2014年08月17日
台北國立故宮博物院展に行ってきました。
東京・上野の東京国立博物館で開催中の台北國立故宮博物院展に行ってきました。
翠玉白の展示は終了していましたが、お盆の時期ならすいているかなとこの時期を狙っていたのですが、予想どおり、あまり混雑もなく、静かな空間でじっくり名品を拝見できました。
台北 國立故宮博物院には、北宋から南宋・元・明・清にいたる皇室のコレクションを経た文物が多く収められています。歴代皇帝の美意識に適った傑作、政治権力の正統性を象徴する優品を日本で拝見できる貴重な機会。
予想通り素晴らしいものでした。
私のお気に入りをいくつかあげてみます。
2 徽宗コレクション―東洋のルネサンスでは、「52 渓山秋色図軸」 徽宗 の作品が良かった。日本の水墨画の原点ともいえるような情緒豊かな作品でした。となりの「53 坐石看雲図頁」 (伝)李唐 、「54 奇峰万木図頁」 (伝)燕文貴も私好みの作品。
4 南宋宮廷文化のかがやき―永遠の古典では、「59 桃花図頁」、「60 杏花図頁」 馬遠 が良かった。とても上品で気品のある南宋絵画の名品です。
「113 荷葉玉杯 1口」、「114 松蔭図玉山子」翡翠の1種の軟玉が使われています。松の下の人物や樹上の鶴などの細かい細工が見事でした。中国の人々の玉への思いは、日本人にはなかなか理解しづらいのですが「まるで水をたたえているような、潤いある光沢を放つ石こそ、玉」なのだそう。そして長い間、色よりも質感の方が重視されてきたのですが、清時代の18世紀中ごろから、玉の色づかいに本格的に価値を見いだすようになり、この価値観の変化で生み出されたのが、今回展示されている「人と熊」であり、人気の「翠玉白菜(すいぎょくはくさい)」や「肉形石(にくがたいし)」なのだそうです。
続けて、「明皇幸蜀図軸」顔料で色をつけた山水画を「青緑山水(せいりょくさんすい)」と呼びます。輪郭線を取り、内側を彩色するという、日本画の顔料および描き方と同じです。つまり、日本人が長く「大和絵」と呼んできたものの源流は唐にあったということなんですね。
このコーナーでは、最後に五代や唐の時代のものも展示されています。
「25 秋山晩翠図軸 」(伝)関同、「26 蕭翼賺蘭亭図軸」 巨然の五代から北宋にかけての巨匠たちの、深遠で雄大な山水画の世界は思わず見入ってしまいました。
5 元代文人の書画―理想の文人では、「77 赤壁図巻」 武元直、 「88 漁父図軸」 呉鎮 、「90 紫芝山房図軸」倪瓚、「 95 荊渓図軸」 陳汝言などが良かった。 「90 紫芝山房図軸」倪瓚の作品は、戦火で家族を捨てて流浪の旅にでる前に描いた作品だそうです。95と同じく、手前に陸地、中央にひろびろとした空間、はるか遠方に山々という詩情をたたえた中国山水画の世界が表現されています。
元の文人画は、中国絵画の中で最も重要とされてきました。流浪の憂き目にあっても権力におもねらず、隠逸することで心の平安や精神の充実をはかり、自らの理想を追求する。それこそが中国文人の精神として、後世に受け継がれていったからです。ただ日本には元末四大家といわれる人の作品は1点もありません。なぜなら、中国人が心の支えとし、一番大切にしてきた絵画だからだそう。今回は本当に貴重な機会ですね。
6 中国工芸の精華―天と人との競合では刺繍絵画が素晴らしい。
すべて天然染料で染められていますので、光に当てすぎると褪色してしまいます。また、絹という脆弱な繊維素材でできていますので、完全な状態で後世に遺されることは大変に難しいのだそうです。
