2014年11月04日
「天皇皇后両陛下傘寿記念 第66回正倉院展」(2014年、奈良国立博物館)
奈良で開催中の奈良国立博物館で開催中の「天皇皇后両陛下傘寿記念 第66回正倉院展」に行ってきました。
正倉院の宝物の特徴はいくつか挙げられますが、まずは約9000件の宝物が正倉院という一つの場所で今日まで伝えられてきたということが言えます。
中国や朝鮮半島にも正倉院宝物と似たものが博物館などに保管されていますが、ほとんどが墓に納められた副葬品で、発掘をして出てきたものです。正倉院宝物は三つの倉で、杉の櫃ひつに収められて伝えられてきた「伝世品でんせいひん」。このため、出土品と比べ、とても保存状況が良好で、当時の技法や造形感覚などをそのままに近い状態で感じることが出来ます。
また、多彩なジャンルのものが伝わっており、宮廷や寺院での生活、寺院で行う法要の様子など、当時の暮らしぶりや宗教観についても、宝物からある程度復元していくことが出来ます。国家の最高権力者が使っていたものなので、当時の日本の国際的なレベルが分かってくるという意味でも貴重な資料となります。正倉院宝物は、シルクロードを通して西アジアなどから唐にもたらされた文化を受容して生まれました。そこで使われている文様や色遣いには、平安時代以降も形を変えながら使われているものもあります。日本文化の源流をうかがい知ることも出来るのです。
正倉院の校倉あぜくらの建物は三つの部屋に分かれ、どの倉に属しているかで宝物の由緒もわかります。
北倉は聖武天皇と光明皇后ゆかりの品。南倉は東大寺の倉として使われ、仏具類など。中倉は皇族や貴族が東大寺に献納した品々や、東大寺の文書類や武器武具類などが入っていました。
今回印象に残ったのは、まず「鳥毛立女屏風」。一つずつ女の人の表情やポーズが違います。色彩もまだ残っています。各扇とも樹下に豊かに髪を結い上げたふくよかな女性を一人配する構図で、第1扇から第3扇は立ち姿、第4扇から第6扇は岩に腰掛ける姿で表される。顔や手、着衣の袖口などに彩色が施され、着衣や樹木などには日本産のヤマドリの羽毛が貼り付けられていたらしいことが微細な残片からわかるとか。盛唐の風俗を反映した豊満な「天平美人」として名高い本屏風の出陳は平成11年以来15年ぶり。今回6扇のうち、第2・4・5・6扇の計4扇が出陳されています。ただ一番左側だけとても新しいのですね。修復したのでしょうか?
今回の出展宝物でも華やかなものの一つ「桑木阮咸くわのきのげんかん」は裏側に「東大寺」と書かれています。
会場の中ほどに来ると、「ビーン、ビーン」という不思議な音。桑木阮咸を実際に弾ひいた音色の録音が流れています楽器もまだ鳴らせるし、楽譜も残っていて、奈良時代の音楽が再現できるそうです。聞いてみたいな♪
「人勝残欠雑張」 人勝(じんしょう)は六朝(りくちょう)時代に中国・荊楚(けいそ)地方(中国南部)で人日(じんじつ)(正月7日)に行われた無病息災や子孫繁栄を願う行事に用いられた飾り物で、唐代には宮廷に取り入れられ流行したそうです。色絹や金箔を人や動物、植物の形に切って飾りとしたもので、子供の絵などとてもかわいく、きれいなデザインでした。
「伎楽面 崑崙」は、東大寺の大仏開眼会で伎楽が奉納された時に使われました。大仏殿前の広場で女性を追い回し、力士に連行されるユニークな役どころです。
伎楽面 酔胡従
聖武天皇ゆかりの品では、752年の大仏開眼会で履いた靴「衲御礼履のうのごらいり」や、金と銀の絵の具で文様を描いた肘つき「紫檀木画挾軾したんもくがのきょうしょく」など。直線状の細長い天板に高価な紫檀、4本の脚には象牙をあしらったもので、精緻で豪華な技巧にはため息さえ出るほど。 象牙は東南アジアに生息するアジアゾウのものらしいです。これは、天板の両端もすごい。ここにも紫檀やツゲ、黒柿、緑に染めた鹿の角を組み合わせた木画を巡らせてあり、側面や脚部は、金銀泥で描かれた草花の間を蝶が舞っています。
まばゆい輝きを放つのは、正倉院宝物で唯一の四角い鏡「鳥獣花背方鏡」。鏡背にあしらわれた葡萄唐草文と表情豊かな獅子は、実に鮮やかで躍動的です。
正倉院宝物には、大仏開眼会のものなど、聖武天皇が亡くなる756年以前に納められたと思われる品が数多くあります。そこに聖武天皇の遺愛品が加わり、特別な宝物群になったのだそうです。
正倉院の宝物は宮内庁が整理してある宝物だけで9000点も あります。そのうち毎年公開されるのは60件から70件ですので、 正倉院を代表される有名なお宝でも一度展示されると、 次回は最低10年以上の期間を経ての展示となります。
