よくよく見てみれば2021年10月は丸々更新していなかった、『暇人の独り言』管理人です。
相変わらずメルマガという奴をやってはいるもののいまだ成果はなく、続行するために経費をケチる計画を練っています。
何せ、財布の中身が危ないので。
金持ちになる自分なんて昔から想像できなかったけれど、ここまで困窮する自分というのはもっと予想できなかった…
…さて、本題です。
今回は『絶対博士コーリッシュ』の第2部であるベルマーチノート編のキャラクターについて語ります。
あろうことか、コーリッシュの記事としては前回の「『絶対博士コーリッシュ』を語る・全能科学(オールマイティ)編」から半年以上間が空いてしまいましたが、ともあれ久し振りの更新が少しでも楽しんで貰えますように。
もちろんネタバレ全開なので、閲覧の際は御注意下さい。
・ベルマーチ
自らの英知を記したメモ帳「ベルマーチノート」を世界一のラボに託すとして、後継者を決める大会を開催した老人です。
フルネームはラビット・ベルマーチだそうな。
「ありとあらゆる科学を網羅し極めた超天才」「科学者の頂点に立つ男」との評判も伊達ではなく、限りなく天然物に近い人工ダイヤや、元の部屋とは別物の世界が広がる亜空間を作り出すなど高度な技術の持ち主で、若いながらに博識な主人公のコーリッシュをも度々驚かせています。
…と、科学者としては超一流であるものの、助手から幾度か「大人げない」と言われる通り、精神面は幼稚。
自らのノートを「くだらん」「そんなモノなくても答えに辿り着く」と断じたコーリッシュには、「ワシに敵わぬと思ったか それともみみっちいプライドか」等と、結構に低劣な絡みようをしています。
(コーリッシュの助手であり、日頃温厚な嵐野まどか(あらしの まどか)から「コーリッシュは自分に自信があるんです! 恐れとか安いプライドなんかじゃない!バカにしないで!」と怒られた)
さらに、11人いる娘の内、自身と喧嘩別れした後に事故死した末娘だけは子供を産んでいた…
つまり、大会を開くまでも無く最初から後継者が決まっていたのを知らなかったという、間抜けな部分もありました。
でもこの辺は、生身の人間に似つかわしい隙と言うべきか。
大会においては、南極横断に巨大な新種の食虫植物退治や人工太陽停止実験といった危険な課題を数々出しており、コーリッシュから何度も「イカれてる」と言われる事に。
しかし一方、南極で参加者が行方不明になった際は「みんな覚悟の上 万が一も含めての争奪戦…とはいえ責任はワシにある」と重く受け止め捜索をさせたり、「アザラシと友達になる」という課題で強引な捕獲とムチでの調教に及んでいたチームには躊躇なく失格を言い渡すなど、根っから良識を失ってはいないようです。
また、コーリッシュに「神の御加護を(ハレルヤ)!」、自らの孫の窮地に「神よ…!!」といった台詞を発している場面もあり、コテコテの科学者ながら唯物主義者ではない可能性が見て取れます。
結構珍しいかも?
