい切り口にて、製品の魅力を訴えることで新しい市場を開拓することも可能です。消費者に対して、別の視点からの説明を加えることで同じ製品により高い価値を消費者が感じる手段となります。
消費者に定着したロングセラーの派生製品を展開することは、従来の支持層から追加的な需要を喚起するとともに、従来商品のブランド価値をさらに高めることにつながります。全く新しい製品を開発するよりも、リスクは少なくなります。
食品産業において海外事業の強化に向けた積極姿勢が高まっています。拡大する海外市場においては、日本の食品の強みや独自性を訴求しつつ、現地の食文化に応じて需要開拓を図る必要があります。
一方、海外市場の食品に対する規制を正確に把握すること、温度管理された物流網を構築することを食品メーカーが自ら行うことは困難です。日本政策金融公庫の調査で、今後海外展開を強化したいと回答した企業にその課題を聞いたところ、現地の法律や商習慣情報の不足をあげた企業が62.2%と最も多い状況でした。持続的な輸出に成功した事業者ほど輸出を自ら手がけることはなく、適切なパートナーと連携し、自らは製品開発や生産に専念できる状態を作り出しています。
海外市場の開拓に向けたプロモーションは、海外で行わなければならない訳ではありません。訪日外国人旅行者の滞在中の消費だけでも相当な規模となりますが、旅行者が帰国した後に同じ食品を楽しみたいと思えば輸出の増加にもつながります。国内での販売は輸出ほどの負担やリスクはありません。まず、国内で外国人旅行者による嗜好を確認し、自らの製品を訴求することから始め、輸出の準備を進めることも可能です。
人材確保がますます困難となる中、特に中小企業や小規模企業においては、自動化やICT化、人材育成による効率的な作業の実現により生産性向上を図る取り組みが重要となります。
食品産業において生産現場の労働力不足が強く認識される中、自動化によりこれを克服しようとする意識は高まっています。自動化に際し、ロボットなどの機械が食品製造の現場になかなか導入されなかったことには理由があります。形状が不安定な食品はロボットには扱いにくく、食品の製造ラインは流れが早いことから、一部だけ自動化してもライン全体でその成果が現れにくい状況です。実際のところ、大規模投資に対する投資効率の懸念が示されることが少なくありません。さらに高い安全性や衛生管理が求められます。さびることなく、細菌やカビに汚染されず、部品や潤滑油などが食品に混入せず、温度変化に強いといった要件を満たさない機械は、食品工場に導入することはできません。一方、包装後の箱詰めや梱包、出荷などロボットの導入にそれほどの障壁がない工程もあります。
人材確保がますます困難になる中、IoTやビッグデータ、AIなどの技術を活用した省人化の取り組みの重要性も増しています。食品メーカーが需要予測の精度を向上させること、卸売業が在庫管理の精度を向上させること、卸売業が小売POS等により消費需要動向を正しく把握することなどで、食品ロスの削減にも期待されています。
労働力不足の中で、雇用を引き寄せるためには働き方改革が不可欠との認識は、食品産業の間で広がっています。優れた技術や企画立案能力を有する人材をひき付けるためには、勤務時間の柔軟化、女性及び高齢者に配慮した職場環境の改善、ICT化、自動化を含めた設備投資を積極的に進めるなど、働く場としての魅力や生産性を高めることが必要です。
少子高齢化による人口減少社会において、どうすれば事業活動を継続できるのでしょうか。どのように需要を掘り起こせるのでしょうか。世界市場にどのような形で存在感を示せるでしょうか。
食品産業が抱える課題は、日本の産業全体が抱える課題の縮図とも言えます。人口減少のペースに合わせて需要が減少すれば、日本の食品産業の規模は、2050年には現在の4分の3になってしまいます。そのような状況に陥らないための企業戦略が必要となります。