故宮にも負けないほどの素晴らしい宝物。また、来たいなと思います。
正倉院の宝物の特徴はいくつか挙げられますが、まずは約9000件の宝物が正倉院という一つの場所で今日まで伝えられてきたということが言えます。
中国や朝鮮半島にも正倉院宝物と似たものが博物館などに保管されていますが、ほとんどが墓に納められた副葬品で、発掘をして出てきたものです。正倉院宝物は三つの倉で、杉の櫃ひつに収められて伝えられてきた「伝世品でんせいひん」。このため、出土品と比べ、とても保存状況が良好で、当時の技法や造形感覚などをそのままに近い状態で感じることが出来ます。
また、多彩なジャンルのものが伝わっており、宮廷や寺院での生活、寺院で行う法要の様子など、当時の暮らしぶりや宗教観についても、宝物からある程度復元していくことが出来ます。国家の最高権力者が使っていたものなので、当時の日本の国際的なレベルが分かってくるという意味でも貴重な資料となります。正倉院宝物は、シルクロードを通して西アジアなどから唐にもたらされた文化を受容して生まれました。そこで使われている文様や色遣いには、平安時代以降も形を変えながら使われているものもあります。日本文化の源流をうかがい知ることも出来るのです。
正倉院の校倉あぜくらの建物は三つの部屋に分かれ、どの倉に属しているかで宝物の由緒もわかります。
北倉は聖武天皇と光明皇后ゆかりの品。南倉は東大寺の倉として使われ、仏具類など。中倉は皇族や貴族が東大寺に献納した品々や、東大寺の文書類や武器武具類などが入っていました。
今回印象に残ったのは、まず「鳥毛立女屏風」。一つずつ女の人の表情やポーズが違います。色彩もまだ残っています。各扇とも樹下に豊かに髪を結い上げたふくよかな女性を一人配する構図で、第1扇から第3扇は立ち姿、第4扇から第6扇は岩に腰掛ける姿で表される。顔や手、着衣の袖口などに彩色が施され、着衣や樹木などには日本産のヤマドリの羽毛が貼り付けられていたらしいことが微細な残片からわかるとか。盛唐の風俗を反映した豊満な「天平美人」として名高い本屏風の出陳は平成11年以来15年ぶり。今回6扇のうち、第2・4・5・6扇の計4扇が出陳されています。ただ一番左側だけとても新しいのですね。修復したのでしょうか?
今回の出展宝物でも華やかなものの一つ「桑木阮咸くわのきのげんかん」は裏側に「東大寺」と書かれています。
会場の中ほどに来ると、「ビーン、ビーン」という不思議な音。桑木阮咸を実際に弾ひいた音色の録音が流れています楽器もまだ鳴らせるし、楽譜も残っていて、奈良時代の音楽が再現できるそうです。聞いてみたいな♪
「人勝残欠雑張」 人勝(じんしょう)は六朝(りくちょう)時代に中国・荊楚(けいそ)地方(中国南部)で人日(じんじつ)(正月7日)に行われた無病息災や子孫繁栄を願う行事に用いられた飾り物で、唐代には宮廷に取り入れられ流行したそうです。色絹や金箔を人や動物、植物の形に切って飾りとしたもので、子供の絵などとてもかわいく、きれいなデザインでした。
「伎楽面 崑崙」は、東大寺の大仏開眼会で伎楽が奉納された時に使われました。大仏殿前の広場で女性を追い回し、力士に連行されるユニークな役どころです。
伎楽面 酔胡従
聖武天皇ゆかりの品では、752年の大仏開眼会で履いた靴「衲御礼履のうのごらいり」や、金と銀の絵の具で文様を描いた肘つき「紫檀木画挾軾したんもくがのきょうしょく」など。直線状の細長い天板に高価な紫檀、4本の脚には象牙をあしらったもので、精緻で豪華な技巧にはため息さえ出るほど。 象牙は東南アジアに生息するアジアゾウのものらしいです。これは、天板の両端もすごい。ここにも紫檀やツゲ、黒柿、緑に染めた鹿の角を組み合わせた木画を巡らせてあり、側面や脚部は、金銀泥で描かれた草花の間を蝶が舞っています。
まばゆい輝きを放つのは、正倉院宝物で唯一の四角い鏡「鳥獣花背方鏡」。鏡背にあしらわれた葡萄唐草文と表情豊かな獅子は、実に鮮やかで躍動的です。
正倉院宝物には、大仏開眼会のものなど、聖武天皇が亡くなる756年以前に納められたと思われる品が数多くあります。そこに聖武天皇の遺愛品が加わり、特別な宝物群になったのだそうです。
正倉院の宝物は宮内庁が整理してある宝物だけで9000点も あります。そのうち毎年公開されるのは60件から70件ですので、 正倉院を代表される有名なお宝でも一度展示されると、 次回は最低10年以上の期間を経ての展示となります。
故宮にも負けないほどの素晴らしい宝物。また、来たいなと思います。