2014年11月04日
酒井抱一 江戸情緒の精華〜奈良でアートの一日♪
大和文華館(奈良市)で江戸時代後期の絵師、酒井抱一(1761〜1828)の作品を一堂に集めた特別展「酒井抱一 江戸情緒の精華」(11月16日まで)が開かれているので行ってきました。大和文華館は今回で2回目です。
姫路藩主酒井雅楽頭(うたのかみ)家に生まれた抱一は絵画をはじめ書、俳諧、能、茶の湯など多彩な教養を身に付けた当時の一流の文化人でした。
この展覧会では、浮世絵美人画や華やかな金屏風、繊細な銀屏風、自作の句を添えた水墨、流麗な書などが出展され、抱一のさまざまな魅力をまとめて味わえる展覧会です。
抱一は江戸琳派の祖ともいわれます。尾形光琳(1658〜1716)に私淑し、光琳百回忌に遺墨展を開くなど顕彰活動に力を注いだからです。
この展覧会にも光琳の「波涛図屏風」を写した作品や百回忌に合わせ光琳の菩提寺、京都・妙顕寺に奉納した「観世音図」などが出品されています。
「三夕図」 三幅対 個人蔵 、「隅田川雪月花図」 三幅対 個人蔵、などは瀟洒な江戸情緒の世界。
「五節句図」 五幅対 大倉集古館蔵 はやまと絵風。
「夏秋草図屏風」二曲一双(重要文化財、上の作品)は光琳筆の「風神雷神図屏風」の裏面に描かれていたもの(現在は別々に表装)。銀地に雨に打たれる夏草と風になびく秋草を描いたもので「風雨草花図」とも呼ばれます。
広い余白と動きに富む草花が特徴で、華やかさはやや影を潜め繊細で叙情的な雰囲気がある名品です。作品の依頼主は11代将軍徳川家斉の父、一橋治済。
「四季草花金銀泥下絵和歌巻」は、光悦と宗達のコラボ作品をもとに描かれた作品で書も絵も抱一。抱一は光琳の影響を受けているのは明らかですが、今回この絵を拝見して、宗達にも関心があり影響を受けていたことがわかり面白かったです。また抱一の書というのはこれまであまり見る機会がありませんでしたが、とても上手なのに驚きました。
もちろん抱一のヒット作「十二ケ月花鳥図屏風」も前期後期で展示替えで出展されています。
今までプライスコレクション、出光、宮内庁蔵などさまざまな「十二ケ月花鳥図屏風」を拝見してきましたが、今回も良かった〜。これらの作品に描かれた小枝や蔓(つる)の伸びやかで繊細な描写、鳥やふくろう、虫などへの暖かいまなざしにも目を奪われました。他に「糸桜図」なども淡い色彩で美しい。
「紅白梅図屏風」 六曲一双 サンリツ服部美術館蔵 は、現在静嘉堂文庫蔵の光琳の絵をもとに描かれたそうですが、右隻の白梅と左隻の紅梅がそれぞれ中央に向かって枝を伸ばす構図。幹には所々、緑色のコケがたらしこみで描かれています。余白をたっぷりとり絹地を生かした精緻な梅の表現が見事でした。
抱一の作品はこれまでいくつも見てきて、特に千葉市美術館の抱一展で見尽くしたような気でいましたが、今回は個人蔵や関西の美術館蔵の作品は初めて見るものも多く、見ごたえがありました。
今回気がついたのは、抱一は書も達者であったこと、宗達にも関心があったこと、大和絵、破墨調の水墨画、十二ケ月花鳥図のような色彩豊かな絵画とさまざまなジャンルの絵画を何でも描けること。そしておそらく描くことをとても楽しんでいたこと。
全て抱一の作品ばかりだからでしょうか、抱一の多様性、器用さなどさまざまな発見があり驚きました。
あと大和文華館は開設がとても丁寧ですね。じっくり読むと時間がかかりますが、とても勉強になりました。