初登場時から病で余命僅かと語られており、実際物語が進むにつれて吐血したり点滴をしたりと今にも死にそうになっていましたが、最終話では16時間に及ぶ手術が奇跡的に成功し生き延びたことが描かれました。
ちなみにベルマーチノートの正体は単なるメモ帳ではなく、人類史上初の「時空間を渡る装置」。
周囲の物質を際限なく粒子化する事で「時」という次元を渡り過去への移動をも可能にする、ベルマーチの発明品でした。
「時空間侵食聖書」とも表記されるこのベルマーチノートは、紆余曲折あって後述のとある人物に奪われ、劇中最後にして最大の危険を引き起こしたのですが…
…本当、科学って何だろう。
・ルート
√+a(ルートプラスアルファ)として、ベルマーチノート争奪戦に参加した科学者です。
コーリッシュから「オレと同じくらいか」と見立てられる程の若さながら、南極で局地的に低気圧を起こしたり、特殊な油と電圧を合わせて激流を弾き返すバリアーを作ったりと、周囲を仰天させる技を幾つも見せています。
口数が少ない上、ベルマーチノートについて「…欲しくない… 欲しくないからノートが欲しいだけだ…」と語るなど、たまに喋れば不可解な台詞が飛び出すばかり。
他の科学者達の噂を数多く耳に入れていたシャルカンからも「薄気味悪いガキ」としか言われなかったり、最終試験直前になって不穏な動きを見せる科学者が助手であったと分かるなど、素性を掴ませない人物でした。
しかしその正体も、人工太陽を停止してベルマーチノートを手にするという決勝試験にて、ついに判明。
人工オゾン層を作り出しても危険な状況で、尚ノートを手中に収めようとするルートの口からは、「おじいさんの大事なノートは… ぼくが守る…!」という台詞が発されました。
このルートこそ、ベルマーチの孫だったわけです。
「欲しくないからノートが欲しい」というのは、「悪人の手に渡って欲しくないから 自分が手に入れたい」といった意味合いだったのでしょう。
内容に興味があったか否かは、明確にはされませんでしたが。
人工太陽停止実験での勝利はコーリッシュに奪われたものの、「ベルマーチに勝って絶対科学が世界一のラボだと証明する」が出場の動機だった彼の意向により、祖父のノートは自らが貰いました。
ところが、涙ぐみながらコーリッシュに謝意を述べていたところ、背後にいた助手から空気砲をぶち込まれて気絶する羽目に。
不憫な…
その後は最終話にて少し登場し、長時間の手術の末に回復したベルマーチに寄り添う様子が描かれました。
しかし、付きっ切りで看病していたらしく、報道陣から祖父の後継者になった気持ちについて問われると「…とても…眠い…」としか答えられず。
ベルマーチから現場で「心配な後継者じゃのう…」と評されたほか、ニュースを見ていたコーリッシュからも「相変わらずだな」とコメントされているように、その先行きには期待と不安が交錯します。
まあ、マイペースなのも悪くないよね。
余談ですが、コーリッシュに全く気付かれぬ内に彼の所有する漫画をくすねていた描写があります。
案外手癖は悪い模様。
また、第8巻のキャラクターファイルによるとイギリスの学校の寄宿舎におり、教室の隅が定位置で、ウサギ飼育係でもあるそうな。
作者も「描きたかった」と記していますが、読者としても見てみたかった気がします。
・マリー・ヴィエルジュ
祖母のバルバラ・ヴィエルジュと組み、ラボ・デルタウィッチとしてベルマーチノート争奪戦に参加した少女です。
扱う科学は、中世ヨーロッパから続く「バロック科学」。
絶対科学チームのリタ・ロザの台詞から、魔女や魔法使いといったオカルトのイメージが強いものの、天文学や薬学・数理学に優れている科学と見受けられます。
事実、マリーは13歳という若さにして薬の調合の手際が見事であり、大学や研究所からのオファーも絶えないのだとか。
先祖代々続く「魔女」の家系に生まれただけあり、バロック科学を「真の科学」と声高に主張する程誇りに思っているものの、世間からは科学者と認められてはおらず、祖母曰く「嫌な目にあいすぎた」経験があるようです。
