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2016年02月02日

商法 平成15年度第1問

問題文
 次の各事例において、商法上、A株式会社の取締役会の決議が必要か。ただし、A会社は、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律上の大会社又はみなし大会社ではないものとする。
1 A会社の代表取締役BがC株式会社の監査役を兼任する場合において、A会社がC会社のD銀行に対する10億円の借入金債務について、D銀行との間で保証契約を締結するとき。
2 A会社の取締役EがF株式会社の発行済株式総数の70%を保有している場合において、A会社が、F会社のG銀行に対する1000万円の借入金債務について、G銀行との間で保証契約を締結するとき。
3 ホテルを経営するA会社の取締役Hが、ホテルの経営と不動産事業とを行うI株式会社の代表取締役に就任して、その不動産事業部門の取引のみを担当する場合。
回答
設問1
 会社法は、取締役会設置会社の取締役の利益相反取引に取締役会の承認を必要としている(356条1項2号、同3号、365条)。そもそも、会社と任用契約関係にある取締役は職務執行につき会社に対して善管注意義務・忠実義務を負うが(330条、民法644条、355条)、利益相反取引は取締役がその地位を利用して会社ひいては株主の利益を犠牲にして自己の利益を図る行為であり、典型的な善管注意義務・忠実義務違反である。しかし、利益相反取引は魅惑的であり行われやすいため、特に取締役会決議が要求されている。
 本件のA会社がD銀行との間で締結した保証契約が、A会社とその代表取締役であるBとの間接取引(356条1項3号)に当たるか否かが問題となる。同条は「取締役の債務を保証すること」を明文で禁じているが、本件のように取締役が監査役である会社の債務を保証することは明文で禁じていないからである。そもそも、「取締役の債務を保証すること」を禁止した趣旨は、保証契約(民法466条)は債務者が弁済しない場合に代わって弁済する責任を負う契約であり保証人自身の利益はないから、債務者のためにしたものと推定されることである。そうすると、債務者以外の者の債務についての保証契約を締結する場合にそれが「取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引」に当たるか否かは、債務者以外の者が取締役と同視しうる程度の強さによって決めるべきである。
 本件でBは、C会社の監査役である。監査役は「役員」(329条1項)として会社と任用契約の関係にあるが(330条)、取締役の業務執行の適法性及び妥当性を監査する機関であり(381条1項)自らは業務執行を行わない。そのため、監査役と任用契約を結んでいる会社と監査役本人とを同視しうる程度は小さい。したがって、取締役が監査役として認容契約を結んでいる会社のために第三者との間で締結する保証契約は、取締役と会社との間の間接取引に当たらないと解する。
 したがって、利益相反行為に当たることを理由としては、A会社の取締役会決議は不要である。
2 法は、「多額の借財」を取締役会の決議事項としている(362条4項2号)。この趣旨は、業務執行を行う取締役への権限の集中を防止し、重要な意思決定を慎重に行うことと解される。そのため、「多額の借財」に当たるか否かは狭く解すべきでなく、保証契約も「借財」に当たると解する。そして、それが「多額」か否かは、当該財産の価額、その価額の会社の総資産に占める割合、保有の目的、会社における従来の取扱いを総合的に考慮して判断するのが判例である。
 本件を見ると、10億円はそれ自体多額であり、会社の総資産に占める割合や従来の取扱いは不明だが、その目的はBのためと思われる。これらを総合的に考慮すると、「多額」に当たると言える。
 したがって、取締役会決議が必要である。
設問2
 本件も間接取引(356条1項3号)該当性の問題であり、ある会社の株式の70%を保有する株主である取締役がその会社と同視しうる程度の強さが問題となる。株式とは株式会社における社員の地位である。公開会社は伝統的に所有と経営の分離(331条2項本文参照)が行われ、会社の経営は取締役が行い、株主は剰余金の配当を受けることを予定して制度設計されているが、株主は取締役の任免権を持ち(329条、339条)、会社の重要な意思決定の議決権を持つ(295条1項、同2項参照)。そして会社の3分の2の株式を保有していれば、たいていのことはその株主の意のままになる(309条1項、同2項)。そのため、問題の株主が議決権の3分の2を保有する会社は、利益相反取引において当該株主と同視しうると解する。
 したがって、A会社の取締役会決議が必要である。
設問3
 競業取引をするには取締役会の承認を受けなければならない(356条1項1号)。この規定の法的性質について、忠実義務(355条)を善管注意義務(330条、民法644条)とは別の義務と解したうえで、競業避止義務は忠実義務から派生する義務と解する見解もあるが、判例上、忠実義務は善管注意義務を敷衍し、いっそう明確にしたものであるから、採用しない。競業取引をして会社の取引の機会を奪いつつ自己の利益を図ることは会社に対する善管注意義務・忠実義務違反であるが、それが魅惑的であるため、特に取締役会の承認を要求したと解される。そうすると、そのような会社の機会の奪取が起こる可能性のあるものに対して取締役会決議が要求されていると解されるから、自己または第三者の「ために」とは、「計算で」の意味であり、「事業」とは、現実に営んでいる事業のほか、開業準備に着手している事業も含まれると解する。
 では、本件のように競業する事業を営む会社の代表取締役に就任したが、担当する取引は別の場合には「取引をしようとするとき」に当たるのか。これも会社の機会の奪取防止という趣旨、及び代表取締役は対外的に会社を代表し、対内的に一切の業務執行権限を有している(349条4項)ことからすると、「取引しようとするとき」の典型は代表取締役に就任することと解され、代表取締役として実際に担当する業務の内容は関係ないと解する。
 したがって、A会社の取締役会決議が必要である。 以上

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posted by izanagi0420new at 15:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 商法
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