その戦略は、需要を引き出す新たな価値創造と海外市場の開拓、自動化や働き方改革による労働生産性の向上です。需要を引き出す新たな価値創造とは、製品開発やマーケティングを通じた需要創造によって売上を増やすことです。国内市場における需要創造は、健康志向や高齢化など日本の経済社会の変化に応じて新たな製品を投入すること、従来の製品に新たな価値を見いだして提供することが考えられます。日本の食品産業は、新たな製品を次々と投入する製品開発力に溢れています。食品産業が、強みと機会を土台にして新しい需要、新しい消費を喚起すれば、日本経済全体にも貢献できる可能性があります。海外市場の開拓について、日本の食品産業はさまざまな食材や調理法といった独特な食文化に育まれた歴史や伝統を背景に他国にない製品を生み出してきました。また、世界で最も敏感で厳しい消費者に鍛えられてきています。さらに高齢者の増加や個食化は今後世界の多くの地域が直面する市場変化ですが、日本はこれらを既に経験し、対応してきています。こうした強みを活かすことで、日本市場で育てられた製品を海外に売り込み、さらに現地市場の好みに応じて、製品開発を進め、提供することで海外市場を開拓することができます。自動化や働き方改革による労働生産性の向上については、人材確保が他の産業に増して深刻な食品産業にとって、効率的な生産は費用削減だけでなく、稼働率を維持し安定的に生産を続けるためにも待ったなしの課題です。働き方改革もこの観点から、積極的に進める必要があります。
2020年11月11日
【会社の価値観と存在意義】経営理念と企業理念
経営理念とは、企業の創業者や経営者が示す企業の経営や活動に関する基本的な考え方、価値観、思いを指しています。
経営理念は、つくって終わりではありません。社会や消費者、社員に理解してもらうため、根気よく浸透させていく必要があります。
経営理念という言葉は、抽象的なものです。企業ごとに異なる経営理念が掲げられているため、意味のイメージはできても正しく説明できる人は多くありません。経営とは、事業目的を達成するために継続的かつ計画的に意思決定を行い、実行に移し、事業を管理遂行することとされています。理念とは、ある物事についてこうあるべきという基本的な考え方、価値観、思いのことです。
良い経営理念とは、中身がしっかりしていること、自社の状況に適合していること、成長性を示唆していること、わかりやすいものであること、一貫性が保たれていること、社会貢献するものであることなどです。
経営理念を活用するメリットとしては、自社の向かう方向性をはっきりさせること、社員の意識や価値観が統一されることで一体感が醸成されること、一体感から社員のモチベーションが向上すること、自社に適した人材を採用することができることです。
強い企業づくりには経営理念は不可欠です。
企業理念は、経営理念と広い意味で取られれば同じですが、厳密にはニュアンスが若干異なります。経営理念は、企業の創業者や経営者が示す企業の経営や活動に関する基本的な考え方、価値観、思いを表しています。企業理念は、会社が大切にする考え方や価値観、存在意義を表したものです。全社員が共有し、会社における行動や意思決定の基準となるもので、経営理念を企業理念に反映させるのが一般的です。企業理念は、経営者が変わったとしても、長期にわたって受け継がれる不変的かつ持続的なものです。
・日清食品
日清食品の企業理念の1つ目は、「食足世平(しょくそくせへい)」です。つまり、食が足りてこそ世の中が平和になるということです。食は人間の命を支える一番大切なものです。文化も芸術も思想も、すべては食が足りてこそ語れるものです。食のありようが乱れると、必ず国は衰退し、争いが起こります。食が足りて初めて世の中が平和になるのです。日清食品グループの事業は、人間の根源から出発しています。
2つ目は、「食創為世(しょくそういせい)」です。すなわち、世の中のために食を創造するということです。企業にとって最も大切なものは、創造的精神です。創造とは、新しい発想と技術によって革新的な製品を生み出す力です。食を創り、世の為につくすことで、日清食品グループは、世の中に新しい食の文化を創造し、人々に幸せと感動を提供します。