(母親もバロック科学を認められなかった事から気を病み、自ら命を絶ったらしい)
そんな来歴が影響しているのか、口も悪ければ態度もよろしくなく、周囲への不信感も強いという困った人物に。
絶対科学チームや、巨漢の医者アルクマイオン2(通称アルク)と徒歩で南極を移動している最中には、コーリッシュと口論しまくりました。
しかし、コーリッシュやアルクがエサを取っていないアザラシを保護するべく吹雪の中へ出掛けると同行したり、アルクが行方を眩ませた際は「あたしがちゃんと見ていれば…」と悔やんだり、事後は絶望的だと分かっていながらアルクの帰還を前提とした話をするなど、根底には優しさも持ち合わせています。
要するにひねくれ者なだけか。
長らくベルマーチノート争奪戦で生き残っていたものの、最終試験を前にしてルートと彼の助手に敗れ、脱落。
その後は最終回にて、絶対科学ラボへの近況報告で1コマだけ登場し、祖母の猛特訓を受けていると明かされました。
「今度対決する時は負けないからな コーリッシュ!」と、雪辱戦への想いを語っています。
作者が御存命であったなら、絶対科学チームとの再会や直接対決も描いてほしかったかも…
・バルバラ・ヴィエルジュ
ラボ・デルタウィッチの構成員で、マリーの祖母です。
孫からは「グランマ(おばあちゃん)」と呼ばれています。
落ち着いていて渋さもあるなかなか格好良い老婆ですが、マリーの付添人的な色合いが強め。
孫についての解説を多く話した一方、自身がどんな科学者なのかは本人も周囲も余り喋っておらず、ルートとその助手に敗れた場面でもマリーと異なり姿が描かれていないといった影の薄さもあって、実は語り所に困るキャラクターであったりします。
シャルカンによれば「白銀の銃の魔女」と呼ばれているらしく、実際巨大食虫植物の退治では手持ちの銃を巧みに扱っていたものの、こちらも詳細は不明です。
劇中明確に描写されたところだと、目を引かれるのはその体力。
66歳という年齢に加え、マリーから「少しは控えろよ」と言われる量のタバコまで嗜んでいながら肉体は頑丈なようで、絶対科学チームの人造人間アーニャが少し疲れた程の長距離ですら、息ひとつ切らしていませんでした。
コーリッシュから「怪物」呼ばわりされるのも頷ける。
また、どういう訳かホウキで空を飛ぶことが可能で、7巻の番外4コマでは争奪戦の会場である東京行きのチケットが取れなかったと騒ぐマリーを乗せて離陸したり、最終話ではそのマリーにも「バロック科学の基本」としてホウキでの飛行を叩き込んでいたりします。
あんた本当に科学者か…?
・十文字静(じゅうもんじ せい)
十文字科学研としてベルマーチノート争奪戦に参加した、IQ200の少年です。
構えるラボは小さな町工場ながら、それを世界一大きな工場にしようと夢見て、従兄弟でありチームメイトでもある十文字走太郎(じゅうもんじ そうたろう)と努力を重ねています。
絵に描いたような美形の上、専門であるメカの設計・開発以外の知識も豊富というニクい奴。
ところが性格は好戦的で、コーリッシュに何かと絡んでは彼を苛立たせています。
爽やかそうに見えて、チンピラ気質?
絶対科学チームとは、復元恐竜が住まう亜空間にて、彼らを制御する信号受信機の壊れた「はぐれ恐竜」を元通り制御可能にするというお題で対決。
走りながら僅か数分にして改造した携帯電話で骨に違和感を与えてはぐれ恐竜を一時追い払ってのけ、絶対科学チームを上回る技術力を見せつけました。
しかし骨伝導が効いた経験から、他の復元恐竜の受信機で確認した正しい周波数を、これまた骨伝導で送ろうとしたのが失敗。
10個の装置で同時に送ったはぐれ恐竜への信号はノイズと化し、壊れた受信機を直すには至りませんでした。
結局、はぐれ恐竜を制御する受信機を新たに自作し、それをはぐれ恐竜に呑み込ませた絶対科学チームの創造力に敗れると、「たいした創造力だよ ブッ飛びすぎだけど」と、苦笑交じりに敗北を認めます。
退場する前に「握手は勝利のあかつきにってコトにするか」とコーリッシュに語ったものの、実際やったかどうかは不明。