「134刺繍九羊啓泰図軸」は図様も背景もすべて、刺繍で表された絵画なのですが、天然染料が持つ透明感や美しい発色は、絵画の顔料には出せなかったもの。刺繍だからこその光沢や質感、立体感、細かい技じっくり拝見しました。
10 清朝宮廷工房の名品―多文化の交流に展示されている「154刺繍西湖図帖明」も刺繍でここまで絵画のような表現ができるのだなと驚きました。
9 乾隆帝コレクション―中国伝統文化の再編に展示されている「228紫檀多宝格」
約25センチ四方の紫檀製の箱に、30点もの器物(きぶつ)が収められています。仕切りや引き出しなど奇想天外な工夫を凝らし、効率よく収納できる構造になっています。
清の最盛期、乾隆帝が作らせたこの多宝格は、皇帝コレクションの縮図。皇帝自ら古今東西の名品を選び、それらのミニチュアを高度な技法とえりすぐりの材料で精巧にかたどらせました。元となった器物は前3世紀前後の玉器や青銅器から、清代に発達した象牙彫刻まで長大な時間軸に及び、ルビーの指輪など異国由来の物も含みます。
また、小さな磁器の底には、北宋・徽宗(きそう)の治世で使われた元号「宣和」の文字があるそう。北宋の官窯にならうことで乾隆帝は、憧れの徽宗が目指した理想に近づこうとしたのかもしれませんね。
さらに、多宝格の側面にある書画はいずれも、宋・元時代の代表的書家や画家の作品を、筆遣いまで忠実に模させたもの。まさに皇帝だから作れた至宝ですね。
本当に博物館はワンダーランド〜!、と思った1日でした。
まだまだ見どころは尽きませんし、工芸作品も見ごたえがあり、細かい部分までじっくり見ていると1日はかかるかも。
私は九州展も行く予定です。
なお、東京国立博物館で2週間限定で特別展示されていた「翠玉白菜」ですが、台湾に輸送され、7月11日より台北の國立故宮博物院での展示を再開しているそうです。
今年の冬にでも行こうかなと計画中。
翠玉白の展示は終了していましたが、お盆の時期ならすいているかなとこの時期を狙っていたのですが、予想どおり、あまり混雑もなく、静かな空間でじっくり名品を拝見できました。
台北 國立故宮博物院には、北宋から南宋・元・明・清にいたる皇室のコレクションを経た文物が多く収められています。歴代皇帝の美意識に適った傑作、政治権力の正統性を象徴する優品を日本で拝見できる貴重な機会。
予想通り素晴らしいものでした。
私のお気に入りをいくつかあげてみます。
2 徽宗コレクション―東洋のルネサンスでは、「52 渓山秋色図軸」 徽宗 の作品が良かった。日本の水墨画の原点ともいえるような情緒豊かな作品でした。となりの「53 坐石看雲図頁」 (伝)李唐 、「54 奇峰万木図頁」 (伝)燕文貴も私好みの作品。
4 南宋宮廷文化のかがやき―永遠の古典では、「59 桃花図頁」、「60 杏花図頁」 馬遠 が良かった。とても上品で気品のある南宋絵画の名品です。
「113 荷葉玉杯 1口」、「114 松蔭図玉山子」翡翠の1種の軟玉が使われています。松の下の人物や樹上の鶴などの細かい細工が見事でした。中国の人々の玉への思いは、日本人にはなかなか理解しづらいのですが「まるで水をたたえているような、潤いある光沢を放つ石こそ、玉」なのだそう。そして長い間、色よりも質感の方が重視されてきたのですが、清時代の18世紀中ごろから、玉の色づかいに本格的に価値を見いだすようになり、この価値観の変化で生み出されたのが、今回展示されている「人と熊」であり、人気の「翠玉白菜(すいぎょくはくさい)」や「肉形石(にくがたいし)」なのだそうです。