3つ目は、「美健賢食(びけんけんしょく)」です。美しく健康な身体は賢い食生活からという意味です。空腹を満たし、味覚を満足させたいと思うことは、人間共通の欲求です。しかし、食に求められるのはそれだけではありません。美しい体をつくり、健康を維持することが、食品のもつ大切な機能です。美しく健康な体は賢い食生活からつくられます。日清食品グループは、食の機能性を追求し、世の中に賢食を提唱します。
4つ目は、「食為聖職(しょくいせいしょく)」です。食の仕事は、聖職であるということです。食は人々の生命の根源を支える仕事です。食の仕事に携わる者は、社会に奉仕するという清らかな心を持って、人々の健康と世界の平和に貢献していかなければなりません。食の仕事は聖職なのです。安全でおいしくて体にいい食品を世の中に提供していくことが、日清食品グループの使命です。
・味の素
味の素グループの理念は、「私たちは、地球的な視野にたち、"食"と"健康"、そして明日のよりよい生活に貢献します。」です。
味の素グループの事業目標は、「食関連事業、アミノ酸を中心としたファインケミカル事業・医薬品事業を経営の柱として、地球上の人々に貢献する世界企業をめざします。」です。事業姿勢は、「つねに お客様第一を心がけ、豊かな創造性とすぐれた技術により、安全で高品質な商品、サービスを提供します。」です。経営姿勢は、「お客様、株主、地域社会、取引先、社員等全ての利害関係者を尊重し、簡明迅速な意志決定と公正で透明性の高い経営を行うとともに、株主への適正な利潤の還元と永続的な企業価値の増大を図ります。」です。社会的役割は、「良き企業市民として責任を自覚し、社会との調和をはかり、その発展に貢献します。」です。企業風土は、「一人ひとりが、自らを高め、創造的で自由闊達な、活力ある集団をめざします。」です。
・桃屋
桃屋の企業理念は、良品質主義と広告宣伝主義です。「常にお客様のために、良品質な商品をお届けするとともに、お得意先様・仕入先様・社員・株主様、そして社会に対して良品質な会社でありつづけます。」、「粋であたたかい桃屋の味、おいしく楽しい桃屋の味をお伝えします。」です。
桃屋の使命は、「桃屋は、自然の恵みを大切に、安心安全で、おいしい商品を提供します。」、「桃屋は、伝統の食文化に新しい価値を添えて未来に継承します。」、「桃屋は、親しみと楽しさと感動を食卓にお届けします。」です。
・エスビー食品
エスビー食品の企業理念である「真の顧客満足の追求」とは、お客様の声にしっかりと耳を傾け、お客さまにとっての価値を知り、それに応え続けることであり、お客様の視点に立った企業活動をとり続けることです。そして、「お客様に満足していただくこと」が私達の何よりの喜びです。
エスビー食品3つのCSとは、顧客満足のConsumer Satisfaction、お得意先様をパートナーとし、すべての活動をお客様視点に立って展開する意のCommunication System、そして、お客さまの声と社員の絆を大切に。感動をキーワードとした社内外のコミュニケーションに努めるの意のCreative & Speedyです。物を作り出すメーカーとしての創造力と、お客さまの変化に応えていくための速度と柔軟性を重視しています。
経営指針は、SPICE & HERBのコーポレートシンボルのもと、スパイス・ハーブを核とすることで構造を変革し、盤石な企業基盤を作るです。豊かな可能性を持つ「スパイス & ハーブ」を核とし、心と身体に安らぎや潤いのある生活や新たな食文化の創造を通じて 皆様のお役に立ちたいというマインドを表現しています。
企業風土としては、社員の自律(自由・規律)を重視し、日頃の地道な努力を大切にしています。さらにさまざまな場面におけるコミュニケーションを大切にし、お客様に感動を与える新たな価値の創造をめざしています。
・永谷園
永谷園の企業理念は、「味ひとすじ」です。味ひとすじとは、「創意と工夫で商品を考え、創り出すこと」、「お客さま実感、満足していただく「おいしさ」を提供し続けること」、「食を通じて幸せで豊かな社会づくりに貢献していくこと」です。
