2016年02月03日
商法 予備試験平成26年度
設問1
1 X社のY社からの借入れはX社の取締役会決議に基づいてされているが、瑕疵ある決議の効果については明文がないため民法の原則に従って原則として無効であり、決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは例外的に有効と解すべきである。
2 では平成26年1月下旬のX社取締役会決議に瑕疵があるか。
(1)BはY社株式を90%保有しているから、X社とY社の取引はX社とBの取引と同視しうる。つまり本問のX社とY社の取引はBの自己取引(365条1項2号)である。
(2)そのため、Bは「重要な事実」を開示して取締役会の承認を受けなければならない(356条1項本文、365条)。この趣旨は取締役会がその取引を承認するか否かを判断する前提となる情報を与えることである。しかし、本件でBは自己資金で金融機関から借り入れた5億円に金利を若干上乗せして貸し付けている。金利の上乗せがされた事実は一般的に当該取引を承認するかどうかの判断に重要だから「重要な事実」に当たる。したがって、この情報の開示がないことは356条、365条違反に当たる。
(3)また、直接取引にあたるからBは本件決議において特別利害関係取締役にあたり、議決に加わることができない(369条2項)。しかしBは議決に加わっているから、369条2項違反もある。
3 以上の瑕疵の効果について、Bが議決に加わっている点は決議の結果に影響がないと言えるが、情報開示がなかった点は、情報開示があったならば他の取締役の判断も変わったと考えられ、決議の結果に影響があると認めるべきである。
4 したがって、本件の借入は無効であり、Cの主張は妥当である。
設問2
1 募集株式発行無効の訴え(828条1項2号)の無効事由については明文がないが、株式引受人の取引安全の要請及び拡大した規模で活動した後の資金調達が無効とされることの混乱への懸念から、重大な違法のみ無効事由となると解すべきである。
2 では本件募集株式発行に違法はあるか。
(1)「特に有利な金額」で募集株式を発行する場合には株主総会で説明の上、特別決議が必要である(199条3項、201条1項、309条2項5号)。「特に有利な金額」とは、時価の数パーセント安い値を下回る金額を言う。発行当時の株式の時価は1万円を下回らないところを、Z社は半額の5000円で買い受けているから、「特に有利な金額」(199条3項)であり、本件では総会決議がないから、199条3項違反がある。
(2)「著しく不公正な方法」(210条2号)により行われる株式発行は違法である。著しく不公正か否かは主要目的が何かを検討して決める。本件の募集株式発行により、確かにZ者とX社の提携関係は強まるが、そもそも本件はX社が経営不振により10億円の資金が必要となったことがきっかけとなった取引であるから、主要目的は資金調達目的と認定でき、この点に違法はない。
3 199条3項違反が無効事由となるか否かであるが、これは金銭的解決の方法が法定されているから(212条1項)それによるべきであり、重要な違法とは言えない。
4 したがって、本件株式発行は有効であり、Bの主張は認められない。 以上
1 X社のY社からの借入れはX社の取締役会決議に基づいてされているが、瑕疵ある決議の効果については明文がないため民法の原則に従って原則として無効であり、決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは例外的に有効と解すべきである。
2 では平成26年1月下旬のX社取締役会決議に瑕疵があるか。
(1)BはY社株式を90%保有しているから、X社とY社の取引はX社とBの取引と同視しうる。つまり本問のX社とY社の取引はBの自己取引(365条1項2号)である。
(2)そのため、Bは「重要な事実」を開示して取締役会の承認を受けなければならない(356条1項本文、365条)。この趣旨は取締役会がその取引を承認するか否かを判断する前提となる情報を与えることである。しかし、本件でBは自己資金で金融機関から借り入れた5億円に金利を若干上乗せして貸し付けている。金利の上乗せがされた事実は一般的に当該取引を承認するかどうかの判断に重要だから「重要な事実」に当たる。したがって、この情報の開示がないことは356条、365条違反に当たる。
(3)また、直接取引にあたるからBは本件決議において特別利害関係取締役にあたり、議決に加わることができない(369条2項)。しかしBは議決に加わっているから、369条2項違反もある。
3 以上の瑕疵の効果について、Bが議決に加わっている点は決議の結果に影響がないと言えるが、情報開示がなかった点は、情報開示があったならば他の取締役の判断も変わったと考えられ、決議の結果に影響があると認めるべきである。
4 したがって、本件の借入は無効であり、Cの主張は妥当である。
設問2
1 募集株式発行無効の訴え(828条1項2号)の無効事由については明文がないが、株式引受人の取引安全の要請及び拡大した規模で活動した後の資金調達が無効とされることの混乱への懸念から、重大な違法のみ無効事由となると解すべきである。
2 では本件募集株式発行に違法はあるか。
(1)「特に有利な金額」で募集株式を発行する場合には株主総会で説明の上、特別決議が必要である(199条3項、201条1項、309条2項5号)。「特に有利な金額」とは、時価の数パーセント安い値を下回る金額を言う。発行当時の株式の時価は1万円を下回らないところを、Z社は半額の5000円で買い受けているから、「特に有利な金額」(199条3項)であり、本件では総会決議がないから、199条3項違反がある。
(2)「著しく不公正な方法」(210条2号)により行われる株式発行は違法である。著しく不公正か否かは主要目的が何かを検討して決める。本件の募集株式発行により、確かにZ者とX社の提携関係は強まるが、そもそも本件はX社が経営不振により10億円の資金が必要となったことがきっかけとなった取引であるから、主要目的は資金調達目的と認定でき、この点に違法はない。
3 199条3項違反が無効事由となるか否かであるが、これは金銭的解決の方法が法定されているから(212条1項)それによるべきであり、重要な違法とは言えない。
4 したがって、本件株式発行は有効であり、Bの主張は認められない。 以上
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