2016年02月03日
商法 予備試験平成25年度
設問1
1 Aは株主総会決議取消の訴え(831条1項)を提起して本件総会決議の効力を争うことができるか。
2 原告適格について、本件株式交換契約の効力が発生する平成24年9月1日まではAはY社の株主だから、同年8月の段階では原告適格がある。
3 本件総会においてBがAの株主としての地位に基づく質問に答えなかったことが314条違反であり、これが決議方法の法令違反(831条1項1号)として取消事由となるか。
(1)まず、Bに説明義務が発生しているか。
314条は会議の参加者がその審議事項について質問しうるという当然のことを明文化し、取締役の説明義務を定めた規定である。そうすると、説明義務は株主から質問を受けて初めて発生するというべきである。
本件では、Aは質問をしているから、Bに説明義務が発生するのが原則である。
(2)もっとも、314条但書の「正当な理由がある場合」に該当し、例外的に説明義務が不発生となるのではないか。Bの側としては、Aは解任決議に係る取締役であり特別利害関係人(831条1項3号)に当たること、X社がAに対してY社株式の売却をするよう説得していた事情があることを、正当な理由の評価根拠事実として主張すると考えられる。
しかし、取締役会決議(369条2項参照)と異なり、株主総会においては特別利害関係人も議決に加わることができる(831条1項3号参照)から、特別利害関係人の質問だからと言って答える必要がなくなるわけではない。また、Aの質問への回答を他の株主が聞いて議決の参考にする必要があるから、Aに対して株式の売却を説得していた等の事情も回答の必要性をなくすものではない。
したがって、本件は「正当な理由がある場合」に該当しない。
(3)以上より、本件には314条違反があり、これは決議方法の法令違反として取消事由となる(831条1項1号)。
4 したがって、Aは本件総会決議の効力を争うことができる。
設問2
1 Aは433条1項に基づく請求をしているが、Yは同2項各号に該当することを理由に請求を拒むことができるか。
(1)Aは後述のような株主総会決議取消の訴えまたは株式交換無効の訴えを提起するために請求しているから、「権利の…行使」(433条2項1号)のための請求に当たる。
(2)2,4,5号に該当する事情はない。
(3)Yとしては、AがZ社の67%株主であることから、AがYと「実質的に競争関係にある事業を営」(3号)むものに当たると主張しうる。たしかに、Y社の事業内容は日本国内における新築マンションの企画及び販売であり、Z社の事業内容は関東地方を中心とする住居用の中古不動産の販売等であるから、不動産というくくりでは形式的に競合関係にある。しかし、新築と中古の違いがあること、Zは従来からY社株式を10パーセント保有しており特に敵対関係になかったことから、実質的に競争関係にあるとまでは言えない。
2 したがって、Y社はAの請求を拒むことができない。
設問3
1 @効力発生前
(1)効力発生前には株式交換を承認した本件総会決議の取消の訴(831条1項)を提起することが考えられる。構成としては、X社という特別利害関係人が議決に加わったことによって、不当な交換比率の株式交換の承認という著しく不当な決議がされた(831条1項3号)とすればよい。
(2)また、株式買取請求(785条)をすることも考えられる。
2 A効力発生後
株式交換無効の訴え(828条1項11号)を提起することが考えられる。
組織再編の手続に瑕疵がある場合には本来であれば無効になるところだが、法律関係の安定のため会社法は訴えによってのみ主張できることとしている。無効原因は規定されていないが、軽微でない瑕疵は無効原因となると考える。本件のように株式交換比率が著しく不適切な場合は軽微でない瑕疵といえるから、無効原因になる。 以上
1 Aは株主総会決議取消の訴え(831条1項)を提起して本件総会決議の効力を争うことができるか。
2 原告適格について、本件株式交換契約の効力が発生する平成24年9月1日まではAはY社の株主だから、同年8月の段階では原告適格がある。
3 本件総会においてBがAの株主としての地位に基づく質問に答えなかったことが314条違反であり、これが決議方法の法令違反(831条1項1号)として取消事由となるか。
(1)まず、Bに説明義務が発生しているか。
314条は会議の参加者がその審議事項について質問しうるという当然のことを明文化し、取締役の説明義務を定めた規定である。そうすると、説明義務は株主から質問を受けて初めて発生するというべきである。
本件では、Aは質問をしているから、Bに説明義務が発生するのが原則である。
(2)もっとも、314条但書の「正当な理由がある場合」に該当し、例外的に説明義務が不発生となるのではないか。Bの側としては、Aは解任決議に係る取締役であり特別利害関係人(831条1項3号)に当たること、X社がAに対してY社株式の売却をするよう説得していた事情があることを、正当な理由の評価根拠事実として主張すると考えられる。
しかし、取締役会決議(369条2項参照)と異なり、株主総会においては特別利害関係人も議決に加わることができる(831条1項3号参照)から、特別利害関係人の質問だからと言って答える必要がなくなるわけではない。また、Aの質問への回答を他の株主が聞いて議決の参考にする必要があるから、Aに対して株式の売却を説得していた等の事情も回答の必要性をなくすものではない。
したがって、本件は「正当な理由がある場合」に該当しない。
(3)以上より、本件には314条違反があり、これは決議方法の法令違反として取消事由となる(831条1項1号)。
4 したがって、Aは本件総会決議の効力を争うことができる。
設問2
1 Aは433条1項に基づく請求をしているが、Yは同2項各号に該当することを理由に請求を拒むことができるか。
(1)Aは後述のような株主総会決議取消の訴えまたは株式交換無効の訴えを提起するために請求しているから、「権利の…行使」(433条2項1号)のための請求に当たる。
(2)2,4,5号に該当する事情はない。
(3)Yとしては、AがZ社の67%株主であることから、AがYと「実質的に競争関係にある事業を営」(3号)むものに当たると主張しうる。たしかに、Y社の事業内容は日本国内における新築マンションの企画及び販売であり、Z社の事業内容は関東地方を中心とする住居用の中古不動産の販売等であるから、不動産というくくりでは形式的に競合関係にある。しかし、新築と中古の違いがあること、Zは従来からY社株式を10パーセント保有しており特に敵対関係になかったことから、実質的に競争関係にあるとまでは言えない。
2 したがって、Y社はAの請求を拒むことができない。
設問3
1 @効力発生前
(1)効力発生前には株式交換を承認した本件総会決議の取消の訴(831条1項)を提起することが考えられる。構成としては、X社という特別利害関係人が議決に加わったことによって、不当な交換比率の株式交換の承認という著しく不当な決議がされた(831条1項3号)とすればよい。
(2)また、株式買取請求(785条)をすることも考えられる。
2 A効力発生後
株式交換無効の訴え(828条1項11号)を提起することが考えられる。
組織再編の手続に瑕疵がある場合には本来であれば無効になるところだが、法律関係の安定のため会社法は訴えによってのみ主張できることとしている。無効原因は規定されていないが、軽微でない瑕疵は無効原因となると考える。本件のように株式交換比率が著しく不適切な場合は軽微でない瑕疵といえるから、無効原因になる。 以上
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