企業行動指針は、以下の内容です。
1 商品・サービスの安全性の確保
永谷園グループは商品・サービスの安全性を確保することを全てに優先します。商品・サービスの安全性を確保するために、食品関連の各種法令の遵守はもとより、原材料購買から製造、流通、販売に関わる全ての段階において必要な安全基準を定め、これを遵守させるための各種チェック・システムを構築し運用します。
2 社会的規範の遵守
永谷園グループは、その事業活動にあたって法令その他の社会的規範を遵守し、公明かつ公正に行動します。社会的秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力に対しては、常に危機管理意識を持ち、組織的に毅然とした対応を徹底します。政治、行政との関係は、健全かつ正常な関係を保ちます。
3 企業情報の管理
永谷園グループは、社会とのコミュニケーションを重視し、事業活動に関わる、社会にとって有用な情報を適切かつタイムリーに開示します。法令、規則などに基づき必要とされる諸書類の作成を正確かつ明瞭に行い、それらを適正に管理、保管します。企業秘密情報は管理の徹底に努め、インサイダー取引規制等に反することのないよう、入手、利用、開示に際して、適正な内部管理を行います。
4 ステークホルダー(顧客、取引先、株主、社員等)の立場の尊重
永谷園グループはステークホルダーの立場を尊重し、長期的な信頼関係を築き、企業の発展につなげます。
5 環境問題への取り組み
永谷園グループは環境に関する法令などの遵守はもとより、環境保全を推進していくための体制を構築し、地球環境への負荷軽減に継続的に取り組みます。環境保全に配慮した開発・生産に取り組み「環境に負荷の少ない商品・サービス」を社会に提供します。廃棄物の削減、リサイクルの推進および省資源・省エネルギーに努め、目標を掲げ「環境問題へ真剣に取り組む事業所」を目指します。社員一人ひとりが前向きに環境問題を考え、「環境問題へ真剣に取り組む社員」としての誇りを持ちます。
6 社員の人格・個性の尊重
永谷園グループは、安全で働きやすい環境を確保するとともに、社員の人格、個性を尊重します。社員の主体性を重んじ、創造性を最大限発揮できる企業風土づくりに努めます。
7 知的財産の尊重
永谷園グループは、産業財産権、著作権、営業秘密などの知的財産の重要性を認識し、自らの権利の保護に全力を尽くすとともに、他者の権利も尊重します。
経営理念とは、企業の創業者や経営者が示す企業の経営や活動に関する基本的な考え方、価値観、思いを指しています。経営理念は、つくって終わりではありません。社会や消費者、社員に理解してもらうため、根気よく浸透させていく必要があります。
経営理念を活用するメリットとしては、自社の向かう方向性をはっきりさせること、社員の意識や価値観が統一されることで一体感が醸成されること、一体感から社員のモチベーションが向上すること、自社に適した人材を採用することができることです。
企業理念は、経営理念と広い意味で取られれば同じですが、厳密にはニュアンスが若干異なります。経営理念は、企業の創業者や経営者が示す企業の経営や活動に関する基本的な考え方、価値観、思いを表しています。企業理念は、会社が大切にする考え方や価値観、存在意義を表したものです。全社員が共有し、会社における行動や意思決定の基準となるもので、経営理念を企業理念に反映させるのが一般的です。企業理念は、経営者が変わったとしても、長期にわたって受け継がれる不変的かつ持続的なものです。
2020年11月10日
【アレニウスの式】反応速度の支配要因と食品への影響
化学反応とは、反応物の結合が切れ、原子間に新しい結合が形成し、生成物が生じることです。化学反応では、生成物をつくるときに、結合を1度切らなければならないので、結合エネルギーの大きい分子などは、化学反応が起こりにくくなります。新しい結合ができる際にも、分子の構造が複雑に絡み合っていると、立体的な障害のため、生成物が生成しにくいこともあります。したがって、化学反応は、すぐに終わることはなく、反応物にエネルギーを与えて、結合の切断や再結合しなければならず、ある程度の時間がかかります。