続けて、「明皇幸蜀図軸」顔料で色をつけた山水画を「青緑山水(せいりょくさんすい)」と呼びます。輪郭線を取り、内側を彩色するという、日本画の顔料および描き方と同じです。つまり、日本人が長く「大和絵」と呼んできたものの源流は唐にあったということなんですね。
このコーナーでは、最後に五代や唐の時代のものも展示されています。
「25 秋山晩翠図軸 」(伝)関同、「26 蕭翼賺蘭亭図軸」 巨然の五代から北宋にかけての巨匠たちの、深遠で雄大な山水画の世界は思わず見入ってしまいました。
5 元代文人の書画―理想の文人では、「77 赤壁図巻」 武元直、 「88 漁父図軸」 呉鎮 、「90 紫芝山房図軸」倪瓚、「 95 荊渓図軸」 陳汝言などが良かった。 「90 紫芝山房図軸」倪瓚の作品は、戦火で家族を捨てて流浪の旅にでる前に描いた作品だそうです。95と同じく、手前に陸地、中央にひろびろとした空間、はるか遠方に山々という詩情をたたえた中国山水画の世界が表現されています。
元の文人画は、中国絵画の中で最も重要とされてきました。流浪の憂き目にあっても権力におもねらず、隠逸することで心の平安や精神の充実をはかり、自らの理想を追求する。それこそが中国文人の精神として、後世に受け継がれていったからです。ただ日本には元末四大家といわれる人の作品は1点もありません。なぜなら、中国人が心の支えとし、一番大切にしてきた絵画だからだそう。今回は本当に貴重な機会ですね。
6 中国工芸の精華―天と人との競合では刺繍絵画が素晴らしい。
すべて天然染料で染められていますので、光に当てすぎると褪色してしまいます。また、絹という脆弱な繊維素材でできていますので、完全な状態で後世に遺されることは大変に難しいのだそうです。
「134刺繍九羊啓泰図軸」は図様も背景もすべて、刺繍で表された絵画なのですが、天然染料が持つ透明感や美しい発色は、絵画の顔料には出せなかったもの。刺繍だからこその光沢や質感、立体感、細かい技じっくり拝見しました。
10 清朝宮廷工房の名品―多文化の交流に展示されている「154刺繍西湖図帖明」も刺繍でここまで絵画のような表現ができるのだなと驚きました。
9 乾隆帝コレクション―中国伝統文化の再編に展示されている「228紫檀多宝格」
約25センチ四方の紫檀製の箱に、30点もの器物(きぶつ)が収められています。仕切りや引き出しなど奇想天外な工夫を凝らし、効率よく収納できる構造になっています。
清の最盛期、乾隆帝が作らせたこの多宝格は、皇帝コレクションの縮図。皇帝自ら古今東西の名品を選び、それらのミニチュアを高度な技法とえりすぐりの材料で精巧にかたどらせました。元となった器物は前3世紀前後の玉器や青銅器から、清代に発達した象牙彫刻まで長大な時間軸に及び、ルビーの指輪など異国由来の物も含みます。
また、小さな磁器の底には、北宋・徽宗(きそう)の治世で使われた元号「宣和」の文字があるそう。北宋の官窯にならうことで乾隆帝は、憧れの徽宗が目指した理想に近づこうとしたのかもしれませんね。
さらに、多宝格の側面にある書画はいずれも、宋・元時代の代表的書家や画家の作品を、筆遣いまで忠実に模させたもの。まさに皇帝だから作れた至宝ですね。
本当に博物館はワンダーランド〜!、と思った1日でした。
まだまだ見どころは尽きませんし、工芸作品も見ごたえがあり、細かい部分までじっくり見ていると1日はかかるかも。
私は九州展も行く予定です。
なお、東京国立博物館で2週間限定で特別展示されていた「翠玉白菜」ですが、台湾に輸送され、7月11日より台北の國立故宮博物院での展示を再開しているそうです。
今年の冬にでも行こうかなと計画中。