最終話では絶対科学ラボへの近況報告で1コマだけ登場し、アメリカでの短期留学がもうすぐ終わる頃だと語られました。
走太郎と一緒の留学だったようですが、「宇宙飛行士になったらモテっかな!?」と口にする相棒を「アホ」と呆れた様子で一刀両断しているのが、実に平和で面白い光景です。
なお、妙な方向に真面目であり、7巻の番外4コマでは彼女が欲しいとこぼす走太郎に「『作ろう』ぜ」と応じ、「ポケットに彼女」なる製品を爆誕させました。
オタ…
…もとい、凝った趣味の人種には、大いにウケる商品かもしれません。
・十文字走太郎
従兄弟の静と組んだ十文字科学研のメンバーで、「操れないメカはこの世にはない」と言われる機械操作の天才です。
静とは「2人で1人の超天才」であり、NASAとCERNから年中お呼びがかかっているとのこと。
惚れっぽい性分であり、絶対科学チームのまどかに対して間々声を掛けています。
ただし、話題になっていた人工ダイヤに絡めて「嵐野さんの輝きはフローレンス級(ダイヤモンドの最高透明度)さ」といまいちな台詞を喋っているほか、7巻の番外4コマでは静に「お前みたくおモテになりませんので」とも口にしており、恋愛事には縁が薄い模様です。
顔つきや服装や口調には喧嘩早そうな印象を受け、惚れっぽい点からは女尊男卑なクチかと先入観を持ちますが、実際はコーリッシュに突っかかる静を止めようとしたり、絶対科学チームの天才ハッカー嶽山朝陽(たけやま あさひ)にも親し気に挨拶するなど、結構に良識的な所を見せています。
絶対科学チームに敗れると「世界一の工場になる道はまだまだ険しいや」と謙虚に受け止めていたのもそうした爽やかで清々しい印象を強めており、美形ながら中身に難ありの相方とは好対照です。
友達になるなら、こっちが良さげ。
最終回では絶対科学ラボへの近況報告で1コマだけ登場し、アメリカでの短期留学がもうすぐ終わると語っていました。
ただ、メールの文章はまどか宛てとなっており、「色々と新しい発明をしたので 隣の黒い博士に勝負しようと伝えておいて」と刻まれている事から、コーリッシュの名は覚えていないようです。
それにしたって、「隣の黒い博士」ってアンタ…
ちなみにキャラクターファイルでは、静共々「朝陽とは良い友達になれそう」とされていました。
同世代だし、自身の高度な技術のせいで敗北した共通点もあるので、頷ける見解です。
・シャルカン
相棒のキル・ハーと共に、ラボトリー・Mとして争奪戦に参加した男です。
5つのちょんまげの様に束ねた髪と、ゴーグル型の催眠装置を着けた異様な姿が特徴的。
チーム名のラボトリー・Mは「ラボトリー・マインド」の意で、人間のみならず動物にまで催眠術をかけるのを可能としています。
なかなか驚かせられる技の持ち主ながら、性格は外道そのもの。
「アザラシと友達になる」という課題では捕獲の過程で何匹かを殺めていたり、超音波を弱点とする巨大食虫植物の退治は多数のアザラシに喉が潰れるまで唄わせて達成するなど、作者が「悪一色」と評する振る舞いが尽きませんでした。
普段の催眠術の用途も、マインドコントロールをかけた科学者から知識を盗み取っては政府や大会社や大富豪等に売りつけて金を得るという、下種なもの。
そのショックから自殺者が出る事さえも「商売だ 仕方ないだろォ」の一言で済ませており、リタ・ロザから「本物のカス」と断じられています。
「最も嫌いな熱血タイプの科学者」とするコーリッシュとは、スーパーコンピューターの故障を直して亜空間の天候不順を収めるという課題で対決しました。
人の脳と同じに作られているスーパーコンピューターに催眠術を掛けてクリアしようとしたものの、動きたくとも動けない状態になっていたところを無理矢理動かそうとしたため、拒絶反応として落雷を喰らい、撃沈。
その間に、奇策を以ってスーパーコンピューターの予備の管理システムを作動させたコーリッシュに敗北します。
それでも尚、高値が付くと見込まれるベルマーチノートの入手に執心していましたが、壊れた催眠装置を動かしたせいで自爆して倒れ、物語から退場しました。