化学反応式における1つの物質に注目したとき、単位時間あたりのモル濃度の変化量をその物質の反応速度(reaction velocity)といいます。モル濃度を使う理由は、反応速度は体積の影響を受けるからです。大きい容器と小さい容器があれば、当然小さい容器の方が激しく反応が起こります。したがって、反応速度は、体積の影響を考えたモル濃度を使って表します。
化学反応を進行させるためには、化学結合を切るだけのエネルギーが必要になります。反応を進行させるためには、まずは反応物の粒子同士が衝突しなければなりません。しかし、反応物同士が衝突したからといって、必ず反応するとは限りません。多くの化学反応では、反応が起こるためには、ある一定以上のエネルギーを加えて、化学結合が切れやすい活性化状態にしなければなりません。加える最小のエネルギーを、一般的に活性化エネルギー(activation energy)といいます。活性化エネルギー以上の運動エネルギーを持たない粒子同士の衝突では、反応は進行しません。
したがって、反応物に活性化エネルギー以上のエネルギーを与え、反応速度を大きくするためには、一般的に以下が必要となります。
化学反応を進行させるためには、反応物同士の衝突が必要不可欠です。一般的に単位時間当たりに衝突する反応物の数が多いほど、反応速度は大きくなります。反応物が移動しやすい気体や溶液中の反応では、反応物の濃度を大きくすると、反応物同士が衝突する確率が大きくなるので、反応速度は大きくなります。
固体が関係する反応では、固体を細かくしていくと反応速度は大きくなります。これは、同質量では、塊状より粉末状の方が、表面積が著しく大きくて、互いに接触できる粒子の数が、極めて大きくなるためです。
温度を上げると、高い運動エネルギーを持つ割合が増加します。そのため、反応物同士が衝突したときに、活性化エネルギー以上の運動エネルギーを持った粒子の割合が増加します。温度が高くなると、活性化エネルギー以上のエネルギーを持つ反応物の数が、急激に増加します。多くの化学反応において、室温付近では温度が10 ℃上がるごとに、反応速度はおよそ2倍になります。
反応の前後でそれ自身は変化しないものの、反応速度を大きくするような物質を、触媒といいます。触媒は、反応物との間で、反応中間体をつくります。反応中間体から生成物ができるとともに、触媒が再生されます。触媒を加えると、反応の仕組みが変わって、活性化エネルギーが小さくなるため、活性化エネルギー以上の運動エネルギーを持つ分子の割合が増加します。触媒は、新たな活性化状態を作って、活性化エネルギーを小さくし、反応速度を大きくする効果があります。ただし、触媒は活性化エネルギーを小さくしますが、反応熱は変化させません。また、触媒は逆反応の活性化エネルギーも小さくするので、逆反応の反応速度も大きくなります。体内や食品産業で使用する酵素も触媒です。
実際の反応は、より複雑である場合が多く、いくつかの反応が組み合わさって進みます。
スウェーデンの科学者アレニウスが提唱したアレニウスの式は、ある温度での化学反応の速度を予測する式です。反応速度は、10℃上がる毎に2倍になります。
食品の賞味期限を設定するために、日本缶詰協会が設定する賞味期限策定根拠のひとつであるアレニウスの式に基づいた加熱加速度(虐待)試験を実施します。日本では、20℃を基準温度として、30℃で2倍、40℃で4倍、50℃で8倍の加速度で物質の反応が進むと考えて試験を行います。
食品の品質劣化は、温度や湿度、光、酸素などの影響を受け進行します。アレニウスの式に基づいて加熱加速度試験を実施し、食品の賞味期限を確認するために、油脂の酸化度や変質の程度を判定する酸価(AV)や過酸化物価(POV)、食品のアルカリ性や中性、酸性の程度を測定するpH値、味やにおい、外観を評価する官能検査、菌検査を行い、食品として可食か否かを判定します。
具体的には、非常食などの該当する食品を50℃の恒温槽などで保管します。半年間182.5日保管した場合、アレニウスの式により8倍相当の期間である1,460日となります。ここに安全係数0.7をかけ、1,022日となります。官能検査などをもとに問題なければ、この日数を賞味期限として、設定します。
多くの食品は、加熱処理により提供されます。この加熱工程において、食品中のたんぱく質の変性や食品原材料からの成分の溶出、メイラード反応をはじめとする化学反応など多くの反応が起こり、食品の呈味が形成されます。
スープやソースなど煮込む食品においては、長時間の加熱によって、特有の香り、風味が発現します。つまり、加熱により化学反応が加速し、香気成分や風味が増加します。みそやしょう油、パン、クッキー、焙煎コー ヒーなどの色や風味も、加熱や熟成過程で食品の成分同士の化学反応が起こり生成します。化学反応は高分子よりも低分子の成分の間で起こりやすくなります。 食品原材料に一般的に存在する低分子成分は甘味を呈す糖質、 たんぱく質から生じるアミノ酸やペプ チド類などです。した がって、食品を加熱すると最も起こり やすい反応であることから、温度を高くすることで反応を加速させます。
加熱は、消化を助けることにもつながります。吸水したお米を炊飯、魚や肉を火であぶる ことにより、高分子のでんぷんやたんぱく質が、未加熱の状態に比べ、分解されやすい構造に変化します。また、人の消化管で吸収されるためには、高分子をより小さな分子にする必要があり、 加熱は高分子のでんぷんやたんぱく質が消化酵素と接触しや すい構造に変化させます。
加熱は、寄生虫や微生物を死滅させる働きがある一方、発がん性の化合物が生成することもあります。家庭でも加熱により、微量ながら発がん性物質が生成しますが、がんになる程ではありません。しかし、表面のこげを意図的に食べることは避けたいところです。 欧米では、加熱した食品に発がん性のアクリルアミドが検出され、話題になりました。これは、ジャガイモに含まれるぶどう糖とアスパラギンというアミノ酸が、高温で加熱されて生じます。これは、加熱も度が過ぎると安全性を損なうことを意味しています。加熱のしすぎには、十分な注意が必要です。
化学反応とは、反応物の結合が切れ、原子間に新しい結合が形成し、生成物が生じることです。化学反応では、生成物をつくるときに、結合を1度切らなければならないので、結合エネルギーの大きい分子などは、化学反応が起こりにくくなります。
化学反応を進行させるためには、化学結合を切るだけのエネルギーが必要になります。反応を進行させるためには、まずは反応物の粒子同士が衝突しなければなりません。しかし、反応物同士が衝突したからといって、必ず反応するとは限りません。多くの化学反応では、反応が起こるためには、ある一定以上のエネルギーを加えて、化学結合が切れやすい活性化状態にしなければなりません。加える最小のエネルギーを、一般的に活性化エネルギー(activation energy)といいます。反応物に活性化エネルギー以上のエネルギーを与え、反応速度を大きくするためには、反応物の濃度を大きくする、温度を上げる、触媒を加えることです。
スウェーデンの科学者アレニウスが提唱したアレニウスの式は、ある温度での化学反応の速度を予測する式です。反応速度は、10℃上がる毎に2倍になります。食品の賞味期限を設定するために、日本缶詰協会が設定する賞味期限策定根拠のひとつであるアレニウスの式に基づいた加熱加速度(虐待)試験を実施します。日本では、20℃を基準温度として、30℃で2倍、40℃で4倍、50℃で8倍の加速度で物質の反応が進むと考えて試験を行います。
多くの食品は、加熱処理により提供されます。この加熱工程において、食品中のたんぱく質の変性や食品原材料からの成分の溶出、メイラード反応をはじめとする化学反応など多くの反応が起こり、食品の呈味が形成されます。また、加熱は、消化を助けることにもつながります。さらに加熱は、寄生虫や微生物を死滅させる働きがある一方、発がん性の化合物が生成することもあります。