生死は明言されていないけれど、息絶えていた方が世間的にありがたい。
一応、「お偉い科学者達」が作った爆弾で両目を吹き飛ばされたという暗い過去を持っているのに、自身もそうした下劣な連中の同類に成り果てたとは、虚しいものがあります。
そういう意味では、全能科学(オールマイティ)にいた生物科学者ビゴーよりも、更に悪質かもしれません。
ちなみに作者にとっては、「台詞がスルスル出てくる」キャラクターだったそうです。
「悪態の方が良く思いつく作者の人格に問題があるという事なのでしょ以下略」ともありましたが、正誤の程は不明。
・キル・ハー
ラボトリー・Mのメンバーで、シャルカンの相棒です。
シャルカンによれば「地上に現存する7千種の言語 全ての言葉を熟知したエキスパート」であり、それにはコンピューター言語も含まれています。
…しかし、何故か周囲の人間と同じ言語では一切喋っておらず、常に数式らしき言葉を呟いているのみ。
何を言っているのかは、ルート以上に謎です。
正真正銘、数式を読み上げているだけなのだろうか。
こちらも、「お偉い科学者達」が作った爆弾で頭半分を吹き飛ばされたという暗い過去があるものの、その犯人達にだけ復讐するでもなく、シャルカンとつるんで他人の英知を盗んでは高値で売り飛ばす「商売」に手を染めています。
相方共々、コーリッシュから「胸の中まで喰われたクズ」「ただのチンケな悪党」と酷評の嵐を受けるのも当然である。
上述の経緯でシャルカンと同時に雷を浴びると、彼より一足先に沈み、以後は生死不明となりました。
やった事がやった事なので、こちらもどうか二度と目覚めませんように…
ちなみに第7巻の4コマ漫画では、自身の発言が相棒のシャルカンにも理解されていなかった疑惑が浮上しました。
素直に周りと同じ言葉で喋れば良かったのに…
・アルクマイオン2
ベルマーチノート争奪戦の参加者であり、南極横断テストにおいて絶対科学チームやラボ・デルタウィッチと一時期行動を共にした巨漢の医者です。
通称はアルク。
古代の医者「アルクマイオン」の名を冠しているのは伊達ではなく、切り傷の手当て位はお手の物。
また、アザラシを殺めて笑っていたシャルカンに憤ったり、「ベルマーチノートは欲しいけど目の前の命を見殺しにしてまで欲しいとは思わない」と語るなど、正義感も持ち合わせています。
しかし、吹雪の中でアザラシを保護する作業にて、我が身をコーリッシュやマリーの風除けとしている最中に、何時の間にか行方知れずとなりました。
…その後は最終決戦を前にして復帰し、正体の見えないルートの助手だった事を明らかにします。
実は、1つのラボとして参戦すると同時に、ルートが率いる√+a(ルートプラスアルファ)の助手としても登録していたのでした。
(南極で姿をくらませたのも「正体を嗅ぎ付けられると面倒」と、都合の良い頃合いで消えていただけ)
二重登録を違反とするルールは無かったためお咎めもありませんでしたが、この戦法にはベルマーチも「勝ち残る確率は高くなるが 互いの戦力が半分になるぶん共倒れの危険のほうが大きい」として、「こんな手を使う奴がおったとは…!」と驚いています。
迎えた最終決戦では、√+a(ルートプラスアルクマイオン)として、絶対科学チームと対決。
コーリッシュ達と共に歩いていた頃とは異なり、「クスクスクス」と嫌な感じの笑い声を上げ、他人を嘲る言動が見られるようになりました。
そして人工太陽停止実験に決着が付くと、ルートを背後から空気砲で撃ち、彼が譲り受けたベルマーチノートを奪ってしまいます。
その時、アルクマイオン2としての姿は着ぐるみを被っていた物に過ぎず…
中に入っていたのが、かつて全能科学(オールマイティ)にいた、軍医シュトラッサーであったことを見せました。
・アルバート(シュトラッサー)
過去の世界に渡り、絶対科学の創始者にしてコーリッシュの師でもあるマス博士を殺め、絶対科学が生まれる前にその存在自体を抹消しようとした、軍医シュトラッサー。
本名をアルバートという彼の正体は、マス博士の助手でした。
子供の頃はひどく病弱で、どんな医者も科学者も音を上げる難病を複数患っており、何処かの研究所の「研究材料」として余生を過ごしていた身。
それを、大学を出たばかりの若い研修生であったマス博士により、救われました。
(その際に認可されない薬を使い、危険な手術を幾度も行ったため、博士は研究所を追放されたらしい)
成長して医師になったアルバートは、マス博士の助手を務めた後、「マス博士の様に誰彼構わず助ける人間になりたい」「絶対科学ならきっとそれができる」と軍医に。
しかしアルバートは戦場で、「絶対科学は無意味だった」「誰も助けられない…… これが真実……」との答えに辿り着きます。
そして、マス博士に絶対科学という壮絶な苦しみを背負わせまいと、絶対科学を生み出す前に彼を殺めることを「唯一 絶対科学を救える方法」と言い張り、恩人に凶器を向けました。
これを阻止しようとしたコーリッシュと交戦。
日本刀並みの切れ味を持つというメスでコーリッシュを追い立てた末、彼を刺し貫いて殺めた…
…かに見えたものの、コーリッシュが数ミリ体をずらしていたと気付かず、彼から反撃を喰らって敗北します。
そして、元の時代に帰るのに必須のベルマーチノートをコーリッシュに譲り、自分は歪み出した空間の中に残って、消滅して行きました。
「オレには難しすぎたのかな…」と呟いていたところ、自らが重傷を負わせたマス博士から「行くんじゃない アルバート…!」と涙ながらに止められる中で訪れた永遠の別離は、悲しいものがあります。
コーリッシュから叩き付けられた「『想い』はどんな難題だってクリアできる…!」という言葉を反芻しながら、最後の最後に幼き日と同じ笑顔を遺して散っていったその胸中は如何なるものであったのか。
全能科学(オールマイティ)の創始者ローゼンタールのように、想像をかき立てられるところです。
笑みに屈託がなかった点を見ると、「『想いはどんな難題だってクリアできる』のなら マス博士は大丈夫」「絶対科学は無意味じゃない」と信じて眠れたのかもしれない。
(作者もキャラクターファイルにて「最期の笑顔で彼自身『救われた』んだな、と思いました」と述べている)
それにしても、全能科学(オールマイティ)にいた頃、古巣の絶対科学の強みを「しつこさ」と評していたアルバートが、実は「諦め」を知ってしまっており、その末に上記のような最期を迎えるとは、皮肉な話だったと感じます。
もしもアルバートが「しつこさ」を無くさずにいたなら、あるいはコーリッシュの仲間になっていたのではなかろうか…
「諦めなければ何でもできる」などと容易く言えはしませんが、それでも人は諦めを知った時、このアルバートやローゼンタールのように踏み外してしまうのかもしれません。
そう考えると、人生の反面教師とするべきキャラクターと言えるかも?
導け 絶対科学
『絶対博士コーリッシュ』を語る記事は、今回でひとまずお終いとしておきます。
同作を御存知の方には勿論、御存知ない方にも楽しんで頂ければ嬉しいところです。
魅力的なキャラクターが数々描かれた作品ながら、作者の小林ゆき先生が2020年1月に逝去されていたというので、最早続編や番外編の発表は望めません。
しかし、遺された作品を大切に楽しませてもらうことはできるので、ファンとして何度も繰り返し物語を味わわせて貰うつもりでいます。
願わくば、それが亡き小林ゆき先生への、せめてもの手向けになりますように。
それでは締めとして、絶対科学の決め台詞(?)を拝借しましょう。
「真実を量る天秤の 左に危険と死を 右に無限の夢を 誰も知らぬ暗黒の領域へ 導け 絶対科学」
物語が進むと、「導け 絶対科学」と略して言われる場面が多くなりましたが、良い響きの台詞だと感じます。
天秤に危険や死や無限の夢を乗せて誰も知らない世界を量るというのは、人生の生き方にも相応しいかもしれません。
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